風が強く吹いている (新潮文庫)

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著者 : 三浦しをん
  • 新潮社 (2009年6月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (670ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101167589

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有効な左矢印 無効な左矢印
三浦 しをん
三浦 しをん
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印

風が強く吹いている (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 自分がハマりそうな小説って
    読んでる途中で
    一瞬にして解るって感覚ないですか?

    『あっ、俺今、
    スゴいの読んでる…』

    って。

    もっと言えば、
    初めの1ページや
    冒頭の描写だけで
    自分がこの小説を
    『好きになる予感』って
    解るんですよね。


    この小説も
    「鶴の湯」の銭湯から始まる
    書き出しからしてもう、
    吸引力のある文体で
    一気に惹きつけられたし、

    これから始まる物語の期待に胸が膨らむ
    素晴らしい導入部だと思います。


    主人公ハイジの思惑で集められた
    竹青荘に住む10人の素人選手が、
    箱根駅伝を
    たった半年の期間で
    目指すことになる
    胸を打つストーリー。
    (もうこの気概ある設定だけでワクワクしてくるし♪)



    自分も中学時代
    陸上部だったし、
    今もボクサーなので
    走ることは欠かせません。


    ランナーは孤独です。

    だけど走ることを
    体にインプットした人間にしか
    分からない感覚って
    確かにあるんです。


    足を前に踏み出すだけで
    世界が変わる感覚。


    両耳をすり抜けていく風の音。


    街や花や空気の匂い。

    その時間にしかない
    この星の奇跡の色を感じられるのも、
    走る者の特権です。



    人はなぜ走るのか?


    一生に一度くらいは
    本気になってみたいから。


    生きてるって意味を
    実感したいから。


    昨日までの
    ふがいない自分に克ちたいから。


    人の数だけ理由なんて
    あるんだろうけど、

    生きるってこと自体が
    何かを越えてゆく
    『強い姿勢』なんだって
    思い知るためにも、

    人はいつか、
    走り出さなきゃならない。

    いらないもの、
    ごちゃごちゃしたもの、
    余計な考え、
    全てすっきり削ぎ落として、

    清いまでに
    シンプルな『核』になるために。


    人は走ることで、
    自分にとって
    本当に大事なものが何かが
    分かるような気がします(o^-^o)


    リアリティがないという批判的な声も聞くけど、
    しをんさんが伝えたいことは
    そこなんだろうか?


    何かを越えようとする
    『意志の形』や
    『生きる姿勢』の
    在り方を示した作品だと
    自分は受け取ってます。


    どんな突拍子のない設定だったとしても


    どれほど心が動いたかによって
    人間は作られていくし、
    小説の醍醐味は
    そこだと思う。


    そういう意味で
    これほど心動かしてくれる小説は
    そうそうないと思うんだけど
    どうだろうか。

  • 食事は腹八分。酒量は少し減った。
    映画館では九十分を過ぎたあたりで腰とお尻が痛くなる。
    そして文庫本は三百ページ弱を息切れしながら読むのがやっと。
    そんな僕が六百七十ページもの長丁場を、途中で給水ポイントをいくつか挿みながらも一気に駆け抜けることができた。
    面白過ぎて、笑って、泣いた。
    読書で、比喩ではなく目頭が熱くなったのは本当に久しぶりだった。

    二月も末というのに正月のはなしで恐縮だが、新年一発目の読書は何にしようかと考えたところ、時節柄、箱根駅伝だろうという単純な理由でこの本に決めた。

    冒頭の銭湯のシーンから心を掴まれた。
    陸上の物語の導入が、風呂上がりのドテラ男と左官屋って、おい。
    突然、二人の脇を通り抜けて逃げ去る万引犯。
    左官屋の自転車を奪い追いかけるドテラ男。
    その走りの臨場感。

    誰かが言っていた。
    世の中には二種類の物語しかない。
    人が穴に落ちる物語。そして、その穴から這い上がる物語。
    『風が強く吹いている』は確実に後者だ。
    個性的な面々が集まる弱小チームが大会を目指して勝利する。
    そんな都合のいいはなしがある訳がない。
    そうプロットだけを云々いうのであれば、僕らはシェイクスピアの戯曲とグリム童話だけを読んでいればいい。
    それではあまりにも寂し過ぎるし、もったいない。
    だって、三浦しをんは物語の神様に祝福されているのだから。

