墜落の夏―日航123便事故全記録 (新潮文庫)

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著者 : 吉岡忍
  • 新潮社 (1989年7月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101163116

墜落の夏―日航123便事故全記録 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 1985年8月12日に起こった日航機墜落事故を扱ったノンフィクション。
    日航機の事故に関する書籍はいくつか読んだが、本書は最初に読むべきだったのかもしれないと思った。
    本書は1989年に文庫化されたものだが、元々の刊行は1986年。つまり事故から1年しか経っていない。また、収録されている各篇は『新潮45』に掲載されていたものであるから、かなり短期間に濃密な取材をされたのだろうと感じる。

    構成は以下の通り。
    1. 真夏のダッチロール
    2. 三十二分間の真実
    3. ビジネス・シャトルの影
    4. 遺体
    5. 命の値段
    6. 巨大システムの遺言

    本書には、事故発生から墜落までの機内の様子や、日航の動き、乗客の家族の動きなど様々な面について、それぞれ記してある。また、事故後最も辛い場面であろう4章の「遺体」については、飯塚訓『墜落遺体』にも詳しいが、加害者となる日航社員と被害者遺族との関係について、飯塚氏の著作には本書から引用したのかと思われるような描写が多くみられる。参考文献に本書は挙げられていないが、飯塚氏も本書を読んで思い出したのかもしれない。

    他の事故関連本では扱われておらず、興味深かったのは5章の「命の値段」。事故が発生し、自衛隊も警察も捜索や収容、確認と大変であったことは他の書にも記されているし、事故原因についても同様である。しかし、遺された遺族には、心情的なものだけではなく、現実的かつ金銭的な「補償(というか慰謝料か)」問題がある。その一方で日航自体ももしもの時のために保険をかけているわけで、そういった際の金の流れという観点は、管見の限り本書でしか扱われていないように思われる。
    慰謝料算出の方法などは、読んでいて遺族の悲しみが増すような気がしたが、結局それらは金額的には保険会社で負担できてしまうというのも驚きだ。となると、日航は事故を起こしてしまった企業としてどのような「反省」を求められるのだろうか。

    筆者は6章において、旅客機における整備の変遷を述べ、ジャンボ機は、よりシステム化されている点を指摘する。その一方でどれだけシステム化が進んでも、それを扱う人が均質化できないのだから、ヒューマン・エラーという形で問題は残ると述べる。「人間の均質化に向かって、私たちは歩いてきたし、これからもその軌道をはずれることはないに違いない(331頁)」という。本書が出版された時代に鑑みる時、そう考えるのも分かる気がした。戦後の高度経済成長を経て、「一億総中流」という言葉が生まれた時代。労働者は歯車の一つになっていただろう。現代でもあまり変わりはないか。

    最後に本書の難点を挙げるとすれば、所々難解な文章や語彙が見られることである。特に3章。読んでいると、やたらと意味ありげな文章を作ろうとしているように思えてしまうし、事故に対し何らかの意味を無理やりにでも持たせようとしているように見えてしまう。穿ちすぎかもしれないが。
    サンフランシスコ空港ならば、難民の子供の排泄物があれば奇妙に感じるかもしれない。先進国ならば「過去と現実からの飛躍が、空港と航空機の魅力」と言えるのかもしれない。しかし、後発国・途上国の空港ならどうだろうか。また少し異なったイメージになりはしないか。
    また、機長の家庭事情について結構深く記述しているが、その一方で遺書を残した乗客の名前がイニシャルなのはどういうわけだろうか。遺書の内容から名前が判明している方もいるのだが。このあたりの判断がよくわからない。

  • 本書は、1985年8月12日に起きた日航機墜落事故の発生、及び、それに翻弄された家族やJALの現場スタッフ、消防・警察や医療関係者の状況を、克明に記したノンフィクション小説である。

    とりわけ注目されるのは生存者のうちの1人・・・落合由美さんの証言だ。著者吉岡忍氏は事故発生から4ヶ月後、彼女に総計7時間のインタビューを敢行し、墜落までの32分間を明らかにした。落合さんの証言が描かれている第二章「32分間の真実」を読んだときには、自分自身があたかもその場にいたかのような錯覚に陥るほどで・・・心底・・・時を超えて心が凍りついた。

    『そして、すぐに急降下がはじまったのです。まったくの急降下です。まっさかさまです。髪の毛が逆立つくらいの感じです。頭の両わきの髪がうしろにひっぱられるような感じ。ほんとうはそんなふうにはなっていないのでしょうが、そうなっていると感じるほどでした。怖いです。怖かったです。思い出させないでください、もう。思い出したくない恐怖です・・・』(本書第二章より)

    本を読み終えて最初に頭に浮かんだ一言は「矛盾」という言葉だけだ。絶対に生きてやる、という人の意志の強さとは無関係に一瞬で命が奪われる矛盾、有機物なのに無機物のように扱われる・・・いや扱わざるをえない矛盾、家族のために身を粉にして働くことこそが自分の使命・意思と思って生きてきたはずの多くの男性陣にこそ多くの未練が残ってしまった(であろう)という矛盾、その悲しみの大きさを到底受け入れられないとわかっているにも関わらず人は飛行機に乗り続けてしまうという矛盾、家族やJALの現場など一部の人にのみ苦しみが偏るという矛盾、技術革新は人にすら均質化を求める一方で均質でないことが人の救いになりうるという矛盾・・・。

