剣客商売 七 隠れ簑 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101157375

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  • 秋山小兵衛のもとに、刀屋の嶋屋が情報をもってくる。愛弟子を殺害した浪人を江戸で見かけたというのだ「春愁」
    四谷の岡っ引き弥七の部下、傘屋の徳次郎は博打場で一人の男に声をかけられる。男は盗賊で相棒を探していた。目指す獲物は鐘ヶ淵に隠宅を構え若い女房と二人で住んでいるというのだ「徳どん、逃げろ」
    秋山大次郎は侍に斬られそうになっていた老僧を助ける。老僧は盲人の浪人の世話をして暮らしていた。逆恨みで老僧を付け狙う侍がいる事に気付いた秋山親子。盲人は仇を探していた「隠れ蓑」
    大次郎は二人目の弟子をとった。田沼家用人の推挙があった笹野新五郎だ。新五郎は旧師の死後は酒食に溺れていたが、大次郎の元で剣士の道を再び見出す「梅雨の柚の花」
    笹野新五郎の放蕩時の相方だった女を殺したのは中津藩士だった。その男は何者かに成敗された。そんな折、小兵衛はある絵師と知り合う「大江戸ゆばり組」
    上野へ参拝に出かけた小兵衛は、誘拐犯から子どもを助ける。子どもは神田の商家の息子だった。事件は、神田近辺を縄張りとする岡っ引きの暗躍があった「越後屋騒ぎ」
    大次郎の同門•吉村弥惣治が決闘することになった。相手は同じく旗本の家臣で、あろう事か主君同士の賭け事の対象になっていた「決闘•髙田の馬場」

    "六十を幾つか過ぎた"という秋山小兵衛は退屈を持て余すのか、様々な事件に関わりをもつ。老境にあるにもかかわらず剣技は益々冴え、鬼神の域に達したかのようだ。息子の大次郎も妻を迎え、かつての朴念仁ではなく、何やら行動面でも父の小兵衛に似てきたような。安定の面白さの第7巻です。

  • ▼引き続き。オモシロイ。
    ・越後屋騒ぎ
    ・大江戸ゆばり組
    ・隠れ蓑
    ・決闘・高田の馬場
    ・春愁
    ・梅雨の柚の花
    ・徳どん、逃げろ

    ▼「徳どん、逃げろ」が印象的。秋山父子の剣術という、まあ言ってみれば圧倒的な暴力でもって解決留飲という話ではなく、言ってれば「愛嬌のある悪党」と「その悪党を騙しつつ惹かれていく岡っ引き」の話。まあ、スピンオフです。
     しかし、鬼平犯科帳もそうですが、「勧善懲悪」の安心感の中で、結局主題としては「犯罪者の色んな角度から描く」ということなんだと思いますので、言ってみれば魅力そのもののような一篇でした。

  • 一筋縄ではいかない人の心、善と悪で触れまた同居している様子の描き方が素晴らしい。笹野新五郎の今後の活躍に期待。「決闘・高田の馬場」このような終わり方があったとは、抜け感が心地よい。

  • 「池波正太郎」の連作短篇時代小説『剣客商売(七) 隠れ簑』を読みました。

    『新装版・梅安針供養 仕掛人・藤枝梅安(四)』、『剣客商売(一) 剣客商売』、『剣客商売(二) 辻斬り』、『剣客商売(三) 陽炎の男』に続き、「池波正太郎」作品です。

    -----story-------------
    老剣客「秋山小兵衛」とその息子「大治郎」が悪に挑む!
    累計2400万部突破の大人気シリーズ。

    盲目の武士をやさしくいたわる托鉢僧――旅の途中で出会った、年老いた二人連れが何故か「秋山大治郎」の心に残った。
    江戸に帰った「大治郎」は、偶然試し斬りされかかった件の老僧を助け、二人が二十八年におよぶ仇討ちの敵同士であることを知る。
    人知をこえたその絆の不思議さを描く『隠れ簑』。
    「小兵衛」が小金持ちの隠居と見られて盗賊に狙われる『徳どん、逃げろ』など、シリーズ第7弾。
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    面白くて、どんどん次が読みたくなる『剣客商売(けんかくしょうばい)』シリーズの第7作… 1976年(昭和51年)に刊行された作品です、、、

