松風の門 (新潮文庫)

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著者 : 山本周五郎
  • 新潮社 (1973年9月3日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (415ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101134239

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松風の門 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 短編集。
    「松風の門」
    八郎兵衛はかつて神童と呼ばれていた。だが藩主の息子の遊び相手を勤めていた際に誤って片目を失明させてしまう。以来、才気も見せず忘れられた存在となっていたが、農民たちの一揆が起ころうとしている時、八郎兵衛は単独で首謀者を斬り殺すことで事態を収束し、腹を切った。主君の片目を奪ってしまった償いの機会を待ち続けていた八郎兵衛の忠義とそれを知る人々の心情が胸に迫る。

    「鼓くらべ」
    大店の娘お留伊は鼓の名手として知られていた。御前での鼓くらべに向けて練習に励んでいたが、ある老人と知り合うことで己の慢心や競うことの愚かさを知る。

    「狐」
    天守閣に妖怪が出る。乙次郎はその原因を解明することを命じられる。天守に泊り込んだ乙次郎は密かに買い入れた狐を退治して見せることで災いは去ったと周囲を安堵させ、本来の原因であった天守の修繕を勧める。いい夫婦。

    「評釈堪忍記」
    短気で知られた千蔵は堪忍袋の紐の締めどころを心得てからは他者と揉めることなく過ごしていた。しかしそれも限界を迎え…。コミカルな話。

    「湯治」
    おたふく物語三部作の三作目。おしずとおたかの姉妹には栄二というろくでなしの兄がいた。不意にやってきては世の中のためと言っては家から金を持ち出す。おたかの嫁入りのために仕立てた衣装すら質屋に持ち込まれそうになり、おしずが兄を責め立てるシーンがつらい。去って行った兄を追ってしまうおしずの姿に切ることの出来ない肉親の情が感じられた。

    「ぼろと釵」
    あたしつうちゃんよ。そう言った幼馴染を男は忘れられずにいた。男はかつて住んでいた辺りの酒場で女を探していると周囲の客に語る。男の語る清純そのものといった女の姿に、客達はあれは強かな女だったと異を唱える。落ちぶれて売女となっていたお鶴は、その店の小座敷で酔い潰れていたのだ。しかしかつての面影を見出した男は嫌悪することなく、垢じみた女との再会を噛み締め、肌身離さず持ち続けたお鶴の釵を見せる。男は女を連れ帰り、店の中は静けさに満ちる。情愛という言葉が浮かんだ。

    「砦山の十七日」
    哲太郎は藩政のために同志七人と立ち上がる。しかし事態は急変し、騒乱の主謀者として追われる立場となる。危険を知らせに来た婚約者と共に砦山に立て篭もり、使者に発った仲間の帰りを持つ。だが仲間の中に己の命を狙う者がいると知り…。

    「夜の蝶」
    お幸という狂女がいる。居もしない赤ん坊を抱いて近所を徘徊するが、住人達も憐れんでか皆が揃って話を合わせてやっている。酒場の客達が旅の男にお幸の事情を語る。お幸は麻問屋の娘で、婿となるはずの手代が店の金を持ち逃げしたことで狂ったという。しかし麻問屋に勤めていたという客のひとりは否定する。手代の高次はそんなことをする男ではない。主人に心からの恩を抱いていた、死に恥を晒させないためにそんな芝居を打ったのだと。それを聞いていた旅の男の正体は…。

    「釣忍」
    天秤棒を担ぐ定次郎は、大店の息子だった。だが腹違いの兄に跡目を継いでほしいためにわざと勘当されるほどの乱行を繰り返した。勘当後は女房のおはんと幸せに暮らしていたが、兄に見つけられてしまう。勘当後の真面目な生活振りに弟の思いを知った兄は定次郎を連れ戻そうとする。切ない終わりだが、いつか理解し合えたらいいな。

    「月夜の眺め」
    武者話をする伊藤欣吾とそれを肴に酒を呑む男達。嫌われ者の下っ引きを皆でやりこめる話。

    「薊」
    鋳太郎の妻おゆきは同性愛者だった。そのことを知らぬ鋳太郎はおゆきとの生活に苛立ちや疑問を貯めていく。そうして死を選ぶ妻を止める手立てもなく…。

    「醜聞」
    功刀功兵衛はかつて妻に密通の末に逃げられた。恥とならぬよう病死と届け出ていたが、ある日その元妻のさくらが乞食同然の姿で現れ、金を強請る。さくらは功兵衛を人間である前に侍であると言い、人間らしさや愛情がないと責める。厄介で醜悪な存在だったが、さくらの登場によって現在の妻ふじへの思いやりが持てるようになったのでよかった。

