樅ノ木は残った(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101134642

感想・レビュー・書評

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  • 原田甲斐は、国元では、野獣のように山で暮らし。江戸では、にこやかに人と接し……。
    江戸時代前期に仙台藩伊達家で起こったお家騒動「伊達騒動」を書いたものです。
    万治(まんじ)3年(1660年)7月18日。徳川幕府第4代将軍家綱の治世。
    伊達家一族の伊達兵部少輔宗勝は、徳川幕府老中・酒井雅楽頭忠清と謀り、伊達家3代目藩主綱宗を奸計をもって逼塞(ひっそく)させ、2才の亀千代(綱村)を藩主とする。伊達家重臣・原田甲斐宗輔は、宗勝の野望を知りひとり宗勝に接近する。

    【読後】
    本を読み、また映像で何度も見ました。特に平幹二朗主演のNHKの大河ドラマは特に記憶に残っています。再度読んでみたくなり図書館より取り寄せましたが、予約がある本を読み続けていて今日になってしまいました。
    伊達騒動は、いままで「原田甲斐宗輔」を御家乗っ取りの悪臣として描いてきたものを、山本周五郎さんが江戸幕府による取り潰しから藩を守るために尽力した忠臣として描くなど、新しい解釈を加えています。いまの今村翔吾さんを見ているようです。

    樅ノ木は残った(上)
    2003.02発行。字の大きさは…小。2021.10.06~09読了。★★★★☆
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    【バックナンバー】
    樅ノ木は残った上、中、下のバックナンバーは、私の本棚より「タグ」→「タグの一覧を絞り込む」に「山本周五郎」と入力。または、その中から山本周五郎を探してください。そうすると著者山本周五郎さんの本が一覧表示されます。
    私は、本を登録するときには、著者名と登録した年(2021)で登録しています。たまにシリーズ名でも登録もします。例えば「風烈廻り与力・青柳剣一郎」などです。

  • 仙台藩主・伊達綱宗は幕府から逼塞を命じられた。放蕩に身を持ち崩したからだという。明くる夜、藩士四名が「上意討」の名の下に次々と斬殺される。疑心暗鬼に陥り混乱を来す藩政に乗じて権勢を増す、仙台藩主一族・伊達兵部と幕府老中・酒井雅楽頭。その謀略を見抜いた宿老の原田甲斐はただひとり、藩を守る決意をする。


    会社の方から上中下巻3冊を一気にお借りした。
    私は時代小説がめっぽう苦手なのだが(ToT)

    読めないと返せばよかったが、せっかく貸して頂いたのでほんの少しでもと読み始めてみた。

    大の苦手の時代小説なのに、、、
    漢字は読めないし、言葉もわからない。
    1つ1つ調べながらだったが、これがどうにもやめられない。

    登場人物が多すぎて、さっぱり覚えられないのに、それでも全然やめられない。

    何がこんなに引きつけるのか???
    全く説明できないが、とにかくやめられない。


    この本の主人公である原田にのめり込んだのか??
    それ以外のキャラクターの良さなのか??
    とにかく先が気になって仕方ない。

    文章自体は自分には苦痛だったが、先が読みたいと思う本。

    中巻に続く。

  • ジョージ•オーウェルの『動物農場』の、開高健による解説の中で、日本では珍しく成功したといえる政治小説、としてこの作品が言及されていたので、気になって読み始めた。まだ、中と下が残っていて、とても長い。

    人名が長くて、かつ館の所在地も含めて、呼び方が3〜4種類くらいあるので、ぼーっとしてるとスジが分からなくなる。(例、主人公の原田甲斐宗輔は船岡に館があって、原田、甲斐、船岡、と場面によって呼び名がちがう。)ロシア小説よりはまだましか。

