きみはポラリス (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101167602

感想・レビュー・書評

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  • 見事に全話の色が違う、一捻りしたイレギュラーな恋愛ばかりの短編集なのに、どうして三浦しをんさんは、こんなに多様な登場人物の気持ちを、本人たちの言葉のように書けるんだろう!
    最近三浦しをん先生読んでなかったけど、いろいろ読みたくなったな〜。

    「腐敗しとろけゆく、永遠に暴かれることのない秘密」を共有する2人の絶望的で甘美な愛と、俊介の暗い色気が心に残る『私たちがしたこと』、
    スリリングで切実で、信仰に似た恋愛感情を描いた、最後までどうなるかわからない『夜にあふれるもの』、
    ストーリーに動きはないのに、主人公の「恋情を全う」する決意に胸打たれる『骨片』
    が、今回特に好きだった。
    でも前に読んだ時は、とにかく『永遠に完成しない二通の手紙』に胸キュンしたし、読む時によって推し短編は変わりそう。

  • 三浦しをんさんは、これまで読んだことが無かったが、先日、読書仲間に紹介されて購入。

    11の短編集による、恋愛疑似体験フルコースである。
    11のストーリーを読んで、これだけ沢山の恋愛バリエーションがあることを知った。どのストーリーも独特で、予想の斜め上を行く驚きと感動があった。

    ちなみに私は「骨片」「冬の一等星」がお気に入りである。誰だって、心に秘めた思いを長年持ち続けているのだろう。

    そして、自分の経験が決して恥ずかしいものではないことを悟った。これまで「甘酸っぱい、イタイ」として見向きしなかった思い出に対して、しっかりと向き合って良いんだと、清々しい気分になることができた。

    • workmaさん
      シントラさん
      ご自分の経験が、読書によって清々しい気分になれるなんて…とよい読者体験をされたのですね…
      それこそ、読書の「醍醐味」...
      シントラさん
      ご自分の経験が、読書によって清々しい気分になれるなんて…とよい読者体験をされたのですね…
      それこそ、読書の「醍醐味」ですねぇd=(^o^)=b
      2022/02/20
    • Sintolaさん
      workmaさん コメントありがとうございます。
      疑似体験と自分自身の追体験、両方味わうことができ、大満足でした。
      workmaさん コメントありがとうございます。
      疑似体験と自分自身の追体験、両方味わうことができ、大満足でした。
      2022/02/20
  •  「恋愛をテーマにした短編」11編をまとめたもの。

     この中には、結ばれることがない悲しみを描いたもの、結ばれたはずなのにどこか寂しさを感じるもの。
     ただ幸せだと言い切れないようなどこか影を描いたもの。
     様々な愛の形がこの本にあります。

     この中で、最初の『永遠に完成しないニ通の手紙』と最後の『永遠につづく手紙の最初の一文』が、ある意味、プロローグとエピローグのような気がしているのです。
     天真爛漫に腐れ縁ともいえるような友人に、好きな女の人に手紙を書きたいという寺島良介。それを聞きながら、寺島への思いを心に閉じ込める岡田勘太郎。

     この短編集、バラエティに富んでいます。
     同性愛、不倫、親子の愛、宗教的な愛、三角関係、いろいろな形で描かれる恋愛模様。幸せなだけではない、複雑な思いを抱えたものも。
     読後感がすっきりするものばかりではありませんが、とにかくすごいと感じました。

  • 恋愛テーマの短編。どれも 分かるーと思うけど実際同じ気持ちになるかといえば、似てる様な似てない様な。それが恋愛なのかな?ほのぼのしたー

  • 穏やかな幕開けながらも最後にはがらりと雰囲気を変え、突然断ち切られるように終わるショート・トラック「永遠に完成しない~」に始まり、力強い声で高らかに歌う「裏切らないこと」、ミステリアスな曲調で先を急かす「私たちがしたこと」と続き、重苦しくも荘厳な主題を持つ「夜にあふれるもの」、ノスタルジックなバラード「骨片」につながっていく。別々の物語ではあるが全体の構成としてはしっかりと緩急がつけられており、通読すると、まるで1枚のCDアルバムを聴いているかのような感覚がある。
    その後もスリリングで危うい雰囲気の「ペーパークラフト」をはさみ、王道ポップス路線の3曲「森を歩く」「優雅な生活」「春太の毎日」で和んだところへ、表題曲であろう「冬の一等星」の、センチメンタルなイントロが流れてくる。そして、1曲目と同じメロディを含む「永遠に続く手紙の最初の一文」で、まさに永遠に続く時間を思わせながら全ての曲の終わりを迎える。
    まるで三浦しをんのラブソング・ベストアルバムとでもいうべき、異なった魅力を持つ12編が収録された、内容の濃い、お得な一冊。

