城塞(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101152226

感想・レビュー・書評

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  • レビューは上巻に

  • 戦国絵巻のクライマックス。登場人物が多く、長いのでそれなりに読み進めるのが大変ではあります。あくまで司馬史観ではありますが、大坂の陣で豊臣家を滅亡させたことが徳川三百年の太平の世を作ったことがよくわかります。大阪の地名がたくさん出てくるので、大阪に縁のある方は楽しく読めるかもしれません。

  • 時勢の変化と成り上がりの機会に溢れた時代から、固定化されて揺るぎない支配の時代への通過儀礼としての決戦。
    浮き草のように立ち振る舞う物語上のキーパーソン(歴史上のではなく)小幡勘兵衛の、天下をひっくり返してやろうとする夢想家から、小禄にしがみつこうとする功利主義者への、ふてくされた転換。
    瞬間的な勝勢を得たとしても結局は死に花を咲かせて終わるのみの牢人諸将の悲哀と、最後までろくな対抗戦略を取れなかった豊臣方中枢の無策。

  • 2018/08/19
    家康がひどい。
    大阪城の凄まじい最後に思いを馳せる。

  • 10年ぶりくらいの再読。
    今回は『国盗り物語』『尻啖え孫市』『新史太閤記』『関ヶ原』そして『城塞』と年代順に読み進めたので、前回よりもおもしろく読めた。
    それだけに、読後の寂しさもひとしおであるのだが。

    『関ヶ原』を読んでいるときには、家康のあまりの「狸おやじ」ぶりにはらわたが煮えくりかえる思いだったが、大阪の陣では家康も家康だが大坂方も大阪方なので、大坂城は落るべくして落ちたのだろう。

    長らく見守ってきた戦国時代は、大坂城の落城によって終わりを告げた。
    駆け抜けた後に残ったのは、その焼け跡にあったであろう真っ白な灰や消し炭のような気持ち。
    大坂城に詰め込まれていた多くの願いや想いは、現代に生きる私にとって本当の意味では理解しがたいものなのかもしれない。
    いつか大阪を訪れた際には実物を見て、その大きさを肌で感じたいと思う。

  • 豊臣家の滅亡と戦国時代の終焉を描いた本。家康の嘆きや心配事が会社の会長に思える。いつの時代も老人の悩みは同じなのだろう。淀君さえいなければ豊臣家は復興できたのかもしれなれないと読むほどに思う。そして、自分の子どもは選択できる大人に育てたいと強く思った。真田幸村、後藤又兵衛、かっこよすぎる。これで司馬遼太郎の国とり物語から始まる戦国物は読破できたのではないか。なんか達成感があるな。

  • ストレスがたまる話だったわー

  •  大坂夏の陣。
     ついに、大坂城がおちる。

     敗退を覚悟しながら、それぞれの思いを持って戦う大坂方の武将たちの生きざまがすごかった。戦の初めは作戦で勝つが数で勝てない。後続の部隊がいない大坂方と違って、徳川方は倒れても倒れても、次の部隊が出てくる。まるで使い捨て。
     真田幸村を初めとする勇士たちは、死を覚悟しながらも、家康さえ倒せば情勢が逆転するかもしれないというわずかなのぞみにかけて、死闘をくりひろげる。
     
     戦は武力だけでは決まらない。
     世の流れに真っ向から逆らっても勝つ事はできない。

     どんなに優秀でも環境と折り合う範囲でしか、その力をいかす事はできない。
     家康は微妙な情勢をきめ細かに読み、きめ細かな対応をとった。そして、これまでの生き方やそこで作ってきた流れがあったから、勝利をもぎとる事ができたのだと思う。

     大坂方の滅びた武将たちには、無念さがあったとしても後悔はないと思う。
     それは、覚悟して自分で決めた生き方だから。
     「主体的に生きる」とは、そういう事なのかもしれない。

     徳川方は、情勢をよんで自分を守るためにふるまう武将が多い。それも世を読むという事なのだろう。

     特に世の流れに疎かったのが、大坂の淀殿。そして、淀殿によって世間知らずに育てられた秀頼。

     全編を通して、大坂城はずるずると崩壊していった。
     起点は関ヶ原。ちょこちょこと出てくる石田三成という名が、それを思い出させる。

     秀吉の世の象徴であった強大な城塞がこの世から消えた。
     それはただ城が消えたという事ではない。徳川の世が決定的なものとなった瞬間だった。

  • 城塞(上・中・下巻)と読み終えた。
    歴史は勝者によって作られる。というが、世間で言われているほど秀吉の後継者秀頼は「あほう」では無かったように思われる。
    老獪なタヌキ(家康)の天下取りへ向けた、並々ならぬ思いの強さ。また経験の豊富さによって、全国の大名達は必然的に旧恩を棄てる事となる。人心掌握の術もさることながら、時間軸も含めたマクロの視点で状況分析出来る人物だったのであろう。
    一方、大阪方の面子も急ごしらえとはいえナカナカ個性的かつ強力な人物が豊家のためにと集い、適切な指揮命令系統があれば、歴史は翻った可能性も否めない。
    この翌年に大御所は世を去る事となったと記憶するが、時間的にもギリギリの機会をモノにする。運命をたぐり寄せる大きな力を持つ人物であるが故、現代で神と崇められる存在となり得たのか。
    ヒトの心の弱さともろさ、功利主義的思考がよく見え、現代の処世術でも学ぶ部分は大きくあると感じた作品であった。

著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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