    肝心のお話としては、家藩を守るために、『敵を欺くにはまず味方から』の精神で、理解されない辛さに耐えつつ、布石を打ち続けるところまで。

  • 江戸時代前期の伊達騒動を描いた長編時代小説である。新潮文庫で上中下3巻になっている。NHK大河ドラマにもなった。
    主人公は仙台藩家老の原田甲斐である。甲斐は伝統的には悪役・奸臣に位置付けられてきたが、本書では真っ当な人物として描かれる。逆に本書や大河ドラマの影響が強くて悪役イメージの方が少なくなっているかもしれない。但し、本書の甲斐には何を考えているか分からないところがある。そのために読者はじれったく感じることがある。
    原田甲斐は「敵を欺くには味方から」を実践している。この原田甲斐の姿勢では味方を失っても仕方がない。甲斐としては自分が犠牲になればよいと覚悟し、多くの人を巻き込みたくないのかもしれない。柿崎六郎兵衛のような胡散臭い人物には容易に腹の内を空かさないことは当然である。
    一方で昔ながらの人物も膝詰めで談判し、自分には腹の内を明かしてくれるだろうという内々の特権意識が感じられる。甲斐はビジョンの共有や透明性に欠けていて現代のリーダーとしては通用しないと感じたが、周囲もどっちもどっちと感じた。

  • 読み終わった第一声の感想は、静かな男性はかっこいい。
    主役の原田甲斐は、悪人として有名らしいが、私はそういった演目を知らずに読んだ。
    この本では、悪人どころか、どこまでも自分を耐え忍び伊達家に尽くす忠臣。

    伊達家の内部崩壊を狙う、幕府から延びる魔の手。
    盟友2人と約束をし、原田は敵の懐に入って、切り崩す役を演じ尽くす。
    そのあまりの飄々ぶりに、盟友からも疑念を抱かれることもあり、また仲良かった面々にも背かれ、その仲間が犠牲となって死ぬのを黙って見過ごしたり、盟友に先立たれたりとすごく辛い役柄である。

    感情はあまり表情に出ず、冷静でありすぎるため、彼に恋愛感情を持つと辛い男性だと思った。

    また、すごく人間関係が複雑。名前を覚えておかないと、誰がスパイだとか、この話はわざと相手方に筒抜けになる様にこの人を伴ったのではないかなどが分からなくなる。私は相関図を書いた。
    そして、敵方の主従が探り出したことを話し合う場面が折に触れ出てくるが、誰が話しているかを明記していないので、最初はドキドキする。推理小説のようにどうなるの?という楽しみがあった。

    伊達政宗の話を読んでからすぐだと、その頃からの存命の方が出てくるのでわかりやすい。また、3代目の家光までは政宗を厚遇していたのに、その変わりように、やはりというか徳川幕府の怖さを感じた。同時に、仙台はそれ以降は特に目立った藩主もなく、政宗の人間的魅力で保たれていた藩で、それも目をつけられる要因ではないかとも思い、いかに政宗の魅力が輝いていたかも感じた。

  • (上中下巻あわせての感想です)

    山本周五郎作品は何といっても庶民や名もなき流れ者に対する温かい視点が魅力(上から目線の司馬遼太郎作品とは対照的)なのですが、本作では伊達藩の家臣というそれなりの立ち位置の人物を主人公に据えているのと、大きな陰謀に対峙するという物語のスケールの大きさに引きずられているせいか、主人公の原田甲斐以外の人物の掘り下げ方が他の作品と比べて弱いような気がしました。なので本作が著者のベストかというとそうでもないかなというのが個人的な見方なのですが、それでも伊達騒動(寛文事件)について、これだけの枚数をかけて斬新な解釈を提示したことは十分評価に値すると思いました。

  • 秀作。
    長いけど、面白い作品は、苦にならない。
    少し読みにくいが、格式のある文章。綿密な人間描写。
    まだ、序章でこれから波乱を感じさせる。甲斐の人間性と関係する人との伏線。
    江戸時代初期は、まだ混乱の様相があったと言うことか。仙台藩にこのような出来事があったことは知らなかった。

