峠(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101152400

感想・レビュー・書評

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  • p.16
    人間はその現実から一歩離れてこそ物が考えられる。距離が必要である、刺戟も必要である。愚人にも賢人にも会わねばならぬ。じっと端座していて物が考えられるなどあれはうそだ

    p.24
    可能不可能を論ぜず、ねばならぬということのみ論ずる

    p.29
    この人間の世で、自分のいのちをどう使用するか、それを考えるのが陽明学的思考法であり、考えにたどりつけばそれをつねに燃やしつづけ、つねに行動し、世の危難をみれば断乎として行動しなければならぬ

    p.176
    視覚の驚愕は、網膜をおどろかせるだけでなく、思想をさえ変化させるものらしい。

    p.193
    歴史や世界はどのような原理でうごいている。自分はこの世にどう存在すればよいか。どう生きればよいか。それを知りたい。知るにはさまざまの古いこと、あたらしいこと、新奇なもの、わが好みに逆くもの、などに身を挺して触れあわねばならぬであろう。

    p.322
    「不遇を憤るような、その程度の未熟さでは、とうてい人物とはいえぬ」

    p.487
    「物事をおこなう場合、十人のうち十人ともそれがいいという答えが出たら、断乎そうすべきです。ちなみに、どの物事でもそこに常に無数の夾雑物がある。失敗者というものはみなその夾雑物を過大に見、夾雑物に手をとられ足をとられ、心まで奪われてついになすべきことをせず、脇道に逸れ、みすみす失落の淵におちてしまう。

    p.497
    が、日本人は未開のころから、山にも谷にも川にも無数の神をもっていた。どの神もそれぞれ真実であったが、そこへ仏教が渡来して尊崇すべき対象がいよいよふえた。さらに儒教がそれにくわわり、両手にあまるほど無数の真実をかかえこみ、べつにそれをふしぎとしなかった。

    大きな出来事はこれからなのに、すでに面白かったです。苛烈な継之助がどう考え、どう行動していくのか。ワクワクが抑えられません。また、期待とともに、あらためて幕末は凄まじい時代だったんだなと感じさせられます。ついつい、抜粋してしまう場面も多くなってしまいました。

  • いやあ、やっぱり司馬遼太郎はいい!
    河井継之助。幕末、雪深い越後長岡藩から一人の藩士が江戸に出府した。

  • トイレで読む本であったので7百ページ弱を読むのに時間がかかった。。。(HPの日記より)
    ※購入したのはこれより旧版
     2002.9.1読了
     売却済み

  • 河井継之助と、山本五十六、田中角栄を生んだ長岡。雪に閉ざされている地からこのような英雄たちがなぜうまれたのでしょうか。雪を見ながら不思議におもいました。

  • 河合継之助が京都所司代になった越後長岡藩主に、ずばずばモノを言うという理由で取り立てられたところで終了。やたら女好きで吉原の小稲という花魁にもてたり、京都の織部という女性の公家にもてたり、横浜の福地源一郎という通詞やら岡山の山田方谷に一目置かれたり、そのくせ口ばっかりながらなぜか幕末という危機状況であるがゆえに身分にあるまじきトントン拍子で出世してしまうというお前は幕末の島耕作かという話しかまだでてきてない。

  • 江戸に出てきて学び舎として、古賀塾を選ぶ時の継之助の心情を表した一節、
    『学問などは、ゆらい、人から教えられるものではない。自分の好きな部分を、自分でやるものだ』
    共感。

  • R1.11.15 読了
    個人的な話で恐縮だが、大学で日本史学を専攻するくらいには歴史は好きなのだが、その割には歴史小説は殆ど読んだことがなく、司馬遼太郎も小学校の図書館にあった漫画版「竜馬がゆく」以来で、小説は初めて読んだ。

    割と読み応えがあるように感じるのに、スラスラ読める感じ
    上手く読ませるなぁという印象

    さて、本書の感想だが、
    主人公継之助の考え方は、自分と正反対で、興味深く思うとともに、彼が江戸幕政300年の中で培われた事なかれ主義について痛烈に批判している様は、事なかれ主義万歳の私個人の生き方についても痛烈に批判させれている様な気がしてハッとさせられる。

    人の世は自分を表現する場なのだ
    なんて言葉も、私個人は思ったこともない。

    信念にのみ基づき前だけを見ている継之助の人柄・生き様は、ある意味でとても眩しく思え、彼が数奇な目で見られながらも人を惹きつける人物として描かれることに納得するとともに、いつの間にか、読者である自分自身も引き込まれているのであった。

    中・下 でどんな展開が訪れるのか、読むのが待ち遠しい


    最後に、継之助の言葉で私が気に入った一文を、開き直りながら引用したい
    「そういう小器量の男に生まれたものは幸福であると言う。自分の一生に疑いももたず、冒険もせず、危険の縁に近づきもせず、ただ分を守り、妻子を愛し、それなりで生涯を過ごす。」

  • 幕末の越後長岡藩の藩士・河井継之助の生涯を描いた作品。初、司馬遼太郎!
    おもしろい!!
    幕末の歴史がすごくよく分かる。
    なぜ今まで読まなかったんだろう・・・
    八重の桜、花燃ゆ、篤姫(こちらは小説も)、あさが来たと、幕末〜明治が舞台の作品をいろいろ観て読んで、すっかり幕末ブームで、河井継之助記念館にも行ったのに、なぜ峠を読んでいなかったんだろう!!
    徳川幕府の終焉と明治維新って、日本にとって大きな大きな転機だったということが、今のわたしたちにはよく分かるし、きっと当時の人たちも、渦中にいるときはただただ驚いていたけど数年たって、ああすごいことが起こったんだな・・・と気付いたのだろうけど、事が大きくなる前に、どれだけの人が「こりゃ国の一大事だ」と気付けたのだろうか。自分がどういう立場で何をするべきか。それに気付くことってすごく大切なのだけど・・・それは、勤勉である、正直である、信頼がある、とは全く別の話。
    震災があって、テロがあって、紛争、ミサイル、貧困、さまざまな問題があるいまの日本は、世界は、「渦中」なのかどうか。
    数年後、数十年後、「いま」がどう語られるのか。
    それに気付けているのだろうか。
    私はどうすればいいのだろうか・・・
    とまあ、そこまで大きな問題じゃなくても、
    社会での立場 とか 家庭での立場 とか
    置き換えて考えることは様々できるなあと思った。
    ビジネスや暮らしのハウツー本を読むより歴史の本読んだほうがよっぽど腑に落ちるわー。
    まだ、上ですけど(笑)
    まだ、何も起こってませんけど(笑)
    中も下も楽しみだ・・・

  • 久しぶりの司馬遼太郎作品。
    河合継之助なる人物を知らなかったが、読みやすい小説であり、次が気になる。

  • 下巻参照

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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