上意討ち (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101156095

感想・レビュー・書評

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  • 近藤勇、土方歳三など新選組の短編含む
    ※2010.8.20売却済み

  • 「池波正太郎」の短篇時代小説集『上意討ち』を読みました。

    ここのところ10冊連続で「池波正太郎」作品です。

    -----story-------------
    殿様の尻拭いのために仇討ちを命じられ、どうしても相手を討つ気になれない武士の心情を描いた表題作をはじめ、江戸家老の馬鹿息子のいたずらが招いた悲劇(『刃傷』)、愚かな領主の死後、藩を守るべく奔走する江戸留守居役の苦労話(『疼痛二百両』)など、身分社会ならではの葛藤を描いた傑作短編集。
    剣豪「塚原卜伝」や「近藤勇」、「土方歳三」など新選組を描いた佳篇をも収録。
    -----------------------

    1971年(昭和46年)から1978年(昭和53年)に刊行された短篇集の中から11篇の短篇を選んで再編集した作品です。

     ■激情
     ■上意討ち
     ■恋文
     ■刃傷
     ■雨の杖つき坂
     ■卜伝最後の旅
     ■剣友渡辺のぼり("のぼり"は"日"に"舛")
     ■色
     ■龍尾の剣
     ■疼痛二百両
     ■晩春の夕暮れに
     ■解説 佐藤隆介


    奥御殿に奉公している中老の「お喜和」が、六十七万石の太守の跡継ぎに嫁ぐことになった側妾の娘「信子」のことが口惜しくてならない奥方から、明後日の宴席で「信子」の食膳に毒を盛ること命じられる『激情』、

    上意により「田中源四郎」を探し出して討つことを命ぜられた「森十兵衛」だったが、このことは殿さま自身が無理を仕掛けたところから発展したことから、「十兵衛」は「源四郎」を斬りたいと思っておらず、何とか出会いたくないものだと思っていた… しかし、不思議と「源四郎」と出会ってしまう、そして、五度目の出会いが巡ってくる『上意討ち』、

    音吉を妬む「平次郎」が、「新七」をつかって「おその」から「音吉」への偽の恋文を届けさせ、「音吉」は「おその」との約束の場所に行くが、「おその」は現れない… 軽いいたずらのつもりだったが、途方に暮れている様子を見かねた「新七」が声をかけると、「音吉」は店の金を持ったまま逃げてきたので、帰るにも帰れなくなっており、「新七」は「音吉」が大金を懐にしているのを知り、強欲から「音吉」を殺して逃げてしまう『恋文』、

    「千代」に「辻又五郎」からの恋文が届き、「千代」は「辻又五郎」からの恋文に書かれている通りに、約束の場所に向かうが、そこで「千代」を嘲る笑い声を聞く… その恋文は、江戸家老の長男「田中主馬」のいたずらであることを知った「千代」が、ある決断をする『刃傷』、

    「源七」がある旅の博奕打ちの姿を見て、もしやと思ったのはさすがの勘働きであった… 「源七」と「彦太郎」は4年前に「竹原の喜助」の家に殴り込みをかけており、その時の報復として、「野川の弥市」と「三ツ堀の岩吉」、そして、旅の博奕打ちは「橋羽の万次郎」という助っ人が二人を追っていた。「源七」は、右腕の大きな痣から「万次郎」の素性に気付き、独りで勝負を挑む『雨の杖つき坂』、

    再び甲斐の「武田信玄」を訪れた73歳の「塚原卜伝」は「梶原長門」という剣客と立合うことになるが勝敗は一瞬のうちに決した… この後、しばらく甲斐にいて、川中島での「上杉謙信」との対決を見届けた後、「卜伝」は京に向けて旅立ち、息子のように愛する「足利義輝」と再会する『卜伝最後の旅』、

    「渡辺のぼり」は天然理心流の「近藤勇」に頼まれると、近藤道場に行き試合をすることがしばしばという間柄であったが、その後、「近藤」は京へ向かうことになり、「渡辺のぼり」も主家の九州・大村藩に戻ることになる… そして、「渡辺のぼり」は「桂小五郎」、「坂本竜馬」、「中岡慎太郎」らと交わり始めるが「渡辺のぼり」が京に出ると新選組から狙われる立場となる。「近藤勇」と「渡辺のぼり」の交流を描いた『剣友渡辺のぼり("のぼり"は"日"に"舛")』、

    「土方歳三」は農家に生まれ、商家で奉公したこともあったが、多摩に戻り剣術に没頭するようになった… やがて、「近藤勇」らと京へ向かい、京都守護職の庇護のもと新選組となり、市中取締りに活躍していたが「歳三」が一人で外出し襲われたとき「お房」とう女性と出会う。「歳三」と「お房」邂逅を描いた『色』、

    「永倉新八」は初対面から「藤堂平助」が気に入らなかった… 「新八」は幼いころから悪戯が過ぎ、親を困らせていたが、その「新八」がのめり込んだのは剣術で、それをたよりに生きてきており、「近藤勇」の紹介により「新八」は「藤堂平助」と出会い、やがて「近藤勇」を中心としたグループは新選組になっていく。「永倉新八」の運命を描いた『龍尾の剣』、

    昨年11月に読んだ『新装版 幕末新選組』の元ネタですかね。

    出来の悪い殿さまが突然死んでしまい、跡継ぎはまだ4歳の幼児であることから、この若殿が跡継ぎになれるかどうかが、藩存亡を賭けた事件となっており、金を使って方々に働きかけをしなければならないが、藩には資金がなく、「大原宗兵衛秀望」は頭を悩ましていた… そんな中、旧友の「高木彦四郎」から誘いがあり、久々に会ってみると、かつて二人と関係のあった女の娘が生きており、二人のどちらかが父親の可能性があるという。「大原宗兵衛秀望」が、藩の存亡と資金難、父親問題に頭を悩ますことになる『疼痛二百両』、