  • 通説では悪者とされる原田甲斐を主人公にした伊達騒動の上巻。感想は次巻にて。

  • まだ序盤ではあるが、主役:原田甲斐による、”語らない”言動・“忍ぶ”行動から『覚悟』が早くも読み取れる。 どこまで背き、貫き通すのか。じっくり見届けたい。

  • 忍耐。先を読んだ上での忍耐。

  • 江戸前期の仙台藩伊達家で起こったお家騒動を題材にした物語。
    江戸時代の「藩」がどういうものだったかをつかむにはよい作品。

  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=18417

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BA61145237

  • コロナ陽性で自宅療養中の間に手に取った。予想外の素晴らしさ。下巻まで一気に行きそう。

  • あらすじ
    伊達家62万石の危機を察知した仙台藩の重臣・原田甲斐(里見浩太朗)が、たった一人で謀略から守る姿を描いた娯楽時代劇。 仙台藩の重臣・原田甲斐は3代藩主・伊達綱宗の放蕩に端を発した混乱の中、綱宗の叔父・伊達兵部の藩乗っ取りの陰謀を察知する。 兵部は幕府老中首座酒井雅楽頭と姻戚関係を結ぶなどして藩内での勢力を徐々に拡大。
    感想
    昔、仕事で涌谷担当をしてたので何か親近感を感じました。惜しい人を亡くした。

  • 伊達家三代目綱宗が遊蕩のかどで逼塞を命じられ、その酒色へ誘ったとされる家臣たちが「上意討」として斬られる。
    が、綱宗は実際にはそこまでの放蕩三昧でなく、裏に幕府側と結託した伊達家の要人の謀略が巡らされているよう。
    それに対処するかと思われる、伊達家重臣の原田甲斐もまた策謀を行い、誰が何を考えているのか掴み取れないこの上巻。
    登場人物も多く、焦点が当たる人もまた多岐に渡るため、全体像の把握が難しい。
    原田甲斐の正義の心だけは揺らがず、それを命綱として何とか文章についていっている。
    このまま中巻へ。

  • 重厚な時代小説。分量的にはさすがにお腹いっぱいという気分にはなるが、食べ応えならぬ読み応えはたっぷり。

  • 面白かった。
    但し後味は限りなく悪い。藩の為、長年の艱難辛苦を耐え忍んだ主人公が最後は一族切腹、奉公人離散の目に合わねばならぬのか?
    武士道と言うかも知れない。改易された家名は名誉回復の希望もなく関係者を全て絶望の底に叩き込んだ。
    こんな世界をどう肯定せよと言うのか?

    • 大瀧さん
      ネタバレにしてください
      ネタバレにしてください
      2021/02/25
  • おもしろい。ほとんど一気読みのように読んでしまった。けっこう中盤まで登場人物の整理に頭を使うけれども、一旦判ってしまえばそれぞれの人物が立ち上がって動いてゆく。
    ミステリのような読み応えがあって、この先どういう風に物語が展開していくのか、原田甲斐はなにを考えているのか。主人公の心の内を、敢えてつまびらかにしないようになっているため、この時感じたことなどはぼんやりわかるものの、それがどういった思案の結果なのかなど、読み取れない。そこが一気読みさせる効果をもたらしているのだと思う。続きが気になって仕方ない。

  • 「目的のために武士のすさまじいまでの自己抑制が読者に迫ってくる小説」

    所蔵情報
    https://keiai-media.opac.jp/opac/Holding_list/detail?rgtn=B19362

  • まだまだこれから

  • 6/22は山本周五郎の誕生日
    文学賞にも名を残す山本周五郎。
    現代にまで残る代表作『樅ノ木は残った』を手にとってみてはいかが?