    「失恋第五番」
    千田次郎は社長の息子であり、会社に在籍してはいるもののいつも気侭に暮らしているが、かつて特攻隊を送り出す立場だった痛みを抱え続けていた。同じ傷を抱える戦友に誘われ、死んでいった若者たちのためにも、「特攻くずれ」達が起こす犯罪を阻止すべく酒神倶楽部(バッカスクラブ)に加入する。

  • GWの台湾旅行中に読んだ本。
    海外旅行行く時には山本周五郎と決めてます。
    ウソです、海外旅行初めてだったし。
    まぁでも海外にかぎらず旅行のときに周五郎持ってくのは割りと習慣化しています。

    周五郎の本は特に順序も決めずに、
    中古屋で見つけたものを適当に買って読んでるんだけど、
    外れがないですね。

    期待通りの面白さ。

    もう社会人3年目か、、、とか
    また年取るのか、、、とか
    今まで何やってて、これから何やってこうかな、、、とか

    別に今に限ったことじゃなくいつも考えてはいるんだけど、

    周五郎の小説を読むと

    人生まだまだなげえな、と慌てる自分を諌める気持ちになったり
    もっとまじめにしっかりやんなくちゃ、と日々の生活を改める気持ちになったり

    とか、

    人生について考えてみたり

    とかね、そんなこんなを考えます。

  • 名もなき江戸庶民の物語は波乱万丈。喧々諤々な展開にハラハラさせられたかと思うと、最後あっと驚く結末。それがハートウォームゆえにどの作品もはまる。釣忍は最後の一文でホロっときた。

  • 短編集。
    山本周五郎は老後まで取っておくつもりだったが、中年にして読み出してしまった。
    まぁ、最近記憶力減衰しているので、四半世紀後には忘れていることでしょう。

  • 山本周五郎を立て続けに読んでるのだが,僕の好きなのは下町物より武家物だな.ただし本書の中での一番のお気に入りは「鼓くらべ」である.鼓くらべで相手を打ち負かすことしか頭になかった娘が本当の芸術の意味に気がつくおはなし.「醜聞」は武家物なのだが,話の骨幹は実は「鼓くらべ」と同じである.

  • 一度読みたいと思っていた山本周五郎の短編集。時代ものが中心だが、一つだけ現代ものが掲載されている。どの話にも、忠義、孝心、覚悟、家族愛、友情、知恵などが盛り込まれており、読んでいてとても気持ち良い。師走に読むに相応しい、日本的なものの良さ、美しさが感じられる。

  • 短編集。
    昭和10~30年代頃に書かれた作品、単語が馴染みのないものもあり(意味の取り方が分かりにくかったり、昔の用語も多々)、良く分からない部分は推測しながら読みました(本来調べながら読むべきかf(^^;)
    それでもぐいぐいっと作品に引き込まれ、おお~っと思いました。不器用で人情味のある作品多し。(現代ならもっと素直にいけそうなのに~っともどかしくもなったり)。時代とともに変わるもの変わらないものを考えさせられました。

  • 柄沢社長 リーダーの本棚

  • 研ぎ澄まされた良い本なのだと思う。1つ1つの話が短く、伝えたいこともはっきりしていて言葉が難しい割には読みやすい。でも自分には合わないかな。

  • 「松風の門」 山本周五郎。ところは宇和島。

     当主継職の直後におきる検地にともなう一揆発生の緊迫を、幼馴染の一刃、煽動者の浪人三名を切り捨てることで終息させた。

     四国・愛媛の家騒動を未然に防いだ。主人公は幼児に「利発」といわれた男。大名の世継ぎとの剣術で失明の傷をおわせてしまう。

     それより「利発」が能なしに転じ、聞けば姿を消して洞窟で壁に向かって、「達磨の心境」を読みとると。

     その男が、「ここぞ」で見せたのが、一揆煽動者を斬って切腹したこと。
     そこに、無役ながら家臣の本懐を体現している、と。周五郎文学の「義に準ずる」のモデルをみる思い。

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