雁の寺・越前竹人形 (新潮文庫)

  • 197人登録
  • 3.66評価
    • (13)
    • (28)
    • (33)
    • (3)
    • (0)
  • 22レビュー
著者 : 水上勉
  • 新潮社 (1969年3月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101141039

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

雁の寺・越前竹人形 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 2つの収録作ともに元祖マザコン小説と解釈するのが一番しっくりする。

    「雁の寺」は、寺で修行する小坊主・慈念が和尚を殺す完全犯罪を描いた内容。だが、ストーリーの主眼はおそらくここになく、テーマは慈念の復讐と母性への憧憬だと思う。偉そうに仏の道を説きながら寺の奥で愛人の里子と嬌態に耽る慈海和尚の俗物性への復讐、そしていつしか里子に感じた母性への独占欲が犯行動機だろう。これが物語の最後で襖絵の母雁をむしり取って慈念が失踪する描写へとなるわけだが、どうにも犯行トリックが中学生ほどの年端の子どもにこんなことが可能?と思える突拍子もないところがあり、おいおい・・、となかなか物語に入り込めなかった。

    「越前竹人形」は聖母信仰を描いたものと言われているが、女性にとってたまったもんじゃない話だろう。竹細工師の喜助が結婚した相手(芦原遊廓の娼妓・玉枝)は死に別れた母親似の女性で、であるがゆえいつまで経っても妻と床を共にしない。しかし、一度の過ちで玉枝は妊娠、そして流産し、死んでしまう。喜助は玉枝の死後、竹細工の制作を止め、自ら命を絶ってしまう。谷崎潤一郎が本作を激賞したというが、耽美派の作家が好きな人は気に入るのではないだろうか。

  • もう何年も前に冬の京の旅で相国寺瑞春院を訪れたのだけど、その頃は水上勉の「み」の字も知らず「そういう小説があるのか~」程度にお寺の方の解説を聞いていた。今回たまたま知人が最近読んだということで貸してくれたので、ようやく読んでみた。
    なんというか、まず私の中で絵師や禅寺のお坊さんに対して持っていたイメージがガラガラと音を立てて崩れ去った。こんな坊主に法要してもらっても全くありがたくないんですけど!?と思うのだが。
    『雁の寺』は慈念の復讐に水上勉自身の復讐も重ねられているのかな。なんだか不気味で怖い作品だった。水上勉の目には人間がこう見えていたのか。直木賞を取った作品なのに登録者数が少ないので、今はもうあまり読む人がいないのかな。
    『越前竹人形』本物の竹人形を見てみたくなった。玉枝は妻にしたにもかかわらず自分を女として見てくれない喜助に不満だったけど、私には玉枝の気持ちよりも喜助の気持ちの方が理解できるんだなぁ。子どもにとって「母」ってやっぱり特別な存在だもの。玉枝は結果流産したことにホッとして喜助のもとに帰るけど、それってどうなの?玉枝は「嫁」にはなったけどやはり「母」にはなり切れなかったということ?喜助は真相を知らないままというのも、読み手側からするとなんだか愚かで…。でも好きな仕事をして理想の嫁さんをもらったのだから幸せ者と言えなくもない?

  • 「雁の寺」直木賞作品。私小説の部分もあるのだろうか?師匠殺しの動機が わかりにくいが、エディプスコンプレックスの一種なのだろうか

    南獄から慈海に 渡った 雁の絵と里子は同一の存在と考えていいのか。

    鳶のエサ蓄積所は 他に 意味はあるのか。慈念が銃の訓練を嫌がった理由は何か。慈念は 里子を母親と同一視していたのか


    「越前竹人形」喜助が悪い

  • 【本の内容】
    乞食女の捨て子として惨めな日々を送ってきた少年僧の、殺人に至る鬱積した孤独な怨念の凝集を見詰める、直木賞受賞作「雁の寺」。

    美しい妻に母の面影を見出し、母親としての愛情を求める竹細工の愛情「越前竹人形」。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    直木賞受賞作「雁の寺」を含む中篇2編が収められた一冊。

    タイトルからは想像がつきませんでしたが、「雁の寺」はミステリでした。

    もちろん、誰が犯人か!?という事が主筋のものではありませんが、これは確かにミステリ!