    彼女の書く物語には匂いがある。
    汗の匂い。生活の匂い。そう、人間の匂い。

    「きみ、ルームランナーが欲しいって言ってたでしょう。さっき実家に電話したら、納屋にあるって」
    (中略)
    「田舎の家では、マッサージチェアとルームランナーとぶらさがり健康器が、たいてい埃をかぶっているものなんだよ」

    笑ってしまった。

    文庫版の表紙もいい。
    スポーツウォッチとハイテクシューズを着用し襷をつなぐランナーも、山口晃が描くと仏画の韋駄天のようだ。
    「ランナーズ・ハイ」という言葉があるが、走りを極める人間にしかわからない涅槃の境地というものがあるのだろう。

    この物語の登場人物たちは、みな戦っている。
    陸上競技における勝利というものが、表面的な順位や結果だけではなく、それぞれの心の内にあるのだと教えてくれる。
    駅伝にまったく興味がなかった僕が、今年はテレビ中継に見入ってしまった。
    ちょうどリアルタイムに小説とリンクしていた小涌園前ではこぶしを握った。
    きっと来年からは箱根駅伝を欠かさずに観るだろう。
    物語の神様に動かされている自分に、少し驚いている。

  • 古いアパート、竹青荘(実は大学の陸上競技部の合宿所だった!)に住む清瀬くんの目の前に現れたランナー、走(かける)クン。
    清瀬は今まで待ちわびていた最高の仲間を得て、アパートの面々と箱根駅伝を目指す。

    陸上競技を極めるために入学した高校で暴力事件を起こし、大学では陸上をするつもりはなかったのだが、結局走らずにはいられない、走。
    清瀬は脚に古傷を持ち、高校時代の管理される方法とは違うやり方で頂点を目指そうとする。
    1年足らずの期間にほとんど素人の集団で予選会を勝ち抜き、正月の駅伝に出場するなんて、まず無理だと思うのに読んでいると、そんなことがあってもいいな、と思えてくる。
    スポーツの純粋な楽しさや、高みを目指す苦しさと喜びを十分知らない私にとって、登場人物たちが走ることを通して自分と向き合うさまやただただ走ることを愛する姿を追っていくことは、本当に楽しい時間だった。
    先が読みたいのに、読み終えて彼らとさよならするのがもったいなくて、いつまでも一緒に1月2、3日を過ごしていたいと願っていた。

    清瀬の人心掌握術(胃袋をつかむというか)、メンバーを十分理解しその人の持ち味を最大に生かす采配。
    周りの人を認め、決して否定することはない。
    そして、相手を納得させられる言葉を持っている。
    プロデューサーであり、ディレクターであり、優秀な選手である。
    そんな清瀬ですら決して到達することのない高みを目指せる、走。
    走に出会ったとき、清瀬の希望に欠けていたピースがはまった。


    しをんさんは、10人の選手を十分に書き分け、誰もがそれぞれの持ち味を発揮する。
    先に読んだ人に、「誰が好き?」と聞いてみる。
    「みんな、いいよね。うーん。双子かな?」

    私は、誰にしようかと、もう一度考える。
    みんなそれぞれいい。
    互いに認めあい、尊敬できる仲間たち。
    互いに惹かれ、心から信頼できる関係。

    「きみに対する思いを『信じる』なんて言葉では言い表せない。信じる、信じないじゃない。ただ、きみなんだ。俺にとっての最高のランナーは、きみしかいない。」(P582)

    痛みを知り、辛さを乗り越え、人を認め、希望を失わない清瀬くんはもちろん、いい。
    不器用だけれど、きらきら光る突出した魅力を持ち、
    それを求める人の心を捉えて離さない走には憧れをもつ。
    ムサさん、神童。近くにいたら友達になりたい。
    ユキも、ニコチャンも、屈託のない明るい双子も王子も。

    それでも、キングのことが気になって仕方がない。
    小心者でプライドが高く、傷つくことを恐れている。臆病な本性を人に気づかれることすら許せず、明るい人間を装っている。
    普段は見ないふりをしているけれど、きっと私自身の中にある弱さがここにあるから、見過ごすことが出来ないのだと思う。
    彼には、ちゃんと見ていてくれる人がいる。
    私にはどうなんだろう。

