ごくらくちんみ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101149189

感想・レビュー・書評

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  • かつて「小説新潮」に連載されていた、全部で68篇からなる掌編小説集。すべて表題通り珍味を巡るお話。漫画も絶品だったが、文章もまた絶妙。本当に美味しそうに書いている。例えば「炊きあがったごはんを、吹き冷まして一口。あえぐうれしさ」、「旨みの凝縮。表面に鮒の脂がフロスト状に膜をはる。身はゼラチンのなめらかさ。オレンジの卵はほくほくと粒立ち」といった具合。そして、この本では全編に亘って、食べることだけではなく、生きることの喜びに溢れていた。その日向子さんは、もういない。この本が最後になってしまったのだ。

  • 人生における如何なる瞬間にも、
    旨い酒と旨い肴と、
    言葉があれば、
    喜びも悲しみも全て深い意味となる。



    ある休日、昼酒を飲みながら、
    「はい、プレゼント」と本を差し出してきた綾と私は、
    この本に出てくるような瞬間を、
    いつも2人で酒と肴と共に味わっている。

  • おいしそうな珍味がいっぱい。
    お腹が空くし、お酒が飲みたくなる。
    ちょっと読みたいなっていうときに丁度良い本。
    杉浦さんの文章が心地良い。

  • 短編集。

    それぞれのエピソードにきちんとテーマの料理が絡められています。
    読んでいるととてもおなかが空く本。

  • 連作短編。毎回一品の珍味に事寄せて、大人の人間関係の機微を描き出す。珍味と言えば酒だが、この物語ではあくまでも珍味が主役である。各篇で、冒頭にたたみ掛けるような情景描写、その後は会話中心の展開。最後までストーリーが転がってゆくのに最低限の説明しかしない。何気なくて、でもそれぞれ特別に愛おしい日常を切り取ってみせる。

    巻末にお取り寄せガイド付き。

  • わずか2~3ページの一つの話の中においしい珍味とやさしくって、でも胸にちくっとくる人生のお話。
    何度でも読みたくなる本です。

  • 68種の珍味を題材とし、酒と食と人生を味わい深く語った掌編小説集。
    各話に作者による珍味の挿絵コメント、巻末に取り寄せ案内がついており、ガイド本としても良書。

    しかし最大の魅力はやはりその小説である。2頁強という短い文章の中に珍味の解説と食感や味覚の描写を織り込みつつ、それを食す人々の人生の一場面を切り取って描いている。日常にある様々な感情が珍味の芳醇な味覚と相俟って、人生というのは楽しいことだけでなく苦味や渋みすらも味わい深く感じてこそなのだと思わせる。

    持ち歩きつつ、暇な時に繰り返し読みたくなるような一冊。

  • 呑んべえのための珍味たち。
    甘いのをちょっと…ですぐにフラフラ・真っ赤になるうちには、想像するので精一杯やけど、ほんまに美味しそうな短編に仕上がってる。

    今は亡き北森鴻さんが食べ物を描写する感じに近いかなー。

    からすみ、きんちゃくなす、ふぐしらこ、キャビア、ジュンサイ、きんつば…

    この辺りは、呑めない私にも分かる美味しさなんやけど。
    単なるグルメ本ではなく、男女の仲が透けて見えるから不思議な一冊。

  • 人生の機微に添える、酒と極上の珍味の掌編小説集です。

  • 読む酒肴といった趣の一冊。
    読み終わった今は、目次を見てるだけで唾液がほとばしる。
    ひとつひとつの珍味の味わい、酒との共演、
    文章がもう美味しい。味覚にうったえかけてくる。

    読みながらたまらなくなり、実際酒の封をゆるめる事も何度かあった。
    酒で浮かれた頭に、登場人物達の書かれていない部分が沁みた。

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著者プロフィール

杉浦 日向子(すぎうら・ひなこ):1958年、東京生まれ。1980年、「通言室之梅」(「ガロ」)で漫画家としてデビュー。1984年、『合葬』で日本漫画家協会賞優秀賞受賞。1988年、『風流江戸雀』で文藝春秋漫画賞受賞。1993年に漫画家を引退し、江戸風俗研究家、文筆家として活動した。NHK「コメディーお江戸でござる」では解説を担当。主な漫画作品に『百日紅』(上・下)『ゑひもせす』『二つ枕』『YASUJI東京』『百物語』、エッセイ集に『江戸へようこそ』『大江戸観光』『うつくしく、やさしく、おろかなり』『一日江戸人』『杉浦日向子の食・道・楽』『吞々草子』等がある。2005年、没。

「2023年 『風流江戸雀/呑々まんが』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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