松風の門 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101134239

感想・レビュー・書評

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  • 山本周五郎の短篇小説集『松風の門』を読みました。
    『日日平安―青春時代小説』に続き、山本周五郎の作品です。

    -----story-------------
    幼い頃、剣術の仕合で誤って幼君の右眼を失明させてしまった俊英な家臣がたどる、峻烈な生き様を見事に描いた“武道もの”の典型「松風の門」、しがない行商暮しではあるけれども、心底から愛する女房のために、富裕な実家への帰参を拒絶する男の心意気をしみじみと描く“下町もの”の傑作「釣忍」、ほかに「鼓くらべ」「ぼろと釵」「砦山の十七日」「醜聞」など全13編を収録する。
    -----------------------

    1940年(昭和15年)から1964年(昭和39年)に発表された作品13篇が収録されています… 『失恋第五番』だけは、時代小説ではなく、現代小説です。

     ■松風の門
     ■鼓くらべ
     ■狐
     ■評釈堪忍記
     ■湯治
     ■ぼろと釵
     ■砦山の十七日
     ■夜の蝶
     ■釣忍
     ■月夜の眺め
     ■薊
     ■醜聞
     ■失恋第五番
     ■解説 木村久邇典

    山本周五郎の短篇は、安定した面白さですね… そんな中で印象に残ったのは、

    藩主・宗利の幼少時に剣術の仕合で右眼を失明させたことを償うための決死の奉公… 池藤小次郎の忠義の行動に静かな感動を覚える『松風の門』、

    伯父の厳しい忠告により堪忍することを宗とした癇癪もちの青年が、周囲から軽蔑されるが、悶々の挙句、ついに堪忍袋の緒を切って、自身の自主性を取り戻すクライマックスが爽快感な『評釈堪忍記』、

    性格の異なる、おしずとおたかの姉妹の鮮やかな性格描写、世直し運動家と称する兄・栄二の両親の扱い… 家族への複雑な思いを描いた『湯治』、

    保守派の家老を斬って隠し砦に立て籠った青年武士たちの極限状況における17日間の微妙な心理を揺れ動きをテーマにしたサスペンス色の強い『砦山の十七日』、

    著者が"一場面もの"と名付けた作品のひとつで、市井の生活の一場面を切り取り、舞台劇を観ているような展開が新鮮な印象を与え、深い余韻を残す『ぼろと釵』と『夜の蝶』、

    肉親への愛情を断ち切って裕福な実家への帰参を振り捨て、しがない棒振りの暮らしを選ぶ心意気が爽やかな下町モノ『釣忍』、

    かなぁ… 読めば読むほど、味わいが深くなる山本周五郎の作品、次も読んでみようと思います。

  • 短編集。
    昭和10~30年代頃に書かれた作品、単語が馴染みのないものもあり(意味の取り方が分かりにくかったり、昔の用語も多々)、良く分からない部分は推測しながら読みました(本来調べながら読むべきかf(^^;)
    それでもぐいぐいっと作品に引き込まれ、おお~っと思いました。不器用で人情味のある作品多し。(現代ならもっと素直にいけそうなのに~っともどかしくもなったり)。時代とともに変わるもの変わらないものを考えさせられました。

  • 研ぎ澄まされた良い本なのだと思う。1つ1つの話が短く、伝えたいこともはっきりしていて言葉が難しい割には読みやすい。でも自分には合わないかな。

  • 「松風の門」 山本周五郎。ところは宇和島。

     当主継職の直後におきる検地にともなう一揆発生の緊迫を、幼馴染の一刃、煽動者の浪人三名を切り捨てることで終息させた。

     四国・愛媛の家騒動を未然に防いだ。主人公は幼児に「利発」といわれた男。大名の世継ぎとの剣術で失明の傷をおわせてしまう。

     それより「利発」が能なしに転じ、聞けば姿を消して洞窟で壁に向かって、「達磨の心境」を読みとると。

     その男が、「ここぞ」で見せたのが、一揆煽動者を斬って切腹したこと。
     そこに、無役ながら家臣の本懐を体現している、と。周五郎文学の「義に準ずる」のモデルをみる思い。

  • どの話も良いが、「醜聞」での功兵衛の心境の変化が
    読んでいて特に気持ちいい。

  • 2007.10 幼い頃、剣術の仕合で謝って幼君の右目を失明させてしまった俊英な家臣がたどる、峻烈な生き様を見事に描いた"武道もの”の典型「松風の門」、しがない行商暮らしではあるけれども、心底から愛する女房のために、裕福な実家への帰参を拒絶する男の心意気をしみじみと描く"下町もの”の傑作「釣忍」、他13編。−短編集。この人のはいつも温かい感じで終わるものが多くて好きだけど、今回はそれだけじゃないもっと複雑な気持ちになる話が多かった。でもやっぱ武士ものだとこの人が一番いいなー

  • 武士道ですね。

著者プロフィール

山本周五郎(やまもと しゅうごろう)=1903年山梨県生まれ。1967年没。本名、清水三十六(しみず さとむ)。小学校卒業後、質店の山本周五郎商店に徒弟として住み込む(筆名はこれに由来)。雑誌記者などを経て、1926年「須磨寺付近」で文壇に登場。庶民の立場から武士の苦衷や市井人の哀感を描いた時代小説、歴史小説などを発表。1943年、『日本婦道記』が上半期の直木賞に推されたが受賞を固辞。『樅ノ木は残った』『赤ひげ診療譚』『青べか物語』など、とくに晩年多くの傑作を発表し、高く評価された。 

解説:新船海三郎(しんふね かいさぶろう)=1947年生まれ。日本民主主義文学会会員、日本文芸家協会会員。著書に『歴史の道程と文学』『史観と文学のあいだ』『作家への飛躍』『藤澤周平 志たかく情あつく』『不同調の音色 安岡章太郎私論』『戦争は殺すことから始まった 日本文学と加害の諸相』『日々是好読』、インタビュー集『わが文学の原風景』など。

「2023年 『山本周五郎 ユーモア小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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