    しをんさんが描く人物たちは、誰もが私のお気に入りだ。
    それは、私が憧れ、少しでも近づきたいと願う人や
    自分が到達することのない才能あふれる人、
    優しさにあふれ魅力的な人ばかりだからではない。
    何らかの弱さを持つ人に自分を投影して、
    その人が輝きだすのを待っている。
    ああ、そうなのだ。
    人には、魅力も強みも弱みもあって、存在している。
    かけがえのないあなたこそが大切であると、教えてくれているような。


    「なあ、おまえ楽しいか?ずっと夢だった箱根駅伝に出られて、これから走るんだぞ。なのにおまえ、全然楽しそうじゃないのはなんでだ?」(P554)

    今日も楽しかった。でも、明日はもっと楽しいはず。
    そんな気持ちが湧いてくる。
    人を愛おしく思い、元気が出てくる素敵なお話でした!

  • 走るために生まれてきたような走(かける)と 、走りたくても走れない苦しみを知るハイジ。ふたりは運命的な出会いをする。
    ハイジに巻き込まれ竹青荘の住人はほとんど素人でありながら10人で箱根駅伝を目指すことに。途方もなく無謀な挑戦が今始まる…。

    10人はそれぞれ魅力的で誰ひとり欠く事のできない存在。彼らの個性をそれぞれ走りの中でうまく表現し、どの区間も間延びする事なく読者を楽しませる。選手の走りと一緒にページをめくる速度も私の胸のドキドキも変化する。

    駅伝選手は孤独だけどひとりじゃない。襷を渡す時の一瞬の繋がり、選手に唯一触れていいその瞬間が私は好きだ。特に走とハイジの言葉の必要もない襷渡しには胸がきゅんとした。2人の友情、師弟関係は最高だった。

    ハイジかっこよすぎる。しばらくはハイジで頭がいっぱいだろうなぁ…

    「俺は知りたいんだ 。走るってどういうことなのか 」その答えはたぶん一生出ない気がする。だからこそ、みんな走る事に魅了されるのだと私は思う。

    10月17日、箱根駅伝予選会の日に読了。
    みんな頑張っていた。ひとり1秒の差…本当に厳しい世界。この本を読んで新しい世界に出会えた。

  • 三読目。
    箱根駅伝の予選会をテレビで見て、寛政大学のことを思い出した。
    思い出してしまったらもうダメ。
    竹青荘の10人に会いたくて会いたくて…。
    仕事が忙しくて元気がほしかったこともあり、ゆっくりゆっくり読んだ。

    この物語は本当に美しいと思う。
    心から美しいと言えるものが描かれている。
    それは人の心。
    竹青荘のメンバーの心は美しい。
    彼らが走る姿も、悩みも、絆も、そして無限に広がる未来も輝いている。
    好きだなぁ。
    通勤電車の中で涙ぐんでしまった。
    あまりにも優しくて、格好良くて、すごく幸せな気持ちになれたから。

    きっとまた負けそうになった時に読むと思う。

  •   三浦しをん 著「風が強く吹いている」を読みました。

     個性豊かな10人のメンバーが1年かけて箱根駅伝に向けて突き進む、爽やかな青春小説。

     映画を見てから原作を読んでみたいと思っていました。

     きっと映画では描ききれなかったメンバー10人のそれぞれの個性ももっと知ることができるのだろうと楽しみにして読みました。

     その期待は予想以上でした。

     主人公の走(かける)を始め、箱根駅伝にみんなを巻き込んでいく灰二(はいじ)など、走ることにどんな意味があるのかを問い続けていく姿が見事に表現されていました。

     「速く」より「強く」、その走ることの意味は自分にとっては、まさに「生きる」ことなのだとこの小説を通して強く感じました。

     また、駅伝を目指すことを縦軸に、恋や友情などが横軸に描かれていく展開も目が離せず、自分も青春を味わっているような感覚で読めました。

     自分の青春も終わったわけではなく、これからの人生にも風が強く吹くこともある、今自分ができることは何なのか、とても強い勇気をもらった感じです。

     ありがとう、竹青荘のみんな。

  • 高校時代、将来有望な陸上選手でありながら問題を起こして陸上部にいられなくなった走(かける)は、大学入学後、灰二(はいじ)との偶然の出会いから「竹青荘」に下宿することになる。
    そのハイジの策略(?)で、個性豊かな竹青荘の住人たちと共に箱根駅伝出場を目指すこととなり…。

