剣客商売 番外編 ないしょ ないしょ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101157498

感想・レビュー・書評

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  • 運命に翻弄されながらも、健気に逞しく生きる、お福の波乱万丈な人生が描かれています。
    剣客商売・番外編という事で、勿論秋山小兵衛さんは登場しますし、小川宗哲先生も出てきます。
    話は、お福に関わった男性3人が一人のクレイジーな浪人・松永市九郎によって殺されてしまい、殺害された3人の仇をうとうとお福が決意し、小兵衛達の協力を得て思いを遂げるという展開です。
    殺された3人だけでなく、他にも病気などで関わる男性が何故か死んでしまうという、苦労の多いお福ですが、持ち前の芯の強さで乗り越えていきます。そんな彼女に周りの人たちも温かくバックアップしているのが救いですね。
    ただ、お福の最初の雇主の神谷弥十郎がお福にしたことを、話の後半では許すような流れになっていましたが、こういうところが男性目線だな、と思わざるを得ません。
    だって、女性の私からすると神谷のしたことはどうであっても酷いですよ、やっぱり。



  • 江戸の空
    秋山小兵衛
    碁盤の糸
    倉田屋半七
    殺刀
    二十の春
    黒い蝶
    谷中・蛍沢
    青い眉

    主人公が女性で、登場人物に良い男が多く、トキメキあり、年の差萌あり。よって女性にオススメ。
    ただ、波瀾万丈の人生で、あまり感情移入すると疲れる。

  • 面白かった。お福の成長物語が丁寧に描かれている。「ないしょないしょ」という名前付けもいい。もう一度、神谷弥十郎に会わせたかったため、お福の死を描いたのか。人の死の描き方、特に主人公が死んで泣かせるのは簡単でも、「さわやか」に感じさせるのは凄い。『その女アレックス』を思い出した。

  • 〈目次〉


    〈内容〉
    『剣客商売』のスピンオフ。お福という越後出身の女性の成長を描く。秋山小兵衛や小川宗哲なども登場し、哀しくも読後感の良い作品である。

  • 天涯孤独の少女・お福の辿る、波乱万丈の人生を描いた番外編。秋山小兵衛に小川宗哲らもゲスト出演し、シンプルな少女の復讐の物語になるのかと思いきや、彼女を見舞う運命の数々は誰かを憎むことだけでは消化しきれない過酷なもの。何度も打ちのめされながらもしたたかに、しなやかに自分の生き方を見定めていくお福の人生には、剣客たちとは異なる形での「強さ」が感じられた。

  • 越後、新発田の剣客・神谷弥十郎の道場で下女として働いていたお福は、主人が暗殺されたため、下男の五平と一緒に江戸へ出る。が、新しい主人の御家人・三浦平四郎も、そして五平も、神谷を殺した無頼浪人の凶刃に倒れる。三浦に手裏剣の手ほどきを受けていたお福は、三浦の碁敵・秋山小兵衛の助太刀をえて、見事、仇を討ち果たす。数寄な運命を背負った女の波瀾にとんだ成長の物語。

  •  池波正太郎 著「ないしょないしょ」、剣客商売番外編、2003.5発行。一気に読み終えました。良かったです。女性が生きていくのが難しかった時代、16歳で新発田を出て江戸に、波乱万丈な生涯を36歳で静かに終えたお福の人生。女性として人間として成長していくさまを描いた逸品。同時に、憎き憎き仇討ちの世界でもあります。お福が手裏剣をいつ放つのか、今か今かとず~と待ち続けました。お福を軸とした番外編、秋山小兵衛が、四谷の弥七が、徳次郎たちが万全のサポートを。小川宗哲も脇を固めています。

  • 主人公の周りの人情が厚い人達の優しさがとても伝わってきます。主人公には波乱もありましたが、本当に仕合わせと感じた一生だったと思います。
    物語のテンポが良く、とても読みやすかったです。

  • 一日で読了。さすがに池波正太郎。独特の柔らかな文体で、一気に読み切れちゃいます。
    多少気になるのは、登場人物が最初に現れたときと、その後に出てくるときで印象が変わる事。最初に仕えた剣客・神谷弥十郎もしかり、五平も、最後に仕える倉田屋半七も陰から陽、陽から陰といった変化を見せる。途中で筋立てを変えていくのか、それとも一種のテクニックなのか。ちょっと取って付けた感じは無きにしも非ずだが、さほど気になるほどでもない。
    読んでる間は非常に楽しく正太郎ワールドにどっぷり漬かれけれど、後に何かが残るという作品ではありません。

  • 波乱万丈のお福の人生だ。初めは奉公先の主人・神谷に凌辱され、恨みしか抱かなかったはずの神谷が何者かに殺されたところから、物語は大きく展開し舞台を江戸に移す。お福の急成長は、終盤で水茶屋の女主人となるところで、これまでの苦労と引き換えの結果として自分の胸にすとんと落ちた。お福の仇討に助太刀した小兵衛が、お福にとどめを刺させなかったことに感動した。これが他の時代劇であれば、とどめを刺させて目出度しで終わらせるのだろう。人にはその後の人生があり、人を殺めた過去を背負わせるようなことをさせない筆者の愛情を感じる。

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著者プロフィール

大正十二(一九二三)年一月二十五日、東京市浅草区聖天町生まれ。昭和十(一九三五)年、下谷区西町小学校卒業、株式仲買店勤務。昭和十四年より三年ほど証券取引所にあった剣道場へ通い、初段を得る。旋盤機械工を経て昭和十九年、横須賀海兵団入団。敗戦の翌年、東京都職員として下谷区役所の衛生課に勤務。昭和二十三年、長谷川伸門下に入る。昭和二十五年、片岡豊子と結婚。昭和二十六年、戯曲「鈍牛」を発表し上演。新国劇の脚本と演出を担当する一方、小説も執筆。昭和三十年、転勤先の目黒税務事務所で都庁職員を辞し、作家業に専念。昭和三十五年、『錯乱』で直木三十五賞受賞。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズや『真田太平記』等、数々の小説で人気を博す一方、食や映画、旅に関する著作物も多く上梓した。受賞歴はほか吉川英治文学賞、大谷竹次郎賞、菊池寛賞等。平成二(一九九〇)年五月三日、入院していた東京都千代田区神田和泉町の三井記念病院で死去。小社では同じく単行本未収録のエッセイ集『一升桝の度量』(二〇一一)と初期戯曲集『銀座並木通り』(二〇一三)を刊行している。

「2022年 『人生の滋味 池波正太郎かく語りき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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