原色の街・驟雨 (新潮文庫)

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著者 : 吉行淳之介
  • 新潮社 (1965年10月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101143019

原色の街・驟雨 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 「原色の街」。この題名に惹かれたのはいつ頃だったろうか。
    多分…20歳前後。でもその作品は読んでこなかった。
    永井荷風の『墨東奇譚』はその頃読んだが。

    たぶん娼婦を語るには若すぎたからだと思う。
    今頃のなって読む余裕ができた…と言って
    よいのだろうか。
    ただ、吉行淳之介が無性に読みたい、
    そうは思う。

    映画で『吉原炎上』を観て、ちょっと違う、と思った。
    その理由がP39にあった。

    店主が無理矢理この街に女を縛り付けておく、
    という形は見られなくなった。
    女を楽しませ、店主も儲けさせてもらう、
    これがアメリカ式経営法です、と自称する店主も
    あるように、搾取には違いないが、搾取する量が
    昔にくらべるとずい分少なくなった。
    そして、女たちが、この街の外の場所に
    身を置くことは、比較的容易になった。


    吉行の魅力はそのクールさにあると思う。
    感情にほだされない。
    娼婦はお金で買う。感情を引きづられたくないから
    お金を払う娼婦と関係を持つ。
    少し醒めた、都会的な、矛盾も承知している。
    それが魅力的なんだと思う。

    P284(長谷部日出雄の解説)
    作者はたんなる遊蕩児ではなく、
    まずナイーブといっていいほど
    その謎に取り憑かれた性の探求者として、
    迷宮のような娼婦の街のなかへ入り込んで行った

    これはフィルムを逆回しにした
    恋愛小説です。

    吉行淳之介にとって娼婦の街とは
    肉体という確かなものを手がかりにして、
    精神という不確かなものを探る場であったものと
    おもわれます

  • 吉行淳之介という作家に以前から興味を持っていた。女優・吉行和子と作家・吉行理恵の兄、詩人・吉行エイスケと朝ドラのヒロイン・あぐりさんの息子。それに加えて写真で見る限りダンディーなのに女性蔑視者と言われている。

    表題の「原色の街」や芥川賞受賞作「驟雨」などは書き方が粋だけど内容はスポーツ新聞に載ってるエロ小説と変わらない。
    登場人物が皆利己的で冷たい。それ故読む人にクールな印象を与えているのかもしれない。

  • 『驟雨』
    芥川賞作品だったので読んだ。
    切ないというか何と言うか…もどかしい。
    男女の友情や買春とか頭で関係をわかったつもりでも心におとしこめないような曖昧さがそこには存在する。
    新宿に行きたくなった。

  • 「原色の街」
    男どものだらしない欲望(エゴ)を集める自分自身こそ不潔である
    そう考えるなら、彼女にとって娼婦は最適の職業だろう
    そこであれば、不潔な肉体と潔癖な精神を
    職業的意識において、完全に合致させることができるから
    彼女は性的に不感だった
    しかしあるとき、客の男に焦らされたのがきっかけで
    エクスタシーに目覚めてしまう
    潔癖な精神を離れて、肉体がよろこびを感じるとき
    彼女が娼婦を続ける理由は、半分消失したのだ
    肉体が存在の代価を支払うなら
    それを賄賂に潔癖の目をごまかすことは可能だ
    食っていくだけなら、適当な結婚相手を見繕うのに苦労しない女である
    ところが新たに生じた問題もあって、結婚に思い切ることができない
    その問題とは、情熱だ
    ひそかに彼女は、性感を目覚めさせてくれた男への執着を抱え込む
    それは純粋なロマンであると同時に
    やはり一方的なエゴイズムの恋でもあるわけだ

    「驟雨」
    戦後日本を身体ひとつで生きている娼婦たちに
    自由というものの、ひとつの理想を見いだそうとするのは
    甘いロマンティシズムでしかないだろう
    しかし、ロマンにおいて自らを戦地に駆り立ててきた日本の男たちだ
    なんだかんだ言いつつ、それをどうしても手放せない
    結婚を機に出世していく同僚を横目に見ながら
    自分は娼婦との関係にこだわって、ばかな嫉妬に狂っている
    タイトルの「驟雨」とは、街路樹の葉っぱが病気か何かで
    一気に散っていくさまをそう呼んだものだ
    それは、ロマンによって蝕まれた日常の終わりを予感するものか

    「薔薇販売人」
    実存は本質に先立つ、そう言ったのはサルトルという人で
    これはつまりどういうことかというと
    人間存在の本質を規定するのは行動である、ということなんだ
    早い話、自分が何をすべきか?などと思い悩む前に
    とにかくなんでもいいからやってみろ、といった考え方である
    そのように行動することではじめて、自分というものが
    形づくられていくというわけだ
    そんな感じで薔薇のセールスマンやってみた!という話
    主人公は、薔薇を売りに行った先で
    人間の本質というものをうじうじ追いかけてばかりの男に出会う
    そして互いを軽蔑するために
    女をめぐってむなしい策略を仕掛けあうんだ
    少なくともそれが、彼らの本質というわけなのだった

