長崎ぶらぶら節 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.86
  • (21)
  • (29)
  • (21)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 222
感想 : 34
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101154244

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 愛八さんの生き様に感動して、読み終わったら泣けてきた。
    古賀先生は本当は愛八さんのことをどう考えていたのだろう。女好きと言われていた古賀先生が愛八さんには手をつけなかったのは、大事に想っていたからだと思いたい。
    後輩の芸妓さんやお雪チを大事に想い続ける優しさ、強さ。花月の富美江への義理堅さ。それがたまに仇となって自分自身を追い詰めてしまうのだけど、愛八さんの生き方はどっしりとして、憧れもする。
    長崎は好きで何回も行ったけど、愛八さんの事は知らなかったから…改めて行きたくなった。

    読んで良かった。

  • 10年くらい前に読んで感動したのですが、あまり内容覚えていなかったので再び感動してしまいました。記憶力悪いと何回も楽しめてとってもラッキー。
    実際に居た愛八(あげはち)という芸者が、実際に吹き込んだ「長崎ぶらぶら節」にイマジネーションを刺激されて書いた作品です。
    この愛八さんが貧しい村から買われていく下りから始まるので、さぞ哀愁を帯びた悲しい物語なのだろうと警戒して読んでいましたが、生き生きと飛び跳ねるように生きている愛八さんの姿と、初めての切ない恋に身を焦がしながらも慎ましい姿が溶け合って、情深い女性像が立体的に浮かび上がります。

    基本美人ではありませんが、歌と三味線の腕と、愛嬌と気風の良さで看板芸者にのし上がって、晩年まで人気が衰えないという伝説の芸者なので収入もそれなりに良いはず。ですが、子供が物を売っている所を見ると見境なく全部買い上げ、相撲の新弟子を見かけると腹いっぱい物を食べさせるので、いつでも財布は素寒貧。それでも心はいつも燃え上がっているような魅力あふれる女性ですが、恋だけはした事がありませんでした。
    そんな時に降って湧いた憧れの男性からの「長崎の古い歌を探すのを手伝ってくれ」という言葉は愛の囁きのように聞こえた事でしょう。この男なんて罪深い。
    彼らが取りつかれたように歌を探す姿は、まるで逢引のようでありながら中身はこれ以上無い位にストイックで、内に熱い愛を秘めた愛八の姿には胸が締め付けられます。もうちょっと思いをかなえてあげればと思うのですが、この男ときたら、女ったらしのはずなのに、長崎史の研究についてだけはマジ本気。このいけず。

    この本は感動とは言いながらも悲しみや、同情で泣くのではなくて、その気高い生き方に涙が止まらなくなる本です。
    是非是非「長崎ぶらぶら節」を聴きながら読んでください。臨場感バツグンです。

  • 昔タイトルに惹かれて中古で買って、部屋に積んでた本。ふと目に留まったので読み始めた。

    舞台は第一次大戦後の長崎。器量は良くないが芸の腕前と心意気が抜群の女主人公愛八を中心に物語が進む。

    作品中の場面場面で、愛八が、古賀十二郎が、キリシタンの人々が、軍人が、自分の想いを歌に乗せて歌う。現代ではあまり見られなくなった文化だが、きっとただ言葉にするよりも何か神秘的なものがあるんじゃないかと思う。不勉強で恥ずかしいが、作者のなかにし礼氏が著名な作詞家であることをあとがきで知り、この素敵な言葉遣いもさもありなんと納得した。

    自分の人生を自分のためにまっすぐに使っている愛八が素敵だった。また愛八の周りの人々とのウェットな関係になにか懐かしさというか憧れを感じた。愛八と古賀の関係、大人の恋愛って感じで沁みた・・・

    なんどもホロリとくるいい小説でした。
    作中のコテコテの長崎弁もあいまって、異世界へのトリップ感を非常に味わえます。異世界でホッとしたい方にお勧めです。

    「おうちの歌は位が高かった。欲も得もスパッと捨てきったような潔さがあった。生きながらすでに死んでいるような軽やかさだ。それでいて投げやりでなく、冷たくなく、血の通った温かさと真面目さ。それに洒落っ気があった。品とはそういうもんたい。」

