死の棘 (新潮文庫)

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著者 : 島尾敏雄
  • 新潮社 (1981年1月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (620ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101164038

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死の棘 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 度重なる夫の不貞により頭がおかしくなってしまった妻、その妻を支え共に生活を立て直そうと必至に妻の病的な追求や発作に耐え、夫もついに神経を病み投げやりになり心中を図ろうとしたり、そんな夫婦を見て子供が健やかに育つ筈もなく子供も子供なりに鬱憤をため病みや反抗の様相が強く出る。いつ終わるとも始まるとも知れない妻の発作、打ち打たれる妻、夫。妻は自分の激しく純粋な嫉妬で、谷底から、あんたもしっかりここまで降りて来なと手招いている様子と心がうまく運ばずに困憊している様子が綯い交ぜになっている。許しは状態ではなく、行為。愛は生活なんだなあとしみじみ感じた。

  •  いや、日本初のヤンデレ小説がここまで凄いとは思わなかった。
     この600ページほどの本書に書かれているのは、嫁と子供をほっぽりだして放蕩生活を送ってきた著者が、結婚10年目にして遂に妻が発狂してしまいひたすらそれに翻弄されていくザ・出口無しの日常。夫婦喧嘩は犬も喰わぬとはよく言うが、延々とそれに向かい合わさせられる読者にとってはさぞぐったりすること請け合いでしょう。
     でも、ある意味どこの家庭も今時どっか壊れているものじゃないの?所謂「幸せな家庭」なんて20世紀末の高度経済成長にしか成り立たない幻想みたいなもんじゃなかったの?わかんないけどさ、自分とかは親父が欝で両親が一時期変な宗教にはまってたり、兄貴とそりが合わなくてひたすらに虐められてたりして家庭に居場所なんか全くなかったりしたけどさ、それでも何とかこーやって生きている訳で。はは。逆に一見問題なんか何もない家庭に生まれていてもその子供が健全にすくすく育つ訳でもないんだからさ。
     閑話休題。本書で何より凄いのは、著者が罪悪感に自覚的で在るが故に、自分自身を徹底的に貶めて書いていること。たぶん、読んだ人の殆どはこの著者である夫にいい思いはしないだろう。でも、著者はそれを省みずに、そう思われることを承知の上で徹底的に書いた。普通、吐く。にも拘らず書いた。何のために?贖罪として?
     読んでいて、ああ、宗教というのが何故必要とされるのかがちょっとだけわかった気がした。(著者はこの体験の後キリスト教の洗礼を受けている)科学では救われない、それが嘘だとしても構わないようなどうにもならない心というのも確かにあるんだよ。君や僕の様にね!

  • 読んでてこれほどしんどい本はない。あぁしんどい、つらい、苦しい…。
    死の棘の前に、島尾敏雄の小説やミホの小説を読んでいて、そのおおらかな作風に魅了されていただけに、死の棘を読み始めたときのダメージは大きかった。なんか裏切られた感じ。

  • 「死の棘」島尾敏雄著、新潮文庫、1981.01.25
    515p ¥600 C0193 (2017.09.12読了)(2008.10.30購入)(1991.06.30/26刷)
    著者の島尾敏雄さんは。1917年4月18日に横浜市で生まれています。(父母の出身地は、福島県相馬郡小高町です。)ということで、今年2017年は、生誕100年に当たります。そのため、新聞等で話題に取り上げられているので、便乗して、代表作の『死の棘』を読んでみました。
    以下は読書メモです。

    それでは読み始めます。
    夫婦間のどろどろした話と思われますので、世の中にはこのような世界もあるのか、と物語の世界で体験してみたいと思います。

    三章まで読み終わりました。主な登場人物は、
    夫 トシオ、作家、非常勤講師
    妻 ミホ
    子供 伸一、6歳 マヤ、4歳
    飼い猫 玉
    定期収入がないし、妻子を養わないといけないし、単独行動をすると疑われるし、妻をちゃんと見てないとどこかへ行ってしまうか、自殺してしまうかと心配だし、なんとも大変です。
    人生、耐えるしかない時もありますので、読みながら耐えましょう。

    読み終わりました。
    よくいろいろと変化がつけられたものと感心しました。
    福島県の相馬へ行ったり、精神科へ行ったり、先生を変えたり、トシオの女が現れたり、佐倉に移転したり。
    ミホが死ぬといえば、トシオも負けずにおれが死ぬと言ったり、一緒に死ぬことにしたり、小指を詰めることになったり、…。
    子どもたちも大変でした。伸一君はかなりストレスを受けているようです。心配ではありますが、息子の島尾伸三さんが親について書いた本があるようです。
    機会があれば、読んでみましょうかね。

