家族八景 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • / ISBN・EAN: 9784101171012

感想・レビュー・書評

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  • ブクログさんのお薦め本です。

    幸か不幸か生まれながらのテレパシーを持って、目の前の人の心をすべて読みとってしまう可愛いお手伝いさんの七瀬ー彼女は転々として移り住む八軒の住人の心にふと忍び寄ってマイホームの虚偽を快り出す。人間の心理の深層に容赦なく光りを当て、平凡な日常生活を営む小市民の猥雑な心の裏面を、コミカルな筆致で、ペーソスにまで昇華させた、恐ろしくも哀しい本である。ー文庫うらすじより

    文庫うらすじを引用しましたが、非常によくまとまっていて、この本のことを「コミカルな筆致で、ペーソスにまで昇華させた、恐ろしくも哀しい本である」の「哀しい」というところに撃たれました。


    私事で恐縮ですが、この本はずいぶん昔、私が高校の時から今でも交際している親友が、高校の時に「読書は苦手だけどこの七瀬の本だけは好きなの」と教えてくれた本です。
    私は父親がかなりの読書好きで家に日本文学全集と世界文学全集がおいてあり、それらの近代文学はつまみ読みしていましたが(趣味は音楽と映画とピアノで全部読むほどの文学少女ではなかったです)当時、高校生の間で流行っていた本にはあまり興味も縁もなく、昔なのでネットの情報もなく(コバルト文庫とかだと思いますが)現代作家の本は、大学生になってから読みだしました。
    それで、親友のAちゃんが好きな本ということで、筒井康隆さんのこのシリーズ買ったような気が確かにするのですが、読んだ記憶が全くなく(高校生の頃から積読してたのか!と思いました)今回、初読みのような気がしました。


    それで、本題ですが、それにしても七瀬の派遣される家は酷い家族ばかりで、七瀬に手を出そうとするエロ親父の妄想ばかり次から次へと出てきてかなりどぎついので、私と同じ昔の高校生で奥手のAちゃんがこんな凄い、前衛的な本を好きだったとは信じられない気がしました。
    続刊もあるのでまた全然違う展開になるのかもしれませんが。


    そして、うらすじにある「哀しい」ということば。
    人の心が読めるということは「哀しい」ことなんですね。私は、自分のことをそれ程、人に知られて恥ずかしいことを考えている人間とは思わないけれど、人の心を読める能力はない方がいいと思いました。
    神さまが人間に読心術を与えなかったのは、幸いなことだと思います。
    よい采配だと思います。

    • アールグレイさん
      まことさん、ありましたよ!
      我が家の本棚はもういっぱいです。
      (・o・) 文庫本が2冊ありました!2回に分けて購入しているようです。市内に図...
      まことさん、ありましたよ!
      我が家の本棚はもういっぱいです。
      (・o・) 文庫本が2冊ありました!2回に分けて購入しているようです。市内に図書館は4つあるのです。
      2022/02/21
    • まことさん
      ゆうママさん。
      よかったですね。
      レビュー楽しみにしています。
      あと、この本の私のレビューはネタバレなしなので、たぶん最後まで、読まれても大...
      ゆうママさん。
      よかったですね。
      レビュー楽しみにしています。
      あと、この本の私のレビューはネタバレなしなので、たぶん最後まで、読まれても大丈夫だと思います。
      2022/02/21
    • アールグレイさん
      では、読ませて頂きます。
      では、読ませて頂きます。
      2022/02/21
  • 18歳の火田七瀬は、テレパスと言われる目の前の人の心を読み取る超能力を持っている。彼女は、その能力を隠して、各家庭に住み込みのお手伝いさんとして、生活を始める。
    当時の中流家庭八軒、八家族の、八景。
    もう50年前の、SF小説。久しぶりに読んだら、記憶よりも、大人のドラマだった。NHK少年ドラマシリーズで扱われていた印象があったので、子供向け作品のイメージとなっていた。
    七瀬を巻き込んで、怪しげな、多少猥雑な心理戦が、日々繰り広げられる。七瀬の目線での、夫婦や親子の深層心理が、面白い。そして、二十歳となり、自分の女性としての成長を自覚して、お手伝いの仕事はやめて、次作の「七瀬ふたたび」へ。
    身近なSFとして、日常の中の斬新な設定でした。