    「夏の休暇」
    小学五年生の夏休み
    一郎くんは、父親と、その愛人に連れられて大島に向かうのだった
    三原山の火口に登ったりして、まるで心中旅行のようだが
    そういうことではないのである…たぶん
    この父親というのが破天荒というか不安定な人で
    急に笑いだしたり怒りだしたりと、一郎くんの心を振り回す
    大荒れの海に海水浴する父を見ながら一郎は
    軽い怯えと、「死ねばいいのに」的な感情を同時に抱くのであった
    だがそんな父親だ、殺すまでもなく勝手に死ぬだろう
    「死なぬなら死ぬまで待とうホトトギス」
    これぞまさしく、戦後日本男児の生きる知恵というもの

    「漂う部屋」
    しかし日本人の平均寿命はどんどんあがっていくのだった
    かつては不治の病として恐れられた結核も
    戦後には、薬の普及と医術の進歩で、ぐっと完治率が高まった
    ところが、先入観にとらわれた世間の人々はいまだに
    結核の療養所があの世への入り口で
    完治者の手術痕を、まるでケガレのようなものと見る
    まあそれはしかたないことだ
    結核患者たちは、せめて死のタブーを笑いに転化することで
    自分たちのなぐさめにするのだった

  • 「原色の街」の舞台となった場所を訪れたのをきっかけに興味を持ち、はじめて作者の本を読みました。5編からなる短編集。お金で買う割り切った物理的な「肉体」の関係を通して、複雑な「精神」の構造や変化を描いた「原色の街」「驟雨」がとてもよかった。どの話にも共通すると思ったのですが、混沌としたなかで何かを結論づけるようなものではないのに、驚愕させられるような、印象に残るラストの表現の仕方、描き方は素晴らしい。この作者が個人的にすきか嫌いかは別として、凄い作家だなと思いました。

  • BSフジ「原宿ブックカフェ」のコーナー「ブックサロン」で登場。

    ゲストの藤田宜永さんの人生を変えた一冊。

    「高校生の時に、たまたま。あの頃は背伸びがしたいので、
    すごくこうクールで、文章が乾いてて好きになったっていう。始めはね、『吉行淳之介』っていう名前がとても作家らしくてかっこいいなと思って手にとっただけですよ。





    原宿ブックカフェ公式サイト
    http://www.bsfuji.tv/hjbookcafe/index.html
    http://nestle.jp/entertain/bookcafe/

  • 愛することは、この世の中に自分の分身を一つもつことだ。というのは素敵なセリフだと思った。

  • 初期の5つの中・短篇を収録。篇中の「驟雨」は第31回(1954年上半期)芥川賞受賞作。吉行は、「原色の街」で候補になって以来、ほぼ毎回候補に挙がって来て、ここでようやく獲得したのであった。つまり、手練れではあるものの、最後のインパクトには欠けるとの評価だったようだ。また、後年にも『夕暮れまで』を書いていることから、官能小説化のようにも思われがちだが、実質はかなりニヒルでクールな都会派作家である。ここでも娼婦が描かれるが、情交の場面はなく、主人公の山村と娼婦の道子、それぞれのデラシネこそが描かれたのである。

  • 文章が軽やかであり、心の一襞一襞を丁寧に描いていくような印象を持った。

  • 表題作共に娼婦に恋をした男の話。

    恋愛小説だが、描かれる恋愛の過程が違う。
    一般の恋愛小説ならば、まず好きになる感情からセックスに至る過程を描くのが多いが、娼婦の街では逆のパターンから始まる。
    まずセックス。そこに恋愛感情が生じた場合、どのように愛情を証明していくか。身体(性行為)という確かなものから精神という抽象性を探る、あるいは探ることの難しさを描いたのが吉行文学の特徴であり、原色の街、驟雨に共通するテーマである。


    ただもっとエロスや官能性があるか思ったがそうでもなく期待値が高かっただけに、残念。

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原色の街・驟雨 (新潮文庫)の作品紹介

見知らぬ女がやすやすと体を開く奇怪な街。空襲で両親を失いこの街に流れついた女学校出の娼婦あけみと汽船会社の社員元木との交わりをとおし、肉体という確かなものと精神という不確かなものとの相関をさぐった『原色の街』。散文としての処女作『薔薇販売人』、芥川賞受賞の『驟雨』など全5編。性を通じて、人間の生を追究した吉行文学の出発点をつぶさにつたえる初期傑作集。

原色の街・驟雨 (新潮文庫)のKindle版

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