死の棘 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 1772
感想 : 140
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  • Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101164038

作品紹介・あらすじ

思いやりの深かった妻が、夫の「情事」のために突然神経に異常を来たした。狂気のとりことなって憑かれたように夫の過去をあばきたてる妻、ひたすら詫び、許しを求める夫。日常の平穏な刻は止まり、現実は砕け散る。狂乱の果てに妻はどこへ行くのか?-ぎりぎりまで追いつめられた夫と妻の姿を生々しく描き、夫婦の絆とは何か、愛とは何かを底の底まで見据えた凄絶な人間記録。

感想・レビュー・書評

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  • 最初の3頁の内容をひたすら200回繰り返す600頁の長編私小説。我慢して読んだけど、最後もこれで終わり?という感じで、読後はすっきりしませんでした。時間があり、精神病の人間の様に興味がある方は読んでみても良いかと思います。最後まで読む根気は必要ですが。

  • snowdrop(スノードロップ)(江古田)|日刊ゲンダイDIGITAL
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/337591

    【名作探訪】『死の棘』島尾敏雄~1981年 新潮文庫 | 慶應塾生新聞(2009-01-17)
    https://www.jukushin.com/archives/2440

    死の棘 :島尾 敏雄|河出書房新社
    https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309026251/

    島尾敏雄 『死の棘』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/116403/

  • 数ページ読んで、奥さんのダラダラネチネチ追い詰める感じに嫌気がさしてしまい、この先ずっとこんな文章が続くのか!?と思ったら疲れそうで途中で断念した。

    ここ一年とある友人夫婦の離婚するだーしないだーの相談を毎日のように聞いているので…そちらで辟易しているのもある…

  • 妻ミホと夫トシオの壮絶な日常を描いた長編小説。恐ろしく重たい内容が綴られており、読み切るまでが非常にしんどい。

  • 夫の浮気が発覚したことで妻は錯乱し、狂気に陥った
    家庭をぶち壊すほどの思い切りも、無責任さも持ち合わせない彼女は
    ある意味、夫と同じ偽善者で、だからこそ狂うしかなかった
    怒り、憎しみ、皮肉、侮蔑などといった
    やり場のないあらゆる悪感情をぶちまけていくそれは
    どこか自己表現的なものである
    まあそういう、演じてるうちに深まっていく狂気もあるんだろう
    夫はあくまで、平和的に辛抱強く向き合おうとするのだが
    それによって自分も狂気に陥っていく
    相手の気が済むまで謝るってのは要するにそういうことで
    だったらむしろ家庭なんてほっぽりだし
    逃げ出したほうがお互いのためなんじゃないか、と思わせるほどだが
    もちろん世間の目に対する恐れは強くあり
    両者は「家」というものにこだわり続けるしかなかった
    落としどころを見出せぬまま、妻はこれ見よがしに狂い続け
    夫はそれをやりすごそうと耐え続ける
    そこに展開されるのは故意にして寸止めの過剰さとでもいうかね
    微妙な世界です
    ボーダーラインに限りなく近い場所だからこその苦しみがあるとはいえ
    そこにときおり一抹の自己陶酔や事故憐憫を感じてしまうから
    やりとりが過激になればなるほど、読んでるこっちは冷めてゆくし
    やがては話の中の当事者たちも冷めてゆくはずで
    その場合、後に残るのは冷え切った空気の家庭のみ…ということに
    なっていたのかもしれない
    ところがそうはならなかった
    夫の浮気相手が家まで襲ってくると事態はより深刻化する
    浮気相手はどうも、やくざ者を連れてきているらしく
    不安のために共依存をこじらせた夫婦は
    さらに互いを激しく傷つけあうようになった
    妻は夫の隠し事を全部吐き出させようと
    痛くもない(ふりをしている)腹をかき回すし
    夫は夫で、こらえ症もなく発狂する妻のだらしなさをののしりつつ
    なにかと自殺未遂を繰り返す
    連合赤軍の「総括」を思わせないでもないその有様は
    しかしヘンな話、絆を再生するために足掻いているようにも見え
    ひょっとするとこれも
    ヒューマニズムと呼ぶべきものなのかもしれない
    当然そんなものが
    横で見ている子供たちの心に悪い影響を与えないはずはなかったが
    冷え切った家庭に放置されるよりはマシかもしれなかった
    まあ「巨人の星」や「サザエさん」が理想の家族を描き
    国民的な人気を集めた裏には
    こういう日常もあったということでしょう

  • なるほど、繰り返される主題か。
    暗澹たるボレロを聞いているようだった。ときに荒々しくなり、凪いだかと思うと、また狂おしいほどの激情が繰り返される。
    途中までどうオチをつけるかとそわそわしていたけれど、まあそういう話じゃないよね。

  • 尋常でない閉塞感だ。

    夫婦共に、どうしようもない病をかかえている。治らない病。死にいたる病でなく、日常を蝕む病。一人では発病せず、必ず2人でかかる病。

    家族、夫婦の病理は今も昔もこうなのかもしれない、と思い知る。

    許す、許さない。つまり、過去の扱いの困難さも本作のテーマだが、答えは否定的だ。それが人間と歴史の性かもしれない、と二度、思い知る。

  • 度重なる夫の不貞により頭がおかしくなってしまった妻、その妻を支え共に生活を立て直そうと必至に妻の病的な追求や発作に耐え、夫もついに神経を病み投げやりになり心中を図ろうとしたり、そんな夫婦を見て子供が健やかに育つ筈もなく子供も子供なりに鬱憤をため病みや反抗の様相が強く出る。いつ終わるとも始まるとも知れない妻の発作、打ち打たれる妻、夫。妻は自分の激しく純粋な嫉妬で、谷底から、あんたもしっかりここまで降りて来なと手招いている様子と心がうまく運ばずに困憊している様子が綯い交ぜになっている。許しは状態ではなく、行為。愛は生活なんだなあとしみじみ感じた。

  • 梯久美子の「狂うひと」を読みたいがために、これを読みました。こちらを読んでおかないときっと「狂うひと」を読んでも理解できないんだろうと思ったので。純文学に分けられるようですが、私小説と感じました。作家が外に女を作って3日とあけず女のもとに行き、その情事を綴った日記を読んだ妻の気がふれ、夫を連日責め立て、子供たちの世話も放り出してしまう。そして、自分といえば、いつ妻が過去を責め立てる発作を起こすかと気が気でなくなり、まるで二人ともが神経症になったような日々が繰り返される。家にいられず地元である会津に帰ってみたり、家を売って千葉に家を借りてみたり、首をくくる脅しをしたりともう無茶苦茶。こんな修羅場を見せられた子供たちはかわいそう。昭和30年ごろの話のようですが、精神疾患に関する研究も進んでいないだろうし、とにかく夫婦が破綻していくのがリアルでした。ということで、「狂うひと」に取り掛かっています。


  • 言わずと知れた名作。
    忌まわしい程のボリュームに、内容は作者と精神疾患に陥った妻の言い争いと喧嘩に終始するというかなり地獄。
    ただ自分は読みながらこの作品に『痴人の愛』と同等の物を感じた。主題こそ違うが、滑稽で軽妙な会話劇の中に、作者の相手への本質的な愛があり、愛おしさを感じる。
    100人中80人は匙を投げると思うが、文学好きであれば是非読みたい一冊。

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著者プロフィール

1917-1986。作家。長篇『死の棘』で読売文学賞、日本文学大賞、『日の移ろい』で谷崎潤一郎賞、『魚雷艇学生』で野間文芸賞、他に日本芸術院賞などを受賞。

「2017年 『死の棘 短篇連作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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