あんちゃん (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101134369

感想・レビュー・書評

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  • いいねー

  • 山本周五郎の短篇小説集『あんちゃん』を読みました。
    『編傑作選4 しづやしづ』、『花杖記』に続き、山本周五郎の作品です。

    -----story-------------
    妹に対して道ならぬ行為をはたらき、それを悔いてグレていった兄の心の軌跡と、思いがけぬ結末を描く『あんちゃん』。
    世継ぎのいない武家の習いとして、女であるにもかかわらず男だと偽って育てられた者の悲劇を追った『菊千代抄』。
    ほかに『思い違い物語』『七日七夜』『ひとでなし』など、人間をつき動かす最も奥深い心理と生理に分け入り、人間関係の不思議さを凝視した秀作八編を収録。
    -----------------------

    昭和10年(1935年)から昭和33年(1958年)に発表された作品8篇が収録されています。

     ■いさましい話
     ■菊千代抄
     ■思い違い物語
     ■七日七夜
     ■凌霄花
     ■あんちゃん
     ■ひとでなし
     ■薮落し
     ■解説 木村久邇典

    収録されている8篇のうち『菊千代抄』だけは再読… 共感できる好みの作品と共感できない作品が半々だったかなー

    藩政改革に意欲を燃やす藩主の意を受け、大幅な緊縮財政を断行するため勘定奉行として江戸から国元へ下向した笈川玄一郎が、よそ者扱いされ反発されながら、実父の助けもあり改革を成し遂げる『いさましい話』、

    後継者を絶やさぬため男として育てられた姫君の哀しみ、苦悩し嫌悪感に苦しめられる痛ましい半生を描いた『菊千代抄』、

    こっけいものの一篇でユーモアたっぷり… 軽率でおしゃべりで粗忽を繰り返す典木泰三は、あまりにも迷惑なので閑職である古い帳簿を計算しなおす検計係に飛ばされてしまうが、そこで、藩内の不正金を見事に暴いてしまう という、愛すべき憎めない人物造形と痛快な展開が愉しめる『思い違い物語』、

    旗本三千石の四男坊という一生うだつのあがらぬ星の下に生まれた本田昌平の境涯をがらりと変えてしまう七日と七夜を描いた物語… 新吉原などで大失態を起こし、金を巻き上げられ、自自暴自棄になった昌平が、町人たちの心の優しさに触れ武家を捨てて門前仲町の居酒屋で夫婦になり立派に町人として独り立ちするという心温まる展開が印象的な『七日七夜』、

    が好みでしたねー 小説を愉しみながら、ひとの生き方を教えられたような作品たちでしたね。

  • 菊千代抄を読んだ。
    1945年に第二次世界大戦が終わった。
    この小説が発表されたのは1950年。
    小津安二郎の「東京物語」は1953年。
    なぜここで俺「東京物語」を持ち出すのかというと、戦争を引きずった作品だからだ。
    菊千代抄は、武家の物語だ。最近のトレンドであるLGBTがテーマでもある。
    敗戦後、時代の空気は重かったのだろうか。もしくは、終戦後、ある種の開放感があったのだろうか。
    菊千代が江戸にいた時代を戦時中に置き換えるなら、地方に移動した時代は戦後ではないか。暮らしは不自由だが、メンタルは自由に生きられたのかもしれない。
    戦争が終わって、人は自由になった、という気持ちが、本作にはこめられているのではなかろうか。

  • 少し変わり種の設定が多い短編集、でも最後のオチはなかなか。もう少し良い環境、時間の時に再読したかったですな。
    許すまじき輩どもの多いことよ。。。

  • 短編集だが、1つ1つが濃くて◎

  • 山本周五郎の短編集の中でも、もっとも好きな一冊。
    人の行動の根底にある心理の奥深さを綴った秀作。

  • 鉄板でおもしろい山本周五郎.どれも人情味溢れる話だが,やっぱり藩政改革の「いさましい話」と「思い違い物語」かな,まったくトーンは違うのだけれども.

  • 『菊千代抄』が読みたくて購入しました。
    収録されている8作すべて秀逸。
    何度も読み返してます。

  • 図書館で。
    思い違いの弟みたいな粗忽もの、苦手だなあ~ でも次女とは良い夫婦になりそう。お父さんは胃が痛いだろうけど。なんとも文章もお話も上手だなあ、というありきたりな感想しか出てこない。でもそれってすごい事なんだと思う。

  • 武家物が中心の本著。


    思い違い物語ー滑稽ものが一番好きな話。
    山本周五郎は弱者へ目線を向け、様々な人の機微や感情を上手く描いている。

    物語として、誰かが一方的に悪く書かれないので、はっきりとした話が好きな方(この登場人物が悪者、この人は善人など)は歯切れが悪く感じられるかもしれない。

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著者プロフィール

山本周五郎(やまもと しゅうごろう)=1903年山梨県生まれ。1967年没。本名、清水三十六(しみず さとむ)。小学校卒業後、質店の山本周五郎商店に徒弟として住み込む(筆名はこれに由来)。雑誌記者などを経て、1926年「須磨寺付近」で文壇に登場。庶民の立場から武士の苦衷や市井人の哀感を描いた時代小説、歴史小説などを発表。1943年、『日本婦道記』が上半期の直木賞に推されたが受賞を固辞。『樅ノ木は残った』『赤ひげ診療譚』『青べか物語』など、とくに晩年多くの傑作を発表し、高く評価された。 

解説:新船海三郎(しんふね かいさぶろう)=1947年生まれ。日本民主主義文学会会員、日本文芸家協会会員。著書に『歴史の道程と文学』『史観と文学のあいだ』『作家への飛躍』『藤澤周平 志たかく情あつく』『不同調の音色 安岡章太郎私論』『戦争は殺すことから始まった 日本文学と加害の諸相』『日々是好読』、インタビュー集『わが文学の原風景』など。

「2023年 『山本周五郎 ユーモア小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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