    • まことさん
      おびのりさん。こんばんは♪

      おびのりさんも、再読されたのですね。
      私は初読みだったのですが。
      高校の友人が好きだと言ってた作品なのですが、...
      おびのりさん。こんばんは♪

      おびのりさんも、再読されたのですね。
      私は初読みだったのですが。
      高校の友人が好きだと言ってた作品なのですが、田舎の女子高生の私たちが、好んで読む作品では、ないですよね。
      やっぱり、NHKの、少年ドラマシリーズの影響が大きかったと、友人も言っていました。

      ところで、おびのりさんは、筒井康隆さんの、作品は、他も読んでらっしゃいますよね。
      もし、よかったら、お薦めを教えていただきたいのですが、私が、調べてみた中では「旅のラゴス」とか、かなと思いましたが。
      あんまり、猥雑でないものがいいのですが、教えていただけませんか。
      2022/06/29
    • おびのりさん
      まことさん、こんばんは。
      まことさんのレビュー見て、早く読みたくなってしまって。。今、七瀬ふたたびを読み終わりました。
      三部作は、まだ本を持...
      まことさん、こんばんは。
      まことさんのレビュー見て、早く読みたくなってしまって。。今、七瀬ふたたびを読み終わりました。
      三部作は、まだ本を持っていたので再読です。
      旅のラゴスは、良いかなと思います。
      ストーリー性もあるので。
      私が、好きな作品は、「富豪刑事」です。ドラマ化もされているので、ご存じかと思いますが、コメディです。近日中に再読します。初読の時、バカバカしさに笑いました。
      心理学が詳しいなら「パプリカ」理解できると思うのですが、夢の混沌がちょと辛いので。
      で、こちらは、多少の猥雑表現部があります。
      今は、大御所感の筒井康隆氏ですが、チャレンジ的な作品が多かったですよね。

      2022/06/29
    • まことさん
      おびのりさん。

      お返事ありがとうございます。
      『富豪刑事』は初めて知りました。
      ドラマ化も知らなかったです。
      面白そうですね。
      ...
      おびのりさん。

      お返事ありがとうございます。
      『富豪刑事』は初めて知りました。
      ドラマ化も知らなかったです。
      面白そうですね。
      ありがとうございます。
      冬になると雪が多くて、図書館に通えなくなるので、文庫を買って読もうと思います。
      冬の楽しみができました。
      心理学はわからないので『パプリカ』はちょっと無理かと思います。
      2022/06/30
  • もっと爽やかなイメージの話、かと思っていた。( ̄0 ̄)残念―――。

    主人公は人の心を読んでしまう。そんな力(テレパシー)を持った家政婦。
    その力を使い、住み込みで働く家の家族を助けたり、仲良くしたりしないのかと
    思う。でも・・・・・暗い・・・家族が考えていることを、分析とでもいうのか、様々なことを思っている。

    人によって感じ方があるけれど、私と
    この本の相性が悪かったのか、読み方がいけなかったのか、それはわからない。

    /\/\/\/\/\/\/\/\/\
    ただでさえ遲読の私、最近体調を崩して
    いる。図書館マイページを開くと、予約本の嵐がやって来るかも知れない!

    • まことさん
      ゆうママさん。

      夕飯時、ごめんなさい。
      ツイッター、私も登録して、ゆうママさんのこと、フォローさせていただきました。
      何か、色々いじったの...
      ゆうママさん。

      夕飯時、ごめんなさい。
      ツイッター、私も登録して、ゆうママさんのこと、フォローさせていただきました。
      何か、色々いじったので、どこか変になっていたら、ごめんなさいm(_ _)m。
      では、また!
      2022/04/23
    • こっとんさん
      アールグレイゅぅママさん、こんにちは。
      体調を崩されていたのですか?
      実は私も少し前に体調を崩していて読書が全くできない日々が続きました。そ...
      アールグレイゅぅママさん、こんにちは。
      体調を崩されていたのですか?
      実は私も少し前に体調を崩していて読書が全くできない日々が続きました。そういう時に限って図書館の予約本が次々と順番がまわってきてしまって、泣く泣く諦めた本もありました。
      お互い、体に気を付けて楽しく読書生活を続けていけるといいですね♪
      2022/05/08
    • アールグレイさん
      こっとんさん♪こんばんは★