    第3作から第7作に飛んでしまったので、いつの間にか「大治郎」と「三冬」が夫婦になっていましたね。

     ■春愁
     ■徳どん、逃げろ
     ■隠れ簑
     ■梅雨の柚の花
     ■大江戸ゆばり組
     ■越後屋騒ぎ
     ■決闘・高田の馬場
     ■解説 常盤新平

    12年前に弟子の「笠井駒太郎」を殺した「後藤角之助」を江戸で見かけたという話を聞いた「小兵衛」が、弟子の仇討ちを果たそうとする… そして、「小兵衛」が12年前の複雑な事件の真相を知ることになる『春愁』、

    四谷の御用聞き「弥七」の手下「傘徳」こと「徳次郎」が中間部屋で博奕をしていたのを見ていた盗っ人の「八郎吾」が、「徳次郎」をしっかりした盗賊であると見込んで、盗みの助けをして欲しいと頼み込み、しかも、盗みに入る先は「小兵衛」の隠宅だと言う… コミカルな展開から始まり、身につまされる結末が印象的な『徳どん、逃げろ』、

    老僧を取り囲んでいる侍たちを「大治郎」は追い払う、その老僧は、一昨年の春、「浅田忠藏」に関わる事件に巻き込まれて遠州・見付宿に行った帰りに盲目の武士を介護士ながら旅をしていた老僧だった… 逆恨みから、再び、老僧と盲目の武士が狙われると予想した「大治郎」と「小兵衛」は、二人を侍たちから守ろうとする『隠れ簑』、

    「田沼家」用人の「生島次郎太夫」からの推挙によって「笹野新五郎」が「大治郎」の新たな弟子となる… この「笹野新五郎」を、ある理由で狙うものがおり、「大治郎」と「小兵衛」が巻き込まれていく『梅雨の柚の花』、

    「小兵衛」は、鰻売りの「又六」から、妾商売をしている「おきん」という女が、新たに旦那を見つけるつもりでいるが、気に入らなければたった一晩で手を切る方法があるという… 「小兵衛」は面白くその話を聞いていたが、その新しい旦那というのが、「小兵衛」も知る「富山治五郎」と知り黙認できなくなる『大江戸ゆばり組』、

    「小兵衛」は、子どもを勾引そうとしている現場に出くわし、曲者から子どもを救い出して親元に届けるが、子どもの祖父である「越後屋半兵衛」は礼にやってこず、このことは内密にしてほしいと番頭が五十両の小判を持って訪ねてくる… 「越後屋」では番頭が川に落ちて死んだり、手代が首を吊ったりという事件が起こっており、「小兵衛」がその秘密を探ろうとする『越後屋騒ぎ』、

    「小兵衛」の弟子「吉村与惣次」が、主「高木筑後守」から「久世帯刀」の家臣「羽賀儀平」との試合を命じられ、しかも、その試合には双方が「徳川家」から賜った家宝の剣を賭けているという… いずれが勝っても双方の家名に傷が付くことを悟った「小兵衛」と「大治郎」が、二人を対決させないために、ある方法を実行する『東海道・見付宿決闘・高田の馬場』、


    本作品も、どの物語も外れがなくて面白かったですけど、特に本作品はコミカルな展開が多く、読みやすかったですね… 印象的だったのは、哀愁漂う結末の『隠れ簑』『徳どん、逃げろ』ですね、、、

    『剣客商売』シリーズ、やめられませんね… 次も本シリーズを読みますよ!