    【目次】
    第一章 離脱      5頁
    第二章 死の棘     32頁
    第三章 崖のふち    101頁
    第四章 日は日に    144頁
    第五章 流棄      205頁
    第六章 日々の例    236頁
    第七章 日のちぢまり  282頁
    第八章 子と共に    315頁
    第九章 過ぎ越し    344頁
    第十章 日を繋けて   374頁
    第十一章 引っ越し   441頁
    第十二章 入院まで   467頁
    解説  山本健吉    506頁

    ●誓います(16頁)
    「今までの女との関係を続けないこと、自殺は絶対しないこと、子供の養育に責任を持つこと、それが誓えるかしら?」
    「誓います」
    ●直します(95頁)
    あたしのどこが気に入らなかったのか、あなたの本心を言ってください。それがわからなければ、これから先、一日もあなたと一緒に暮らすことはできません。あたしのどこが不満だったか教えてちょうだい。直せるものなら直します。
    ●一人の旅行の自由さ(228頁)
    幼い日から度々経験してきた一人の旅行の自由さ、殊に後先の煩瑣から切り離された車中の閉じ込められた開放を、またこうして体ごと浴びることができようとは、考えてもみなかった。間をおいて襲う生活費の不安が、妻にこれほどの譲歩をさせたのか。しかし妻や子供らのそばを離れるとすぐ肝の底の方に吹き上がってくる後ろめたさが、時がたつにつれ胸元に固まってくる。留守の間に不吉な事故が起こっていないか。帰ってみて、取り返しのつかぬことになっていたら、この先自分に生きてゆくどんな理由が見出せるか。でも妻が納得して出かけさせたのだから、自分だけに責任をかぶらなくてもいいぞとどす黒い声も聞こえる。妻も子供も一緒に取り返しのつかぬことになれば、かえって好都合ではないか。
    ●過去を忘れさせないしるし(338頁)
    夫の過去の行為の尋問をはじめ、予期した返答を耳にすると逆上して平手打ちを加えた。逃げずにいる私は、いつも左の耳を叩... 続きを読む

  • 「おぞましい」「無能」「自己愛と無関心」
    読み進めて頭に浮かぶ言葉は救いのないものばかり。
    途中からはこれが夫婦の「プレイ」なんだと気づいても嫌悪感は増すばかり。
    献身に名を借りた妻の自己愛、執着、夫の無関心と共依存。
    ひとつひとつの出来事、心の動き、機微には馴染みがあって理解できるのに
    これらのパーツを組みあわせたときなぜこれほど悲惨なモンスターが出現するのか。
    解説では「愛」ともち上げられていたが、こんなものが愛であるはずがない。
    描かれているのはどこまでも醜悪な執着と自己愛と無関心だ。

  • 読めば読むほど気持ち暗くなる内容だった。返却期限も過ぎたので、本当に久々に読了しないで返却。

  • 読んでる途中憂鬱で憂鬱で仕方なかった。

  • 夫の浮気を知った妻は次第に精神のバランスを崩していき、夫婦と幼い子供達の生活は破綻していく…。
    筆者の実体験を元に書かれたもの。
    身勝手な夫は張り倒してやりたいくらいだし(その勝手さが自分にないとは言えないのだけど)、ピアノ線の上を歩くような妻の危なげな様にはキリキリし、荒れていく子供達には胸が痛んだ。
    けれど…面白い。
    実際の悲劇の上に成り立ったものを面白いと言ってしまうことに後ろめたさを覚えるが、認めざるを得ない。
    ここから回復していったとはいえ、これを作品にしたことに、作家の性を感じた。

  • 有名な死の棘。
    なかなか読む機会がなかったが、作者生誕100年、「狂う人」の出版などなり、書店で目立つところにおいてあり、手に取ってみた。
    妻ミホが統合失調症を発症したところから始まる。
    今まで恐らく、敏雄のする事に意見や文句、異論を唱えることをしてこなかったであろうミホのいきなりの発症。
    これは敏雄もびっくりだろうね。
    だけど、日々の積み重ねがミホの心を蝕んでいった。
    10年に及ぶ夫の不貞。
    しかも多数!
    今とは時代が違って離婚と言うのは難しかったんであろう。
    こんなになってまで敏雄を愛している、もっと自分だけを愛してと体中で叫んでるミホがいじらしい。
    いじらしいけれど、二人の子供が不憫で仕方なかった。
    発症から精神科入院までの経緯が書いてあるけど、その後がとても気になる。

