貧困の光景 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101146447

感想・レビュー・書評

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  • アフリカやブラジルなどの貧困を救済する小さな組織を立ち上げ奮闘している著者が、貧しさの本質、救うことの難しさを懇々と綴っている。
    支援物資をしっかりと届け、適切に運用してもらうことの難しさ、それを解決しないことにはいくら多額の現金や物資が集まっても貧困は解消されない。
    印象的だったのは日本の貧しさについて。日本では世界の貧しい子供たちのためにいらなくなった服や靴を寄付する組織があったりしますよね、でも実際現地に届いている服の荷物をほどいてみると、現地の子供が着られるようなものはほとんど入っていない。どういうことかというと、ピアノの発表会とか親戚の集まりなんかに着せていくちょっと良い子供服みたいなものしか入っていない。ようはヒラヒラのドレスとかそういうの。現地の子供たちはそんなもの着る機会がない。欲しいのはTシャツとかジャージとかだけど、そういうものはほとんど入っていないらしい。寄付した親としては「せっかくこんな高い服買ったのに数回しか着れなかった。捨てるのもったいないから寄付しよう」ぐらいの軽い感じだったのだろう。この想像力の貧しさ。と曽野さんは嘆いていた。

    でも私は基本的に遠くの国の貧しさよりも日本みたいな先進国でも貧しくなってしまう現代的な貧困のほうに興味があるからあまり日本を豊かさの象徴みたいに引き合いに出してほしくはないんだけどね。何かそれとこれとは別という気がするし。

  • 教育を受けてないということは、「1日3回に分けてこの薬を2錠ずつ服用する」ということが理解できず、自宅と病院の距離を人に説明することができない、ということなのだ。

  • ヒリヒリとした現実が押し寄せてくる感じ。汚職を正さないと、貧困からは抜け出せない。ただ汚職がある国でも発展はある程度できる部分はあるので、アフリカとの違いは?と考えこんでしまう。よし、アフリカへ行ってみよう!とならないのが私が真の冒険家ではない所以である。

  • 過去、梁石日『闇の子供たち』を読んですぐこの本を手にとりました。読メで見かけて再読。『願えば望みはかなう♪』とか、『赤ちゃんはあなたを選んで産まれてきた♡』てな♡や☆で飾ったパステルカラーの自己啓発本が噴飯物に思えます。この現実には宗教だって無力。とにかく絶望、絶望、絶望。自分がダメダメなときに開くための常備薬。曽野綾子さん、何かと問題アリな方ですが、行動する老婆、尊敬します。

  •  先進国がアフリカ諸国に援助をする。物と金は国民に行き渡ることはなく、途中で一部の同国民に搾取されることになる。貧困者に自分の時間と愛情を示す活動に携わる、少数のグループの存在に救われる。貧困社会のキリスト教化は歓迎できないが、手段よりも結果を出すことが大事なのである。それほど貧困根は深い。

  • 一緒に寝食をともにしたり、日本で集めた資金のその後の使用使途を確かめるため、自費で現地に行ったりしてみている著者による途上国に関する私見を述べたもの。

    汚職と援助費の私物化。これをどうにかなくせないか。答えはまだ出ない。

    日本も格差格差と騒いでいるが、どうしても世界に目を向けるとまだ恵まれている方だと感じざるを得ない。もちろん、日本にも少なからず困窮者がいることはわかってはいるが。

  • つらつらと途上国の現実が。まさに『貧困の光景』向こうで貧困、飢餓と近いところで働いていた自分にとってはとりたてて目新しい発見はなかった。

  • エマージングマーケットの台頭、今後の動向に話題が向きがちな今日、貧困の真実には以前ほど注目が集まらなくなった面が否めない。しかし、そこには昔から続いてきた抜け出せない貧困の実態がまだまだ存在していることを改めて思い出させてくれる本であった。

  • 「アフリカには、生れてこの方、平和というものをまだ一度も見たことがない人がいるんです。だから平和とはいかなるものかを想像することもできない。人間、見たこともないものは望むことはできないんです。」

    動物に近い小屋に寝ている人たちに尊厳は果たしてあるか。
    彼らには自由もない。移動の方途がないのだから、隣村までもめったに行かない。用事があれば十キロでもニ十キロでも歩いて行く脚力はあるが、十キロ行ってもニ十キロ行っても、そこに別の町や親戚の家があるというわけでもない荒野だとしたら、誰もそんな距離を歩きはしないだろう。移動さえ自由にならない人に、教育や旅行や居住の自由など考えられない。

    教育を受けないのは間違っている、と思うのは、社会構造上の見解の相違である。もちろん受けた方が人生の選択肢が増えるのは明らかだ。ただ彼らは別のことを別の場所で学んでいる。


    -菊とワニ
    -赤線の町にさす朝日

  • 貧困はいつまでたってもなくならないのでは?と感じざるをえなかった。援助すればそれでいい、ではなく援助の仕方も根本的なところから考えていかなければならないと思った

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著者プロフィール

1931年、東京に生まれる。作家。53年、三浦朱門氏と結婚。54年、聖心女子大学英文科卒。同年に「遠来の客たち」で文壇デビュー。主な著作に『誰のために愛するか』『無名碑』『神の汚れた手』『時の止まった赤ん坊』『砂漠、この神の土地』『夜明けの新聞の匂い』『天上の青』『夢に殉ず』『狂王ヘロデ』『哀歌』など多数。79年、ローマ教皇庁よりヴァチカン有功十字勲章を受章。93年、日本芸術院・恩賜賞受賞。95年12月から2005年6月まで日本財団会長。

「2023年 『新装・改訂 一人暮らし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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