樅ノ木は残った (下) (新潮文庫)

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著者 : 山本周五郎
  • 新潮社 (2003年2月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101134666

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樅ノ木は残った (下) (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 上中下巻を読み終えたのでまとめて感想を書くとする。

    江戸歴史物は似た名前が多く、言葉遣いが独特で、その時代の町の様子を思い描かなければならないことから敬遠していた。現代小説よりはやはり読み進めるのがゆっくりであったが、どんどんと町や屋敷の様子が想像され、なによりも現代とは違う心持ちや人々の動きが目の前に広がって来るようだった。

    伊達藩の家臣船岡館主・原田甲斐は「伊達騒動」の中心人物として史実上に存在する。極悪人の烙印を押され、息子孫も死罪、お家断罪になっている。しかし、山本周五郎は"歴史の反証"から甲斐がなぜそのような事を起こしたのかを構想した。

    作中の甲斐は、家中の様々な事件は酒井雅楽頭が手を引き江戸時代の3大雄藩の一つ・伊達藩を取り潰す計画があると考えた。しかしその重大な秘密が多くの者に知るところとなるとき、情報は歪められ、幕府からは大罪を言い渡されることになる。彼は味方を欺きながらも敵の側についた様に見せかけ、静かに耐えた。取り潰しのキッカケになるような大事にならぬよう。

    甲斐の周りの人間は死んでいった。しかしその者を弁護したり、感情のまま助けたりすることはなく耐え続けた。侍は、自分のためではなく全ては忠義を持つ家のために、その志で秘密を貫いた。

    甲斐は自然を愛する人間だった。優しく微笑し多くは語らない彼の周りにはいつも人が集まってきていた。

    彼の最後の言葉「これは私が乱心した結果です。私の仕業だということをお忘れなきよう」はなんとも悲しい。自分の功績、自分の名誉をたてることが恥ずかしく感じられる。

  • 世に武士の忠義や鮮烈な生き様を語る説話、物語は多い。しかし本作の主人公はそうした苛烈で世間の耳目を引くような忠義のあり方を好まず、別の道を選んだ。人は誰かのために死ぬことができるが、それは本当に誰かのためなのか。献身と自己満足の境界、真の忠義のあり方について一石を投じる作品。こみ上げるものがある最後だった。

  • なんとか読了。初めは状況がわからず、次々と登場人物も出てくるし、同じ人物なのに全く呼び名が違ったりして、誰が誰だかわからないまま読み進めた。

    「伊達騒動」という、実際に起こったお家騒動を題材としており、一般的な史実とは全く逆の解釈を示した良作であると
    思う。そもそもあまりこの事件自体に詳しくないため、この点の驚きは幾分少なかったが。

    真実はどうであれ、この物語に出てくる「原田甲斐」は、他のどの本にもいないような秀逸な人物であることはまちがいなく、読む価値はある。

  • ワークライフバランスの間逆。己れや家族、友人、親族よりも藩の存続に身を粉にする主人公、原田甲斐。今読んでも充分面白いが、戦後の経済成長期に読んだ世代はより感情移入したのかも。

  • 秀作。
    江戸時代、初期はまだ戦国時代を引きずって、幕府は大きな大名を潰そうとしていたと言う事か。
    史実は知らないが、原田甲斐は、藩を救うため、家族を含めた命をかけた。最後の衝撃的なシーン。大河ドラマになるわけだ。

  • 山本周五郎作品は初読であったが、最後まで一気に読んでしまった。物語の内容はさることながら、文章の表現の独特さ、豊かさに魅了された。
    自らの藩を第一に考え、自分の人生を擲つ姿には、司馬遼太郎作品で長岡藩を舞台にした「峠」に通じるものがあると感じた。

  • スッキリといった結末ではない。人の一生のはかなさを感じさせられた。身は滅んでも、何らかの形で残るものだ。

  • “意地や面目を立てとおすことはいさましい、人の眼にも壮烈にみえるだろう、しかし、侍の本分というものは堪忍や辛抱の中にある… これは侍に限らない、およそ人間の生きかたとはそういうものだ ” 物語そのものは勿論、山本周五郎ならではの、染み込んで来る言葉の濃度。下巻は特に高し。 人としての強さ、その在り方を深く考えさせられる作品でした。

  • ラスト50ページぐらいからの息詰まる様な凄い緊迫感が素晴らしい。

  • 2015年12月6日読了。

  • 史実となっているものを
    別の切り口から見てみたそうで。

    歴史に疎いんで細かいことに触れると
    ウソを述べてしまいそうになるから
    感想だけ。

    すごく自分に素直で、自分に強くて
    頑なで、いかにもお侍さんってイメージの
    原田甲斐。
    逆に彼を囲む弱くて、すぐ徒党を組みたがる
    人たちがいかにも普通の日本人らしく思える。

    ただ、地元の冬山で鹿との対峙場面こそ
    生き死にを描いているように思えました。

  •  鮠だから逃がすのだ。私は鯉が釣りたいのだ。釣りをすれば主が怒って姿をあらわすだろうからね。甲斐が釣り上げた鯉ににらまれて宇乃はおびえた。七十郎が待っていた。一ノ関に呼ばれました、家臣に取立ててやると。ことわりましたがね。必要とあらば好ましからざる人の名を挙げその非行を剔抉するつもりであるからと。益もないことをいう。甲斐の声は沈んだ。