    小柄な慈念に一連の「作業」が可能なのかどうかは少し気になりましたが...。

    もう一つの中篇「越前竹人形」の方が、実は気になった作品...。

    男性にとっては都合が良い部分もあるのかもしれませんが、女性としては納得の行かない作品でした。

    妻をどう思っていたか、死の淵で「あんな事を」告白されるなんて、酷過ぎると思いました...。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 美しい日本語を堪能できる一冊です。
    目で奏でる音楽というのでしょうか。
    オルゴールのピンとなる本書を櫛の歯で読み進める私。読み進めるほどに次の頁をめくるのが躊躇されて。一日寝かしてしまいます。
    日本語を堪能できる逸品。

  • 北陸と京都、著者の生きた土地に根ざした物語。「雁の寺」は、「金閣寺炎上」の修行僧を彷彿させる。醜い容姿、貧困、母性への思いが、ある事をきっかけに彼を破滅へと向かわせる。ミステリーの要素もある作品。「越前竹人形」でもコンプレックス、母性がキーワード。しかしこの作品の主人公は強い信念とたぐいまれな竹細工の才能を持ち、少年のように清らかな心で、亡き父の愛人を娶る。いびつな夫婦関係であることで、ある悲劇が起こるが、どこにも悪意がなく切ない。彼女が堕胎を決心したときに出会う船頭との場面は心を打つ。映像が浮かぶ。

  • 書かれたの45年前かあ、ため息が出るほど美しい関西弁と日本語。
    寺の小坊主も、越前の竹の手作り人形が人気になる仕組みもいまや現存しないけれど。

  • 表題作。推理小説として読めばたいしたことはない(もちろんこんなのを「書け」と言われても到底書くことなんてできないけれど)。
    小説としてみれば奥が深い。

    まだ何作かしか読んだことはないけれど、水上勉という人はかなりコンプレックスがあったのかな。見かけに。背が低いとか、頭がでかいとか。なぜかそんな主人公に行きあってしまう。

  • 『賭ける仏教』からの派生で購入したと思います。鴈の寺は『金閣炎上』とのパラレルでもあり、これらは筆者にとっての寺ないし俗物坊主という存在への復讐なのかな、と感じました。描かれない主人公の心情は、それを吐露することがあまりに赤裸々だったからではないかと。越前竹人形は、一転して客観的で史実的な、でもただただ物悲しい物語りで、最後には竹人形が土間に一つ転がっているシーンがイメージできるような仕立てでした。

  • 水上勉さんの有名な作品を読んでみよう、と図書館で借りてみました。明るい話ではなかったですがそれでも。話の筋がどうこうとか、好きとか嫌いとか言う単純な言葉で片付けられる話ではないな、と思いました。

    登場人物たちはけして共感できる人たちではないのですがそれでもその人間くささゆえにひどく身近に感じる場面がふと、あります。人と人のかかわり方なんて昔も今もそれほど変わらないんだろうな。母を思う子の想いはなんと強いんだろう。そんなことを考えさせられました。切ないですが読んでよかったな、と思いました。

  • 男だからこそ書ける男

  • 母はあれどもそこにはおらず

  • 「雁の寺」のモデルとなっている京都の相国寺に行く機会があったので、どうせならば読んでおこうと思って読んだ小説。
    異相の少年僧と、少年僧の師匠の愛妾の物語。といってもロマンスには遠く、少年僧の心中に鬱積していく殺意を、硬質な描写であらわした物語でしょうか。
    雁の母が子に嘴から餌を与えている絵を、じっと見ていた少年僧。読み終えるとき、心中が氷るように寒かったのを覚えています。

  • やはり名作と呼ばれる物は面白いのだなと改めて思わせてくれた本。
    2編とも、物語自体には、激しい起伏は無いのに、どちらも妖艶であり、その景色が目に見えるように美しい。特に雁の寺、雁の襖絵が色鮮やかに、眼前に広がりました。

  • 暗さの中に深い味わいがあり、何度も読み返してしまった。

  • いい。女が哀しい。

  • 内容は平凡。けど水上勉作品全てに共通する官能美がここにも存在する。水上氏のあやつる京言葉は怪しく艶かしく美しい。京言葉で綴られる女達の妄念執念などが白眉。

全22件中 1 - 22件を表示

雁の寺・越前竹人形 (新潮文庫)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

雁の寺・越前竹人形 (新潮文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

雁の寺・越前竹人形 (新潮文庫)のKindle版

ツイートする