- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101168340
作品紹介・あらすじ
ワープロのディスプレイ上でカギ括弧同士が恋をした。威張り腐った●や■に他の記号たちが反乱を起こす「括弧の恋」。方言学の大家が、50年前自分を酷い目に遭わせた特高の元刑事を訛りから見破って復讐する「五十年ぶり」。ある日突然舌がもつれる青年駅員の悲劇を描く「言語生涯」など言葉の魔術師による奇想天外な七編に加え、抱腹絶倒の四編を新たに収録した著者最後の短編集。
感想・レビュー・書評
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言葉を巧みにあやつり、今までみたことのない小説が描かれていた。鉤括弧を擬人化した人はこの人がはじめてでないだろうか。小銭も擬人化したりと、擬人化の走りとも言えそう。また、梅毒におかされた男の身体を元に大戦模様を描くのも面白かった。すごいセンスの作者であった。
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R3/10/17
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井上ひさしさんの凄さが笑いとともにじわじわ伝わってきます!
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言葉をテーマにした短編集。その中でも「極刑」という話では、言葉が持っている力、言葉があることの大切さをまざまざと感じさせられた。
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先日読んだ『十二人の手紙』が非常に良かったので、別の作品に手を出してみる。
タイトルから想像していたけど、なるほど、筒井康隆の香りもするなぁと思っていたら、まさかの御本人が解説で、笑ってしまった。
「括弧の恋」
ワープロの機能不調。
カギカッコ閉じるを押しても出てこないタイムラグの裏には、記号たちの織りなす世界があった。
このテーマ、ウェブ世界にも応用出来ないかな。
そうすれば、パソコンが重いことの裏には、こんな記号世界があるのかもと笑っていられるのに。
「極刑」
アクバル大帝の言語実験を劇にする話。
赤ん坊に対し、ある者はきちんとした言葉で話し、ある者は文法的には合うが通じないことを話し、ある者は何も意味をなさないことを話す。
人間にとって言葉を与えられないことは「極刑」と同じであり、この実験の酷さに気付いた三人の乳母は、言葉の教育を始めるが、アクバル帝によって舌を抜かれてしまう。
これは劇のあらすじなのだけど、この劇を演じる演者たちへの影響が面白い。
「言い損ない」
後に出てくる「言語生涯」と同じテーマ。
母親を通した異性への恐怖から、女性を前にすると激しい言い間違いをしてしまう男の話。
これも、言葉が伝わらないことへの恐怖があって、そういう意味では吃音とも重なるのでは。
焦るほど、上手くいかなくなってしまう男の心理が辛いなぁと思って読んでいたけれど、最後に、とある希望が見出されて、嬉しかった。 -
・括弧の恋
・極刑
・耳鳴り
・言い損い
・五十年ぶり
・見るな
・言語生涯
・決戦ホンダ書店
・第惨事人体大戦
・親銭子銭
・質草
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括弧の恋を見て、バカリズムのライブを思い出した。
記号や言葉、無機物を単なる表現の手段としてではなくあたかも生きているかのようにとらえた作品が印象的。(決戦ホンダ書店、親銭小銭)
後は言語障害に関わる作品も多い印象。(言い損い、言語生涯)
タイトルがタイトルなだけに、いずれも切り口は違えど言語に関わる話。
ふっと思いついた一見くだらない言葉遊びを何とも面白く小説として成立させてしまった、そんな印象の短編集。 -
「言葉・ことば」を題材にした、掌編集。毒が薄めの筒井康隆。
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井上ひさしらしい言葉をいじった(?)短編集。個人的には「言語生涯」が面白かった。文庫版にあたり、4編追加。筒井康隆の解説も嬉しい。