風流江戸雀 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101149127

感想・レビュー・書評

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  • 時々思い出したように、杉浦日向子の絵を見たくなる。
    ーそうそう、この風流を、まだ俺はわかるんだぜ
    などと、思いたいのかもしれない。
    カバー裏の彼女の紹介文を見たり、あとがきの日付をみて、この本が月4Pの連載で、4年の月日で完成したことを知る。だとすると、これを描き始めたのは、25歳の頃だということになる。人生の粋も渋も枯も艶もわかったような絵を、どうして彼女は描くことが出来たのか?

    田辺聖子が序文で、
    ーこの本にえらび採られている古川柳は、すべて古川柳の代表作ともいえる佳句である。
    と言っている。
    「仲人を こよみでたたく お茶っぴい」などは、今はない暦やお茶っぴいという単語はあるが、何と無くわかる。「おちゃっぴい へそから出たと 思って居」となると、昔の近所に居た女の子のことを思い出した。
    「細見を みてこいつだと 女房いい」となると、細見(さいけん)が何か、わからぬとお手上げだ。なんと遊女名鑑らしい。江戸にはそんなものまであったわけだ。杉浦日向子の女房は、その名にぎゅうっ‥と爪を立てる。おゝ怖。「火箸にて野暮め野暮めと書いて見せ」などは、言葉はわかるが、そんな状況は、現代では絶滅している。「雨宿り 惜しい娘に 傘が来る」もう絶滅はしているが、気持ちはまだ絶滅してはいない。

    2017年8月16日読了

  • 短編まんが集。古川柳を冒頭と末尾に絡め、それをフックに江戸の町人の生活ぶりを切り抜いていく。おおらかで洒落がある。

  • (2006.08.12読了)(2006.07.09購入)
    先日、初期作品集「ゑひもせす」を読みました。「風流江戸雀」は、1988年文芸春秋漫画賞受賞作品とのことです。単行本は、1987年5月に潮出版社から刊行されています。
    一篇4頁の中に川柳二首をはめ込んで、江戸庶民の生活を生き生きと描き出しています。「ゑひもせす」と同様、結構、艶っぽい話もありますが、上手に描いています。
    川柳を文字だけで読むとどういうことか分かりにくいのが、杉浦さんの描くショートストーリーによってよくわかるようになります。
     花の雨 ねりまのあとに 干大根
    花見に行って、急に雨が降ってくると、若い女性が着物の裾を上げて急ぐ姿の後ろに、お婆さんが続く絵が描いてあります。
     しかられる たびに息子の 年が知れ
    母親が息子をしかっている絵に、「まったくこの子は二十歳にもなって!!」という台詞がついています。
    絵がなくてもわかる川柳もありますが、杉浦さんの絵によって江戸の庶民の姿がよくわかります。楽しみながら、江戸が学べてしまう。

    絵師 杉浦 日向子(本名:鈴木 順子)
    1958年11月30日 東京生まれ
    日本大学芸術学部中退
    1988年 『風流江戸雀』で文芸春秋漫画賞を受賞
    2005年7月22日 下咽頭癌のため死去。46歳。

    ☆関連図書(既読)
    「ゑひもせす」杉浦日向子著、ちくま文庫、1990.07.31

    (「BOOK」データベースより)amazon
    川柳は俗なるものではあるけれど、俗きわまれば雅にいたるもの、何でもない日常の瑣事を詠んで人生の核心を衝くのである。この本にえらび採られている古川柳は、「柳多留」の中でもことさらの佳句で、古川柳の代表作ともいえるであろう。


  • 江戸時代から続く人間のひきこもごも。

    ほのぼのとした日常、恋の歌に嬉しくなる。

    「しかられる たびに息子の 年が知れ」
    「雷を まねて腹がけ やっとさせ」

    「風流江戸ごよみ」や「半七」でも思ったけど、身分の違いや貧富の差が今よりあることで恋愛が一大事になることも多い。

    おおらかな一方で感情表現が激しく男女の派手な喧嘩も「あるある」、まさに江戸の花とされているのがおもしろい。

    「胸ぐらを 取った方から 涙ぐみ」
    「ほれたとは 女のやぶれ かぶれなり」
    「細見を みてこいつだと 女房いい」

    読みやすい漫画での自然な補足でスッと内容が入ったきてとても読みやすかった。

    これがいちばん好き!
    「れていても れぬふりをして れらたがり」

  • 序文「日向子浮世絵」田辺聖子
    Ⅰ 風流江戸雀 12話
    Ⅱ 古川柳つま楊枝 10話
    Ⅲ 古川柳つま楊枝 10話
    Ⅳ 古川柳つま楊枝 11話
    あとがき 杉浦日向子(1987年5月吉日)
    さくいん (86句)
    解説 玉村豊男

    NOTE記録
    https://note.com/nabechoo/n/n8cdba0e69ff3

    構成は、1話各4ページで2句の古川柳に合わせた漫画となっている。江戸時代の庶民の生活が、端的にあらわされてるようで、短いながらも、味わい深い。「風流江戸雀」では、雪見や花見、行水や花火など風流なネタを、1年12話。「古川柳つま楊枝」では、夫婦喧嘩や恋模様、吉原にスネかじりにおちゃっぴい、などなど。31話、多様な庶民のドラマがある。微笑ましかったり、切なかったり、色っぽかったり。情緒溢れる江戸の世界が身近に感じられて、ほっこり。。。

  • 目も耳もたただが口は高くつき

  • 江戸川柳を題材にした漫画。久しぶりに杉浦さんの本を読む。江戸後期、厳しい身分制度の中でも庶民は楽しむことを忘れていない。江戸の雰囲気、時間感覚、男と女の情など、やっぱり著者は伝えるのが巧い!

  • 杉浦日向子さんの江戸風物漫画、ほっこりできます。

  • 古川柳十七文字から浮かびあがる情景を生き生きと描いた作品。中には浮世絵がそのまま動き出したような印象のものもあり,何度読んでも引き込まれる。

  • 「柳多留」の中でも佳句で、古川柳の代表といえるものをマンガ化した本です。
    読んでいると、江戸時代の暮らしぶりや風流を感じます。
    また川柳も、句だけで見ると一読しては分からないものも、絵がある事で「なるほど」と納得して見る事ができます。
    正月から始まり、如月、弥生と続くお話は季節感もあり、まるで歳時記のようだと思いました。

    目も耳もただだが口は高くつき
    (本作より)

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著者プロフィール

杉浦 日向子(すぎうら・ひなこ):1958年、東京生まれ。1980年、「通言室之梅」(「ガロ」)で漫画家としてデビュー。1984年、『合葬』で日本漫画家協会賞優秀賞受賞。1988年、『風流江戸雀』で文藝春秋漫画賞受賞。1993年に漫画家を引退し、江戸風俗研究家、文筆家として活動した。NHK「コメディーお江戸でござる」では解説を担当。主な漫画作品に『百日紅』(上・下)『ゑひもせす』『二つ枕』『YASUJI東京』『百物語』、エッセイ集に『江戸へようこそ』『大江戸観光』『うつくしく、やさしく、おろかなり』『一日江戸人』『杉浦日向子の食・道・楽』『吞々草子』等がある。2005年、没。

「2023年 『風流江戸雀/呑々まんが』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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