- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101141039
感想・レビュー・書評
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生き物として潜在的に人間が持っている感情や行動を活字で表現できた作品。
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両物語に共通する、母を知らぬ男の姿。また自身を仮の母の姿として重ねんともがく女たちの姿には肉情が纏わり付き、巧緻な描写と相まって極めて艷やかで情緒的な物語性を生み出している。水上自身の庫裏での経験に裏打ちされた力作。必読。
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作者自身の体験を元にしたとされる禅寺の生活描写はリアリティがあった。
物語としては細かい時間設定や、伏線、登場人物たちの心理描写が読んでいて飽きなかった -
『雁の寺』がミステリで『越前竹人形』が夫婦もの
それぞれある事件における心境小説のおもむき
時代背景は大正から昭和初期で描写もそういう味わい
この作品が書かれた「現代」でも成り立つけれど
ふいんきとしてやや昔のほうが興ありげ
そういう景色を通して心境を表現するのは
もちろん良く出来ているけれど
登場人物たちの心境ではないところの行動に曖昧さを感じる -
やむにやまれずおかれた状況で翻弄される女性。そこにそこはかとない艶っぽさのようなものが漂う。そういう二編だった。若尾文子主演で映画化されているのでそれも併せて見るといいと思う。小説は醸しだす独特の雰囲気があっていい。
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2つの収録作ともに元祖マザコン小説と解釈するのが一番しっくりする。
「雁の寺」は、寺で修行する小坊主・慈念が和尚を殺す完全犯罪を描いた内容。だが、ストーリーの主眼はおそらくここになく、テーマは慈念の復讐と母性への憧憬だと思う。偉そうに仏の道を説きながら寺の奥で愛人の里子と嬌態に耽る慈海和尚の俗物性への復讐、そしていつしか里子に感じた母性への独占欲が犯行動機だろう。これが物語の最後で襖絵の母雁をむしり取って慈念が失踪する描写へとなるわけだが、どうにも犯行トリックが中学生ほどの年端の子どもにこんなことが可能?と思える突拍子もないところがあり、おいおい・・、となかなか物語に入り込めなかった。
「越前竹人形」は聖母信仰を描いたものと言われているが、女性にとってたまったもんじゃない話だろう。竹細工師の喜助が結婚した相手(芦原遊廓の娼妓・玉枝)は死に別れた母親似の女性で、であるがゆえいつまで経っても妻と床を共にしない。しかし、一度の過ちで玉枝は妊娠、そして流産し、死んでしまう。喜助は玉枝の死後、竹細工の制作を止め、自ら命を絶ってしまう。谷崎潤一郎が本作を激賞したというが、耽美派の作家が好きな人は気に入るのではないだろうか。 -
2015.02.01
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【本の内容】
乞食女の捨て子として惨めな日々を送ってきた少年僧の、殺人に至る鬱積した孤独な怨念の凝集を見詰める、直木賞受賞作「雁の寺」。
美しい妻に母の面影を見出し、母親としての愛情を求める竹細工の愛情「越前竹人形」。
[ 目次 ]
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直木賞受賞作「雁の寺」を含む中篇2編が収められた一冊。
タイトルからは想像がつきませんでしたが、「雁の寺」はミステリでした。
もちろん、誰が犯人か!?という事が主筋のものではありませんが、これは確かにミステリ!
小柄な慈念に一連の「作業」が可能なのかどうかは少し気になりましたが...。
もう一つの中篇「越前竹人形」の方が、実は気になった作品...。
男性にとっては都合が良い部分もあるのかもしれませんが、女性としては納得の行かない作品でした。
妻をどう思っていたか、死の淵で「あんな事を」告白されるなんて、酷過ぎると思いました...。
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