      アールグレイ、と改名しました!よろしく♡

      4月半ばあたりからGW前半が最低でした。フーッ
      でも、実家で京...
      こっとんさん♪こんばんは★

      アールグレイ、と改名しました!よろしく♡

      4月半ばあたりからGW前半が最低でした。フーッ
      でも、実家で京都から帰省した弟と落ち合い、2年ぶりの父の墓参り。GWはいつの間にか過ぎ去ったと言う感じでした。先程、京都に着いたよ、というメール。今までメールをくれたことはありませんでした。今回はいろいろなできごとのせい?少し嬉しく思っている姉でした。
      (*^^*)
      2022/05/08
  • H30.6.7 読了。

    ・エスパーで家政婦の七瀬が主人公の短編集。死の直前や精神崩壊の直前の描写が印象的でした。この小説が昭和47年に書かれたものと知り、驚きました。
    イドや超自我など心理学に興味を持ちそうなキーワードがちりばめられてます。
    個人的にはそれぞれの短編の後味が悪いのが残念でした。

  • 家族八景は多分中学生のころ、夏休みの読書で何を読むか迷っているところに、友達の誰かが面白いからと勧められた記憶があります。天邪鬼な私は勧められると従わないタイプなので他の推理小説(横溝正史?)を読んだ気がする。
    そんなこともあり、筒井康隆氏を嫌っていたわけでもないのに、時が経ちこの歳まで読まずに来てしまいました。

    七瀬は住み込みのお手伝いさんとして、いろいろな家族と接することになるが、テレパス能力があり、人の内面の感情や思ってることが理解できてしまうので、あるときは自身の防衛のために役立てられるが、能力を知られると異端とみなされ危険が伴うので悟られないように気を付けて生きていかねばならない。

    章が進むにつれて、七瀬の怖さが際立ってくる気がした、最後の「忘母渇仰」は怖い。「七瀬ふたたび」につながっていくのだろうか。

    また、性的な表現も割と多く出てくるのが少し驚いたが、当時のウブな中学生には刺激が強く友達はこの辺りが面白いと言っていたのかもしれない。

    「七瀬ふたたび」に続く。

  • 読心術、という本当にあるかどうかわからないものが世の中には存在しているが、それが本当にできるのが、この物語の主人公である、七瀬である。

    「掛け金」という彼女独特の捉え方で、自分に流れてくる相手の感情をコントロールして、なるべく影響されないようにしながら生きてはいるが、そうはいってもどうしても影響されてしまう。人の心が読める、とは外から見たら羨むほどの能力だが、当の本人からしたら、迷惑な部分もあるらしい。
    自分の能力が他人に知られないようにするため、ひっそりと暮らし、仕事も、住み込み家政婦として過ごす日々。

    まるで本当に七瀬がいるように、細やかに設定が散りばめられていて、読んでいて非常に楽しい。
    タイムトラベル、だとかAIだとか、そういったものに関する想像は人それぞれ異なっているが、存在するかのように書いてある作品は、思わずうっとりとしてしまう。

    読書というものは、文字の情報から可能な限り想像力を膨らませることができるので、映画のように、イメージが固定されにくい(それはそれで楽しいのだけれども)。だから、特にSFだとかは、没入感が、作品によっては映画より勝ることも。

    先日の「パプリカ」以降、すっかり筒井(さん)ワールドに迷い込んだ私は、迷わず七瀬三部作の予約をしました笑

  • まず驚いたのが、1972年発表の作品(単行本にて)だということ!
    なんとなんとの50年前…!!(2022年現在)
    今もなお読める50年前の作品が、果たしていくつくあるだろうか…??
    刊行されても数えきれない作品が消えていってしまう本の世界で、これだけの年月を経ても読める、未だに増刷されているというのは、本当にすごいことだとおもう。