    この本を読む意義はどこにあるのだろうか? 悲劇を繰り返さないようにするために?・・・そうかもしれない。でも人は飛行機に乗り続ける。自分もそう。ある意味、原発問題に通ずるところがある。私自身がかろうじて絞り出した答えは「たとえ明日死ぬことになったとしても後悔しないように、一瞬一瞬を精一杯生きるんだ!」ということだ。でも、それは他の人には当てはまらないことかもしれない。

    答えは読む人、一人ひとりが見いだす・・・きっと、そういうことなのだろう。

    (書評全文はこちら→ http://ryosuke-katsumata.blogspot.jp/2013/01/blog-post.html

  • 日航機墜落事故から30年以上、そして、この本が発行されてから25年以上が経った今でも、書店には本書が並んでいます。
    つまり、本書はそれだけ多くの方に読まれ、内容もしっかりしている証だと思います。

  • なるほど、御巣鷹山事故の基本書籍。

    インターネットで見た情報の多くがこの本に端を著するものだったとは!

    落合証言を上書きするロング・インタビュー。それだけでも読む価値のある本。

    それ以外にも、今まで読んできたこの事件に関する書籍の情報が、バランスよく配されている。

    元フライトエンジニアによる本では物理的な話が多く、そこまで頭にすっと入らなかったのだけど、
    墜落の夏は飛行機のことを知らなかったノンフィクション作家が調べて勉強したものなので、説明や解説が、見た物を伝える、という感じで不勉強な者にもわかりやすかった。

    他にも遺体周りの話、保険の話、遺族のその後の話、それに空港の近くの中学校での自殺話、と多岐に渡る。たしかに私も空港というものが気になった挙句、穴守稲荷に下車して散歩してみたこともあったが、この本ではなぜ、こんな遠回りをするのか。

    それが最後、飛行機の墜落から、機械と人間というものへの考察へと結ばれていく。

    冒頭、

    そして、JA8119号機は、油圧装置が完全にきかなくなったときから、機械と人間との一体感を失い、むきだしの巨大機械としての姿を現わしたのだ。それは巨大技術が想定していない事態であり、致命的な欠如であった。機械はもはや、それを操作し、制御するために位置している人間の手足と感覚を離れ、暴走をはじめる。機械と人間との敵対的な関係こそが、以後のJA8119号機を支配する。
    P97

    という記述でぐっと心を掴まれたのだが、それも伏線として有効に機能する。

    これは読まなきゃだめな本。そして、読んだら未来の航空機事故が怖くなった。

    この本を読んだら、いよいよ、沈まぬ太陽にチャレンジかしら。

  • P332
    日航機墜落の小説であるが、遺族の後の苦労より、何故、墜落したかの科学的な実証を重んじている面が多々ある。

  • 墜落遺体と重複している内容あり。

  • 墜落遺体を読んで詳しい事故原因に興味を持ったが、内容は墜落遺体と重複するところも多かった。

  • 面白かった。検死した医者サイドにも話が及んでて、墜落後の事柄が仔細までわかったのはありがたい。

  • 1985年8月12日、520名が犠牲となった日航123便墜落事故についての書籍を集めて、この夏も読みはじめている。本書も毎年夏には読み返している。当時の報道で見た衝撃的な映像は今もまざまざと瞼に甦ってくる。驚愕の惨状と無情な運命を目の当たりにし、ただただ震えた。
    事故後28年経った今、改めて事故原因は何だったのか。事故から学び現在に活かされたことはなにか。結局いまだに不明な点が多いのではないか。謎や闇と言うほうが的確かもしれない。時の経過と共に深い闇にのみこまれてしまう危機感を抱いた。
    本書を読み返すことで考えることは多い。

  •  日航機が起きたことをリアルタイムでは見聞き出来なかった平成生まれの私たち。しかし、日本の重大事件としてよく目にする、耳にする。それは有名歌手が乗っていたからだろうか。それとも当時最大の飛行機事故だからだろうか。
     そして今も、飛行機は飛んでいる。

     事故現場の雰囲気がどれほど凄まじいのかを感じ取れる文章。遺族と日航社員の関係。保険の仕組みにまで深く取材をして驚きの連続。しかし飛行機の部位、構造の説明になるととたんに分からなくなる。
     著者はこの事故で何を考えたのか?それは技術の進歩と人間。もしくはシステム化されていく日本。
    「システムかされるとそこには異物はあったはいけない」そこに日本があるのだと思った。これこそが日本の素晴らしさでもあり、気持ち悪さなのだろう。

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墜落の夏―日航123便事故全記録 (新潮文庫)の作品紹介

1985年8月12日、日航123便ジャンボ機が32分間の迷走の果てに墜落し、急峻な山中に520名の生命が失われた。いったい何が、なぜ、と問う暇もなく、遺族をはじめとする人々は空前のできごとに否応無く翻弄されていく…。国内最大の航空機事故を細密に追い、ジャンボに象徴される現代の巨大システムの本質にまで迫る、渾身のノンフィクション。講談社ノンフィクション賞受賞。

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