天国旅行 (新潮文庫)

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著者 : 三浦しをん
  • 新潮社 (2013年7月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101167626

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天国旅行 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 何か読む本ないかな~と思っていたところで出会った。直感で手に取ったのだが、解説の角田光代さんの重く深い言葉の一つ一つが突き刺さり、勢いで購入。これが大当たりでした。
    「心中」がテーマの本作は、どの作品もしをんさん的なひねりが効いていて、それぞれに先が読めない。不気味で、ぞわりと怖いのに、どこか滑稽だったり、静かに哀しかったり。よく描かれる、ただただ悲観的で、過剰に美化されがちな死と違い、しをんさんの視点は冷静だけどどきっとするところを突いている。
    一体どういう気持ちで死を選んだのか?どうして殺されたのか?彼の正体は何なのか?…どこか謎に包まれている、「死」を巡る状況。それぞれの謎の解釈は読者に委ねており、どの作品もいい意味で「わかりやすくない」。前世の夢に捉われたり、あるいは夢で懐妊したり、恋人の幽霊が見えたり…時に非現実的な設定もあるけれど、その描写が不思議と説得力があるのだ。近しい人の死により人生は一変するけど、その後も残された人らの日々は続く。哀しみや苦しみが複雑に入り混じり、だけどほのかな希望がわずかに見え隠れする、独特な読後感の一冊だ。
    一番印象的だったのは、「森の奥」。富士の樹海を舞台に、生死のはざまでみっともなく惑い揺れる中年男性の滑稽なほどのカッコ悪さ。謎の男性との束の間の交流でカッコ悪さはさらに際立つものの、共感できるところもあり。最後はちょっと泣きそうになる、しをんさんらしい作品だなと思いました。

  • 心中をテーマにした7つの短編集。
    心中なんてものをテーマにしているのだから、暗い小説かと思いきや意外と明るい物だった。死で終わるのではなく、死を通して生を語っているからだろうか。何があっても、今生きている事が大事だと思える内容だった。特に気に入ったのは「初盆の客」。
    相変わらず、しをんさんの文章は美しく読みやすい。

  • 心中をテーマにした短篇集です。
    心中という言葉の持つずしりとした重みから、なかなか手に取らずにいたしをんちゃん作品でしたが、いざ読み始めるとページをめくる手が止まりませんでした。

    好きだったのは「遺言」。
    おかしみが存分に散りばめられた前半からのめりこんでしまい、最後に一気に押し寄せる切なさにやられました。
    こんなに愛しい気持ちがたくさん詰まった遺言状をもらったら、相手が死んでしまった後であろうと惚れ直してしまいます。
    最後の数行を読んだとき、ふと夏目漱石『夢十夜』の「第一夜」の美しさを思い出し、また切なくなったのでした。

    中には、ずしりとくる読後感のものもいくつかありました。
    出口のない問いかけに囚われてしまいそうな。
    「君は夜」「炎」「星くずドライブ」は引き込まれて読んだあとに、もやもやっと胸をよぎるものがあり、少し不安な気持ちが残りました。

    しをんちゃんの描き出す作品の多彩さに改めて圧倒されました。
    今まで敬遠していたのが嘘のように、本書に夢中になっていたのでした。

  • 心中(自死)をテーマにした短編集。
    だからけして軽くはないし楽しくもないけれど、単純にこの作者さんはおもしろい物語を紡ぐ人だな、と思った。
    先が予想しにくいし、気になるからどんどん読み進められる。
    角田光代さんによる解説にもあったけれど、不思議な関係性の物語が多かった。家族でもない、友だちでもない、でも実は自分を助けてくれているのは、親しくはない誰かなのかもしれない。

    自殺しようとした人が救われて生きることに決めたり、本当は生きたかった人が報復のために死を選んだり、一家心中の生き残りが少しずつ希望のあるほうへ進んで行ったり…様々な“生と死”が描かれている。
    綺麗事ではないし、泣かせるための死を描いているわけでもない。
    ただ生物として産まれれば避けては通れない死というものを、壮絶に、厳しく、そして温かく描いている。

    これもあとがきにあったのだけど、最近の物語は、読者を泣かせるために必然性のない死を扱っているものが多いように感じるとあって、確かにそうなのかもしれないなと思った。
    それでも結局読んでて泣いてしまったりはするんだけど、そういう意味でこの小説は、それらの物語とは一線を画しているってことなんだと思う。

