- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101139012
感想・レビュー・書評
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夫婦の微妙な関係を描いた短編集
村上春樹の解説書を読んで読みたくなった一品
本作者は自分を題材にし自分を削りながら物語を書いている。自我ー自己ー外界のバランスを表現している。らしい。
そこまで深く読み込めなかった。
ただ好きな表現が結構有った。
釣りに行くシーンで、釣れる釣れないが問題ではなく、バケツを提げて行くというのが重要なのだ。とか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
再読。家族の日常のスケッチを夫の目で捉えて描いている。何かが足りない、足りない部分を確信をもって敢えて描いていないところに緊張が走る。連れ合いの女性への壊れ物を扱うような距離感、ギリギリの所で踏み外さないように耳をそばだて感覚を澄ませている冷ややかさ。これはやりきれない。共感はできなかったけど、一見平穏な日常に心の闇がそっと介入していく落度に惹き付けられた。時にまやかしながら生きていくのが日常なのだろう。それは否定しきれない。ところどころ子供たちの屈託なさに和んだ。子は鎹、これもまた然り。
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ルノワールの部屋
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たとえば舞踏にみられる巴里祭の情景、プールサイド小景にみられる会社にまつわる小話のような、非常に印象的でその情景が目に浮かぶかのような部分が入っていること。特に素晴らしいと感じたのはやっぱり、「プールサイド小景」と「静物」、それから「5人の男」と「相客」も。ある小話、情景に何かを付託することとそれの挿話の仕方がすごくうまいんだと思う。書き過ぎてもいないし、足りな過ぎるのでもない、絶妙さ。庄野潤三は短編の名手と呼ばれるにふさわしい。それだけに彼の保守的な古臭い女性観がとても残念でした。べつに、作者がどんな思想を持っていようと文学的才能があれば問題はないんだけれども、それでも、ちらり、ちらりと見えるエゴイズムが、すばらしいはずの小説を貶めているように思えてならない。
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村上春樹さん推薦だから
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家族との日常を描く7編。
平凡な日常にかいま見える、脆く不安定な他者との関係を、飾り気のない文章で綴っている。
とりわけ、夫婦の危機を描いた「舞踏」が切なく苦しい一編だった。
浮気をする夫と、自分だけを見つめてくれない悲しさを募らせる妻。
夫が妻に注ぐ視線の冷たさにぞっとする…
自分が幸せを感じている時には、他者の寂しさなんて感じ取れないのだろうか。自分が不幸せだと感じているときには、他人の痛めた心をわかってあげられるのに。いや、それは結局、心から理解しているわけでもないのか。単なる同情なのか。人の心なんていい加減だよなあ。
周りの風景だけが、変わらない。 -
「舞踏」「プールサイド情景」は好きだった。他の作品に関しては、これってどこが面白いの?という感じだった。
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浦野所有
→10/08/29 柴田さんレンタル →返却済
読もう読もうと思っているうちに庄野先生が亡くなり、さらに1年近く経ってから、ようやく読みました。「もっと早くに読んでおけばよかった!」というのが率直な感想。ありふれた日常生活に潜む落とし穴が、リアルに浮き彫りにされていておもしろいです。
7つの短編のなかで一番のお気に入りは、芥川賞を受賞した「プールサイド小景」。会社をクビになったサラリーマンの一家の悲哀が、きわめて淡々と、しかし現実感をもってじわじわと兵糧攻めにあっているかのように描かれています。こんな描写、見たことない!
<本書68ページより>
夫が新しい働き口を見つけることに成功しない限り、家族四人は一緒に暮すことは出来ないことになる。だが、四十を過ぎた女房持ちの男が、会社をクビになって世の中に放り出されたものを、いったいどこに拾って養ってくれるところがあるだろうか。
彼女は思うのだ。つい一週間前には、自分はどんなことを考えながら夕食の支度をしていたのだろうか。それはもうまるで思い出すことも出来ない。 -
「プールサイド小景」はとにかく迫力があって驚く。
後期の庄野潤三から入った自分には、同一人物か?と疑ったほど。
「舞踏」も良かった。話し手が移っていく書き方や、ラストに向けての危うさ。
こういう話をもう少し読んでもいいかも知れないと思ったが、
「静物」を読んだらなんだかホッとした。やっぱりそこは庄野潤三。
一人の作家の色々な面を見ることが出来る、贅沢な一冊。 -
僕にとっては少し難解な小説達(短編集)です。いや、けして話が難しいわけではありませんが、そこに表現されているものをどうとらえていいか、僕のへぼい人生経験や乏しいボキャブラでは語りようがありません。でも、何とも不思議な読後感が伝わってきます。
こういった小説を楽しめるような境地に早く達したいです。
この中では「プールサイド小景」が特に好きです。