死の棘 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 1773
感想 : 140
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  • Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101164038

感想・レビュー・書評

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  •  いや、日本初のヤンデレ小説がここまで凄いとは思わなかった。
     この600ページほどの本書に書かれているのは、嫁と子供をほっぽりだして放蕩生活を送ってきた著者が、結婚10年目にして遂に妻が発狂してしまいひたすらそれに翻弄されていくザ・出口無しの日常。夫婦喧嘩は犬も喰わぬとはよく言うが、延々とそれに向かい合わさせられる読者にとってはさぞぐったりすること請け合いでしょう。
     でも、ある意味どこの家庭も今時どっか壊れているものじゃないの?所謂「幸せな家庭」なんて20世紀末の高度経済成長にしか成り立たない幻想みたいなもんじゃなかったの?わかんないけどさ、自分とかは親父が欝で両親が一時期変な宗教にはまってたり、兄貴とそりが合わなくてひたすらに虐められてたりして家庭に居場所なんか全くなかったりしたけどさ、それでも何とかこーやって生きている訳で。はは。逆に一見問題なんか何もない家庭に生まれていてもその子供が健全にすくすく育つ訳でもないんだからさ。
     閑話休題。本書で何より凄いのは、著者が罪悪感に自覚的で在るが故に、自分自身を徹底的に貶めて書いていること。たぶん、読んだ人の殆どはこの著者である夫にいい思いはしないだろう。でも、著者はそれを省みずに、そう思われることを承知の上で徹底的に書いた。普通、吐く。にも拘らず書いた。何のために?贖罪として?
     読んでいて、ああ、宗教というのが何故必要とされるのかがちょっとだけわかった気がした。(著者はこの体験の後キリスト教の洗礼を受けている)科学では救われない、それが嘘だとしても構わないようなどうにもならない心というのも確かにあるんだよ。君や僕の様にね!

  •  
    ── 島尾 敏雄《死の棘 1960‥‥ 19810127 新潮文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4101164037
     
    (20231128)

  • 3.49/1640
    内容(「BOOK」データベースより)
    『思いやりの深かった妻が、夫の「情事」のために突然神経に異常を来たした。狂気のとりことなって憑かれたように夫の過去をあばきたてる妻、ひたすら詫び、許しを求める夫。日常の平穏な刻は止まり、現実は砕け散る。狂乱の果てに妻はどこへ行くのか?―ぎりぎりまで追いつめられた夫と妻の姿を生々しく描き、夫婦の絆とは何か、愛とは何かを底の底まで見据えた凄絶な人間記録。』

    冒頭
    『私たちはその晩からかやをつくるのをやめた。どうしてか蚊がいなくなった。妻もぼくも三晩も眠っていない。そんなことが可能かどうかわからない。少しは気がつかずに眠ったのかもしれないが眠った記憶はない。十一月には家を出て十二月には自殺する。それがあなたの運命だったと妻はへんな確信を持っている。「あなたは必ずそうなりました」と妻は言う。でもそれよりいくらか早く、審きは夏の日の終わりにやってきた。』

    『死の棘 』
    著者:島尾 敏雄
    出版社 ‏: ‎新潮社
    文庫 ‏: ‎624ページ
    受賞:日本文学大賞、読売文学賞
    映画化(1990年)

  • 怖いし長いし同じことの繰り返しで不気味で奇妙すぎた。ひと段落が長すぎて読みにくい。全ページ狂気じみていた。読み終わるまで恐ろしく時間がかかった。

  • 2022.05.16

  • 夫の不倫が発覚したことで妻のミホが精神に変調をきたし、崩壊のまぎわにある家族のすがたをえがいた作品です。

    猜疑心に駆られた妻によって、これまで何度もくり返されてきた問答が再演され、夫もそれに耐えられず叫び声をあげます。二人の子どもたちも、そうした「カテイノジジョウ」に巻き込まれ、心の落ち着きをうしないます。

    多面的な様相をもつ夫婦愛の、あるひとつの側面をことさらにとりあげ、追求しているという意味では、文学の可能性をよく示している作品だということができるのかもしれません。とはいうものの、「解説」を執筆している山本健吉が、本作の第一部を読んだときに、「一つの私小説的主題を追求つづけるし作品の執拗さには敬服するとしても、読んでいて少し息抜きがほしいと思う」と書いたことを振り返っていますが、えんえんとつづく口論の描写にへとへとに疲れ果ててしまいました。よほど体力と精神力に余裕のあるときでないと、読み返す気になれそうにありません。

  • 夫が愛人を作り、家庭を顧みなかったことをきっかけに狂気に取り憑かれ、ひたすら夫の過去を暴き立てようと執着する妻。夫はそんな妻に詫びながら、許しを求める日々。妻の狂気の発作に夫も巻き込まれ、日常が歪み崩れてゆく。壮絶な夫婦の絆と圧倒的な愛の記録。とにかく凄まじい作品でした。人の精神の有り様がここまで克明に描かれているのはなかなかないと思います。

  • 1ページからもう負のオーラが漂いまくっている。この本は気が滅入った時、どーんと暗い気持ちになりたいときに取っておこうと思いました。

  • 読んでいるのがいやになる名作

  • 『ご本、出しときますね?』で紹介された本。「夫婦」をテーマに。

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著者プロフィール

1917-1986。作家。長篇『死の棘』で読売文学賞、日本文学大賞、『日の移ろい』で谷崎潤一郎賞、『魚雷艇学生』で野間文芸賞、他に日本芸術院賞などを受賞。

「2017年 『死の棘 短篇連作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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