峠 (上巻) (新潮文庫)

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著者 : 司馬遼太郎
  • 新潮社 (2003年10月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (511ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101152400

峠 (上巻) (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 河井継之助の一生を描く。
    「原理」という単語がよく出てくるが、この「原理」を追求すべく生きたのが継之助。
    なんのために勉学をするのか、なんのために遊学するのか、その目的が非常に明確で、惹きつける。

  • 司馬遼太郎の長編作品は、2012年の1月に読んだ「項羽と劉邦」以来。おおよそ4年ぶりの長編作品として手に取った本書は、期待以上の素晴らしい作品でした。上中下の全3巻。

    本書の主人公は、越後長岡藩牧野家の家臣である河合継之助。「北国は、損だ」としみじみ思う継之助は、類い稀な先見性と並外れた器量の持ち主であります。上巻では、人物としての継之助が描かれる場面がチラホラ。こういう人物描写は、司馬遼太郎作品の大きな魅力のひとつかと。気に留めた描写をいくつか抜粋。

    「継之助は、色のあわい、鳶色の瞳を大きくひらいていった。人間はその現実から一歩離れてこそ物が考えられる。距離が必要である、刺激も必要である。愚人にも賢人にも会わねばならぬ」
    「人間万事、いざ行動しようとすれば、この種の矛盾がむらがるように前後左右にとりかこんでくる。大は天下の事から、小は嫁姑の事にいたるまですべてこの矛盾にみちている。その矛盾に、即決対処できる人間になるのが、おれの学問の道だ」
    「志の高さ低さによって、男子の価値がきまる」「男子の生涯の苦渋というものはその志の高さをいかにまもりぬくかというところにあり、それをまもりぬく工夫は格別なものではなく、日常茶飯の自己規律にある」
    「武士とは、精神の美であるという。しかもその美は置物の美ではなく、骨っぷしのたしかな機能美でなければならない」

    そんな継之助ですが、幕末の大きな奔流には勝る術がなく、ついに押し流されてしまいます。これは、彼が拠点とする越後の国が時代の主流である江戸や京から離れているからかもしれません。しかし、時代に飲まれたとはいえ、彼の魅力が落ちるわけではありません。下僕に自らの棺をつくらせ、庭に火を焚かせ、病床から顔をよじって終夜それを見つめ続けた孤高の精神は、物語の最後に至るまで読者を魅了し続けるのでした。

    さて、本書を読み終えて改めて感じるのは、継之助という人物の捉え難さです。物語の前半では、継之助は既存の考えに縛られず自由闊達に思想をめぐらす人物として描かれています。開明論者であり、「士農工商はやがて崩壊する」、「武士の時代は滅びる」といった発言からも、非常な先見性を感じられます。ところが、越後長岡藩の主導者として藩政を任せられる立場になると、継之助の自由人らしい言動はどこか影を潜めます。そして、結果的に幕府側に立つことになった継之助は、官軍と北越戦争を繰り広げ、そして自藩もろとも滅んでしまう。どうも前半の自由人である継之助と、後半の主導者としての継之助は、同じ人物でありながら矛盾を感じてしまうのです。
    本書解説を借りると、「この矛盾に対して、司馬氏が見出した解答は河井の武士道倫理であった」とのことで、「自由人である河井継之助はいろいろなことを思えても、長岡藩士としての彼は、藩士として振舞わなければならない、そういう立場絶対論といったふうの自己規律、または制約が、河井の場合には非常に強烈だったろうと思うんです」と司馬遼太郎の文章を引用しつつ、解説しています。たびたび、継之助は「立場がひとをつくる」といったような発言をしていましたが、継之助の志を保つ自己規律には、もしかしたら「立場」という要素が含まれていたのかもしれません。そして、藩の主導者という立場となった継之助は、武士道倫理、すなわち侍として生きることに決めたのかもしれません。

    侍の終焉を予期した継之助が、侍として世を去る描写は、決して皮肉なものではなく、「私はこの『峠』において、侍とはなにかということを考えてみたかった」との著者あとがきのとおり、「いかに美しく生きるか」という武士道倫理のあらわれなのでしょう。

  • 幕末の越後長岡藩の藩士・河井継之助の生涯を描いた作品。初、司馬遼太郎!
    おもしろい!!
    幕末の歴史がすごくよく分かる。
    なぜ今まで読まなかったんだろう・・・
    八重の桜、花燃ゆ、篤姫(こちらは小説も)、あさが来たと、幕末〜明治が舞台の作品をいろいろ観て読んで、すっかり幕末ブームで、河井継之助記念館にも行ったのに、なぜ峠を読んでいなかったんだろう!!
    徳川幕府の終焉と明治維新って、日本にとって大きな大きな転機だったということが、今のわたしたちにはよく分かるし、きっと当時の人たちも、渦中にいるときはただただ驚いていたけど数年たって、ああすごいことが起こったんだな・・・と気付いたのだろうけど、事が大きくなる前に、どれだけの人が「こりゃ国の一大事だ」と気付けたのだろうか。自分がどういう立場で何をするべきか。それに気付くことってすごく大切なのだけど・・・それは、勤勉である、正直である、信頼がある、とは全く別の話。
    震災があって、テロがあって、紛争、ミサイル、貧困、さまざまな問題があるいまの日本は、世界は、「渦中」なのかどうか。
    数年後、数十年後、「いま」がどう語られるのか。
    それに気付けているのだろうか。
    私はどうすればいいのだろうか・・・
    とまあ、そこまで大きな問題じゃなくても、
    社会での立場 とか 家庭での立場 とか
    置き換えて考えることは様々できるなあと思った。
    ビジネスや暮らしのハウツー本を読むより歴史の本読んだほうがよっぽど腑に落ちるわー。
    まだ、上ですけど(笑)
    まだ、何も起こってませんけど(笑)
    中も下も楽しみだ・・・

  • 上中下巻読了。越後長岡藩士、河井継之助のお話し。継之助がとても魅力的で読んでいる間は片時も手放せず、あっという間に読める。頭のキレル人はあたたかくて優しい。

  • 17/10/7読了

  • 河井継之助のことを全然知らずに読む。
    薩長土側(クーデター側)を痛快に書いた作品群とは異なり、政権側(但し末端)の視点の本作は、大企業に勤める組織人として感情移入しやすく、大変おもしろい。主人公の顛末を知らないだけに中下を読むのが楽しみ。

  • 特に深いものはないかな。紹介程度。これから何かをして行くだろうなーぐらいの感じ。

  • 久しぶりに痛快な、作品を読んだ。幕末だから、活躍できたともいえるが、先を見る力が尋常ではない。最近の売れ筋の本と比べると凄く楽しめる作品。主人公の継之助を私が、全く知らなかったから、余計楽しめたのだろう。

  • 人間の美しさのひとつは、老いるにつれて自分の過去が美しくみえてくる。
    書物に知識を求めるのではなく、判断力を研ぎ、行動のエネルギーをそこに求める。

    人の世は自分を表現する場なのだ。

    世を動かそうとすれば、人に使われねばならず、人に使われるためには、温厚で謙虚であらねばならぬ。

  • ○陽明学とは、人を狂人にする。つねに人を行動へと駆り立てている。この思想にあっては、つねに自分の主題を燃やしつづけていなければならない。この人間の世で、自分のいのちをどう使用するか、それを考えるのが陽明学的思考法であり、考えにたどりつけばそれを燃やしつづけ、つねに行動し、世の危難をみれば断乎として行動しなければならぬという、つねに激しい電磁性を帯びたおそるべき思想であった。

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