    三浦しをんさんの小説を読むのは初めてでした。映像化されてるのはけっこう観てるんだけど(まほろ駅前シリーズとか、舟を編むとか)売れてる理由がわかった。
    変わった設定が好きだからツボにはまった物語が多く、「初盆の客」「炎」がとくに心に残りました。

  • かなり前に読んだが
    SINKが最も印象に残っている。
    読んだ後のモヤモヤ感と空虚感
    明日もう一度読もう。

  • 死がテーマなのに、こんなに軽妙に描かれているということに驚き。
    いろいろな生と死がある中で、私たちは自分の意識上「生」しか味わえない。けれど味わえる間は甘んじていたいなと思える。
    可能ならば、奇っ怪に見えたとしても、自分なりの愉快さを伴って。

  • 死が間近にある人々の短編物語・・と言えば良いのでしょうか。
    年齢性別も様々、事情も様々。
    あらすじを見るとわかりますが、決して派手でも華やかでもなく、かといって全く持って新しいアイデアと言う訳ではありません。
    ですが三浦しをんさんの本の素晴らしい所は、詩的に美しい文章、繊細な風景や心理描写です。
    間違いなく、彼女にしかかけないものが今作含めて他の本でも見られます。
    今作は「死」という陰鬱さを感じるテーマですが、読んでも不思議と重苦しさは感じません。
    その重苦しさの無さは、彼女の巧みな文章と読み手に一番伝えたい物の為であります。非常に素晴らしいと思えます。
    彼女の本に関しては、その魅力はあらすじではなく、本を読まないと理解できないと思います。

  • 現実に絶望し、道閉ざされたとき、人はどこを目指すのだろうか。
    すべてを捨てて行き着く果てに、救いはあるのだろうか。
    心中(もしくは自死)をモチーフにした短編集。

    テーマは心中でありながら、主人公はみな生きる人たち。
    死を身近に何を考え、何を想うのか。
    死を選ぶ人たちにとって、死は救済であり、絶望的な生からの離脱であり、誰かに何かを訴える究極の手段でもある。

    一方で、本書に登場する死は、餓死、焼死、溺死と壮絶なものが多いです。
    「天国旅行」なんて美しいタイトルに反して、死は残酷な一面も持っている。

    解説で角田さんが言っているように、小説では時に死が不必要に美化されていたりすることがあって、読み手を泣かせるためだけに描かれていることさえある。
    それでも、誰にも等しく1度しかない「死」について、読みたびに涙してしまう。

    本書では淡々と妻への想いを綴る「遺言」に泣かされました。全体を通して、生と死と夢が入り混じる不思議な読了感。しをんさんの語り口がやさしくて好き。
    「初盆の客」や「星くずドライブ」も切なくて好き。

  • どの短編も心に残るのだけれど、特に遺言が良かった。朴訥とした語りの中に、奥様への愛情が溢れている。

  • 「死」がテーマの1冊。そうとは知らず、表紙のデザインで購入して読みました。
    いろんな死が書かれているけれど、解説の角田さんが書かれていたように、読んでいて逆にとても「生」を意識したように感じました。

    文章がとても綺麗で、三浦さんのお話は素敵だなと思います。

  • 心中を扱った短編集。それぞれの話が偏ることなく、違った視点から書かれていたので、なかなか読み応えもあった。暗くなりがちなテーマなのにそういった雰囲気はあまりなく、幽霊も登場するがファンタジーな感じはしない。読了後はその話について思いを巡らせて、考えてしまうものばかりだ。はっきりと白黒つけない終わり方が多いので、もやもやする人もいるかもしれない。どちらかというと私はそういったものが好きなので、彼らはこの後どうなるのだろうとか、自分だったらこうするだろうなあとか考えてみるのも面白かった。中でも「星くずドライブ」は突拍子もなく始まったかと思うとなかなかヘビーな問い掛けが待ち受けており、こういった心中もあるのかと唖然としてしまった。やっぱりこの作家さんはすごい。

  • 「人生が愛おしくなる7つの物語」―。文庫の帯にはそう書いてあったけど、そんなに軽々しいものではない、と読後の私は感じました。解説の角田光代さんの言葉を借りれば、「死を美化していないのと同様、生もまた、美化することはない」7つの物語は、生と死が隣り合わせとなった現実世界で私たちが生きていかなければいけない意味を容赦なく考えさせようとする。その結果として、生きることの面白味を見いだせる、というような、そんな印象を受ける作品でした。

