夢の木坂分岐点 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 766
感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101171241

作品紹介・あらすじ

夢の木坂駅で乗り換えて西へ向かうと、サラリーマンの小畑重則が住み、東へ向かうと、文学賞を受賞して会社を辞めたばかりの大村常賢が住む。乗り換えないでそのまま行くと、専業作家・大村常昭が豪邸に住み、改札を出て路面電車に乗り、商店街を抜けると…。夢と虚構と現実を自在に流転し、一人の人間に与えられた、ありうベき幾つもの生を深層心理に遡って描く谷崎潤一郎賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 筒井作品の中でもかなり難解で
    再読しないと完全には理解できない
    解説でなるほどと思った

  • 筒井康隆、本領発揮の虚構世界。ときには夢の中、ときには心理劇(サイコドラマ)の中、小説の中、講演の中、白昼夢の中と、虚構の中に虚構が形作られて、現実をも飲み込んでしまう。そう、もちろん「現実」もこうした数ある虚構の一つに過ぎないのだ。

    残念ながら、虚構世界のそれぞれの描かれ方と、流転する主人公のキャラクター造詣が今一綺麗に描き分けられておらず(もちろん、連続する虚構の中にあってそれらが描き分けられていることが正しいとは限らないのだが)、物語的なエンターテイメント性は低かった。世間的には評価が高く、筒井康隆の代表作に一つとして数えられる作品ではあるが、個人的には実験の域を出ていないという印象。

  • またとんでもない筒井の実験小説に出会ってしまった。主人公は現実を跳躍し、ある時は夢、ある時は自身の執筆している小説、ある時は映画の中の主人公自身となって、本来文学にあるべきはずの、終幕までの作品内世界の同一性を否定していく。今読んでいる行が、さっきまでの行と同じ世界、同じ人物によって進行しなければいけないと誰が決めたのか。移りゆく虚構の深層に、思わず読み手としても今自分がいる現実の確かさが解けていくような感覚がした。人によっては、これを読んでしまうと発狂するかもしれない(大袈裟)。

  • 一回読み終えた
    多分もう一回読み直す
    何回読み直してもきっと面白い

  • 筒井康隆 「 夢の木坂分岐点 」

    自分と影、異なる3つの空間(現実、夢、虚構)を 行ったり来たりすることで 重層構造を持たせた メタフィクション小説

    空間の異なる3つの世界(現実、夢、虚構)を 等価値とみなし、目覚める行為と名前の変化が 空間変化の契機となっている。目覚める行為と 固有の名前を持つことは、人間の生を意味しているのだと思う

    自分と影の関係
    *影は虚構の中で成長する
    *黒と白の関係〜白の輝きは黒との対比から生まれる。白の輝きが増せば黒は漆黒になる。漆黒は純白への待機

    空間(現実、夢、虚構)について
    *夢の中で虚構を想い、その虚構の中で夢を見る
    *夢=現実と虚構の橋渡しするために見る
    *夢、虚構には 自己の無意識が投影→観念は 啓示

  • 内容紹介
    サラリーマンか作家か? 夢と虚構と現実を自在に流転し、一人の人間に与えられた、ありうべき幾つもの生を重層的に描いた話題作。

  • 52歳のプラスチック会社の課長の主人公は夢を見るたびに、侍に切られる。しかし目覚めると少しずつ違う男の人生に(分岐した様々な人生)入り混んでいる。夢で逃げれば逃げるほど逃げた先の世界は落ちぶれた惨めなものになっていく。主人公は自分の深層心理の世界を探求する。そして、バラバラだったはずの分岐したはずの夢の世界が繋がって・・・
    主人公は、夢の木でヤクザに殺される。

  • 虚構の中の夢、夢の中の虚構
    入れ子になった世界に迷い込んだ意識は深く進むことはあっても遂に基底的な現実に戻ることはない仮にそこが現実だとしても
    とにかくメタメタメタ
    唯一の救いは夢の中の秩序だろうか

    巻末の解説が非常にわかりやすかった

  • 2017.1.12(木)¥100+税。
    2017.3.10(金)。

    ×

  • 世界に存在していると確認できるのは「私」という存在の精神だけである。これは独我論の基本認識であるが、しかしその「私」が唯一の存在であるということまでを独我論は示すものではない。もし仮に「私」という精神を表象する人間が複数人存在し、それぞれ固有の世界で生きているとしたら?

    本書はそうした一種の思考実験を、虚構の小説世界における「虚構内存在」である主人公の意識を複数に分散させることで示そうとする。読んでいるうちに、「なぜ私という存在が唯一しか居ないと言い切れるのか」という不安を感じながら、作品世界を楽しむことができる。

    小説の主要なテクニカルタームである心理学的ロールプレイについては、初期作品に見られるようなブラックユーモアが満載で、そのあたりだけはつい笑いながら読んでしまう。

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著者プロフィール

小説家

「2017年 『現代作家アーカイヴ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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