プールサイド小景・静物 (新潮文庫)

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著者 : 庄野潤三
  • 新潮社 (1965年3月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101139012

プールサイド小景・静物 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 純文学らしい純文学を久しぶりに読んだ。

  • 何気ない日常が、容易に崩壊し得る。「何気ない」状態が保てているのであれば、感謝しなくてはならないという気がする。
    ある家族の日常が、次々にシーンを切り替えて淡々と描写される「静物」という短編は、梶井基次郎の「城のある町にて」に感じが似ていると思った。

  • あなたの好きな作家は?

    そう訊かれたら、わたしは迷うことなく庄野潤三さんと
    佐伯一麦さんの名まえを挙げます。

    庄野文学を端的にあらわす文章を紹介します。

    「ここにこんな谷間があって、日の暮れかかる頃に
    いつまでも子供たちが帰らないで、声ばかり聞えて
    来たことを、先でどんな風に思い出すだろうか」
    ー 小説「夕べの雲」より抜粋

    「夕べの雲」へとつづく、家庭文学の原点「静物」収録

  • 芥川賞シリーズ⑨
    戦後すぐに書かれた作品であるのに、今のリストラ社会を予見させるもので読んでいてドッキとさせれた。15年勤めた会社を自分の責任で首になった夫、その事で始めて夫の生活や家族について何も考えてなかったと気づく妻。
    プール=現実社会の厳しさと、プールサイド=現実社会の厳しさから逃れた場所。プールの中に身を置き泳いでいくことを社会はこの後ずっと求め続けて高度経済成長を成し遂げてきた。
    プールサイドに佇み人々には目もくれることもなく。
    仕事に生き甲斐を見いだすことの一方、そこで生まれる疲れや淀みに気づかないふりをしてきたのではないだろうか。
    社会や家庭の中で人は生きていくうえで表面的には何の波風も立っていないよう振る舞おうとする。個人と組織、個人と個人の間で関係を良好に保っていこうとする。それが疲れを生む。
    この作品は高度成長期を終えた今の家族をテーマにした現代の小説の先駆けではないだろうか。

    作者は2009年9月に亡くなられました。ご冥福をお祈りします。

  • 「プールサイド小景」のみ読了。
    昭和29年発表の作品。1954年。
    専業主婦の妻がいて、小学生の息子が二人いて、会社では課長代理の地位にいた男性が、会社の金を、給料半年分ほどの額使い込んだことがばれて、クビになる。
    何か壮大な悪事を企んでいたとか、やむにやまれぬ大金が必要な事情があったとか、会社に恨みがあったとか、そういうことではない。
    現代なら簡単に「ストレス」という言葉で言い表すようなものが、彼の心を浸食して、こういう結果を生み出したのかもしれない。
    私はそう捉えたが、「ストレス」という言葉は作中使われない。この時代そんな言葉は一般的じゃなかったのかもしれない。だからその名前のないものを作者が描くのだが、それが巧みで、読んでいてゾクッとした。
    (夏休み明けの憂鬱な通勤時間に読んだから、特にそこが心に響いたのかもしれない。大いにありうる。)

  • 「プールサイド小景・静物」庄野潤三さん。1954年前後くらいに発表された短編を集めた本。新潮文庫。



    読書会の課題図書です。
    庄野潤三さんという作家さんは、一度は読んでみようと思いながら何十年も二の足を踏んでいたので、ありがたい機会でした。

    #

    表題作の「プールサイド小景」。プールサイドで子供と泳いでいるサラリーマンのお父さんがいて、傍目には幸せそうに見える。
    なんだけど、実は会社のお金を使いこんでしまって解雇されたばかり。これからどうなる。専業主婦の奥さんにも不安が広がる... で、おしまい。

    「静物」は、静物画のように、そんなに豊かではないサラリーマンの家庭の日常的なあれこれ、きまずさとか、心理とかが、描かれる。で、おしまい。

    他の短編もそうなんですが、O・ヘンリー的な"物語"を期待すると、肩すかしを食らいます。
    感動の涙、とかは無いです。絶対にテレビドラマ化されません。

    でもなんだか、読んでみて、「ああ、こういうのも分かるなあ」と感じました。恐らくこの人は、こういうものしか書けない。だからこういうものしか書かない。
    つげ義春さんの、「私小説的な短編漫画たち」と、やや似ています。ままならない経済生活。「貧しいけれど明るく」なんかぢゃない、生活のストレス。救いの無さとユーモア。一瞬の鮮やかな詩情。「海辺の叙景」「無能の人」「池袋百点会」「隣の女」「散歩の日々」…。大好きでした(でもその後再読する情熱が出ていないのは、幸せなことなのかしらん)。

    (そしてふと思ったけれど、若干成瀬巳喜男映画の息遣いと似ていますね。庄野潤三、つげ義春、成瀬巳喜男。うーん。違う気もしますけれど、興味深い)

    閑話休題それはさておき。
    そういうことの、スケッチみたいなこと。
    そうぢゃないと、きっと物凄く"欺瞞"を感じてしまうんだろうなあ...と思いました。
    「救いが無いやんか。おもろないわ」と突っ込まれたら、その通りなんです。でもそこはそれ、「いや、嘘偽りの、フィクション特製の、かりそめの救いが欲しいのなら、別のものを読んでください」ということなんだと思います(基本的に僕は欲しいです。ある程度は)。

    ぢゃあ、絶望に落とすために書いているのかというとそうではなくて。そういうスケッチの中でしか描けないヒトの生態というか。コトバがずれている気はしますが、そんな中しか味わえない「もののあはれ」というか。ユーモアも。
    そういうスルメ昆布みたいな美味しさ。

    意外とこういうの、刺さるところにはギュッと刺さる。ツボを押されるみたいな、痛い気持ちよさがあると思います。
    そしてそれは、かなり理屈でもなく繊細な細部の積み重ねで出来ていると思います。だから不思議な芸術性?かと思いきや、実は頑固一徹職人仕事、みたいな感じも受ける作風でした。

  • 全体に流れるシンとした空気感が好きで、何回も読み返したくなる。どの短編も、水の張ったプールのような静けさと怖さがある。サラッと読むと、平穏で波のない水面という感じなのだが、よーく注意して読んでみると、底の方に沈んでるドロドロが見えてくる。という不思議な体験だった。特に『静物』が好きだった。読み終わった後、頭の中に残っている中折れ帽子、子供が描いた絵、ドーナツといったモチーフと、タイトルが合わさって、これは一体何の絵かな、、っていう具合に、ぼーっと眺めてしまう。

  • するすると一日で読んでしまった。最初の「舞踏」こんな旦那がいたら即刻離婚だわ、と思うのは今の時代だからか。静物、五人の客が好きだった。

  • まわりからは羨ましいくらい典型的な家族が、実は突如崩壊し明日からどう生きていけばいいのか呆然とする妻の戸惑いと、人生の辛さを妻にも言えなかった夫の孤独。人も生活もこんなにももろい中、皆どうにかやっているんだ。

  • 【本の内容】
    突然解雇されて子供とプールで遊ぶ夫とそれを見つめる妻――ささやかな幸福の脆さを描く芥川賞受賞作「プールサイド小景」等7編。

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