黒田如水 (新潮文庫 よ 3-19)

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  • Amazon.co.jp ・本 (449ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101154695

感想・レビュー・書評

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  • 大河ドラマもあって、誰の官兵衛を読もうかと思いましたが、やはり、吉川英治かと思い手に取りました。期待を裏切らず、面白くどんどん読み進められました。先を見通す先見の明、裏切られる事の日常の世の中で、それでも仁を貫く官兵衛に心の強さ、深さ、広さをほんの少しばかり分けていただいた気がしました。

  • 戦国武将の物語を読むときに思うのは、決して武将の武勇伝=戦争賛美ではないということに気を付けないと読み方を誤ってしまう。
    物語は、戦国時代という自らの力の及ばない歴史の激動に巻き込まれた人間の苦悩であるはずだ。
    だからこそ時代を過ごした人々の運命の変転の中で、どのように生きていけばいいのか・・・という問いかけを、物語の中に見つけなければ著者のの作品にかける思いというものが伝わらなくなってしまい、単なる戦記物に終わってしまうように思う。
    物騒な世の中ではあるが、何とか窓の外に藤の花が見える時代が来ればいいのにと感じました。

  • 大河ドラマが始まる前に購入。
    ドラマが始まってから読み始める。
    平行して読み進めようかと思ったが、
    あまりにも読みやすくてドラマより先に読了。

    個人的には前半の方がスピード感もあって
    読み応えがあった気がする。

    主君のために、
    だれかのために、
    忠義を尽くせる人の
    その心の強さと、潔さと、清らかさは
    どこからやってくるのだろう。

    そこまで付き従わせる主君たる人の
    魅力はどこからくるのだろう。

    現代に命をかけた主従関係は持ち込めないけれど、
    「この人のために」
    と思える人に
    生涯出会える人もいれば
    「なんで私が」
    と思いながら働き続けることもあるのだろう。

    竹中重治の言葉が今は響いた。

    「百年生きても遭い難き名主にお会いし、
    ただ長寿だけしても得難い良友を持ち、
    更には、またなき時世に生を得て、
    すでに三十六歳まで生きたのですから、
    天にたいして不足を思う筋合もありませぬ。」

  • 大河ドラマ化されるとの事でやたらと見かけますが、歴史小説と言えば、という事で吉川英治氏の作品に手を伸ばしました。

    昭和18年の作品とな。
    そう感じさせない作品に驚きつつ、黒田如水の壮絶な生涯に感銘を受けました。

  •  永遠の№2と呼ばれる黒田如水が主人公の物語。登場人物一人一人の心情が細かく描かれており、楽しく読めた。秀吉の如水への信頼感や、人間味あふれる信長の行動と後悔がとっても楽しかった。ただ、如水が秀吉と出逢う所から荒木村重に幽閉され、解放されるまでしか描かれていないのがとっても残念だった。もっと吉川先生の文章で読みたかった。本能寺の変や中国大返しなど面白そうな話題がいっぱいあるのに。

     「三人寄れば文殊の智というが、それは少なくとも一と一とが寄った場合のことで、零と零との会合は百人集まっても零に過ぎない。時代の行くての見えない眼ばかりがたとえ千人寄ってみたところで次の時代を見とおすことは出来ないが、評議となって列座すれば、誰ひとりとして、(それがしは、めくらである)と、いう顔はしていない。そのくせ信念もなければ格別の達見も持ってはいないので、ただ自己をつくろうに詭弁と口舌の才を以てすることになる。従って、評議は物々しくばかりなって、徒らに縺れ、徒らに横道に入り、またいたずらに末梢的にのみ走って、結局、何回評議をかさねても、衆から一の真も生まれず、そしていつまでも埒はあかないという所に陥ちてしまうのだった。」(8ページ)

     この文章は、今の日本の政治家・議会に向けて描かれたものではないか、と思ってしまうぐらい政治における真実を描き出している一節だと思った。国づくりにおいても、戦国時代における身の処遇においても、未来を見据え、決断し、それを実行する事が大切なのであろう。

著者プロフィール

1892年、神奈川県生まれ。1921年、東京毎夕新聞に入社。その後、関東大震災を機に本格的な作家活動に入る。1960年、文化勲章受章。62年、永逝。著書に『宮本武蔵』『新書太閤記』『三国志』など多数。

「2017年 『江戸城心中 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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