雁の寺・越前竹人形 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101141039

感想・レビュー・書評

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  • 水上氏の得意とするしっとり感がただよっていて、あとに引かれるおもいがしました。

  • 映画化作品を通して知った水上勉という作家、そのリストも十分長くなった。発表年が古い順に並べてみると「雁の寺」(1962)、「越前竹人形」(1963)、「飢餓海峡」(1965)、「はなれ瞽女おりん」(1977) といった格好で、映画化された分で言えば4割とまずまずの数字になってきた。

    今回手にとった文庫版はそのうちの二本が楽しめるというお得版。長い間積読状態だったがページを開いてみるとあれよあれよと一気に読み切ってしまった。この原作を読んだ人たちが映画化へ!とひた走った気持ちの方まで感じ取れてしまった。

    「雁の寺」を鑑賞したのは2017年末、Japan Societyでのことであり、「越前竹人形」は2018年4月、MoMAでのことであったのだが、両作とも若尾文子を主演としていたこともありなんとなくどちらも宮川一夫撮影監督が撮った作品だと思いこんでいた。正しくは前者は川島雄三監督によるもので宮川一夫氏は関わっておらず、後者は吉村公三郎監督作品だったという事実。この両監督のことはもっと知ってゆきたい。

    両作とも読み進めながら若尾文子のイメージを打ち消した上で読み進めるのはほぼ不可能だった。当時人気十分でその量産ぶりも名高かった水上勉の作品に、これまた当時の大映を背負って立つ名女優を当ててみたいと制作陣が意気込んだのも納得がゆく。

    心の奥底をかき出す技に長けている水上勉。こうした作品を与えられた俳優陣もさぞ奮闘したことだろう…とつい想いを馳せてしまうのだ。

  • 人間の心の奥底の情念を見た思いがした。

  • 2編とも日本的な美や伝統の中で描かれる物語が谷崎に通ずる印象を受けた。実際谷崎は『越前〜』を高く評価したそうだ。心で深く通じ合った喜助と玉枝に深く感動した。

  • 里子を愛人として囲っている、京都孤峯庵の和尚慈海。
    そこの小僧である13歳の慈念は、和尚から厳しくあたられています。
    里子は慈念に同情し歩み寄りますが・・・。
    ある日、慈海が碁を打ちに出かけて行きましたが、一向に帰っては来ません。
    檀家が亡くなり葬儀を行なわなくてはならなくなりましたが、ついに行方知れずに。
    寺の小僧慈念との関りは?
    直木賞作品『雁の寺』

    福井県武生市の山奥にある寒村竹神部落に住む竹細工師、氏家喜左衛門の後継ぎ喜助。
    父が亡くなって後、喜助のもとへ「芦原の玉枝」と名乗る女性が墓参に訪れてきました。
    女のことが気になった喜助は、芦原温泉街の遊廓で玉枝を見つけます。
    玉枝の部屋には、初めて目にする巧緻な竹人形が飾られていました。
    以来玉枝に惹かれた喜助は幾度かの往来を重ね、その年の夏から二人は同棲を始めます。
    三歳で死に別れた、顔も知らない母を玉枝に重ね合わせ、玉枝に対する錯綜した気持ちを持ちながら生活する喜助。
    二人の奇妙な生活、仕事の合間に作った竹人形が、郷土民芸展への出品をきっかけに、京都へと販路が開かれていきます。
    このことが玉枝の人生を、予期せぬ運命へと変えていきます。
    哀しみを秘めた女性像を描いた『越前竹人形』。
    どちらも水上文学の傑作です。

    高校生の時に読みましたが、あらためて今読んでみると、感慨深いです。
    高校生時代には分からなかったなぁ。

  • 禅寺の小僧と僧の愛人の女、二人の出会いとそれぞれの悲しみを描いた「雁の寺」。越前の雪深い里で竹細工を作る男のもとへやってきた美しい女、清らかな愛の結晶ともいえる竹人形を軸に二人の運命を描いた「越前竹人形」。どちらも水上勉の傑作だ。

  • 水上勉
    京都を舞台にしてもどこか日本海らしい薄暗い空気が漂っている。福井の山奥が舞台なら尚更
    どこかきれいな精神を感じさせる、透明感があり、少し寂しげな

    宇治川の流産、赤子と血を洗い流してくれた宇治川の水。


    雁の寺
    京都 東洞院
    衣笠山

    越前竹人形
    武生市 南条山地 竹神部落
    広瀬村
    芦原三丁目
    中京区姉小路通り室町
    堀川中立売
    伏見中書島

  • 大活字本で読む。竹細工をする田舎の物語であるが、とても描写が繊細で引きこまれた。

  • 純粋な少年の目に映る、性愛に溺れる堕落した僧と愛人。その果てに待つ恐怖(『雁の寺』)。過度に性愛を遠ざける夫と、それに寂しさを覚える妻が迎える悲劇(『越前竹人形』)。溺れても遠ざけても性愛は哀しい。

  • 一見純文学風の作品ながら、作者は推理ものも手掛けていただけに、筋運びが滅法面白く、ページをめくる手が止まらないタイプの小説。掲載2篇の主人公はどちらもやや畸形のハンデを持ち、キャラクターは各々異なるものの、彼らが有する一種のくらさが物語の骨格を成している(ゆえに編者はこの2篇を並べたのだろう)。片方は京都寺院、もう一方は奥深い山村が舞台だが、100年近く前の日本の光景が眼前に展開されるような風景描写の精密さは魅力のひとつ。登場人物達はのちに特異な行動を取ることになるが、小説の世界が確立されているお陰で、一種現実感を伴って読み進められた。

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著者プロフィール

少年時代に禅寺の侍者を体験する。立命館大学文学部中退。戦後、宇野浩二に師事する。1959(昭和34)年『霧と影』を発表し本格的な作家活動に入る。1960年『海の牙』で探偵作家クラブ賞、1961年『雁の寺』で直木賞、1971年『宇野浩二伝』で菊池寛賞、1975年『一休』で谷崎賞、1977年『寺泊』で川端賞、1983年『良寛』で毎日芸術賞を受賞する。『金閣炎上』『ブンナよ、木からおりてこい』『土を喰う日々』など著書多数。2004(平成16)年9月永眠。

「2022年 『精進百撰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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