失敗という人生はない―真実についての528の断章 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101146256

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、著者のいろいろな本からさわりの部分だけを集めてきたものであると語っている。
    忙しい人が、限りある時間で読書するということは大変なことだとしみじみと思うようになった。

    気になった言葉は次の通りです。

    ・生命を賭けさせられることと、生命を自発的に賭けることとは、全く別ものである。

    ・人間は常に自分が手にしていない運命の方を明るく考える

    ・しかし、私は、心のどこかで、「この悲しみの世」ではなく、「生きるに値しない世」であるという実感は抜き難かった。

    ・この世は楽しいものだというのは、観念論者が植え付けた根拠のない幻である。

    ・人間の死は、決して一度にやってくるものではない。人間は老いと共に、長い時間をかけて部分的に死に続ける。

    ・心から、という言葉があり、私はどうもその表現をうさんくさいと思った。

    ・愛の定義を私はこういう風に考える。その人のために死ねるか、どうか、ということである。

    ・恋とは客観的な真実ではなく、われわれがどれだけ相手を誤解できるかということだ。

    ・人生は報いられなくていいということを、徹底してわからせてくれるのが信仰なんです。

    ・しかし、アウシュビッツでは、かっとなって殺すことは物理的に不可能であった。そこには、綿密で冷静な計算がなされなければ、ことは運ばない。

    ・人間の行動の動機はすべて、理不尽で愚かなものである。

    ・世の中には自明の理と思われていることで、意外と徹底していない点がたくさんある。

    ・親も先生も教えてくれなくても、あらゆることには、二面性があることを知らなければならない

    ・人間は誰でも、何かを手に入れようと思ったら、その代価を払わなければなりません。

    ・あらゆる仕事に、徹底的に必要なのは情報というものである。

    ・もともと人間は他者を理解不能なのだ。

    ・人を救わなければならない時には、ルールを超える場合が多い。

    ・世界中のほとんどの国が、「勝てる時は軍隊を、負けそうなときは外交を」と考えるのが原則なのである。

    ・政治家の使命は、国家安全の保持である。

    目次は、以下です。

    まえがき

    人生に失敗ということはない
      生きること
      人生に完全はない
      人間は運命を選び取ることができるか
      この悲しみの世に
      死によって人は高められる
      よく死ぬことはよく生きること
      死を意味あらしめるもの

    愛は生命そのものである
      その人のために死ねるか
      愛される資格
      結婚とは、相手の総てをコミで引き受けることである
      夫婦は、自分の未知の部分を相手によって発見する
      許した時だけ人は本当に愛を自分のものとする
      老年は、精神の完成期である

    神は私たちひとりひとりの中にいる
      神は人間を束縛するのではなく、解放する
      信仰は報いられない人生を祝福する
      生命に関することは総て神の仕事である
      祈りの力
      覚えたる罪と覚えざる罪
      この世のすべては神の作品である

    無力からの出発
      強い人、弱い人
      愚かで盲目だから可能性を持つ
      完全な善人もいない。完全な悪人もいない
      悪を認めることによって人間の深さを知る
      断念は、敗北ではない。新たな希望である

    持てる能力を生かす
      足し算の幸福、引き算の不幸
      本当の自由を手にするには
      苦しみが人間をふくよかにする
      貧しさは神からの贈り物である
      与える歓び、損のできる強さ
      昏いからこそ私たちは勉む
      責任をとるのは誰なのか

    私は人々の中で生かされる
      この世で不用な人は一人もいない
      一生はひとと共に始まる
      親は子どもにとって土である
      生活は自分で選びとるもの
      本職と書いてこそ作家、教えてこそ教師である
      人間は国家によって生かされもするし、殺されもする

    曽野綾子の世界 岡宜子

    著作リスト

  • ”曽野綾子さんの数ある著書からの箴言集。「死」「愛」「生」などのテーマごとに集められた言葉のシャワーを浴びている不思議な読書体験!

    読み進めると、自分の波長に合う(気になる)本がいくつかあることが分かった。
    『人びとの中の私』『夫婦、この不思議な関係』『旅立ちの朝に』『この悲しみの世に』etc.
    (今後、曽野作品に触れる際の参考になりそう)

    それはそうと、半分読んだ段階では、「失敗」については特に感じるものがない…(笑)
    これから登場か?

