五番町夕霧楼 (新潮文庫 み 7-1)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101141015

感想・レビュー・書評

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  • 清濁の対比が鮮明。しかし夕子への同情が掻き立てられる一方で、櫟田がひねた原因はそこまで踏み込んで描かれず、物足りない気がする。『金閣炎上』を女目線で描いた創作ということなのだろう。
    夕子は最後まで謎な部分を持ったままだった。家族思いでしっかり者の長女かと思いきや、我の強さを隠し持つしたたか者で、死に方もずいぶん身勝手な印象。ここまでの意志の強さがあるなら、もっと他の道も選べたのではなかろうかとつい考えてしまう。
    そんな夕子に裏切られながらもなぜかすごく人の良い女将かつ枝にも違和感が。そういう点では好色爺竹末の存在が一番リアリティがある。

  • 偶然ながら今日は金閣が放火によって焼け落ちた日なのだそうだ。この小説は薄幸の遊女、夕子と金閣寺放火僧との悲恋の物語。
    簡単に言ってしまえばそうなんだけど、これから想像されるどろどろした暗さがなくて、素直にいい物語を読んだという印象が残る。京都弁も自然でたいへん結構。
    廓で働く女性というのは今の時代難しいのかもしれないが、こういう佳編が現役の文庫に入っていないというのはさみしいね。

    • kamiminaga5363さん
      竹末甚造が夕霧楼夕子への水揚げ金に疑問?。
      水揚げ金弐萬圓は、作者は当時のサラリーマンの1月分の給料としているが、安いと思ったので調べてみた...
      竹末甚造が夕霧楼夕子への水揚げ金に疑問?。
      水揚げ金弐萬圓は、作者は当時のサラリーマンの1月分の給料としているが、安いと思ったので調べてみた。

      1951年(昭和26年)

      大卒初任給(公務員)5.500円 高卒初任給(公務員)3.850円
      牛乳:12円 かけそば:15円 ラーメン:25円 喫茶店(コーヒー):30円
      銭湯:12円 週刊誌:25円 映画館:100円
      新聞購読料:280円 ※11月より朝夕刊セット開始 ※8月まで朝刊のみ配達 100円  9月値上げ 130円


      2021年の大卒初任給は28万円程であるので当時の約50倍。水揚げ金弐萬圓は現在の百万円くらいとなるが、それでも安い。現在の吉原の高級ソープが30万円と聞く。そう思うと大店の主人甚造が渋る額ではないが…。
      2022/01/20
  • 美しい小説だった。
    読後、20歳という年齢がさせた恋だなぁとしみじみとした。
    水上勉さんの小説って好きだなぁ。
    どこか物悲しいのだけれど、そう遠い昔でもない、程度や内容は違っても似たようなことがあったということをよくよく考えさせられる小説。
    後半部分は一気に読み進めた。そのくらい、後半の小説の盛り上がり方が心をわしづかみにされた。

  • 感動した

  •  
    ── 水上 勉《五番町夕霧楼 1962 初版 19660401 新潮文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4101141010
     
    …… 1958年の売春防止法施行まで存在していた京都の五番町遊廓を舞
    台に、家族を養うために丹後からきた少女とその幼馴染である学生僧と
    の悲恋を描いている[1]。1956年に出た三島 由紀夫の『金閣寺』への
    アンサーとして書いた。水上の代表作であり、1950年に起きた金閣寺放
    火事件と水上の実体験が題材になっている。この事件に関して各方面へ
    の取材を重ね、1979年にノンフィクション《金閣炎上》も出版した。
     
    ── 水上 勉《金閣炎上 19790725 新潮社》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/B000J8FLVQ
     
    (20110101)
     
    ── 三島 由紀夫《金閣寺 19560100-1000 新潮 20030501 新潮文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4101050082
    ── 田坂 具隆・監督《五番町夕霧楼 19631101 東映》
     
    ♀佐久間 良子 女優 19390224 東京       /~《湖畔の人/五番町夕霧楼/人生劇場 新・飛車角》
    /19700416 平 幹二朗と挙式/19740727 一男一女(双子)出産/19840528 離婚会見
     
