夜明けの辻 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.53
  • (4)
  • (12)
  • (17)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 90
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101134529

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 人間は自分の名誉や評判のために狡猾になったり、欺瞞をはたらいたりすることがある。実際行動に移さなくてもそのような考えが一瞬頭の中をめぐってしまうことは誰しも一度はあるだろう。
    この物語に登場する来栖道之進もそうだった。自分は周りが思うほど優秀な人物でないと自分で気づきながらも、いままでの周りからの評判が罵倒に変わるのを恐れ、裏切りをはたらいてしまう。
    地位や名声にとらわれることがどんなに意味のないことか、それよりもっと大切なことがあるのだということを教えてくれた。
    信念を持って生きよう。真実のありどころを見はぐらないように。周りの評判を気にするようなちっぽけな人間ではなく、もっと広い視野を持ち、本当の意味で人々のために役に立てる人になりたい……と思った。

  • どれも後ろにある戦局をどうしても想像してしまう、致し方ないんだろうけれども。
    その中で、冒頭の『嫁取り二代記』は目の前で展開されるようで、かつくすっと笑わせてくれて、そしてオチもgood。流石にこの作品レベルがズラリとはいかないんですが、冒頭作だけでも満足満足。

  • 短編集。冒頭の『嫁取り二代記』が好き。この人のヒューマンコメディは素朴で最高。クスクスと笑ってしまう。 

  • 時代劇小説のイメージを変える一冊。

  • 再読了。

  • 昭和5年から22年までの短編集。義を貫く主題が多いのは、時局のなすわざか。13.2.3

  • 時代性・価値観のせいか全く入っていけなかった。

  • 1986.10.22

  • 嫁取り二代記・平八郎聞書・葦・大納言狐と、既読感のある話ばかり。葦以外は面白く読めなかった。
    遊行寺の浅、一念上人とのやりとりやつまの絡め方が微妙。作品として浅い印象。
    梅月夜・熊野灘・勘弁記・荒涼記、面白かった。
    御定法、何か腑に落ちないと思ったら、結局返せない借金を負った藩士を説得により斬らせるにしろ、裁判の場では商人に対してだけバツを下すというのが納得いかないんだろう。
    夜明けの辻、良かった。ていうか萌え滾った。

    ※※以下腐女子妄想で名作レイプ注意※※

    「功刀……斬ってくれ、それが朋友の慈悲だ」と自分の弱さを初めて露見させ、死を懇願する道之進、一度は殺す気でいたが「来栖、やり直してみろ。ここで斬られて死ぬよりも困難な、むつかしいことだ」と諭す伊兵衛。伊兵衛の妹との婚約は破談とされる道之進だが妹・佐和は「わたくしは来栖家の妻でございます」と答え、伊兵衛の後を追う道之進を見送る。 物語はここで終わるが、この先の伊兵衛と道之進の二人旅がマジで半端なくフラグです。道之進の女顔とか佐和似の兄とかに堪った二人は慰め合うしかないですね。因みに伊兵衛×道之進。佐和のことで、伊兵衛はもう破断したものと割り切っても、道之進はぐるぐる悩んだりすればいいんだ。でもって兄と妹どっちにしようとか板挟みになればいいんだああくそ萌える
    あ、こんな流れはどうだろう、隠すようで嫌だからと、道之進が佐和とのことを話して、伊兵衛をまた死ぬほど幻滅させる。いつ帰るとも判らず待たせ、女の一番花の時期を潰させるのか、お前は、そんな奴と旅が出来るかと本気で軽蔑すればいい。でもって、一緒に旅したいなら別れを手紙で告げろとか言う。できない、でも伊兵衛に付いていきたいとか言うウザい道之進に伊兵衛は彼にだけ女を取らせようとする。どうしたって情欲は人間あるものだから、その際に妹をおかずにされるだなんて堪らない、とかなんとか。流石に侮辱が過ぎると怒る道之進は、お前はそんなときにオレの母上を思い浮かべないと言い切れないだろう、これで伊兵衛も切れて、じゃあお前で抜けば良いんだな→雪崩れ込みへ。女顔の道之進に思わずむらっときてまた道之進も佐和似の伊兵衛にどきどきしてしまって最後までまさかまさか。道之進はマジで愕然とするけど、伊兵衛は平常を装って、これでいいんだな、みたいな。でもってそれ以外の時は2人は真面目に武士の領分を学び、真剣に議論とかする。で夜は無言で。そのうち昼の相手も意識しだしてある日道之進は言う、伊兵衛、オレは佐和殿に正式な破談状を出した、だからお前についていくこれでいいんだな、これでお前と志を一緒にできるんだなとなるわけですね\(^▽^)/

    ‥‥すみませんでした。

  • 山本周五郎の短編集。時代が時代、戦前から戦中に至る時期の作品、掲載誌も講談系のものが多いからなのか、主君への奉公とは、真の武士とは、とかなんとなく時代の空気を読んだ内容っぽい。
    ただ、短編にもかかわらず、話の流れはどれも一品で、単純ながらも引き込まれる。こういった作品でよく出てくる主人公像の寡黙で実直で誠心仁義溢れる男像ってのがいまじゃ御伽噺っぽくなってるんで、随分新鮮でもあるし。

全10件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

山本周五郎(やまもと しゅうごろう)=1903年山梨県生まれ。1967年没。本名、清水三十六(しみず さとむ)。小学校卒業後、質店の山本周五郎商店に徒弟として住み込む(筆名はこれに由来)。雑誌記者などを経て、1926年「須磨寺付近」で文壇に登場。庶民の立場から武士の苦衷や市井人の哀感を描いた時代小説、歴史小説などを発表。1943年、『日本婦道記』が上半期の直木賞に推されたが受賞を固辞。『樅ノ木は残った』『赤ひげ診療譚』『青べか物語』など、とくに晩年多くの傑作を発表し、高く評価された。 

解説:新船海三郎(しんふね かいさぶろう)=1947年生まれ。日本民主主義文学会会員、日本文芸家協会会員。著書に『歴史の道程と文学』『史観と文学のあいだ』『作家への飛躍』『藤澤周平 志たかく情あつく』『不同調の音色 安岡章太郎私論』『戦争は殺すことから始まった 日本文学と加害の諸相』『日々是好読』、インタビュー集『わが文学の原風景』など。

「2023年 『山本周五郎 ユーモア小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山本周五郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×