  • 三浦しをんさんの短編集。
    背表紙に「最強の恋愛小説集」とありますが、恋愛小説の甘い雰囲気や、いわゆる「胸キュン」を求めている人が読むと、何か違うなと思うかもしれません。

    巻末の中村うさぎさんによる解説では、この短編集をフルコース料理、作品のエッセンスを隠し味にたとえていますが、私が自分なりに例えて言うなら、「バレンタインフェアで店頭に並ぶ、高級チョコレート(豪華な箱入り!)」という感じでした。

    一般的な恋愛小説がMei●iのチョコレートだとするならば、こちらはゲランドの塩や、オーガニックの農園から取り寄せたベネズエラ産カカオを使って作られた、一口大のチョコレートのアソートです。

    日ごろから恋愛小説に疎く、ミステリーやホラー系、ファンタジーなどまさに”非日常”な小説が好きな私でも、十分に楽しめる作品でした。
    表面上の恋愛の素晴らしさを謳うような作品ではなく、鍋の底から(!)全てをさらって盛りつけたような作品です。

    私は「骨片」と「春太の毎日」、「冬の一等星」が好みでしたが、一番は……うーん、「骨片」、かな。
    知り合い同士で読んで、「私はこれのこういうところが好き」と語り合いたくなる作品集です。

  • 全体的に心地良い。
    色々な人の色々な人生がある。
    帰りの電車の窓から家々の明かりを見て、電球の下の団欒を想像したときのような暖かさがある。

  • 図書館に行かなかったから、
    この本がすごい好きだったのを思い出して、家にあったこの本を読んだ。

    三浦しをんさんの、名前の中に を があって、
    この名前のバランスなどが好きで、
    三浦しをんという名前、名前の佇まいと、
    三浦しをんさんが記す物語がとても美しくリンクしてるように感じる。

    短篇集が全部で11個

    永遠に完成しない二通の手紙
    ひっそりとその人を想う気持ちは、温かい気がした。


    裏切らないこと
    ちょっと衝撃な部分があったけど、
    この物語にはおもしろいものが2つあって、
    ひとつは、小学生の思いつきから始まった、
    ものすごい確率の偶然の話しと、
    ある老人2人の話


    私たちがしたこと
    これも衝撃だったし、
    平日の夜は夜遅くに帰るから、怖くもなった。
    俊介のいつまでもなくならない、優しさが、
    闇のように感じ、
    もうどうしようもなく感じた。
    朋代と美紀子が2人で作った美紀子のウエディングドレス、
    いいなぁ。


    夜にあふれるもの
    オカルトの話?なので、吉本ばななさん思い出した。
    でも、ただ真理子のことを不審に思う人が多い?中で、
    そんな真理子なことを包んでくれるエルザがいることがよかった。羨ましかった。


    ペーパークラフト
    とても苦手だった。
    でも、解説の中村うさぎさんが、
    この短篇集全てには、それぞれの秘密がある。
    知って初めて安心するような幸福な秘密もあるけど、
    そんなのはとても稀有な例。
    たいていの場合は、知ってしまった自分を責めたくなるくらい。
    と書いてて、
    この物語のことが浮かんだ。


    森を歩く
    とっても好きな、好きな話。
    ユザーンさんが浮かんだ。
    前、情熱大陸で見たプラントハンターの方のときもおもしろかった。
    それになによりこの登場人物の名前が最高なのです。
    福岡県の浮羽郡で生まれた うはねちゃん
    うはねと聞いて、ハワイの先住民のことばで、
    霊魂という意味と思った、松尾捨松
    とっても大げさだけと、うはねって名前が全てをしあわせにしてくれるみたいに感じる。
    読んでて楽しかった


