水の舳先 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (137ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101166513

感想・レビュー・書評

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  • 玄侑宗久のデビュー作品。私小説かと思うほど描写が生々しい。これは作者自身の懺悔なのかもしれないと勝手に思っている。

  • 玄侑宗久『水の舳先』新潮文庫。

    僧侶で作家の玄侑宗久のデビュー作。生と死の狭間で魂の救済を描いた130ページ余りの中編小説。冒頭からの文学的なやや執拗い文章には馴染むまでに苦労した。

    重く難しいテーマであるが、読者が納得する形に消化し切れていないように思った。

    温泉施設ことほぎの湯に集う病を抱える人びと。僧侶の玄山はそこで書道教室を開き、病の治癒を願う人びとの相談相手となる。その中の一人、末期癌を抱える久美子は死を目前に控えた身寄りの無いサトウという男性を懸命に世話する。しかし、久美子の世話も虚しく、サトウの命は尽きてしまう。自らの命も残り僅かであることを悟った久美子は玄山に自らの罪を告白する。

    本体価格324円(古本100円)
    ★★★

  • 玄侑宗久さんは初めて。名前から想像されるようにお坊さんです(臨済宗)。「中陰の花」で芥川賞を受賞。
    人の死や宗教観を主題にした小説です。
    主人公の女性はクリスチャンですし、その懺悔を(多分、著者の分身である)僧侶が受け入れている。そうした自由な宗教観には共感を覚えます。
    一方、物語としては、何か分散されていると言うか、まとまりがないような気もします。

  • 玄侑宗久氏デビュー作。
    読みやすい美文ではあるが、
    先に読んだ龍の棲む家に比べると、
    硬い印象が拭えない。
    肩肘張っているというか。

    ただし、読ませ方はこちらが上。
    末期ガン患者の死へのカウントダウンを、
    臨場感を持って最後まで描き切っている。

    同性としては、いかな宗教がらみの心情としても、
    性的な奉仕(と、あえて言う)で
    無死の恍惚を得るというのは共感が難しい。
    ラストの湯灌のシーンが美しいだけに、
    サトウさんへの行為と水というモチーフの不和が、
    私の中では咀嚼しきれずのこってしまった。

  • この本を貸してくれた友人は、ヒロインの「久美子」と共通点が多く、胃がんを克服している。それ故にこの本は特別な思いを持って読まれたものだったろうと、文庫本を媒介して深く感じた。それは、作中で、久美子が忘れた聖書を玄山が読んだときのように、友人のの心のうちを垣間みるようだった。
    「恍惚」を追体験できるような、小説の最後のシーン。とても感動的だった。

    この作家の他の小説も読んでみたくなった。

  •  宗教が絡んでいますが、うだうだと高説を聞かされるわけでもなく、淡々と進んでいく感じ、です。奇麗な話だなーと思いました。特にびっくりするような展開があるわけではないので、ちょっと退屈かもしれませんが。

  • 下とセット。

  • 堅苦しい話しかと思い、構えて読み始めたが、意外にもあっさりと読めてしまった。じいさんになった時、もう1度読み返してみたいなと思った。

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著者プロフィール

一九五六年福島県生まれ。慶應義塾大学中国文学科卒業。八三年、天龍寺専門道場入門。現在、臨済宗妙心寺派福聚寺住職。花園大学仏教学科および新潟薬科大学応用生命科学部客員教授。二〇〇一年「中陰の花」で芥川賞を、一四年「光の山」で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。著書に、『禅的生活』(ちくま新書)、『荘子と遊ぶ』(ちくま文庫)、『やがて死ぬけしき』(サンガ新書)、『竹林精舎』(朝日新聞出版)などがある。

「2020年 『なりゆきを生きる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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