格闘する者に○ (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101167510

感想・レビュー・書評

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  • 三浦しをんさんのデビュー作

    冒頭、ジャングルの塔に暮らす王女の物語から始まる。
    何だか不思議な話なのだが、これの意味は後に明かされる。
    そして、この不思議なタイトルの意味も。

    就活、家族、恋。
    女子大生可南子が様々な事にぶつかりながら志望する出版社の就職試験に挑んでいく。

    しをんさんの体験に基づいて書かれたそうだ。
    なるほど、エッセイと小説どちらとも言える雰囲気だ。
    上手くいかない就活に思いっきりツッコミを入れ、妄想を炸裂させるところは可笑しくて笑ってしまった。

    これがデビュー作なのだ。
    強烈なインパクト。
    三浦しをんさんが好きと言いながら今まで読んでいなかった事を後悔した。

  • 就活もテストも恋愛も、大学生は忙しい。
    まるで、社会人になる前の焦りか開き直りのようだ。
    自分を見失わないように、翻弄されながら、
    いろんな人が世の中にいることを知っていくのだろう。
    デビュー作、24歳の三浦しをんはすごい。
    しをん氏の活躍が十分に予想されるような、作品のように思う。

    しかし、女子が働くことには、
    今でもこんな思いをするのだろうか
    まるで、変わっていないじゃないか。
    驚いてしまった。

    重松氏の解説もよかった。

  • 三浦しをんさんのデビュー作!
    就活を軸にして、家族や恋愛についても描かれていて、とても共感しやすい物語。デビュー時からこんなに勢いのあるボケとツッコミをしていたのかと驚いた。
    最初の文章がここに繋がって、タイトルはここで回収されて…というように、物語の構成がおもしろい。


  • 好きなことを仕事にしたい、という誰しも一度は考えたことであろう理想と実際の就活の厳しさ。
    非常にバランスよく描かれています。
    全体的に就活に対して、ゆったりと構えている登場人物達に癒されました。

  • 文庫版を読み終わったその時、解説に重松清の名があっただけで僕にとってたいへん特別な一冊になった。これが最初のレビューなんて、出来すぎだ。

  • 13 12/23

  • イヤミじゃない人を書く力が素晴らしいと感じた小説。
    主人公の可南子の家庭は代々伝わる立派な旧家。継母と義弟と、別居している父親(政治家)という一見すると暗い感じの組み合わせ。
    なのに登場してくる人物が皆飄々としているおかげで、しんみりとした感じはない(むしろ笑いを堪えるのに苦労する文章がいっぱいある)。
    書き出し部分がタイトルと全く関係ない話から始まったので、電子書籍で買った身としては「内容間違ってないか⁈」と一瞬ビビってしまったが、ちゃんと後々に繋がる話だった。うまいなぁ。
    就職活動についてザックリしたイメージを知りたくて読んだのだけれど、そういう俗な感情すら忘れさせてくれるほどそれぞれの人物に魅力があった。個人的に好きなのは西園寺さんと二木君かな。あと砂子も途中から好きになった。父親もズレ具合が面白い。うーん、つまり皆好きだ。

  • デビュー作がこのレベルってすごいなぁ。
    砂子や二木などサブキャラもいい味出してる。

    メインは漫画編集者になりたくて出版社を受ける話なんやけど、集A社やK談社の試験のエピソードがリアルで笑える。

    集A社…うちは筆記試験で落ちたけど
    該当するものに○、試験官がカクトウするものに○、って読み違えるとか…ありそう~。

    砂子に憧れます。

    • まろんさん
      デビュー作から、漫画への溢れるような愛が投影されていて
      このブレのなさ、いいですよね!
      砂子の弟に、エッセイによく出てくる弟さんの面影があっ...
      デビュー作から、漫画への溢れるような愛が投影されていて
      このブレのなさ、いいですよね!
      砂子の弟に、エッセイによく出てくる弟さんの面影があって、好きです♪
      2012/06/26
    • hetarebooksさん
      そうそう、しをんさんの作品は愛にあふれてますよね。私はひとりっこなので、弟さんとの何気ないやり取りにも憧れています。
      そうそう、しをんさんの作品は愛にあふれてますよね。私はひとりっこなので、弟さんとの何気ないやり取りにも憧れています。
      2012/06/28
  • Q:就職活動中の女子大生です。出版社に入社するためには、どうすればよいですか?

    A:大学在学中に出版社のアルバイトをやっていれば、たいへんに有利です。

    ----------------------------------

    そんなもんだよね、現実。

    就職活動をテーマにした物語は、ちらほら見かけるけど、いやはや、バブル期の狂騒は何だったのかというくらい、就職氷河期は終焉の気配を見せません。

    僕が大学に入る、ちょっと前まで、すごかったらしいです。

    入社説明会に行くと、お寿司にシャンパン、タクシーチケットにお小遣い(10万円ほど)までもらえて、「是非うちに来てくれ!」と、内定を10個も20個ももらえたとか。

    これが、ただの都市伝説ではなく、知り合いの大学の先輩から聞いた実体験だったと言うから驚きです。(その先輩はちょっとばかし優秀な学生ではありましたが、それでも、現実としてそういうことがあったらしい)

    僕が大学に入学する頃には一気に氷河期で、「そのうち暖かくなるだろう」とかのんびり思っていたら、未だに氷河期なんですよね。

    で、就職氷河期というと学生側ばかりが辛い思いをしている、と思われがちですが、実際にはそんなことないのかなあ、と思ったり。

    企業側って、けっこう厳しいんですよ。

    企業としては、すぐにも役に立つ即戦力がほしい。

    けど、実は企業は、「ほしい人材」を手に入れられるとは限らないのですね。

    なぜというに、本当は、「こういう人材がほしい」と思っていても、残念ながら企業はスカウトマンを雇っていないので、「就職試験を受けに来た人たち」の中からしか選べないというジレンマを抱えているのです。

    えっ、たいしたジレンマじゃないって?

