僕は一年半ほど前から庄野潤三の作品を読みはじめた。最初はおそるおそる読んでいた庄野さんの作品が今では身体にすっかり馴染んでいる。孫のフーちゃん、山田さん、うさぎのミミリー。庄野さんの作品で度々語られるだれかや思い出の場所を挙げだすともうキリがないが、出てくるたびに「こんにちは」という気持ちになる。知らない人やものだった彼らを庄野さんが何度も語ってくれることで、徐々に愛らしく、親しみのある存在として自分のなかに落ち着いていった。
今僕は人生の大事な時期にさしかかり悩んでいる時間が多い。時おり本も読めないくらい心に落ち着きがなくなるときがある。けれども庄野さんの作品を読み出すとそういうざわめきが次第に凪ぐ。昔からの親しい人たちと会えたような、そんな気になり、心が暖まる。
今回は保谷の古本屋さんでたまたま見つけることができた。本当にありがとうございます。