  • 名作と言われている小説だろうか。
    これはおもしろかった。
    上中下3巻一気に読んでしまった。

    主人公の原田甲斐は、Wikipediaなんかを見るとだいぶイメージが違うけど、小説としては、原田甲斐の深謀遠慮が上手に仕上がっていると思う。

  • 史実は分からないが、人の一生は…

  • 大河ドラマの原作

  • 江戸時代の巨大な権力に対して「忍耐」をもって戦った侍の話。
    史実を外側から見るのではなく、その人の内側から歴史を紐解いた作品。

  • 最後は泣かずにはいられない。最初は読むのに大変だけど中巻からは波にのってすいすい読めた。長いから大変そう…なんて思わず、読んでみてください。

  • 原田甲斐と近しい人達が次々死んでいく。そして伊達家を破滅させる最後の準備が整った。しかし、原田甲斐の機転により形勢は一気に逆転し伊達家は守られた。が、雅楽頭の刺客によって原田甲斐らは暗殺された。

    理解できない箇所が何点かあった。最期、原田甲斐が暗殺されたにも関わらず、自分の乱心ということにし、それが伊達家を守る事になるという場面。

    原田甲斐の孤軍奮闘振りは良く分かったが、肝心の伊達家破滅計画の攻守の考え方がよく分からなかった。


    歴史上の出来事や人物を小説化するばあい、私がなにより困難を感ずるのは『史的事実』のなかでどこまで普遍的な『真実』をつかみうるか

  • 耐えて耐え抜いて最期の時まで藩のことを考えて。そこまで我慢できるのは約束か主従か信念か。救いもないのに解放感。よかったです。

  • 最終巻。
    原田甲斐は最後に政治的な賭けにでるが、その結末は予想もつかない展開で終わる。
    特に最終巻はストーリーの展開がテンポよく進み、時を忘れて読み進めることができた。
    原田甲斐は孤独と戦い、自己犠牲を払い、最後は命を賭けて自ら描くシナリオの実現に導く。
    原田甲斐の重厚な男性像、リーダー像に惹きこまれていく。


    以下引用~

    『意地や面目を立てとおすことはいさましい、人の眼にも壮烈にみえるだろう、しかし、侍の本分というものは堪忍や辛抱の中にある、生きられる限り生きてご奉公をすることだ、これは侍に限らない、およそ人間の生きかたとはそういうものが、いつの世でも、しんじつ国家を支えて護立てているのは、こういう堪忍や辛抱、人の眼につかず名もあらわれないところに働いている力なのだ』

    『人は誰でも、他人に理解されないものを持っている。もっとはっきり云えば、人間は決して他の人間に理解されることはないのだ。親と子、良人と妻、どんなに親しい友達にでも、人間はつねに独りだ』

  • 3巻あり、それぞれ400ページ以上あって、長さでけっこう読むのが大変かなと思ったのですが、大変だったのは最初だけですぐにその世界に引き込まれました。
    話は正直言って、明るい話ではないです。伊達藩の逆臣とされてきた原田甲斐が、実は真逆であったとした話です。それも史実から全く離れずに。

    一人で伊達藩のため幕府の陰謀に立ち向かった原田。壮烈な戦いを演じるのではなく、ただひたすらに耐え、辛酸をなめ、最後に伊達藩をひとり守って殉じる。中で書いた原田の考え方、生き抜くことの意味を考えさせられます。

    また本文より
    『意地や面目を立てとおすころはいさましい、人の眼にも壮烈にみえるだろう、しかし、侍の本分というものは堪忍や辛抱の中にある、生きられる限り生きて御奉公をすることだ、これは侍に限らない、およそ人間の生きかたとそういうものだ、いつの世でも、しんじつ国家を支え護立てているのは、こういう堪忍や辛抱、――人の眼にもつかず名もあらわれないところに働いている力なのだ』


    最後はたぶん泣かずに読めないだろうと、いつも電車で本を読むのをやめて、一人で読みました

    一時の感動を与えるだけではない名作だと思います。

  • 流石周五郎不朽の名作。圧巻の五つ星。所 謂“伊達騒動“がモチーフ。この作品の特徴は 歴史の通説である逆臣原田甲斐にスポットを あて伊達騒動の真相を周五郎独自の視点で紐 解いた点にある。歴史小説特有の派手派手し さは鳴りを潜め終始、自分を押し殺し佇むよ うに生きる主人公原田甲斐を描く。強い決意 に隠された深い内面を筆者独自の手法と筆致 で読者に直球にて“心の声“を届ける。樅の木 に託された比喩、溢れんばかりの感動に浸れ ます。

  • 読んだきっかけ:古本屋で安かった(3冊280円)。

    かかった時間:2/27-3/4(6日くらい)

    内容:下巻は、伊達家の境地争いから、原田の乱心まで。

    それでは復習まで、最後のあらすじを、wikiより転載。

    (wiki「伊達騒動」よりあらすじ抜粋・ネタバレあり)

    1671年(寛文11年)3月27日、騒動の裁判を行うため大老の酒井忠清邸に原田甲斐や伊達安芸ら関係者が召喚される。

    原田甲斐はその場で伊達安芸に斬りかかって殺害する。

    だが、原田甲斐も安芸派の柴田外記朝意と斬りあいになった。

    原田甲斐は柴田外記によって斬られ、柴田外記もその日のうちに原田甲斐からの傷が元で死亡した。
    関係者が死亡した事件の事後処理では原田家や兵部派が処罰されるが、伊達家は守られる事となった。

    ---

    この、老中評定は、下巻最後の50ページ、まさにクライマックスです。そこまでが、多少冗長に感じましたが、最後の場面をより心に響かせるには必要だったのでしょう。
    正直なところ、どうして原田がそこまでコソコソと動いたのか、最後まで完全な納得はいかないのですが……。

    何はともあれ、山本周五郎の代表作らしいので、きちんと完読できて、満足です。

  • 男らしさの頂点

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