  • 剣客商売の第7弾
    秋山大二郎が三冬と所帯を持ってから以降のお話。
    と言っても父小兵衛と大治郎の縦横無尽な活躍が胸をすくシリーズ。
    もうこれは読むしかないでしょう(^^;;;

  • テレビドラマ版でも好きなエピソードだった「徳どん、逃げろ」と「隠れ蓑」が収録された巻。「徳どん」はドラマ版とタイトルが違うと思っていたら、タイトルの意味が判明する場面で「ああ、こう来るのか……」となった。「隠れ蓑」は武士の世界と人生そのものの二重の難しさを思い知らされながらも救いを持たせているところがやはり良い。

  • 剣客商売 七

    「徳どん、逃げろ」では、小兵衛さんの知り合いの下っ引・傘屋の徳次郎が、盗人の八郎吾に何故か見込まれて一緒に“お盗め”をしようと誘われてしまいます。その、盗みに入るターゲットにされているのが、なんと小兵衛さんの家!・・勿論この事は小兵衛さんに伝えられるのですが、自分の家に盗人が入るというのに何故かウキウキしている小兵衛さんが大物すぎます。
    表題作「隠れ簑」は、お互いをいたわり合いながら生活する老僧と盲目の老武士の話なのですが、この二人の来し方と、最後に明かされる実情があまりに壮絶で言葉を失いました。

  • 春愁 殺害された弟子のこと
    徳どん、逃げろ 徳次郎、小兵衛宅に強盗に入る
    隠れ蓑 老僧と老武士と敵討ち
    梅雨の柚の花 新しい弟子、笹野新五郎
    大江戸ゆばり組 美人局のような
    越後屋騒ぎ 悪徳十手持ち
    決闘・高田の馬場 バカ殿の賭けに振り回される

    徳どん、逃げろがイチオシ。題が出オチ

  • 面白いに尽きる。それぞれの物語の登場人物がつながっていて、最後のオチも痛快で爽快。隠れ蓑はドラマも観てすごく印象がある。繋がり、絆がキーになっていて、考えさせられる部分もあった。

  • 剣客商売7作目。

    タイトルの「隠れ蓑」は、人の心の不思議さを感じた。想像もしなかった絆の形。

    「徳どん、逃げろ」は、徳どんの心情を考えると、辛いお勤めだったよね。。。と思う。
    この結末は、一方では悲しい結末に思えるが、これで良かったのだ。とも思う結末。

    「決闘・髙田の馬場」は、三冬やおはるが楽しげに作業しただろうなー。。。と笑ってしまった。
    この作戦はすごい!

    春愁
    徳どん、逃げろ
    隠れ蓑
    梅雨の柚の花
    大江戸ゆばり組
    越後屋騒ぎ
    決闘・高田の馬場

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著者プロフィール

大正十二(一九二三)年一月二十五日、東京市浅草区聖天町生まれ。昭和十(一九三五)年、下谷区西町小学校卒業、株式仲買店勤務。昭和十四年より三年ほど証券取引所にあった剣道場へ通い、初段を得る。旋盤機械工を経て昭和十九年、横須賀海兵団入団。敗戦の翌年、東京都職員として下谷区役所の衛生課に勤務。昭和二十三年、長谷川伸門下に入る。昭和二十五年、片岡豊子と結婚。昭和二十六年、戯曲「鈍牛」を発表し上演。新国劇の脚本と演出を担当する一方、小説も執筆。昭和三十年、転勤先の目黒税務事務所で都庁職員を辞し、作家業に専念。昭和三十五年、『錯乱』で直木三十五賞受賞。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズや『真田太平記』等、数々の小説で人気を博す一方、食や映画、旅に関する著作物も多く上梓した。受賞歴はほか吉川英治文学賞、大谷竹次郎賞、菊池寛賞等。平成二(一九九〇)年五月三日、入院していた東京都千代田区神田和泉町の三井記念病院で死去。小社では同じく単行本未収録のエッセイ集『一升桝の度量』(二〇一一)と初期戯曲集『銀座並木通り』(二〇一三)を刊行している。

「2022年 『人生の滋味 池波正太郎かく語りき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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