    日本のお正月の風物詩のひとつ、箱根駅伝。
    個人的には夏の甲子園以上に好きなスポーツイベントかもしれない。
    通常のマラソンではとても走らないようなアップダウンの激しい山道を独りで走りぬかなければいけないという究極の個人競技でありながら、仲間たちの期待と大学名を背負わなければならず、自分が走り切って襷を繋がなければ仲間にも棄権を強いるという究極のチームプレイ。
    毎年テレビの前にかじりついて、颯爽と走る選手に感嘆しつつ、脱水症状で倒れそうな選手の足が一歩でも前に出るように祈り、時間切れで襷が途切れることが無いように必死に応援してしまう。

    本作は、そんな「箱根駅伝」にたった10人(しかもほぼ寄せ集め)の弱小陸上部員が挑む話。
    現実には箱根駅伝は各大学がプライド(とお金)をかけて挑むものであり、ありえないけれど、でも、箱根駅伝が本質的に持っているロマンを思えばこの筋書きにケチをつけるのは野暮だと思う。
    実際、作者は箱根駅伝について詳細にリサーチした上で緻密な物語構成を行ったと思われ、それほど無茶なストーリー運びには感じさせない。

    個性豊かで、それぞれ欠点も持っている登場人物(敢えて言うと、ハイジのキャラ造形が「そこまでできた大学生がいるだろうか?」と少しご都合主義を感じなくもないけど…)たちが、切磋琢磨し走者として、そして人間として成長していく姿が心地いい。
    クライマックスで箱根駅伝を走る彼らの独白は胸にせまってきて、それほどお涙頂戴な内容ではないはずなのに涙が止まらなかった。

    物語の締め方も潔くて良かった。

    蛇足ながら、あさのあつこの「バッテリー」を思い出すなぁと思いながら読了したところ、映画版での走役はやっぱりというかなんというか林遣人だったそうで納得。ジョータとジョージが斉藤兄弟ということも納得(笑)。

  • 三浦さんの著書としては長編だったのでなかなか読む意欲がわかずにいた本です。

    でも読み始めたら、止まらない!。
    余談だが3秒だか30秒で感動を呼ぶという映画音楽が流れる日曜日だというのに空いているカフェで5時間弱、一気に読み終えてしまいました。

    たまたま集ったボロ下宿アパート竹青荘、通称アオタケでは住人が実に大学生らしい生活を送っていた。この10部屋が満員となり、まさかの箱根駅伝を目指すメンバーとなります。

    箱根の山は天下の剣!という有名な文句があるように、日本のお正月の風物詩でもある大会。そこには毎年涙なしでは見られない様なドラマが待ち受けています。私の祖父もここで戦った選手でした。それだけに箱根駅伝は身近なところに当たり前のようにある競技。でも選ばれた精鋭達でさえも苦戦を強いられる場でもあります。

    ボロアパートの暮らしから始まるところは面白かったのですが、プロローグがえらい長く読むのがちょっぴり億劫だと感じましたが、ここはどうしても必要な場面でもありました。

    住人(選手)の1人1人の個性が深く語られていなかったならば、いざ箱根駅伝の各区間を熱く感じることができなかったと思うからです。あまりに過酷なレースを知る余り、転倒!棄権!といった事件の予感もありました。が、そこまでの展開はないものの、その場を間近で目にしているようなドキドキがあり呼吸が苦しくなりながら読了。それでも読み終えてからは清々しい気分になりました。

    ページの多さも手伝ってか、読み終えた満足感は半端なかったです。年末あたりに読んだら、また箱根駅伝が何倍も楽しめること間違いなしです。何かに打ち込むことっていいな。

  • 素晴らしかった。駅伝を実際見た事はないのに、文章に勢いがあって、情景が頭に浮かび、自分もまた走っているかのように駅伝を体感した。読み終わった今でもドキドキが止まらない。個性的だけれど身近に絶対いそうな10人のキャラクター。共感できるキャラクターがきっといるはず。私はキングでした。

  • 2015年、記念すべき第1冊目。

    箱根駅伝、もちろんお正月にテレビで目にした事はあります。
    子供の頃はひたすら退屈で、早く終わらないかなぁ、他のテレビが観たいんだけど。。
    と思っていました。
    大人になった今でも印象はそれ程変わらず。