    「筒井土岐守忠親」が家来たちとはぐれ、農家の前を歩いていたとき、百姓女の裸体が目につき、色情が抑えきれず百姓女に挑みかかってしまう… このことが渡り中間どもの耳に入り、間男大名だの手ごめ大名だのと揶揄されてしまったうえに、このことが将軍の耳にも入ってしまい、国替えとなってしまう。数年後に、その百姓女と再会した「筒井土岐守忠親」は詫びるつもりだったが、再び血のいろがのぼってきてしまう『晩春の夕暮れに』、


    テーマが多岐にわたり、バラエティに富む作品群だったし、現在に通ずるテーマの作品もあり、面白くてサクサク読めましたね、、、

    印象に残ったのは、『激情』、『上意討ち』、『雨の杖つき坂』の3作品かな… 類似のテーマを扱っていましたが、『恋文』、『刃傷』も面白かったですね。

  • 短編は山本周五郎か藤沢周平だと再認識。周五郎の爽快、周平の情。正太郎の短編には正太郎の味がない。
    最後の「晩春の夕暮れに」は不愉快なだけ。

  • さまざまな時代に生きた人々について、鋭い切り口で描かれた傑作短編集。

  • 「成熟した男と女が、出会いの度に何も彼も忘れて、楽しみ合うのが色事というものだ」

    「男女の心底にひそむものは、言葉や態度に出さずとも『色事』のうちに判然とにじみ出てしまうものだ」

    収蔵の「色」(土方歳三の話)の一節。以前、元カノとの色事の中で「今日はどうしたんだろう?」というほどの時があったが、後から振り返ると結婚をする気のない私から離れ、他の男と結婚することを決めた上での最後の色事があの時だったのだと気づく・・。

    その他にも、表題作以外にも剣豪・塚原卜伝を描いた「卜伝最後の旅」などを収蔵。

  • 全て短編作品を盛り込んだ11の話からなる作品。
    老若男女問わずいろんな人が主人公で
    武士町民農民問わず、新選組まで後味の良い作品ばかりだった。
    池波先生最高です!
    新選組で言うと池波正太郎作品の「幕末新選組」(文春文庫)の永倉新八
    作者は違うけど、
    土方歳三で言うと司馬遼太郎作品の「燃えよ剣 上・下巻」(新潮文庫)
    なんかこのおさらい?のような感じだった。
    身分や性別、生い立ちが違えど
    人生いつどんなタイミングで
    転んだり起き上がったりするのか
    ボーッとしてたらいかんな、と。
    一話一話噛み締めて読んでほしい内容

  • はじめての池波正太郎。
    短編集だからか、「え、このあとどうなったの?!」という終わり方の話が多いように感じた。
    でもそれがいい余韻というか、読み手にいろいろ想像させる余地を残してくれているなと。
    特に「激情」。しょっぱなから?!と驚いた。次の「上意討ち」に進むまでにちょっと時間がかかった。
    他の話も、素直に次に進めないものが多くて、登場人物のその後や最後の台詞の意味なんかをついつい考えてしまう。おもしろかった。

    ビッグネームだけに読むのをずっとためらっていたけど、ほかの作品も読んでみようと思う。

  • 土方歳三や永倉新八を扱った篇もあるが、多くは、室町から江戸に生きた中で、きっといたであろうような、名もない武士、町人を素材に、その哀歓を。

  • 池波正太郎短編傑作集と言っていい作品で11の短編からなっている。なかでも「剣友 渡辺曻」、「色」、「龍尾の剣」は新選組の近藤、土方、永倉らの姿が異なった視野から描かれ楽しめる。

  • THE池波節がきいている作品集。

    読み切るのが…。正直つらかった。


    鬼平・剣客は好きなんだけどなー。前半は名もない武士や武家の小話風。後半は歴史に名を残したあの人やあの人を題材に。 わっちは前半の話群のほうが読みやすかった。新撰組マニアは後半に。といっても局長・土方話デス。

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著者プロフィール

大正十二(一九二三)年一月二十五日、東京市浅草区聖天町生まれ。昭和十(一九三五)年、下谷区西町小学校卒業、株式仲買店勤務。昭和十四年より三年ほど証券取引所にあった剣道場へ通い、初段を得る。旋盤機械工を経て昭和十九年、横須賀海兵団入団。敗戦の翌年、東京都職員として下谷区役所の衛生課に勤務。昭和二十三年、長谷川伸門下に入る。昭和二十五年、片岡豊子と結婚。昭和二十六年、戯曲「鈍牛」を発表し上演。新国劇の脚本と演出を担当する一方、小説も執筆。昭和三十年、転勤先の目黒税務事務所で都庁職員を辞し、作家業に専念。昭和三十五年、『錯乱』で直木三十五賞受賞。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズや『真田太平記』等、数々の小説で人気を博す一方、食や映画、旅に関する著作物も多く上梓した。受賞歴はほか吉川英治文学賞、大谷竹次郎賞、菊池寛賞等。平成二(一九九〇)年五月三日、入院していた東京都千代田区神田和泉町の三井記念病院で死去。小社では同じく単行本未収録のエッセイ集『一升桝の度量』(二〇一一)と初期戯曲集『銀座並木通り』(二〇一三)を刊行している。

「2022年 『人生の滋味 池波正太郎かく語りき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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