ごくらくちんみ (新潮文庫)

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著者 : 杉浦日向子
  • 新潮社 (2006年6月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101149189

ごくらくちんみ (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • レースのように透き通り、黒い目玉と、かそけき背骨が板の中に、ひっそり無数に浮かぶ。ばらばらの方を向き、でも、右往左往ではなく、静謐な諦観さえ感じられる──「たたみいわし」
    ほてる舌の上で、滑らかにスープになってとろけていく。滋味に満ちた海の恵み。喉を震わし、滑り落ちる、透き通る、繊細な涙のような愛撫──「にこごり」
    ひらひら透明な氷頭を噛み締めながら、良く生き、良く死ぬことの難しさを味わう──「ひずなます」

    珍味をテーマに設けての超短篇集。日々月々年々、徐々に変容するだけの消えない悲しみ、死ぬことについて、生きることについて。静かに、でもどこかあっけらかんと語る全68話。

    大人になって、やっとわかる味がある。まだわからないということは、これからわかる楽しみがあるということだ。
    食べ物を考えることは、生きることを考えることなのかも。

  • 短いストーリーでも、少し ホロっとする。いい本。

  • 杉浦日向子さんの遺作だと、本を開いてから知りました。本当に観察力に優れ、それを言葉に置き換える力に優れた方だったと思います。口にしたことのない食材まで、ありありとその味が想像できます。そして組み合わせてあるお酒が絶妙。珍味はあまり得意ではないけれど、試してみたくなるから不思議です。
    添えられているショートストーリーも、人間くささがしっかり描かれていて、滲みました。

  • 梅水晶、なんて名前を考えついたひとは、きっと私と同じように、本と酒が大好きなひとだったのだろう。

  • おさけすきよ
    いざかやもすきだけど
    しいていうなら
    いえのみかな
    ちーずひときれ
    んーおともにオリーブ
    みたいなよいおんなのきもちになれるのです

  • 珍味レポートかと思いきや、珍味がエッセンスになってる短い読み切り小説だった。ものすごく短い時間を切り取ってるんだけど、出てくる人達の背景がしっかりあって、全部長編になり得るくらいの質の高さ。石持浅海の作品にも美味しいものを食べる話があって、それを読んだときにも思った事だけど、「誰と」「どんなときに」「何処で」ってことで食事がどれだけドラマティックになるか。物語の出来の良さが過ぎるので自然に感じるが、よく考えれば珍味であればこその物語。杉浦日向子さんは江戸に詳しい人、という印象が強いが、物語作家として素晴らしいんだなと改めて思った。

  • 【本の内容】
    とっておきのちんみ、美味い酒、愛おしい命。

    「江戸の達人」が現代の女と男に贈る傑作掌編小説集。

    未婚の母を決意したタマヨが食べたいという「たたみいわし」。

    幼なじみの墓参の帰りに居酒屋で味わう「かつおへそ」。

    元放蕩息子のロクさんが慈しみつつ食す「ひょうたん」。

    ほかにも、「青ムロくさや」「からすみ」「ドライトマト」など68種。

    江戸の達人が現代人に贈る、ちんみと酒を入り口にした女と男の物語。

    全編自筆イラスト付き。

    粋でしみじみ味わい深い、著者最後の傑作掌編小説集。

    [ 目次 ]


    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 珍味よりは、お酒に気がいってしまいます。
    銘酒あっての珍味か。

  • かつて「小説新潮」に連載されていた、全部で68篇からなる掌編小説集。すべて表題通り珍味を巡るお話。漫画も絶品だったが、文章もまた絶妙。本当に美味しそうに書いている。例えば「炊きあがったごはんを、吹き冷まして一口。あえぐうれしさ」、「旨みの凝縮。表面に鮒の脂がフロスト状に膜をはる。身はゼラチンのなめらかさ。オレンジの卵はほくほくと粒立ち」といった具合。そして、この本では全編に亘って、食べることだけではなく、生きることの喜びに溢れていた。その日向子さんは、もういない。この本が最後になってしまったのだ。

  • 人生における如何なる瞬間にも、
    旨い酒と旨い肴と、
    言葉があれば、
    喜びも悲しみも全て深い意味となる。



    ある休日、昼酒を飲みながら、
    「はい、プレゼント」と本を差し出してきた綾と私は、
    この本に出てくるような瞬間を、
    いつも2人で酒と肴と共に味わっている。

  • おいしそうな珍味がいっぱい。
    お腹が空くし、お酒が飲みたくなる。
    ちょっと読みたいなっていうときに丁度良い本。
    杉浦さんの文章が心地良い。