  • <全三巻(2018年改版)読了>
     江戸時代前期に起きたお家騒動、「伊達騒動」を題材とした歴史小説。
     従来の通説を覆し、騒動の中心にして極悪人とされてきた原田甲斐(宗輔)という人物の評価を一変させた、山本周五郎文学の代表作。
     仙台藩三代藩主・伊達綱宗は、放蕩を理由に、幕府から逼塞を命じられる。
     紛糾する藩内において権勢を増す、藩主一族・伊達兵部(宗勝)と、幕府老中・酒井雅楽頭(忠清)。
     両者の間に取り決められた、仙台藩分割案の密約の背後に蠢く、大藩取り潰し計画の謀略を防ぐべく、甲斐は単身、闘いを挑む。
     主家安泰のため、味方をも欺き、悪評にも耐え、敢然と戦い抜いた忠臣の、孤独と葛藤、深沈たる諦観を活写した、傑作大河小説。

  • まずは上巻。
    読むのが止まらない。甲斐が魅力的すぎ。そして切ない。

  • <上中下3巻を通してのレビュー>

    仙台藩主・伊達綱宗、幕府から不作法の儀により逼塞を申し付けられる。
    明くる夜、藩士四名が「上位討ち」を口にする者たちによって惨殺される。いわゆる「伊達騒動」の始まりである。
    その背後に存在する幕府老中・酒井雅楽頭と仙台藩主一族・伊達兵部とのあいだの六十二万石分与の密約。この密約にこめられた幕府の意図を見抜いた宿老・原田甲斐は、ただひとり、いかに闘い抜いたのか。


    山本周五郎氏の作品は初めてなのです。

    「伊達騒動」をあまりよく知らないのですが、原田甲斐をこの観点から描く作品の新鮮さが感じられました。
    幕府の大藩潰しを背景に様々な密約が立ち込めて諸大名が苦しむ中、幕府老中の権力の凄まじさと、己の欲に貪欲な人々の生き様、権力に踊らされている人々の哀れさが伝わってきました。
    この作品では原田甲斐が、隠密に伊達安芸派に所属していながら相手方の不正を暴く立場になっていますが、一人の力でどこまで成しえるかが疑問です。
    ただし、この作品での原田甲斐という人物には脱帽します。

  • じわじわ

  • 骨太な構成と緻密な心情描写で、とても面白く読めました。
    主人公として描かれている原田甲斐の武士道的たたずまいを見ていると、人の上に立つものとしての責任と態度を訴えているようにも思われます。
    実際に書かれた時代と現代を単純に重ねることはできませんが、ふと、現在の世の中のリーダーの姿勢を顧みてしまいます。

  • 伊達家お家騒動。組織、人事、事業継承が複雑に入り組んだケーススタディのようで、大作なのに紙面量を意識することなく没頭できる。

  • 読みごたえあり。史実に題材をとっている。歴史好きにはお勧め。

  • 登場人物が多く関係の把握が難しい。

  • 2015年11月10日読了。

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著者プロフィール

山本周五郎(やまもと しゅうごろう)=1903年山梨県生まれ。1967年没。本名、清水三十六(しみず さとむ)。小学校卒業後、質店の山本周五郎商店に徒弟として住み込む(筆名はこれに由来)。雑誌記者などを経て、1926年「須磨寺付近」で文壇に登場。庶民の立場から武士の苦衷や市井人の哀感を描いた時代小説、歴史小説などを発表。1943年、『日本婦道記』が上半期の直木賞に推されたが受賞を固辞。『樅ノ木は残った』『赤ひげ診療譚』『青べか物語』など、とくに晩年多くの傑作を発表し、高く評価された。 

解説:新船海三郎(しんふね かいさぶろう)=1947年生まれ。日本民主主義文学会会員、日本文芸家協会会員。著書に『歴史の道程と文学』『史観と文学のあいだ』『作家への飛躍』『藤澤周平 志たかく情あつく』『不同調の音色 安岡章太郎私論』『戦争は殺すことから始まった 日本文学と加害の諸相』『日々是好読』、インタビュー集『わが文学の原風景』など。

「2023年 『山本周五郎 ユーモア小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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