江戸開城 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101157092

感想・レビュー・書評

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  • 司馬遼太郎の「幕末」に紹介された、海音寺潮五郎の史伝「江戸開城」。
    解説書のような難解さがあって、一話一話読むのに時間がかかりました。
    しかし、平易に書き換えてはありますが、当時の手紙や日記などが引用されていて、なかなか綺麗な日本語を堪能することだできました。
    「黙視することが出来ず、忌諱を憚らず、罪を恐れず、高明を冒瀆しました。死罪々々。」
    かっこいいですよね。
    勝海舟が、慶喜の処遇について総督府に泣きつく手紙は、圧巻です。
    これが侍かー!と感嘆しました。
    残された伝説や逸話とは違う真相を、著者が細かく解き明かしていくところも面白かったです。
    武蔵の忍、川越や高輪、洗足、また小田原、三島の関所が出てきたりと地名も親近感があって楽しく読めました。
    佐賀藩邸(今の東大)とか、びっくりしますよね。彰義隊のところで出てきました。
    また、文中に「時代のバスに乗り遅れた」や「トルストイの戦争と平和」云々が出てくるところに、現代からのアプローチも感じられました。
    しかし解説書でありました。学術書に近い。お勉強になりました。

  • 「江戸開城」海音寺潮五郎著、新潮文庫、1987.11.25
    318p ¥360 C0193 (2018.10.06読了)(2009.04.25購入)(1990.04.20/4刷)
    9月30日のNHK大河ドラマ『西郷どん』は、「第37回江戸無血開城」の予定だったのですが、台風報道のため放映延期となりました。
    9月30日に放映されていれば、見てから読む、だったのですが、10月7日に延期になりましたので、読んでから見る、になりました。
    この本は、徳川方が鳥羽・伏見の戦いに敗れ、徳川慶喜が大阪から江戸に船で逃げ帰ってしまい、官軍が陸路で江戸に迫ってきているあたりから始まります。終わりは、彰義隊が上野の山に立てこもって、官軍に攻められ、立てこもっていた建物に火をかけて江戸から逃げ出したところで終わっています。
    当時の手紙や当事者の回顧談などをもとにつづっていますので、歴史と小説の中間的な書き方ということになります。
    歴史の教科書や、通史では、数行や数ページでしか書かれない歴史の一場面が、300頁ほどにわたって書かれているので、色んな事があったことがわかります。
    日本語力が不足しているので、手紙や回顧談が十分意味をくみ取れないのが残念です。

    【目次】
    革命の地の祭壇
    札つきの和平主義者勝安房
    官軍先鋒三島に達す
    山岡鉄太郎登場
    パークスの横槍
    西郷・勝の会見
    西郷と勝に対する諸藩兵の不平
    勝とパークス
    開城はあったが
    徳川家の処遇問題
    勝の慶喜よび返し運動
    さまざまな反薩的批判
    彰義隊
    彰義隊討伐その前夜
    彰義隊潰滅
    解説  尾崎秀樹

    ●西郷の手口(10頁)
    声を大にすることによって敵をおそれさせ見方を奮い立たせ、局を結ぶにあたってはうんと寛大慈悲の処置をして懐かせるというのは、西郷の戦さを処置する場合の手口といってよいのである
    ●明治維新(11頁)
    明治維新は王政復古という名で行われたが、実は復古ではなかった。公家に政治能力のないことは明らかである。大化改新から平安朝初期までの王政時代にかえせないことは言うまでもない。だから、名は王政復古でも、実は天皇の下に公家・大名・諸藩臣の優秀分子で合議政治を行おうというのであった。
    ●徳川氏処分について(18頁)
    徳川氏処分についての意見書
    一 よく恭順しているなら、慶喜の処分は、寛大仁恕の思召しをもって、死一等を減ぜられること。
    一 軍門へ伏罪の上、備前へお預けのこと。
    一 城明渡のこと。但し軍艦・鉄砲等を引渡すことは言うまでもない。
    この意見書は、西郷と大久保とが相談して、岩倉の諒解を得たものの写しであった。
    ●勝の信念(38頁)
    勤王や佐幕の争いなどは末の末のもので、国を愛し民を愛することが根本であるというのは、勝の終生かわらない信念であった。
    ●陸軍総裁の目的(50頁)
    彼(勝・陸軍総裁)には三つの目的がある。一つは同胞相争うようなことをして日本を危険に陥れてはならないということ。一つは慶喜の生命の安泰と徳川家の名誉を守ること。もう一つはできるだけ多く徳川家の利益になるように局を結ぶこと。以上の三つである。
    ●蟄居謹慎(56頁)
    二月十二日、慶喜は城を出て、上野寛永寺の塔頭大慈院に入り、蟄居謹慎の生活に入った。
    ●世界並み(135頁)
    幕末・維新頃の一流の志士らは何事においても日本が世界なみでないことを恥じて、肩身せまく思っていた。一流の志士らが幕府の存在を恥じたのも、一国に両主あるのは世間なみでない特殊なことだったからである。慶喜の処分においても、文明国なみの処分法をパークスに教えられたと人々は受け取ったと思ってよい。