  • 短編集。

    それぞれのエピソードにきちんとテーマの料理が絡められています。
    読んでいるととてもおなかが空く本。

  • 連作短編。毎回一品の珍味に事寄せて、大人の人間関係の機微を描き出す。珍味と言えば酒だが、この物語ではあくまでも珍味が主役である。各篇で、冒頭にたたみ掛けるような情景描写、その後は会話中心の展開。最後までストーリーが転がってゆくのに最低限の説明しかしない。何気なくて、でもそれぞれ特別に愛おしい日常を切り取ってみせる。

    巻末にお取り寄せガイド付き。

  • わずか2~3ページの一つの話の中においしい珍味とやさしくって、でも胸にちくっとくる人生のお話。
    何度でも読みたくなる本です。

  • 68種の珍味を題材とし、酒と食と人生を味わい深く語った掌編小説集。
    各話に作者による珍味の挿絵コメント、巻末に取り寄せ案内がついており、ガイド本としても良書。

    しかし最大の魅力はやはりその小説である。2頁強という短い文章の中に珍味の解説と食感や味覚の描写を織り込みつつ、それを食す人々の人生の一場面を切り取って描いている。日常にある様々な感情が珍味の芳醇な味覚と相俟って、人生というのは楽しいことだけでなく苦味や渋みすらも味わい深く感じてこそなのだと思わせる。

    持ち歩きつつ、暇な時に繰り返し読みたくなるような一冊。

  • 呑んべえのための珍味たち。
    甘いのをちょっと…ですぐにフラフラ・真っ赤になるうちには、想像するので精一杯やけど、ほんまに美味しそうな短編に仕上がってる。

    今は亡き北森鴻さんが食べ物を描写する感じに近いかなー。

    からすみ、きんちゃくなす、ふぐしらこ、キャビア、ジュンサイ、きんつば…

    この辺りは、呑めない私にも分かる美味しさなんやけど。
    単なるグルメ本ではなく、男女の仲が透けて見えるから不思議な一冊。

  • 人生の機微に添える、酒と極上の珍味の掌編小説集です。

  • 読む酒肴といった趣の一冊。
    読み終わった今は、目次を見てるだけで唾液がほとばしる。
    ひとつひとつの珍味の味わい、酒との共演、
    文章がもう美味しい。味覚にうったえかけてくる。

    読みながらたまらなくなり、実際酒の封をゆるめる事も何度かあった。
    酒で浮かれた頭に、登場人物達の書かれていない部分が沁みた。

  • 新たな肴を発見できる一杯一編ずつ読みたい短編小説集です。

  • 過去に読んだ本。
    酒の肴をモチーフにした短編集。

    江戸を研究されていた杉浦日向子さんならではの作風。人情が描かれている。

    お腹を壊して食欲どころじゃなかった時に読んで、ずいぶん救われた。

  • 読んでると飲みたくなる、食べたくなる。ジーンとする話や切なくなる話と共にお酒と珍味。ウンチクよりも何よりも、食べる時の描写が素晴らしい。

  • 食案内としても最高だし、酒案内でもいい。
    添えられた短い短い小説がまたいい。
    「深くて濃くて渋くてほろ苦い」(『はまなっとう』より抜粋)人生の妙を感じる。
    あんなに短いお話なのに、何気ない生活のひとコマを描写しているのに。

  • 人生も珍味も、どこか過剰なところがあって、まろやかばっかりじゃないからおいしいのかもと思える一冊。
    人生の様々なシーンで人はお酒を飲むけれど、その良き友が珍味。
    珍味を追えば人生が見える。

    2~5Pの超短編集で、それぞれの話でいろいろな珍味が出てくる。
    それに合わせるお酒もポン酒からスプマンテ、ウニクムという珍しい物まで様々。
    うずらのぴーたんに黒蜜をつけるなんていう食べ方は、
    コレを読むまで思いつかなかった。

    あんきもを口の中で体温と同じ温度にしてぐしゅっと潰して、『まるで自分を食べてるみたい』というところがとてもたまらない。
    マタタビの酢漬けといぬごろし、食べてみたいなあ。

    読むと絶対呑みたくなる!

  • お酒の描写がとっても旨そう。

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未婚の母を決意したタマヨが食べたいという「たたみいわし」。幼なじみの墓参の帰りに居酒屋で味わう「かつおへそ」。元放蕩息子のロクさんが慈しみつつ食す「ひょうたん」。ほかにも、「青ムロくさや」「からすみ」「ドライトマト」など68種。江戸の達人が現代人に贈る、ちんみと酒を入り口にした女と男の物語。全編自筆イラスト付き。粋でしみじみ味わい深い、著者最後の傑作掌編小説集。

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