    冬の一等星
    この話も、大大大好き
    車と映子えいこと文蔵の話。
    これを読んで、
    いとこのこども、ともだちのこども、先輩のこどもが浮かんだ。
    わたしにはこどもがいないし、
    子育ての大変さがわからないと思う。
    でも、いつまでも私から解放されない、
    父母を見てると、すごい大変なんだろうなぁとか、
    自分が悪いのに、なんか可哀想に感じてしまう時がある。
    でもこの物語読んでて、わたしは年にほんの数回しか合わないけど、
    こども時代を過ごしてる、おちびちゃんたちを見てると、すごい羨ましくもなる。
    前、ももちゃんを見てると、
    いつまでもそのままで居てね。
    とか、これから何かあって、辛く落ち込んだりすることがなければいいのになぁとか
    変なこと?思ってしまったり、
    こどもの頃のそのひとつひとつの感情が、
    おもしろくって、きらきらしてて、
    壊さないように、壊さないようにしたり、
    みんなのこどもも、みんなの未来が楽しみになる。
    だから、映子ちゃんが小さい頃夢に出て来た場所へ、
    大人になって実際に行ってみたり、
    小さいころの思い出が、
    本当に星のようにきらきら輝いてて、
    読んでてすごく嬉しくなった。楽しかった。


    永遠につづく手紙な最初の一文
    最近、怒りもそうだけど、同性愛がすごく美しく見えることが多く、綺麗に感じた。


    ポラリスって、北極星のことだって
    実家に戻ってるとき、
    沙耶ちゃんが、夜空に画面を向けると、
    星座がわかるアプリを教えてもらった。
    わたしも、次の日が休みの帰り道、
    ときたま当てたりするよ
    最近は、曇りばかりで星が見えないけど

    八歳の冬の日からずっと、強く輝くもよが私の胸のうちに宿っている。
    夜道を照らす、ほの白い一等星のように。
    それは冷たいほど遠くから、
    不思議な引力をまとっていつまでも私を守ってる
    冬の一等星より

    今日は、にぃーちゃんとお母さんと電話した。
    珍しく休みにいろんな人と話せた気がする。
    よかった

  • 不思議な日常生活の短編集11話。手紙ではじまり、手紙で終わる。怖い話あり、恐ろしい話あり、暗い話あり、黒い話あり。ポラリスはポールが極という意味で、北極星のことを指す。北極星は、北半球では夜空で動かない。これらの話では、誰が動かないのだろう。著者と助産師さんは動じない。登場人物を操っている。「私(助産師)がポラリス」が本当の題名かも。あるいは「きみは(産婦)がポラリス)」で合っているのかも。解説:中村うさぎ

  • 様々な愛の形をリアルに描いた
    11編の恋愛短編集。

    禁断の恋、三角関係、同性愛、
    片思い…

    たとえ未来が見えなくとも
    人が人を好きになるということを
    誰が責められるだろう。



    最後の最後に
    思いがけない人の
    切ない想いが浮かび上がる
    「永遠に完成しない二通の手紙」


    家庭を築くことや
    本気を貫くことの意味を考えさせられる
    「裏切らないこと」


    白夜行を思わす世界観で
    後の長編『光』の元ネタとなった
    「私たちがしたこと」


    純文学の香り漂う
    亡き恩師への慕情を描いた
    「骨片」


    ある復讐の形を描いた
    「ペーパークラフト」


    職業不詳の同棲相手・捨松を尾行する
    うはねの冒険譚
    「森を歩く」


    大きくて一途な無償の愛に
    思わずうちのメタボにゃんを抱きしめてしまった
    「春太の毎日」


    など、秘めたる想いが
    痛くて怖くて
    きゅい〜んときて
    胸に沁みる、
    濃密な短編がズラリ。


    しかしこの人の小説は、
    エッセイとは全く違うテイストで
    面白いですね。

    短編集だけど
    語り口が上手くて
    バラエティーに富んでいるので
    ページをめくる手が止まらなくなり
    とにかく読ませます。


    ありきたりな
    甘ったるい恋愛だけではなく、
    重く湿り気のある
    ダークで切ない話が多いのも自分にとってはツボでした。


    秀逸過ぎるタイトルと
    中村うさぎによる
    解説文がまた素晴らしい。


    人それぞれにお気に入りの一編を見つけるだろうけど、
    個人的には
    「裏切らないこと」
    「春太の毎日」
    「冬の一等星」

    お気に入り。


    読み応えあってかなりお得なので、
    ありきたりな恋愛ものに飽きた人や
    短編が苦手な人にも
    オススメです。



    普段は気付けないけど、
    夜道を照らす一等星のように

    誰もが誰かに
    守り守られて生きている。


    あなたにとっての
    ポラリス(北極星)は
    誰ですか?

著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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