    今年だって家族が駅伝の中継を観てる中、私はこの本を読んでいたくらいですから。
    読み終わって少し後悔。
    こんなにドラマチックな事が新年早々、始まっているなんて。
    来年からは駅伝見よう。


    まるで自分も走っているかの様な疾走感。
    上手くいきすぎでしょ!と捻くれた思いも吹き飛ぶくらい面白かった。

    駅伝がスタートしてからの一人一人にスポットが当たった場面がお気に入り。

    改めてスポーツものに弱いと実感しました。

    2015年、素敵な作品で読書始めをする事が出来ました。

  • 好きな本がまた一冊増えました。
    この物語が空想のものでも、それぞれの熱い思いはは真実なんだと思いました。
    走る中で語られた言葉が胸をゆさぶって、何度も泣きそうになりました。だけど、走る走たちをスピードを緩めずに見守りたい思いで読み続けました。
    わたしは走ることが苦手だし、大嫌いです。でも、だからこそ、憧れと尊敬といろいろな思いを抱きながら読み終えました。
    箱根駅伝を来年初めて、家族と一緒に見に行きます。

  • 私、三浦しをんさんの作品好きだ!その予感を、確信に変えてくれるには十分すぎる作品でした。面白かった!

    灰二(ハイジ)と走(かける)を中心に、箱根駅伝を目指す物語。陸上にまったく縁のない私でも、読み進めるうちにどんどん引き込まれ、後半になるにつれ加速度が増し、まるで箱根の山を颯爽と駆け下りていくランナーのように、一気に読み切ってしまいました。ひとつの目標に向かってみんなで支え合って努力する。ありきたりな感想かもしれないけど、なんかいいなって思いました。

    話の展開は、陸上に詳しい人であればあるほど「そんなの、ありえない!」というものなのかもしれない。でも、それが実現できるのが小説の世界。こうなったらいいな、もしかしたら、現実世界でもこうできるかもしれない、そんな希望を抱けるのが小説の素敵なところだと思うのです。三浦さんの作品は、まさにそんな希望がこめられた、素敵な世界観でいっぱい。すっかりファンになってしまいました。

    作中、ある登場人物が自分をこんなふうに評しています。

    「小心であるがゆえに、プライドが高い。傷つけられることを恐れて、ひとと親しく交われない。そんな臆病な本性を、だれかに知られることすら許せないから、表面上はひとづきあいのいい明るい人間を装う。(中略)でも、悩みを打ち明けられる相手がいるかと問われれば、だれも浮かばない」

    うわっ…、まさにこれ、私自身だ…。そう気付いたとき、この人物におもいっきり感情移入してしまい、心から応援したくなって、気が付いたら涙腺が緩んでいました。こうして深く思い入れることができるくらい、個性豊かな面々を描き出せるのも、三浦さんの素敵さのひとつだと思います。

    ハイジや走、竹青荘のメンバーはその後どんな人生を送っているんだろう。読み終わった今、それが知りたくてウズウズしていて、そんなふうに読後まで楽しませてくれる三浦さんは、やっぱり素敵な作家さんだなぁと思わずにはいられません。さらに続けて他の作品も読んでみようと思っています。

  • かつて、箱根駅伝の往路のゴール地点(芦ノ湖)で、実際に箱根駅伝を観戦して、選手やチームの熱気を肌に感じた経験や、

    そもそも、私自身も、中学、高校、大学と、陸上競技のクラブチームに身を置いていた経験から、

    『風が強く吹いている』で描かれている登場人物それぞれの価値観に、共感できるところが多かったように私は思います。


    私は、本文中の以下の部分が好きです。

    「好みも生きてきた環境もスピードもちがうもの同士が、走るというさびしい行為を通して、一瞬だけ触れあい、つながる喜び。」
    (p.599 より引用)


    陸上競技というスポーツは、ある意味で「孤独」なスポーツだと私自身も感じている部分がありますし、
    自分の走りを追及すればするほど、最後は「自分自身との戦い」になっていくものなのです。

