東京少年 (新潮文庫)

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著者 : 小林信彦
  • 新潮社 (2008年7月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (377ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101158402

東京少年 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 第一部の集団疎開編に関しては『冬の神話』に比べ素っ気ない印象。今作も自伝そのものではないと云うが、前作が実体験を文学的に昇華させようと意図していただろうことに対し、そこに主眼はないようだ。第二部から結末に進むにつれ、著者の東京に対する執着の根本が解き明かされたようでなるほど腑に落ちる。

  • 一人の少年が、戦争末期から、敗戦の激動期に、集団疎開と縁故疎開を経験。その間、何を考え生きてきたか。何も知らされなかったけれど、何かがおかしいと感じていたという戸惑いの記録。

    第2部では、東京へ帰りたいという切実な想いが随所にあって、地方生活者には理解できない心情でしたけど、小林さんの作品を読むのは、およそ20年ぶり。

    てっきり回想録かと思って読んでいましたが、「自伝的作品ではあるが自伝ではない」との事。どのあたりがフィクションだったのかも興味のあるところです。

    (2009/1/24)

  • 8月15日、大東亜戦争の敗戦を記念した日なので、少しはそんなことを書いた本でもと、今日は丁度新潮から文庫が出たこの本にする。小林信彦の自伝的小説となっている。私が学生の頃、小林信彦はキネマ旬報に1頁のコラムを持っていて、そこに詰まった映画をはじめとする大衆芸能に対する見識やそうした市井に溢れた佳きものに対する愛情、そしてそれらの基盤となるべき真っ当な社会に対するスタンスには、大きな影響を与えられた。物語は作者本人と思しき両国にある老舗の跡取り息子が、中学進学を控えた国民学校六年生の夏、山奥の寒村の寺に集団疎開することになるところから始まる。閉ざされた生活での級友との軋轢、横暴な教師、飢え、東京への望郷の念、友人の死、そして大空襲による実家の消失、雪国への再疎開…。あとがきに「一人の少年が戦争末期、敗戦の激動期に、何を考えて生きたかが、作品のテーマ」とある通り、戦時中に集団疎開という特殊な状況下に置かれた少年たちのありさまや、終戦直後に縁故疎開で田舎暮しを強いられた家族の軋みなどが淡々と描かれる。新潮社のHPに「ひとつの国が負けるということが少年の目にどううつるかかを、きちんと書き残しておきたかったのです」と語る作者が描く、敗戦について一言も触れない教師や“大東亜戦争の敗戦”を“太平洋戦争の終戦”(この言葉の置換えは今も罷り通る)とする権力者やメディアなど、戦時下において多くの市民が翻弄されてきた欺瞞に対するさり気無い指弾。一方で、姿三四郎やチャップリンを見に行ったり、江戸川乱歩や吉川英治が出てきたり、東京への望郷の念は、即ち「東京にいれば、ああいう毎日を過ごすことができるのに」という文化や平和への希求に他ならず。〈9・11〉への米軍報復のTV画面を見て、ずっと準備していたこの作品を書かなければと思い立った作者の心情が沁みて、平和にオリンピックや高校野球を見ることが出来る日に感謝する。

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東京少年 (新潮文庫)の作品紹介

東京都日本橋区にある老舗の跡取り息子。昭和十九年八月、中学進学を控えた国民学校六年生の彼は、級友たちとともに山奥の寒村の寺に学童疎開することになった。閉鎖生活での級友との軋轢、横暴な教師、飢え、東京への望郷の念、友人の死、そして昭和二十年三月十日の大空襲による実家の消失、雪国への再疎開…。多感な少年期を、戦中・戦後に過ごした小林信彦が描く、自伝的作品。

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