     1965‥‥ 五番町でなく、宮川町の酒場(千種)で出会った。
    (三田 佳子のこと、鈴虫寺のマンドリンなど)
    ♀牧 千草  元女優 1929‥‥ 京都   20111128 82 /籍=奥村 知恵子/浜田 雄史の姉
    ── 吉村 公三郎・監督《偽れる盛装 19510113 大映京都》とんぼ/新藤 兼人・脚本
     
    http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/day?id=87518&pg=20220418
     すれちがった人々
    http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/search?idst=87518&key=%BA%B4%B5%D7%B4%D6+%CE%C9%BB%D2
     
    (20230420)
     

  • 京都弁が美しくも哀しい

  • 京土産の定番である「夕子」の元ネタということで読んでみた。明らかに三島の「金閣寺」を意識して書かれた本。金閣寺を「鳳閣寺」に名前を変えている。放火犯が「夕子」という遊女と幼馴染だったとの設定を挿入することで、三島の作品とはかなり毛色の違う大人のメルヘンに仕上がっている。

  • 昭和の金閣寺放火事件をヒントにした小説。
    ただ、鹿苑寺金閣の名前は鹿園寺鳳閣って名前になっていました。

    なんだか中途半端なムード小説って感じだった。
    ヒロインの夕子さんにもお相手の櫟田(くぬぎだ)ってお坊さんにも共感できませんでした。

    放火僧と同じ京都北部の田舎町出身の貧しい木こりの娘さんが京都で遊女さんになって、めずらしい体(右肩から脇の下にかけて興奮すると赤く浮き出るポツポツがあるとか、しっかりした副乳があるとか…)で60過ぎの西陣帯問屋のおやじをメロメロにするんだけど、実際は田舎で仲が良かった今は鳳閣寺のお坊さんに手紙を出して遊郭へお客として来てもらったりしてて…。

    二人ともキャパが狭そうな、おとなしいけれど気遣いができるような雰囲気でもなく、どよ~んとしたキャラクターで、なんだか不気味なんだよね。
    やることは大胆だけど、芯がないって言うか、あまり後先を考えていないと言うか…。

    三島由紀夫さんの『金閣寺』に比べるとなんでお坊さんが自分のお寺の国宝に放火したのかがよくわからないし、宮尾登美子さんの『陽暉楼』に比べると遊郭のおかみさん等が良い人過ぎて、苦界に身を沈めた女性の苦悩がきれいごとで済んでいるような感じを受けます。

    吉田健一さんの解説は金閣寺放火事件に一切触れておらず、なんだかなぁって感じ。
    本当に中途半端。
    雰囲気的には、森鴎外さんの『山椒大夫』みたいな感じ?

    ドロドロし過ぎてなくて良いのかもしれないけれど、題材の割には軽すぎて、逆に絵空事みたいな物足りないお話でした。
    主人公にもっと魅力があればねぇ…。

  • 期待していなかったが、普通に面白かった。「いい話」っぽくするのはどうかと思うけど。授業で出たので読みました。

  • 娼妓として京都五番町に来ることになった夕子。小さい頃からの吃りで鳳閣寺の小僧となってなお辛いめにあう同郷の正順。恋というより互いの境遇を慰め短い一生を終える。夕子の父、夕霧楼の人々の素朴さ、あたたかさも哀しい。13.11.9

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著者プロフィール

少年時代に禅寺の侍者を体験する。立命館大学文学部中退。戦後、宇野浩二に師事する。1959(昭和34)年『霧と影』を発表し本格的な作家活動に入る。1960年『海の牙』で探偵作家クラブ賞、1961年『雁の寺』で直木賞、1971年『宇野浩二伝』で菊池寛賞、1975年『一休』で谷崎賞、1977年『寺泊』で川端賞、1983年『良寛』で毎日芸術賞を受賞する。『金閣炎上』『ブンナよ、木からおりてこい』『土を喰う日々』など著書多数。2004(平成16)年9月永眠。

「2022年 『精進百撰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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