    <キーフレーズ>

    <抜き書き>
    ・おむつを当てた寝たきり老人になっていても、なお人間としての尊厳を失わない人がいる。それはどんなに辛くても感謝を知っている人々である。(略)感謝するという行為は、感謝される相手に喜びを与えるから、力なく病んだ老人の方がまだれっきとして与える側にいるのである。 (p.75)

    ・スポーツの最大の産物は、練習の鬼になり、勝って「なせばなる」などと確信することではない。練習しても練習しても、才能に限度があることを知り、常に自分の前に強者がいて、自分に砂埃をかけて行くことに耐えて、自分を見失わないことなのだろう、と思った。

    ・権利は、自分がすぐ行使するものではない。他人がそれを持つことを承認するためのものである。
     これに対して義務は、相手に要求すべきものではない。それは、誰がやらなかろうと、自分が黙々と遂行すればいいものなのである (人びとの中の私)

    ・私は小心者だからよくわかるのだが、思い切ってみっともなくなれる、ということも、一つの正直ですばらしい才能のあらわれである。

    ・私たちは一人である時より、むしろ集団の中にいる時の方が危険である。一人なら自分を保てても、集団になると、自分を失うのはいともたやすい。一人の場合、自己を保つことは、善であり、美であるが、集団の中では、個人を失わないことは異端と言われる。しかしそんなことはないのである。一人の場合にも大切なことは、集団の中の個人になっても重要である。(p.189)

    <きっかけ>
    ・2017年9月の人間塾 課題図書。”

  • 断章って、こう、入り込みにくいよね・・・。

    ひとつひとつ「良い事言ってるぅ」が延々続いても
    上滑りな言葉、って印象になってくるし、
    「結論を言え、結論を」と言いがちだけど、
    そこに至るまでのプロセスがあってこそ導き出されるわけで・・・

    元々曽野綾子のファンな人が読む本じゃないのかなー

    とか読み始めは思ってたんだけど
    揺ぎ無い芯に貫かれたひとつひとつに結局引き込まれてしまいました(笑)

    「人間万事泣けば(相手より)下、腹を立てれば対等、笑えれば上」

    「人間社会というものはすべて<こみ>なんだよ。<こみ>の美しさだよ。
    オーケストラですよ。ソロじゃないんだ。
    オーケストラだから壮大で豪快でみごとなんだ。」

    「神の汚れた手」は前から読んでみたかったので、今度読んでみようと思う。
    「夫婦、この不思議な関係」も。

  • 人間は生命と同時に魂も生かされなくてはならない。他人は例外を除いて、活かしてくれないと思わねばならないのだから、自分で自分を活かすほかない。
    どんなに凡庸に見えようとも人間の一勝はどれも偉大であることがわかる。
    人間は変わる、ということです。変わりえるということです。
    神は優位にある者のためではなく、苦しむ人、悲しむ人、のために来られたのだから、差別は人のものであって、神のものではないのである。
    神の平安は、むしろこの世の平安の中にこそ輝いて存在する。
    苦しみがないと祈らないから、神は私達に祈りを忘れさせないために、わざと時々苦しみをおあたえになるということを信じています。
    心配とか恐怖というものは、人間が不必要なものをたくさん所有しているときに怒るものだということを私は知りました。

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著者プロフィール

1931年、東京に生まれる。作家。53年、三浦朱門氏と結婚。54年、聖心女子大学英文科卒。同年に「遠来の客たち」で文壇デビュー。主な著作に『誰のために愛するか』『無名碑』『神の汚れた手』『時の止まった赤ん坊』『砂漠、この神の土地』『夜明けの新聞の匂い』『天上の青』『夢に殉ず』『狂王ヘロデ』『哀歌』など多数。79年、ローマ教皇庁よりヴァチカン有功十字勲章を受章。93年、日本芸術院・恩賜賞受賞。95年12月から2005年6月まで日本財団会長。

「2023年 『新装・改訂 一人暮らし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

曽野綾子の作品

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