    ☆関連図書(既読)
    「西郷どん(上)」林真理子著、角川書店、2017.11.01
    「西郷どん(中)」林真理子著、角川書店、2017.11.01
    「西郷どん(下)」林真理子著、角川書店、2017.11.01
    「話し言葉で読める「西郷南洲遺訓」」長尾剛著、PHP文庫、2005.12.19
    「西郷隆盛『南洲翁遺訓』」先崎彰容著、NHK出版、2018.01.01
    「西郷家の女たち」阿井景子著、文春文庫、1989.08.10
    「西郷と大久保」海音寺潮五郎著、新潮文庫、1973.06.30
    「寺田屋騒動」海音寺潮五郎著、文春文庫、2007.12.10
    「岩倉具視 維新前夜の群像7」大久保利謙著、中公新書、1973.09.25
    「明治天皇を語る」ドナルド・キーン著、新潮新書、2003.04.10
    「花神(上)」司馬遼太郎著、新潮文庫、1976.08.30
    「花神(中)」司馬遼太郎著、新潮文庫、1976.08.30
    「花神(下)」司馬遼太郎著、新潮文庫、1976.08.30
    (2018年10月9日・記)
    (表紙カバーより)
    革命の祭壇に血の犠牲を要求しながら、実際には寛大な処分を考えていた西郷隆盛。徳川慶喜の動揺と優柔不断、幕閣の向背に抗して和平の道をさぐる勝海舟。味方の中に敵をかかえ、敵の中に信ずべきものを信じ、信義と力ともに誤つことなかった両千両役者の息づまる対峙を中心に、幕末動乱の頂点で実現した史上最高の名場面、奇跡の江戸無血開城とその舞台裏を描く巨匠晩年の精華。
    (「BOOK」データベースより)amazon
    革命の名の下に、血の犠牲を要求するため、官軍を率いて江戸に入った西郷隆盛。動揺する徳川慶喜と幕閣の向背に抗し和平の道を模索する勝海舟。両巨頭が対峙した歴史的二日間は、その後の日本を決定づける。幕末動乱の頂点で実現した史上最高の名場面の、千両役者どうしの息詰まるやりとりを巨匠が浮かび上がらせる。奇跡の江戸無血開城とその舞台裏を描く、傑作長編。

  • 借來才發現內容似乎和西鄉隆盛第九卷幾乎相同,不過還是再讀完了一次。慶喜移到水戶謹慎時遇到黨爭,勝一直爭取要他回江戶,作者非常仔細一一列出勝非常執拗的嘆願,讓我想起幕臣方後代的小說對勝都沒啥好感(例如武揚傳),但是對這件事可以執著成這樣,相信他應該不至於是幕臣們懷疑的吃裡扒外吧。此外,江戶城移交,德川家的處置等等理這些大事,都可以在互信和談笑中解決,真的覺得大事業關鍵的時刻還是只有英雄能夠辦到,拘於小節可能會因小失大。處理一件事情的作法可以很多,但是能風馳電掣地、乾淨俐落地圓滿解決,則跟人的氣度與格局有關了,高下立判。此外,海音寺在這卷提出一個很重要的小插曲,就是西鄉去要求英國公使提供醫師,帕克斯拒絕說,文明國家對於降伏者不會再下毒手。這件事或許對幕末維新人士的說服力比想像中大,正如海音寺等人所說,他們深感自己落後於所謂文明國家,因此拼命地想要符合歐美的樣子與規格,這件事情促成了無血開城的結果。要不是最後因為其他藩懷疑並且想反抗薩摩的專權,還有變質的彰義隊(義觀..)腦充血引起戰爭,說不定之後的戰爭不會那麼慘烈,德川家也不會被減封到只有七十萬石了。

  • 勝海舟と西郷、山岡鉄太郎に男惚れする。なかでも勝海舟は傑物。逆に慶喜が小物に思える書き方。
    同時代を生きた新撰組、龍馬、松陰、晋作とは違った、幕末明治を大局で追いかけられる名作。
    知見が拡がってとても面白い。

著者プロフィール

(かいおんじ・ちょうごろう)1901~1977。鹿児島県生まれ。國學院大學卒業後に中学校教諭となるが、1929年に「サンデー毎日」の懸賞小説に応募した「うたかた草紙」が入選、1932年にも「風雲」が入選したことで専業作家となる。1936年「天正女合戦」と「武道伝来記」で直木賞を受賞。戦後は『海と風と虹と』、『天と地と』といった歴史小説と並行して、丹念な史料調査で歴史の真実に迫る史伝の復権にも力を入れ、連作集『武将列伝』、『列藩騒動録』などを発表している。晩年は郷土の英雄の生涯をまとめる大長編史伝『西郷隆盛』に取り組むが、その死で未完となった。

「2021年 『小説集 北条義時』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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