    「心中」をモチーフにした短編集。収録された7編は、驚くほどに個性豊かなものばかり。さまざまな情景で紡がれるそれぞれの作品は、全て別々の作家さんが書かれたアンソロジーなのではないかと思えるほど、一人の作家さんから生み出されたとは思えないくらい、別個の世界観を確立していたように思います。それでも、「心中」というモチーフが中心に据えられている分、それぞれの登場人物たちを通して、生と死という万人に共通して与えられている人生のテーマにより深く感じ入り、考えさせられるものがありました。

    「英ちゃんを好きだって思いだけしか、いまは残ってない」(『星くずドライブ』より)

    もし今、私が死んだら、私は想いを残せるだろうか。私がこの世にいる証しが何もかも消えてしまったら、想いさえも消え失せて、何も残らないんじゃないだろうか。私の想いを、心の中に抱いて生きていってくれる人が、果たして存在するだろうか。香那の想いを受け止める英ちゃんのような人が、私の周りにはいるのだろうか―。

    死を通して紡がれる、人と人のつながり。「死にたい」と思うことも、「生きたい」と思うことも、結局は誰かとのつながりがもたらす意思なのかなと感じました。生も死も美化することなく描かれる本作は、それでも読後に、大切な人たちへの想いがある限り、生をまっとうしなければと感じさせてくれるような作品であると思います。

  • この著者が書く話は、けっこう好きです。文章もさくさくいくし。すいすい読めます。
    スタートの話が特に好きです。

    しをん作品は、いま密かなマイブーム。

    文章うまいよなーって。

  • 祝文庫化、、、チョッと重そうだな。

    新潮社のPR
    「現実に絶望し、道閉ざされたとき、人はどこを目指すのだろうか。すべてを捨てて行き着く果てに、救いはあるのだろうか。富士の樹海で出会った男の導き、命懸けで結ばれた相手へしたためた遺言、前世の縁を信じる女が囚われた黒い夢、一家心中で生き残った男の決意――。出口のない日々に閉じ込められた想いが、生と死の狭間で溶け出していく。すべての心に希望が灯る傑作短編集。 」

  • 物語自体は面白かった。
    でも短編集というのは合わないのかもしれない。
    どうしても、物語に入り込んだところで終わってしまう…もっと欲しくなる。足りなく感じる。

    物足りなさを感じてしまった。

  • 自分の置かれている現実に絶望し、人は死を選びたくなる時があるのかもしれない。どんなに慎重に生きていても予期せぬ事は起こるだろうし、思い通りになる事など殆どない。だからと言って死を愛情の証にしたり、他人のせいにし抗議するような死を選んだところで何の足しにもならない。何かに救いを求めても救いなどどこにもなくて、答えは自分の中にしかないのだと思う。生きて行く事は困難の方が多く、その思いは若ければより鋭く、年齢を重ねればより深く感じるのだろう。受け取り方は人それぞれであっても‘死ぬまで生きる’を貫き、人生が終わるまで逃げずに生きるしかない。死をテーマにしながら‘生きる’を書いた小説だったのかと思う。

  • イエローモンキーの同名の曲「天国旅行」が、あまりにも大好き過ぎるので、この本を手に取った次第です。冒頭のエピグラフで、イエモンのその曲の歌詞が引用されております。

    三浦しおんさんは、イエモンのあの曲の何かに感化されて、この短編集を生み出したのだろうなあ。そう思うと、うむうむ。感慨深いなあ。とある作品が、別の誰かを感化して、新たな作品がこの世に生まれる。それはなんだか、とてもエエことやなあ。そう思う次第です。

    「SINK」は、なんだか、ミッシェルガンエレファントの曲「深く潜れ」っぽいなあ、とか思いつつ読みました。

    「炎」は、ピンクフロイドのアルバム「炎〜あなたがここにいてほしい」を連想しつつ、読みました。

    む?イエモンの「天国旅行」は連想しなかったんかい?ってな話ですが、
    うーむ。何故か個人的には、そこは、あんま連想しなかったのですなあ。そんな感じ方でしたね。

    解説を角田光代さんが書いているのも、なんだかグッと来ましたね。読んでて、三浦さんと角田さんの2人に共通する感じがあるような気もするなあ、そう思いつつ読み進めたり。