    ちなみにわたしが手にしたのは図書館で借りた「平成2年」の版だったのだが、定価が320円で安くて涙が出た…
    つい最近、書店でおなじ本を見たときは、確か600円台たったので、文庫を手に取るハードルが本当にあがっていることをしみじみ感じた。
    中身を比べてみると、平成2年版は字も小さく詰まった感じがあり、最近の本を読み慣れているとやはり違和感があった。しかしとても薄く、持ち運びしやすさは抜群。
    一方、現代版をパラパラめくってみると、フォントがとても大きく、老眼でも読めるかも?!とおもうくらいだった。その分、厚みはあったけれど…

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    というわけで、ようやく本の中身の感想である。
    (前置き長っ)

    この「家族八景」は七瀬3部作の第1作。
    七瀬シリーズといえば、「七瀬ふたたび」という水野真紀さん主演のドラマを見た覚えがある。
    調べたら「木曜の怪談」(めちゃ懐かしい!タッキー目当てで見てた)という番組内でドラマ化されてたらしい。
    そりゃ見てるはずだ。
    しかし、ドラマの内容はなんかサイキックな話だったような…程度にしか覚えておらず。でもドラマがおもしろかった印象だけは残っていて、ならばここで3部作という原作小説を読んでみようじゃないか…!ということで、第1作の「家族八景」を手にしてみた。

    七瀬というのは、テレパシー能力を持つこのシリーズの主人公の女性である。フルネームは火田七瀬。
    その能力が故に、一所に長くとどまれない七瀬は、高校を卒業後、住み込みの家政婦として短期間に雇い主を変え、家を転々としていく。
    本書はその、七瀬の雇い主となった8つの家族について書かれた連作短編集だ。

    はっきり言ってこの「家族八景」では、ものすごい大事件は起こらない。
    家族関係もパッとしないように見えるし、特に前半はかなり地味な展開だ。
    でも一見、平凡に見える家族も、よくよく観察していくとおもてには見えない面がポトポトと落ちている。
    さらに七瀬はテレパシーをもっていて、人の心が読めてしまうため、言動はなんの問題もなさそうな人の闇というか、内面が見えてしまい、そこに物語が生まれていくのだ。
    平凡でつまらなく見えることも、よくよく観察して見方をかえていくと、おもしろさが潜んでいる…ということを、教えてくれている気がした。

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    また、読み進めていくと、主人公七瀬の外見や内面も、少しずつ「変化」していることがわかる。
    はじめはオドオドしていて、目立たないように生きている感じの少女だったが、後半に住み込んだ家(「日曜画家」あたり)では、七瀬のほうから家族に対してしかけていく様子が見られる。
    また、最後の短編「亡母渴仰」(ぼうぼかつごう)は、亡母による怨念が振りまかれた状態でプツッと、唐突にテレビが消されたような感じでラストを迎え、衝撃からなかなか抜け出せなかった。

    「家族八景」は、好みがわかれる作品だとおもう。
    ドラマ「七瀬ふたたび」のおぼろげなサイキックな印象をもって「家族八景」を読み始めたので、全然雰囲気がちがって面食らったのが正直なところだ。
    しかし小説第2作目の「七瀬ふたたび」からは、ちゃんと(?)サイキックなお話になるようなので、それをたのしみに読んでみたいとおもう。

  • 生まれながらにして人の心を読みとる能力を持った七瀬は、高校卒業後、自身の特殊性がバレないようにとあえて住み込みのお手伝いをしている。しかし同じ家庭で働くのは中々難しく働き先を転々としている。その働き先におけるエピソードの連作短編集。
    夫々の家族は表向きはどこにでもありがちな家族構成だが、心の中を覗き込むと彼ら彼女らの赤裸々な感情が七瀬に飛び込んでくる。
    筒井康隆ならではのシニカルでコミカルな文体で、ぐくっとストーリーに引き込まれるのだか、ラストにくるのはカウンターパンチ。
    七瀬シリーズの一作目で、何度も映像化された不朽の名作だが通して読んだのは初めて。
    初出は昭和47年なのでほぼ半世紀前の作品で昭和の香りだが、所詮、人間の営みにおける悲哀や欲望は変わらない。
    個人的には、J・J、植草甚一の解説がボーナス的で嬉しかった。

  • 人の心が読める能力を持っている人が もしかしたら私の身の回りにもいるのだろうか…、もし あの人がそうだったら…もしかするとあの人なんかはそうなのかも…など想像を膨らませながら読んだけれど、想像でなく現実だとしたら…。

