天国旅行 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 399
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101167626

感想・レビュー・書評

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  • 表紙の絵が凄く綺麗で、「天国旅行」というタイトルにも惹かれて読んだ三浦しをんさんの短編集。どのお話も自死がテーマになっていて、重い内容と思いきやなのに後味は不思議と悪くないとゆうか、新しい感覚になる本でした。最後の角田さんの解説も凄く良くて、最近よくある人を「泣かせる」ために小説に登場しがちな死とは、全く違う「死」の書かれ方をしているとゆうのは、超共感しました。

    三浦しをんさんの本を手に取ったのはこれがはじめてだったけど、死がテーマなのにここまで読みやすいとは!途中でつっかえることがないとゆうか、表現がとても自然で、さらさらさらーっと読めました。読み返すとゆうことがないとゆうか、良い意味で表現の面白さで止まるようなこともなくて、ぐんぐん入り込めるのが気持ち良いです。飛べます。短編集だけど、一つ一つのお話が本当に濃厚で5冊分読んだ感じがするとゆう。そうです、めっちゃ濃ゆいです。早速他の本も図書館で予約しました。週末借りにいくのが超楽しみです。

    個人的には「森の奥」「初盆の客」「炎」が好き。

  • 死がテーマなのに、こんなに軽妙に描かれているということに驚き。
    いろいろな生と死がある中で、私たちは自分の意識上「生」しか味わえない。けれど味わえる間は甘んじていたいなと思える。
    可能ならば、奇っ怪に見えたとしても、自分なりの愉快さを伴って。

  • 死が間近にある人々の短編物語・・と言えば良いのでしょうか。
    年齢性別も様々、事情も様々。
    あらすじを見るとわかりますが、決して派手でも華やかでもなく、かといって全く持って新しいアイデアと言う訳ではありません。
    ですが三浦しをんさんの本の素晴らしい所は、詩的に美しい文章、繊細な風景や心理描写です。
    間違いなく、彼女にしかかけないものが今作含めて他の本でも見られます。
    今作は「死」という陰鬱さを感じるテーマですが、読んでも不思議と重苦しさは感じません。
    その重苦しさの無さは、彼女の巧みな文章と読み手に一番伝えたい物の為であります。非常に素晴らしいと思えます。
    彼女の本に関しては、その魅力はあらすじではなく、本を読まないと理解できないと思います。

  • 現実に絶望し、道閉ざされたとき、人はどこを目指すのだろうか。
    すべてを捨てて行き着く果てに、救いはあるのだろうか。
    心中(もしくは自死)をモチーフにした短編集。

    テーマは心中でありながら、主人公はみな生きる人たち。
    死を身近に何を考え、何を想うのか。
    死を選ぶ人たちにとって、死は救済であり、絶望的な生からの離脱であり、誰かに何かを訴える究極の手段でもある。

    一方で、本書に登場する死は、餓死、焼死、溺死と壮絶なものが多いです。
    「天国旅行」なんて美しいタイトルに反して、死は残酷な一面も持っている。

    解説で角田さんが言っているように、小説では時に死が不必要に美化されていたりすることがあって、読み手を泣かせるためだけに描かれていることさえある。
    それでも、誰にも等しく1度しかない「死」について、読みたびに涙してしまう。

    本書では淡々と妻への想いを綴る「遺言」に泣かされました。全体を通して、生と死と夢が入り混じる不思議な読了感。しをんさんの語り口がやさしくて好き。
    「初盆の客」や「星くずドライブ」も切なくて好き。

  • どの短編も心に残るのだけれど、特に遺言が良かった。朴訥とした語りの中に、奥様への愛情が溢れている。

  • 「死」がテーマの1冊。そうとは知らず、表紙のデザインで購入して読みました。
    いろんな死が書かれているけれど、解説の角田さんが書かれていたように、読んでいて逆にとても「生」を意識したように感じました。

    文章がとても綺麗で、三浦さんのお話は素敵だなと思います。

  • 「人生が愛おしくなる7つの物語」―。文庫の帯にはそう書いてあったけど、そんなに軽々しいものではない、と読後の私は感じました。解説の角田光代さんの言葉を借りれば、「死を美化していないのと同様、生もまた、美化することはない」7つの物語は、生と死が隣り合わせとなった現実世界で私たちが生きていかなければいけない意味を容赦なく考えさせようとする。その結果として、生きることの面白味を見いだせる、というような、そんな印象を受ける作品でした。

    「心中」をモチーフにした短編集。収録された7編は、驚くほどに個性豊かなものばかり。さまざまな情景で紡がれるそれぞれの作品は、全て別々の作家さんが書かれたアンソロジーなのではないかと思えるほど、一人の作家さんから生み出されたとは思えないくらい、別個の世界観を確立していたように思います。それでも、「心中」というモチーフが中心に据えられている分、それぞれの登場人物たちを通して、生と死という万人に共通して与えられている人生のテーマにより深く感じ入り、考えさせられるものがありました。

    「英ちゃんを好きだって思いだけしか、いまは残ってない」(『星くずドライブ』より)

    もし今、私が死んだら、私は想いを残せるだろうか。私がこの世にいる証しが何もかも消えてしまったら、想いさえも消え失せて、何も残らないんじゃないだろうか。私の想いを、心の中に抱いて生きていってくれる人が、果たして存在するだろうか。香那の想いを受け止める英ちゃんのような人が、私の周りにはいるのだろうか―。

    死を通して紡がれる、人と人のつながり。「死にたい」と思うことも、「生きたい」と思うことも、結局は誰かとのつながりがもたらす意思なのかなと感じました。生も死も美化することなく描かれる本作は、それでも読後に、大切な人たちへの想いがある限り、生をまっとうしなければと感じさせてくれるような作品であると思います。

  • この著者が書く話は、けっこう好きです。文章もさくさくいくし。すいすい読めます。
    スタートの話が特に好きです。

    しをん作品は、いま密かなマイブーム。

    文章うまいよなーって。

  • 祝文庫化、、、チョッと重そうだな。

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    「現実に絶望し、道閉ざされたとき、人はどこを目指すのだろうか。すべてを捨てて行き着く果てに、救いはあるのだろうか。富士の樹海で出会った男の導き、命懸けで結ばれた相手へしたためた遺言、前世の縁を信じる女が囚われた黒い夢、一家心中で生き残った男の決意――。出口のない日々に閉じ込められた想いが、生と死の狭間で溶け出していく。すべての心に希望が灯る傑作短編集。 」

  • 心中をテーマにしてるけど重すぎない短編集。面白いのもあったけど、展開適当じゃないか、ってとことかありがちな設定も多くて、そこまで引き込まれはしなかった

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著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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