  • 表紙の絵が凄く綺麗で、「天国旅行」というタイトルにも惹かれて読んだ三浦しをんさんの短編集。どのお話も自死がテーマになっていて、重い内容と思いきやなのに後味は不思議と悪くないとゆうか、新しい感覚になる本でした。最後の角田さんの解説も凄く良くて、最近よくある人を「泣かせる」ために小説に登場しがちな死とは、全く違う「死」の書かれ方をしているとゆうのは、超共感しました。

    三浦しをんさんの本を手に取ったのはこれがはじめてだったけど、死がテーマなのにここまで読みやすいとは!途中でつっかえることがないとゆうか、表現がとても自然で、さらさらさらーっと読めました。読み返すとゆうことがないとゆうか、良い意味で表現の面白さで止まるようなこともなくて、ぐんぐん入り込めるのが気持ち良いです。飛べます。短編集だけど、一つ一つのお話が本当に濃厚で5冊分読んだ感じがするとゆう。そうです、めっちゃ濃ゆいです。早速他の本も図書館で予約しました。週末借りにいくのが超楽しみです。

    個人的には「森の奥」「初盆の客」「炎」が好き。

  • 【あらすじ】
    現実に絶望し、道閉ざされたとき、人はどこを目指すのだろうか。すべてを捨てて行き着く果てに、救いはあるのだろうか。富士の樹海で出会った男の導き、命懸けで結ばれた相手へしたためた遺言、前世の縁を信じる女が囚われた黒い夢、一家心中で生き残った男の決意──。出口のない日々に閉じ込められた想いが、生と死の狭間で溶け出していく。すべての心に希望が灯る傑作短編集。

    【感想】

  • 「心中」をテーマにした短編集

  • 初盆の客 石塚夏生
    亡くなった祖母の初盆に訪れた、黒服で、三十歳くらの細身の背筋が伸びたけっこういい男。
    動きが少ない短編物語なので、世にも奇妙な物語などで。

  • 心中がテーマとは知らずに、「死というものに近接した」人たちの物語として読み進めた。
    それはときにひんやりと冷たく、ときに人肌のように温もりを持ってただそこにあるのだと示された気がした。
    奇しくも短編集が三冊続いた中、爆発的なおもしろさはなくとも退屈せず読めた。

  • 「遺言」が素敵。
    一緒に死ぬことで、一緒に死のうと言うことで愛を確かめようとする妻を真っすぐに愛している夫…老いてはじめて大切だと言えると素直に綴っているこの夫は、きっととても善い人なんだろうな。
    そして、死して火葬されたら、胸に刺さったままの恋の矢がお骨の中から出てくるだろうだなんて、なんてロマンティックで情熱的な人なんだろう。
    「初盆の客」の夫婦愛もよかった。
    この二作みたいな愛の形であるならば、結婚って素敵だな。

    そして、「SINK」のラストがよかった。
    真実はどうであれ、生きている人間が生きていきやすいように出来事を解釈するというのは、すごく大切なことなのかもしれない。
    悦也が新しい記憶で少しでも楽になればいいな。

  • 心中をモチーフとした連作集。
    流麗な文書表現で綴られ、結末が気になりさくさく読み進められます。
    心中がテーマなので暗くなりがちかといえはそうでもなく、「初盆の客」のように心温まるようなものもあり飽きが来ない。「星くずドライブ」のカノジョのように少し感触のあるユウレイという設定はセンスがありますね。
    それにしてもタイトルと表紙はまるで「君はポラリス」のヒットにあやかりたい魂胆がみえみえであざといなぁ、と。特にタイトルと内容はなんだかミスマッチな気がします。

  • 「死」をテーマにした短編集。自分の死、身内の死、赤の他人の死。自殺、他殺、心中。そしてそれにまつわる遺書、幽霊、前世、などなど。なのに不思議と重すぎず、暗すぎず、いろいろな人のいろいろな死と向き合っています。死に方=生き方なのね。解説を角田光代さんが書いてるのがちょっとうれしい。

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現実に絶望し、道閉ざされたとき、人はどこを目指すのだろうか。すべてを捨てて行き着く果てに、救いはあるのだろうか。富士の樹海で出会った男の導き、命懸けで結ばれた相手へしたためた遺言、前世の縁を信じる女が囚われた黒い夢、一家心中で生き残った男の決意――。出口のない日々に閉じ込められた想いが、生と死の狭間で溶け出していく。すべての心に希望が灯る傑作短編集。

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