  • 恐ろしいほど打ちのめされて一気に読んでしまった。壮絶な心だ。壮絶を通り越して美しくも見える。哀れで、悲しくて、美しい。

  • 夫の浮気が原因で発狂した妻。その介護をする夫もしだいに疲弊し伝染するかのように狂言自殺したり逆ギレしたり。えんえんと、不毛で終わりのない夫婦喧嘩が続くだけなのだけど、なぜか引き込まれる。基本的には自分が女性なので奥さんのほうに同情してしまう。次々と暴かれる夫の過去のろくでもない所業に、そらめっちゃ腹立つわ、復讐のひとつやふたつ、してやりたくもなるわ、と共感するのだけど、だんだんあまりにも奥さんがしつこいので、これは流石にキツイよなあと旦那に同情も湧いてくるのだけど、でもやっぱりまだ写真を隠していたり、愛人が乗り込んで来たときに、まるで被害者ぶったり傍観者ぶったりするうえ、八つ当たりで子供に暴力をふるうにいたっては、こいつ全然反省してない(怒)と奥さんと一緒に腹を立ててしまう。なにより両親の狂気を目の当たりにして歪んでゆく子供が可哀想。

    小説の中では妻は回復せず、入院するところで終わるのだけれど、治る経過も知りたかったなあ。現実のミホさんは一応回復されたわけですし。あと浮気相手の女性については、全く心理描写などはないので、こちらもどういうつもりだったんだろうかとモヤモヤしました。解説で「王女メディア」と比較されてたのは面白かったです。なるほど確かに、夫に裏切られて復讐する女の話として共通点が多い。ただミホさんは結局それでもトシオを愛していて、ばっさり切り捨てるという選択肢がなかったんでしょうね。悲しい。

  • 【諦めなよ、もう全部。切っても切っても自分だからさ】

    壊れたふりも、狂ったふりも疲れてしまったから、もう壊れて狂ってしまうね。あなたは私で変わらないから、私が変わってしまうね。

    そんなに睨まないでよ。結局は同じことでしょうよ。無関心でいればいいじゃないの。そうやって生きてきたんだから。今更、原発だとか排気機ガスだとか汚染水だとか、馬鹿馬鹿しい。いつまでもそこで強がってなさいよ。格好、つけてさ。

    逃げられないよ。変わらないよ。動かないよ。なにも。希望はもう、売り切れ。どんなに遅くなっても、最初からジェンガは崩れるものでしょうが?

  • 読むのを断念。
    今後また読むか分からない。

  • わりと有名な本ですよね。
    でも、最初の数頁でギブアップ。

    夫の浮気に対して妻がくどくどくどくど言っていて、背表紙によるとそれにより精神を患っていくようなので、この先希望的展開は望めないと思って。

    読み続けるとくどくどが伝染っちゃいそうでオソロシイ。
    子供がかわいそう。。。

  • 変テコだ。ありえない話にしか見えないのに妙にリアル。何よりおかしいのは、こんなぶっ飛んだ人たちにどこまでも共感できてしまうことだ。

  • 浮気によって狂ってしまった妻と受け止めようとする夫。夫もおかしくなっていき、妻に対して強く出たり、自殺のふりを繰り返したり。カテイノジジョウと言い、両親の異変を受け止めていた子供たちもおかしくなっていく。引っ越しを繰り返したり、やってきた浮気相手の女に対し妻と一緒になって暴行を働いたり、そして最後は妻に付き添って精神病院に入院する。

    異様に密度の濃いすくいようのない話。だけどこの物語がかけたということから、こうした危機的な状態からすでに脱していることがわかる。でないと書けない内容。

    自らの体験を重ねて、むさぼるように読んだのだが、読み終えるまでに5日もかかった。他の本を読んでないにもかかわらず。文庫なのに一ページ43字×19行もあり、目が痛くなったし。やたら眠気を誘った。文字組がとにかくひどいので星一つ減点。