    そして同時に、チームや仲間の支えがあり、信頼があり、
    走るという同じ時間や空間を共有して、目に見えない絆が生まれる。

    だからこそ、時に、自分以外の誰かを思い、走り続けることができる。


    『風が強く吹いている』で描かれている世界は、透き通っていて美しい世界だと思った。
    読み終えて、本当に良い小説に巡り合えたという率直な感想を持ちました。

  • 熱くなれる小説、希望を持てる小説ともいえる。著者が「私の本が希望であってほしいと思っています。」とも言っている。著者の筆力と、調査と執筆に6年を費やした努力が、陸上の経験もないただの若者が箱根駅伝に出るというストーリーに、絵空事ではない、現実感、納得さを、与える。そして、世の中にうまく順応できず、不器用にしか生きられないすべての人に「希望」を与えてくれる。

  • 陸上への夢を捨てきれない大学生が、天才的な才能を秘めた長距離走者の新入生と出会う。
    ここから物語が始まる。
    紆余曲折を経ながら、彼らと、下宿に集まった様々な学生達とで箱根駅伝を目指すことに。

    荒唐無稽な箇所や、気恥ずかしくなるような描写などもなくはないが、成長譚としても群像劇としても十分に楽しめた。

    彼らが自身の担当区間を、様々な思いを抱えて駆け抜けるところは特に読み応えあり。
    とりわけ6区のランナーの山下りは鮮烈な印象。
    6区のランナーはこれまで体験したことのないスピードの中で、その速度で常に走り続けている天才ランナーの孤独を知る。
    天才の孤独を天才ではない人間に感じ取らせることで、凡人の自分にも天才の孤独が垣間見えた気がした。

  • 201316.今まで駅伝ってあまり興味なくて、ただ走っているだけ~なんて失礼な事を思っていました。でも、自分も昨年からランニングを始め、今年はTVで箱根見て涙している自分がいました。それがあったので、こちらを読もうと手に取りました。選手それぞれにドラマがある。そしてひとつの目標にいつしか皆が向かっていく姿に感動しました。時々ある大家さんの言うことや、走のツッコミが笑えてとても楽しくて、感動ももらえ満足な本でした。

  • ◆高揚する。これは力のある本。読了後、努力し行動したくなる。
    ◆「走るという行為は、一人でさびしく取り組むものだからこそ、本当の意味でだれかとつながり、結びつくだけの力を秘めている」「好みも生きてきた環境もスピードもちがうもの同士が、走るというさびしい行為を通して、一瞬だけ触れあい、つながる喜び」…「孤独」のプラス面がきちんと取り上げられていることに打たれる。自由に生きることの孤独と苦しみと喜び。「走る」=「生きる」。
    ◆与えられた環境や才能に個人差があっても、自分の理想に向かって努力し生きる・「自由」のチャンスは平等に与えられている。
    ◆受験がおわったらムスコにも読ませたい、っていうかほんとは受験期の今読んでほしい(笑) 恋の行方は気にならないが、ニコチャンの就職やユキ先輩のその後、キングや王子のその後が気になって仕方ありません(≧▽≦)ノシ 【2014/01/20】

  • ただただ胸を熱くした。
    一生忘れられない一冊がまた増えてとても嬉しい!!
    『走り』を通して走以外のメンバーは自分自身と向き合って戦う孤独を知るが、走は逆で、走る孤独からメンバーとの繋がりを学ぶ部分が走の才能に恵まれっぷりを象徴してるようで印象的だった。
    それぞれが自分なりに、自分の役目を果たそうと精一杯襷を繋ぐ姿に感動した

    きっとこの記憶は
    メンバーがその後の人生でどんな挫折を経験しようとも、その都度多大な好影響を与え続けるんだろうな。いいなあ


    ハイジさんだいすきです!

  • 前へ、前へ、ページをめくる手が止められない。

    美しさというものの持つ力は本当に強いと思う。走る住人たちはとてもとても美しかったから。
    一人一人のエピソードに胸を打たれた。坂道を駆け降りるユキのシーンが特に印象的。走とハイジさんは言うまでもなく。

    それと。
    エピローグがすごくよかった!あまりにもはやく美しく駆け抜けていく小説で妄想を挟む隙もなかったけれど、おかえり、にときめいてしまった。

    小説の素晴らしさを再認識できた作品。

  • 感動しました。涙が止まりませんでした。

    自分も学生時代に陸上(長距離)をかじっていました。だから、一人ひとりが自分と戦いつつもチームを信頼してゴールを目指す、という駅伝ならではの独特の空気や記憶が鮮やかに甦ってきました。