  • 人と、人の営みの、生と死。その移り変わりを考えさせられる作品でした。

    「この先会うことがあろうとなかろうと、もうなにも起きないしなにも始まらない。人生がいよいよ終わりに向かって走り出したような虚脱感に愛八はつつまれた。」

    物語では、長崎ぶらぶら節を契機に、愛八の人生の最後の灯が燃えることになるのだが、この文章は自分の心に響いた。

    「自分の人生、この先もう何も起きないし、何も始まらない」と悟ることの、絶望感を想像して恐ろしくなった。

    そういう意味で、自分はまだ若く、先があり、希望に満ちている、そのことの有り難さを感じた。もちろん、いつ何時、未来がどうなるかは分からないけれども。

  • とても良いです。
    久しぶりに、染み入る本でした。
    愛八の一途さに感涙です。
    古賀十二郎の学問に対する態度と、それにこたえる愛八。
    これにより長崎ぶらぶら節が復活。
    二人の合作も完成。
    何とも物悲しく、でも、示唆に富む小説でした。
    長崎ぶらぶら節も、聞いてみると、とても良い感じです。

  • きっぷのよさと優しい心根をもつ、長崎丸山の芸者「愛八」の物語。ひそかな恋心を抱く古賀先生と始めた長崎の民謡探しの旅は、3年を経て長崎ぶらぶら節と出会う。一方では、置屋に売られてから病になった、幼いお雪の病の治療にすべてを捧げる献身的な愛情。明治時代の長崎の町や人情が鮮やかに描かれている。最後の場面には涙を誘われる。作詞家らしく言葉遣いも細やかで、情感に溢れた物語。

  • 2014/9/14
    長崎の昔の話なので読みづらいだろうと思って読み始めたが、古さを感じさせない文章には感動した。

    話自体はものすごいドラマチックなわけではないが、愛八の心の美しさや美しい文章に引き込まれるように読んで行った。

    ここまで綺麗な文が書ける著者に出会えてよかった。

  • 第122回直木賞受賞作。
    実在の人物であり、明治時代の長崎丸山芸者愛八の生涯を描いた本。

    長崎の言葉遣いなどは分からないが、情緒あふれる描写や非常にやさしい言葉が使われている事で、愛八のやさしさというか母性が引き出されている印象。

    以前読んだ阿久悠にしてもそうだが、ボキャブラリーの豊富さやチョイスの仕方にはただただ感心、感激する。

    2013.12.14読了

  • 「なかにし礼」って聞いたことあるな~。って思ってたら、
    『北酒場』の作詞した人だったのね~。

    その人が、直木賞よ。
    すごいね~。
    やっぱり作詞家出身ってこともあって、
    この本の読み始めから、引き込まれていったわ。
    ほんと唄を詠んでるような感じっていうの。
    すごくキレイな文体でね、引き込まれていたのよ。

    芸者・愛八と学者の古賀十二朗がすたれた長崎の唄を
    探してあるくお話。

    なんかね~、
    男と女の恋、人生とはどういうものなのか
    本当の優しさとは。。。。
    いろんな意味で教えさせてもらった本でした。

    愛八って言う人は、本当の日本人。
    今では忘れてた本当の日本人粋を思い出させてくれる人。
    こういう芯の強い女になりたかと。。。

    それに、長崎。。。って言う舞台。
    懐かしいな~。
    佐世保にいたころを思い出すわ。
    方言もすんなり頭に入ってくるし、
    地形的にも少しは覚えてるし、、、
    もう一度、長崎の地に足を踏み入れてみたくなったわ。

    いろんな意味で考えさせられる本でした。

    ただね、
    舞台では佐久間良子、映画では吉永小百合、
    TVでは市原悦子でしょ~。
    どれもピンとこないのよね。
    私の「愛八像」って言うのは、もっと違うのよ。
    こういう良い本はメディア化しちゃダメよね。

  • 長崎の地名や方言がなつかしい。

著者プロフィール

1938年旧満州牡丹江市生まれ。立教大学文学部卒業。2000年『長崎ぶらぶら節』で直木賞を受賞。著書に『兄弟』『赤い月』『天皇と日本国憲法』『がんに生きる』『夜の歌』『わが人生に悔いなし』等。

「2020年 『作詩の技法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

なかにし礼の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部みゆき
小池真理子
宮部 みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×