  • 妻に浮気がバレた・・・
    いきなりそこから始まる・・・
    三日三晩、私も妻も眠ることなく浮気のことを責め続けられる・・・
    くりかえしくりかえし責め続け・・・
    同じ問いをくりかえす・・・
    浮気相手とのあれやこれやを問われ続ける・・・
    そこから始まる長い長い物語・・・
    物語というか・・・
    モノ書きの著者のほぼ実体験・・・
    決して売れっ子ではない夫を・・・
    健気にずーっと支えてきた妻が夫の浮気を知り大爆発・・・
    もう出て行く・・・
    子供も置いて出て行く!
    私のこと好きなの?
    好きです・・・
    そんなわけないじゃない!
    死んでやる・・・
    死なないでほしい・・・
    口先だけでそんなこと言っても信用ならない・・・
    努力するから・・・
    じゃあ、浮気のことを隠さず、嘘をつかず、全部教えて!詳しく話して!
    全部話そうと思っても、ついつい隠したり、嘘をついてしまう夫・・・
    あとからバレたりしたら余計面倒になることがわかっているのに、わかっちゃいるのに・・・
    まぁでも、過去を全部正確に思い出すのなんて無理な話ではあるのだけど・・・
    それに対して問い詰めて問い詰めて、根掘り葉掘り聞き出そうとする妻・・・
    時に証拠を突きつけたり、カマをかけたり、証拠もないのに勝手に決め付けて追い込んだり、過去の記憶を改変したり・・・
    問答無用に追い詰める・・・
    ああ・・・
    このやりとり・・・
    リアル過ぎる・・・
    恐怖でしかない・・・
    浮気・・・
    ダメぜったい・・・

    そして日が経つにつれ・・・
    妻は段々と気がおかしくなっていき・・・
    自分を抑えられなくなっていく・・・
    浮気を連想させるようなホントに些細なことをキッカケに・・・
    出て行くと言い、死んでやると言い、怒りだしたり、走りだしたり、自殺しようとしたり、突然発作が起きて暴走するようになっていってしまう・・・
    夫も延々と続く責め苦に・・・
    段々と反発するようになっていく・・・
    妻の発作が始まり問い詰めてていると・・・
    じゃあオレが出て行くと言い、オレが死んでやると言い、怒りだしたり、暴力を振るったり、走りだしたり、自傷したり、自殺しようとしたり、一緒に暴走するようになっていってしまう・・・
    妻は精神を病み、夫は自分が悪い、これではいけないとは思いながらもささくれ立って反発するように・・・
    ギャーギャーやりあって、お互いにもうやめよう、と正気に戻り、仲直りして、時に涙しながら抱き合ったりもする・・・
    しかしまた、発作が起きて繰り返される・・・
    しかも段々と酷くなっていく・・・
    どうにか、こういうことはもうやめようと、何度も決意したり、いろいろ試したりするのだけど・・・
    改善の兆しはほとんど見えず、徐々に悪化していく・・・
    ついには精神科に通うようになるけども・・・
    それでも良くならない・・・
    仕事もほとんど手につかず経済的にも困窮し・・・
    争ってばかりの両親を目の当たりにして子供は荒んでいく・・・
    周りを巻き込みまくって家庭が壊れていく・・・

    マジで・・・
    マジでヘビー・・・
    生々しくて、リアルで、重苦しい・・・
    何がヘビーかって、全編およそ600ページにわたり、基本的には同じことが繰り返されるんですよね・・・
    これ・・・
    読んでて嫌な気分になる・・・
    妻からの問い詰めに息が詰まり・・・
    夫の言動や態度にこのクソヤローめと呆れる・・・
    子供たちが不憫でならない・・・
    でも、読み進めてしまう・・・
    やめられない奇妙な磁力がある・・・
    この地獄の暮らしの中で・・・
    病み疲れた妻に夫は今までにない美しさを見出したり・・・
    何度も逃げ出そうと思っても見捨てられず・・・
    離れると、ひと時は解放感に浸れるものの、そ... 続きを読む

  • あー、このやるせない感はなんだろう。奥さんがどんどん深みにはまっていく所を旦那が喜んで道連れになっているとしか思えない。子供たちがかわいそうだなぁ。一度刺さった棘はどうしても抜けないのだろうか。この家族にいつか平穏が訪れる事を祈りたい。

  • ずーっと同じことの繰り返しで一歩も前に進まない。相手のことを思っているようにみえるが、結局は自分の思うようにしたいだけの裏返しであることに苛々する。

  • 同じことの繰り返しのように思える長編だが、読み進めたくなる魅力がある。相手がどれほど狂気な存在となっても離れられない二人の心境になってみたい気もしなくもない。読む時期を考えないと自分まで辛くなるので留意すべき。

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死の棘 (新潮文庫)の作品紹介

思いやりの深かった妻が、夫の「情事」のために突然神経に異常を来たした。狂気のとりことなって憑かれたように夫の過去をあばきたてる妻、ひたすら詫び、許しを求める夫。日常の平穏な刻は止まり、現実は砕け散る。狂乱の果てに妻はどこへ行くのか?-ぎりぎりまで追いつめられた夫と妻の姿を生々しく描き、夫婦の絆とは何か、愛とは何かを底の底まで見据えた凄絶な人間記録。

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