    それが、そうでもないのです。

    入社したてでありながら、いきなり仕事もばりばり、営業成績優秀、社会経験が豊富、声が大きくて元気いっぱい、人付き合いもいい、ちょっとくらいのサービス残業で怒らない、有給休暇なんかで無駄に休みを取らない、給料が安くても文句を言わないだけの小金持ち、結婚したりして仕事をおろそかにしない、つまんないことでセクハラセクハラと騒がない、会社の言うことには何でも従いながら、革新的なアイデアをばんばん出してくれる、一生涯うちの会社だけを愛してくれる愛社精神に富んだ若者なんて、いるわけねーだろバーカ。

    たかが大学に通った程度の22~3くらいの若造に何を求めてるんだか。

    そもそも、新卒採用なんか辞めて、門戸をもっと広げて、毎年新人を採るけど、年齢も性別も気にしない、経験すらも気にしない、人事としてしっかり見定めた人間を採用する、とかの方針にすればいいのに、履歴書を手書きで書かないとダメとか、スーツで来ないと社会人としての常識を疑うとか、漢字の書き取りとかSPIとか、一体全体、それであなたたちは人の何を見てるのさ?

    企業としては、「優秀な(と企業が考える)学生」に来てほしいと思ってるかもしれないけど、まず最初に、その企業を選ぶ権利は、学生が持っているのです。

    学生たちは、堂々と、「俺が(私が)選んでやったんだ、光栄に思え」くらいの態度で、試験に臨み、そして、試験官たちの度肝を抜いてほしい。

    最初のアドバンテージは、あくまでもあなた方にあるのだから。

    偉そうに構えている企業は、掃きだめの中からツルを探そうとして、ネズミ一匹すら掴まえられない、なんて事態もありうるのだから。(そもそも、優秀な学生を探すんじゃなくて、採用した学生を、優秀な社員に育てろよ、とは思う。その手間を惜しむから、変なことになるんだよ)

    一体全体、社会というのがどういった基準で人を判断しているのかいつも疑問に思うんだけど、そういうことを疑問に思わない、思っても表面に出さない従順な人が好きなんだろうなあ、とは思う。

    僕には無理ですし、無理でした。

    ----------------------------------

    ちなみに、某劇団のオーディションは、なんだかんだで楽しかったですよ。数年間ばかし、担当してましたが。

    なんといっても、受験生たちの目が、活き活きとしている。

    淀んだ目をした着慣れないスーツ姿の人間なんて一人もいない、ジャージ姿で汗みどろになっている若者たちは、全員応援したくなります。全員応援してたとか、それは言い過ぎ? いや、そんなことない。(一次書類審査では、やる気のかけらも感じない人は応援できないけど、二次実技審査以降は、みんなを応援してました心の中でひっそりと)

    この作品に出てくる学生たちは、みんな、面白い。

    活き活きとした感性を持っているのに、就職活動という一つの戦場で、自分を見失いそうになりながら、そして、自分らしさを失いたくないともがく。

    それでも社会の壁は相当に厚く、叩いてもダメ、登ってもダメ、さりとてその場から去る決断もできにくい。

    それは、主人公たちが狙っているのが、企業としては未だに人気の高い出版社である、ということも理由なのかもしれない。

    出版不況とは言え、本が好きで、書籍出版に高い志と情熱を持った人たちは、きっと、たくさんいる。

    そういう、熱を持った人は、きっと、スーツ姿やお仕着せのビジネス用語なんかでは計れない。

    若者は、あがくことこそが、特権だ。

    格闘する者たちよ、是非、○を手に入れてくれ。

    ----------------------------------

    某劇団のオーディションの際、僕が最も重視したことは、一発勝負のオーディションでちゃんと力を発揮できたか否か、ということはちょっと脇に置いておいて、実際には、「この人がいたら面白いな」とか、「この人なら、数年後に面白いことになるぞ」とか、その時にはまだはっきりとはわからない、萌芽のようなものをこそ、重視していました。

    逆に、「この人うまいなあ」とか、「完成されてるなあ」という人には、あまり興味がありませんでした。

    というのも、技術は、教えればあとからいくらでも付いてくる。

    だけど、一度完成してしまっているものは、即戦力として期待できるかもしれないけど、きっと、その先の「成長の面白味」は、あまりないだろうなあ、と思ってしまったからです。

    舞台で見る度に、どんどん成長していく。それも、劇団所属の役者としての面白味の一つではないかな、と思う。

    今、巧くなんかなくたっていいです。技巧に頼って、心を失った芝居はしてほしくないです。下手くそでもいい。誰にも負けないだけの心を魅せてほしい。

    そういう人の芝居は、きっと、見ていて気持ちがいいから。

    ----------------------------------

    Q:演劇をやりたいです。どうすればいいですか?

    A:あなたの最高の笑顔で、元気いっぱいの姿を見せてください。僕たちを、あなたのファンにしてください。

  • 漫画になったら面白いだろうな。数年後の自分を垣間見たような気がした。就活ぐらいはちゃんとしたい。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「数年後の自分を」
      数年後、格闘家になられるのですか?
      三浦しをんは「舟を編む」でファンになって、今ボチボチ読んでいる。。。この本は未だ、、...
      「数年後の自分を」
      数年後、格闘家になられるのですか?
      三浦しをんは「舟を編む」でファンになって、今ボチボチ読んでいる。。。この本は未だ、、、
      2013/02/04

著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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