吉里吉里人(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101168166

感想・レビュー・書評

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  • 空前絶後。
    奇想天外。
    抱腹絶倒。
    前代未聞。
    なんと言い表せばいいのか分からない。
    日本から独立した、吉里吉里国。
    日本の中にあって、日本ではない国。
    吉里吉里国で繰り広げられる、悲喜劇が幕を開ける。

  • 下巻に

  • もはやアナーキストとしかいいようのない、痛快無比のコメディである。もっと早く読めば良かった。

  • 吉里吉里語がわかる笑

  • 岩手の山奥の人が吉里吉里国として分離独立しようとするところから、国とは何か、国民とは何かを考えさせる作品。授業でやりました。

  •  3月11日の大震災以後,というよりそれに引き続いて起こった福島第一原発の事故以後,ちょっと話題になっていた本です。
     東北地方の一寒村・吉里吉里村が,ある日突如として日本国からの分離独立を宣言し,「吉里吉里国」を作る,というお話。吉里吉里国は独自の国政方式を敷き,これまで「ズーズー弁」と蔑まれてきた東北方言を「吉里吉里語」として公用語に定め,金本位制の独自通貨「イエン」を導入し,次々に新国家としての体制を整えていきます。機動隊か自衛隊を投入すれば瞬時に片が付く,と高をくくっていた日本側も,吉里吉里国が次々に繰り出してくる「切り札」を前になすすべもなく翻弄されます。騒動に偶然巻き込まれた三流作家・古橋健二を中心に,吉里吉里国の分離独立闘争を描いた作品です。
     「独立闘争」などと書くと重苦しい感じがしますが,作品は全編にわたって明るくのんきな感じです。吉里吉里人たちの繰り出す「切り札」が,例えば自衛隊の介入に対する切り札が参加人数わずか3名の国際卓球大会だったりして(なぜこれで自衛隊を追い返せるのかは作品をお読みいただきたい),真正面からの力押しで独立を勝ち得るのではなく,知恵を使った戦い方にうならされます。
     しかしその背景にあるのは,これまで長きにわたって虐げられてきた東北地方の現状です。日本の工業化・高度成長の陰で常に泣かされてきた東北の人々の不満が,吉里吉里村を分離独立に踏み切らせたのです。食料自給率は100%,電力も地熱発電で賄え,小国家ゆえに自転車で事足りるため石油燃料に頼る必要もない。自分たちの手ですべてをうまく回していけるのに,なぜ日本政府の命令に従って苦しい生活をしなければならないのか…という言い分です。
     この作品が書かれたのは1981年,今から30年も前のことですが,東北の受難は今もって変わりがありません。日本の農政は30年前から今に至るまでずっと,東北の農村に農業の単一化・機械化を推し進め,機械代と化学肥料代で農村を借金漬けにしました。減反政策は深刻な農業離れを生み,若者は農業と故郷を捨てて都会へ出,税収の減った地方自治体の財政は破綻し,そこへ莫大な補助金を伴って原発がやって来たのでした。そう考えると,井上ひさし氏が東北の怒りを『吉里吉里人』にぶつけた30年前から(作品を読むとわかりますが,実は30年どころではなく300年前から受難は続いているのですが),現状は変わっていないどころかより深刻化していると言えます。東北の一寒村の独立という冗談のような物語をハラハラしながら読みながら,そういう視点を持つことができたのが良かったです。
     作品の半分ぐらいはそういう真面目な話で,もう半分はほとんど下ネタなので,誰にでもお勧めできるというわけではありません。性的な話題にそれほど嫌悪感がないという方はどうぞ。

  • 情報小説
     三読目。日本SF大賞受賞。
     この小説全篇たいへん下世話で、下ネタが苦手なひとは読まないほうがいい。とにかく性器、性行を連想させる下ねたばかり。下ネタ大好き中学生なら読める。
     ストーリー展開が奔放でめっぽうおもしろい。東北から吉里吉里国が独立するのだが、そのための切札をたくさん控へてゐる。その説明で蘊蓄の渋滞だが、とにかく説得力が高い。おれにでも分離独立できるのではないか、と感じ入ってしまふ。
     中巻でケイコ木下が出てきたあたりから、すこしダレてくる。

     ところどころ、都合よく進展させるために、古橋といふこの単純な人物造形にしたのだらうと気づいた。
     比喩は下手。このころの井上ひさしはまだ途上だったなあ。晩年の『一週間』になるとさすが。

  • (中巻に続く)

  •  一応「SF」小説だと言うから読んだのだが、かなり期待の斜め下を行く作品だった。
    SF的ガジェットは無くもないが、ほとんど冗談のような医療技術に負う所が大きいからだ。

     東北の一寒村が日本政府に対して独立を唱えるという発想は面白い。
    そしてその手法が軍事独立ではなく文化的戦略による独立である事も。
    色々言うとネタバレになってしまうのだが「吉里吉里国」の戦略は用意周到かつ大胆、しかしどこか肝心な所が抜けている。

     本作は上中下の三巻にも及ぶ長編だが、作中の時間はたった二日にも満たないという「ロミオとジュリエット」にも負けない強行軍だ。
    それだけ出来事が濃縮されているかと言うとむしろ逆で、暇な時には主人公古橋の過去話やどうでもいい回想が挿入される形式になっている。
    一応日本国の自衛隊が鎮圧に乗り出したり卓球ワールドカップを開催したり最終的には吉里吉里国の最終防衛ラインである大病院でドンパチやらかしたりといった山場はあるが、余分な所をカットすれば一冊に収まったのではなかろうか。
    もっとも、その「余分な所」も含めてこの作品のユーモアであるから判断が難しいところではあるのだが。

  • 面白い上に、内容が濃いです。余計な話がたくさん出てきますが、全く飽きさせません。上中下巻で1,500ページほど有りますが、あと二冊、楽しんで読めそうです。

著者プロフィール

(いのうえ・ひさし)
一九三四年山形県東置賜郡小松町(現・川西町)に生まれる。一九六四年、NHKの連続人形劇『ひょっこりひょうたん島』の台本を執筆(共作)。六九年、劇団テアトル・エコーに書き下ろした『日本人のへそ』で演劇界デビュー。翌七〇年、長編書き下ろし『ブンとフン』で小説家デビュー。以後、芝居と小説の両輪で数々の傑作を生み出した。小説に『手鎖心中』、『吉里吉里人』、主な戯曲に『藪原検校』、『化粧』、『頭痛肩こり樋口一葉』、『父と暮せば』、『ムサシ』、〈東京裁判三部作〉(『夢の裂け目』、『夢の泪』、『夢の痴』)など。二〇一〇年四月九日、七五歳で死去。

「2023年 『芝居の面白さ、教えます 日本編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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