    無心になる術を取得しなければなぁ、とそんなところへ意識が及んだものの、ストーリーも十分に楽しめた。

  • 筒井さんの『家族八景』。人の心を読める超能力者・火田七瀬が主人公で、のちに『七瀬ふたたび』『エディプスの恋人』と三部作になった、最初の小説。
    「○○八景」というのは日本三景などと同様に、風光明媚な八つの場所という意味。小説だと太宰治の『東京八景』が有名か。
    『家族八景』は八つの短編で、主人公の七瀬が「家政婦は見た!」のように八つの家庭を巡るお話。

    ただ筒井さんなので、この場合の「八景」はけして良い意味ではなく風刺、ブラックユーモア。人の心が読めるから、エロでグロテスクなドロドロとした感情が七瀬にはだだ漏れで、それが地の文で表現される。
    だから私は大好きだけど、そういうのが苦手な方にはあまりお薦めしない。『時をかける少女』は中学生向けのジュブナイルだけど、『家族八景』は対象年齢がもう少し上の中間小説。
    でも、私が高校生の頃に『時計じかけのオレンジ』や『その男、凶暴につき』を観てたように、まかり間違って手に取って欲しい。新潮文庫だし、現行版の表紙はファンタジーっぽくて可愛くておしゃれ。勘違いすれば良いと思うよ!

    この小説は連載が1970〜71年、単行本化が1972年。超能力ものとしては『幻魔大戦』より後で、ユリゲラーのすこし前ぐらいの時期。スティーヴンキングの『キャリー』が1974年で、その数年前。
    筒井さんは心理学SFなので、この作品もそういう話。それと芸術、美学も学ばれていたそうで、画家の話がある(のちの『エディプスの恋人』も画家の話)。

    家族の話で思いつく『家族ゲーム』や『積木くずし』などは80年代初頭の作品で、『家族八景』はその10年ほど前。
    年代順に色んな映画を観ていると、政治思想の社会的な話から学校、家庭の話とだんだん小さくなっていく。90年代は「こころの時代」で人間の心の中の話、さらに小さくなっていく流れを感じる(エヴァ最終話とかね)。
    70年代初頭、「表面上は平和で愛情が溢れるように演じている家族の仮面(ペルソナ)を剥がす」小説を、筒井さんはすでに描いていたんだなあ…と驚かされる。

    『家族八景』と似たような雰囲気をもつ作品を昔に読んだ気がするけど、それがなんだったかはっきりと思い出せない。ジャンプ連載の『アウターゾーン』だったか、高橋留美子の人魚シリーズ、藤子A先生の『笑ゥせぇるすまん』、諸星大二郎のゼピッタシリーズ(1974年〜)……?

    七瀬は主人公だけれど、彼女は私がよく言う「神様ポジション」、狂言回し的なキャラクター。(若者が主人公の場合、青春映画などだと成長するけど、この話の中で特に成長しない。変化せず状況を俯瞰しているキャラを神様ポジションと勝手に呼んでいる)
    1972年と時期の近い映画、『女囚さそり 第41雑居房』のレビューでもほぼ似たようなことを書いた。

    というわけでこれは七瀬本人の話ではないので、続編の展開は「七瀬の成長物語」で、恋愛や処女喪失をするんだろうなという予想がつく。

    私の中の七瀬のイメージは、先に書いたさそりの梶芽衣子さんなんだけど、梶さんって日活時代の若い頃よりも、すこし歳とった頃の方が美人だと感じる。
    梶さんのさそりシリーズの後を受けて製作されたのが『聖獣学園』『新女囚さそり』だから、ドラマ版で七瀬を多岐川裕美が演じていたのは納得。鬼平のおまさと久栄ですね。

    解説は植草甚一さんで、東京新聞で当時『中間小説時評』という連載をされていたそうです。植草さんのレコードコレクションを買い取ったのがタモさんで、筒井さんやタモさんと言えば『全日本冷し中華愛好会』。『ジャズ大名』にもタモさんが出ていたなあ。

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著者プロフィール

小説家

「2017年 『現代作家アーカイヴ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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