    そして、現役時代にモヤモヤとして形を得なかった『走る』という事への1つの答えをもらえた気がしました。作中にもありましたが、長距離って本当に自分と向き合う時間の多い競技で、走っている最中に「自分とは何者なのか」と考えることもありました。だから、『長距離選手に必要なのは、本当の意味での強さだ』という言葉がストンと腑に落ちた感じがしました。

    速さや結果だけを求めるだけではむなしい。大切なのは自分の中にある理想や目標を定められているか、そしてそれに近づけているかということなんですね。このことは人生を生きる上でも大切にしたいものです。それを忘れない為にも『走る』という趣味を続けていきたいな、と思うことができました。

  • 『仏果を得ず』も良いけど、一つのことを極める系はこっちの方が面白い。
    走るときに感じる風が感じられる。
    ユキが坂道を駆け下りるシーンが特に印象的で好きかな。

  • 正月の楽しみ、箱根駅伝。今年の正月も例に漏れず箱根駅伝を堪能し、さらに本も読みたくなり手にとった一冊。理由は異なれど「走る」ことをやめてしまった走とハイジ。偶然出会った二人と竹青荘に住む陸上に関してはほぼ素人の住人たちが目指したのは、学生ランナーの憧れ『箱根駅伝』だった。箱根駅伝で襷を繋ぐという一つの大きな目標に向かい、仲間と共に走り続けることで「走る」ことの意味や愉しさに気付いた走。ほぼ初心者に箱根駅伝は無理だろうと思ったが、そんな当たり前のことは綺麗に吹き飛ばしてくれる爽やかで温かい友情物語だった。

  • 駅伝の話である。
    私が今まで読んできた三浦しをんの中で一番ページ数が多いのがびっくり。
    文庫で600ページ以上!
    そして、何よりもその量を感じさせないくらいに、一気に読み進めてしまう内容の面白さ。

    最初、主人公はハイジなのかと思いきや、走とハイジのバディものであることが判明。
    走る…ただそれだけの行為に、いろんな思いがあふれる様、各キャラクターの心理描写は見事というべきところ。
    ジョージとジョータの双子設定が、最初、桜蘭高校ホスト部のふたりのような感じかな? と思いきや、似ている部分や似てない部分もあり、まぁそういう表現になるよなぁと。

    面白かった! に尽きる一冊。

  • 走るということにかける思いが素晴らしかった。長距離を走ったこともないような人達で構成させれた弱小チームが箱根駅伝で良い結果を残すまでに成長する物語。このメンバーだからこそ成し遂げられたことだと思う。
    チャレンジしても良い結果が得られないかもしれないが、チャレンジしなければ良い結果が得られることは絶対にない。僅かでもある可能性にかけて挑戦してみることが大切だと感じた。
    箱根駅伝本番の部分は一気に読んでしまった。読んでいるこちらまでハラハラドキドキするような争いでページをめくる手を止められなかった。
    最後は寛政大を応援する一観客として、応援しながら読んでいた。
    ここまで感動する物語だとは思っていなかった。

  • 純度100%の・・・

    の煽り文句の文字の通り、最っ高に密度が濃い、若者達の青春の輝きを描ききった傑作。

    清瀬が直面した切ない現実も、彼の選んだ選択も、十分に納得できるだけの物語が積み重ねられていたことで安堵。

    具体的な数字や成績を描かれてはいないけれど、竹青荘の取り壊し=新寮建設という描写から、走りに目覚めた双子の活躍も想起させられて好印象。

    淡い恋(?)の行方の描写も、なんともこそばゆい気持ちになれて◎。

    文句無しに★5つ、10ポイント。
    2016.01.21.図。

    図書館本で読んだのだけど、手元に置く用に改めて買いたいな、と思った珍しい一冊。……文庫版じゃない方で。



    同じく箱根駅伝を描いた堂場瞬一と、本書の筆者の三浦さんとの、作品から感じられる“箱根歓”の違いも、興味深かった。

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風が強く吹いている (新潮文庫)の作品紹介

箱根駅伝を走りたい-そんな灰二の想いが、天才ランナー走と出会って動き出す。「駅伝」って何?走るってどういうことなんだ?十人の個性あふれるメンバーが、長距離を走ること(=生きること)に夢中で突き進む。自分の限界に挑戦し、ゴールを目指して襷を繋ぐことで、仲間と繋がっていく…風を感じて、走れ!「速く」ではなく「強く」-純度100パーセントの疾走青春小説。

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