項羽と劉邦(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101152318

感想・レビュー・書評

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  • ――智は大切なものだ。
    項羽は、范増をからかうようにいったことがある。
    ――ただし智というのは事後処理に役立つだけで、勝敗そのものに役立つわけではない。と頭から信じているようであった。
    項羽のこの気力に対する信仰は、彼を教えた項梁からひきついだものでないことは、項梁がむしろ智者の煩わしさを持っていたことでも察せられる。項羽はどうしようもなく項羽そのものであった。項羽の武人としてのすべては天性というほかない。しかもかれのおもしろさは自分の天性に対し、他とくらべてのひるみもうしろめたさも持たず、むしろ楚人一般が鬼神を信ずること甚だしいように、かれ自身、ごく自然に自分の天性の中に鬼神を見ているということであった。見る以上の自然さでそれを信じ、あるいは信じていることすら気づかないほどに項羽が項羽として天地の間に存在しているというぐあいで、范増の人間分類の方法では、こういう人間をどうあつかっていいのか、いっそ人間の範疇の外に置くか、ともかくも戸惑ってしまう。(まあ、小僧なのだ)范増はそのように自分に言いきかせて、項羽との接点を強いて仮設している。(わしがたすけてやらねば、どう仕様もあるまい)

  • 司馬遼太郎の長編の中で特に良かった

  • 後継者育成は困難

  • 司馬さんが書くお話は、読者がひとり物語の中に入り込むのではなくて、淡々と語る司馬遼太郎という語り手の講釈に私たちが耳を傾けている…という感じを受ける。それがイマイチ苦手だったのだけど、なんでだろう。本作はわりとのめり込んで読んでしまう。

    項羽のかっこよさが際立つ上巻だったけど、語り手・司馬遼太郎により、どこか脆さや崩壊の予感が匂わされている。ここから劉邦がかっこよくなってくるとのことなので、楽しみ!今のところ全然かっこよくないぞ劉邦〜

  • 紀元前3世紀末の中国で起こった楚漢戦争が題材。ごろつき同然だった劉邦がいかにして猛将項羽を倒して前漢の初代皇帝になったのか。大勢の登場人物による争いに次ぐ争いが描かれるが、丁寧な記述のおかげで混乱することなく読み進められる。

    上巻では、中国を統一した秦の始皇帝の圧政とその影響、そして始皇帝亡きあとに勃発する反乱の様子が克明に記されている。それにしても、20万人もの兵士を一夜にして穴埋して虐殺するなんて。戦いに負けることの恐ろしさ、非情さに身震いが止まらない。

  • 11月

  • 項羽と劉邦は「宇宙大作戦」のクリンゴン人のイメージ。
    俺だけ?

  • 大阪外国語大学卒業生、『言葉』の説明、それが人々にどのように浸透していったか、どのような思いで人々が口にしたかをとても丁寧に書いています。

    秦の始皇帝からその裏にいた人物、秦を倒そうとした人、それに乗っかろうとした人まで描写も上手く、感情移入したり、好きになったりできる人物が1人はできます。
    私は沛の村の人々が好きでした。
    章邯のこと、それまで好きになれなかったのに、上巻最後の
    「章邯の心をにわかな悲しみが襲い、しばらく少女のように泣いた。」
    で一緒に泣きそうになりました。
    司馬さんの人に対する愛情の表れでしょうか。

    中巻で項羽と劉邦、その周りの人がどのように動くのか、楽しみです。

  • 「自分に仇なす者については、表面は笑顔でつきあっているが、相手の隙を見てひそかに復讐したりした。」

    宦官は人間ではないと考えられた時代。その宦官が陰謀を巡らし、秦を乗っ取ろうとするところから話が始まる。

    項羽、項梁、章邯、劉邦が活躍した。
    劉邦、項羽ともに若い頃から周囲を魅了する力を持ち、それが時の流れとともに磨かれていく。当時の英雄は、流民の食欲を満たせるものであり、それができないとただの人に転落する。

  • 秦の始皇帝没後の混乱から話が始まり、項羽と劉邦という人物を中心に物語が動く。
    中国史はほとんど知らないが、相変わらずの読みやすさ。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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