虚航船団 (新潮文庫)

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著者 : 筒井康隆
  • 新潮社 (1992年8月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (577ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101171272

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虚航船団 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 神話→歴史→SFという歴史的成立過程を倒置し、気狂いだらけの異様な文房具たち、迫力すら感じる歴史書・通史のカリカチュアを経て、"神話"と銘打たれたブンガクのジョイス的極地に至るまでの密度の濃さは類例を見ない。序盤の教会の件以降、宗教的要素のまるで現れない第三部は、しかし"荒唐無稽"という一点においてまぎれもなく神話そのものなのかもしれない。そしてラストに配された親子の会話からは、どんなに前衛や実験と称して迂回や破壊や冒涜を繰り返そうとも、小説として真っ当なオチをつけずにいられない物書きの性が垣間見える。

  • 筒井康隆の作品の中では長いほうだと思いますが、わりと好きな作品。
    ただし中身はあまり覚えていない。
    表紙の通り、いろんな文房具が出てくるのですが、昔から物品に感情移入するタイプだった私には面白く思えました。

  • 筒井康隆作品の、妙に人間臭いモチーフと、軽々と死ぬこと、最後が読点の極端に少なく混沌に落ちていく感じがどうにも苦手で、煙に巻かれたような気がしてしまう。
    パロディと比喩の境界、唐突な視点の切り替え、語句の繰り返し、年代がごちゃごちゃ、ページをまたぐ、作者の独白や思考が混入、、、手法としてはとても挑戦的で斬新。

    文章などが小説らしくなくて読んでる最中は面白いと思えないんだけど、のちに構成やそれぞれの登場人物(登場文房具?)の意味を考えていくと、深いものがあるなーと気付かされる。
    便箋と封筒の、他人から聞いたら何がなんだか分からない言葉の置き換え遊び、これがこの本全体にもあてはまって「違和感」を出していそう。なんでそんなもので喩えちゃうの!意味不明!みたいな。
    あとは虚構歴史を一通り目で追っていたおかげで、第3部の鼬界の「歴史上の人物」への言及が( 上半身の鼬とか )あああれね、という感じで理解できたのが面白かった。

    冒頭で意識過剰なコンパスが出てきて、これが最後まで印象に残る。最後はマリナクズリ視点で、「スマートで優しかった」と言われているのがこの本唯一の救いかしら。

  • 筒井康隆の才気が爆発し、「全体小説」の如く、日本を含む現実世界をカリカチュアライズした傑作。

    「私とは何か?」という問いを各人が持ち、不可思議な行動を取り続ける擬人化させた文房具の世界は、あたかも吉本隆明の詩作に出てくる以下の言葉を想起させる。

    「ぼくが真実を口にすると ほとんど全世界を凍らせるだらうといふ妄想によつて ぼくは廃人であるさうだ」
    (吉本隆明「廃人の歌」 「転位のための十篇」より)

    何から何までが狂っていて、にも関わらずこれが架空の世界とも思えない現実性があるところが恐ろしい。

  • 十数年ぶりに再読。今回はまだおぼろげな当時の記憶が残っていたので第三部のメタをまだなんとか読めなくもなかったけど、あと10年後くらいたったら、ダンテの神曲についてるような注釈がないと読めなくなりそう。

  • 【1章】文房具が、自らの使用用途(ひとつの役割)に拘るあまり、おかしくなってゆく…僕らと同じね。【2章】鼬の文明史。自前の毛皮があるため毛織物業が発展せず、産業革命が興らないという設定は巧い!【3章】物語のラスト。コンパスイタチは「これから夢を見る」という。彼は、戦争描写で埋め尽くされ、閉じられてゆく物語の中で、自分の内側にあらたな虚構(夢)を建立しようとしている。完全にあきらめられた世界の中で見る夢は、明るい未来か?SF的な危険予知夢か?世界を虚構化(解釈して認識)し、切り開いてゆく営みは、この先もまだまだ続く。

  • 宇宙船冷艦カマキリ号の乗員は気が狂った文房具たち。大好きです。

  •  どんな小説を書いても、読者はそれを簡単に消費できてしまうわけで、この本だって文庫版で900円もせず、ページ数だって600ページもないわけだから、読める人なら一日で読めてしまう。分量的には。しかし、著者はこれを六年がかり、殆どかかりっきりで仕上げたわけであって、それをたった一日で消費していいのか。
     勿論悪いとは誰にも言えない訳だけれども釈然としないのも当たり前なわけでそのように消費されることを拒む小説があっても良い。この小説は私の読んだ限りではそうした意図の元にまずは書かれていて、とはいっても第一章などはわりかし読みやすいというか、読みにくい文体を用いて文房具に感情移入を強いるという無茶苦茶を早速かましてくるのだがそれをクリアすれば一気に読んでいける。この章で印象的なのは文房具たちの神経症じみた行動や描写であってこの異常なまでのリアリティに文房具としての個性が重ねあわされていく様はどうしたって泣けてしまう。ナンバリングのカウントが行為を無機質化するが故にその悲劇性が一層強調されるダブルクリップの話などは、無機物への感情移入が有機物への憧憬すら喚起させるものにも感じられそれがどうしようもなく悲しい。ある意味これは文房具を通して人間を描く、というかそれぞれの存在の理由を追求するような話であってそこにコミットできるかどうかが鍵となるがコミットできれば書かれている内容はそれなりにオーソドックスとも言える。
     第二章では様相ががらりと変わり世界史のパロディが始まる。鼬族クレオールの歴史の、延々数百ページにもわたる記述だ。これは文体からして歴史教科書のパロディになっているから読み進めるのは相当苦痛なのだが「読み進める」という感覚からして間違っているということに気づけば勝ちだ。「勝ち」というのは変な表現だが明らかに読者に対して勝負を仕掛けてきているからあえてこの表現を用いる。ここでは歴史教科書をじっくり頭に入れながら読むように、何度も反芻しつつ読んでいくのが正しい。そうして頭の中に壮大な一つの歴史が展開されていくその様を楽しむのである。人類史のパロディが随所に盛り込まれていてそれを解き明かしていくのも楽しいし、ひょっとしてこの歴史はわれわれの歴史と繋がっているのではないだろうかという妄想を介在させても面白い。私の場合は古代核戦争論について書かれたオカルトの小説を読んでいるような感覚で、あり得そうであり得なかった歴史のその虚構と現実との接線にぞくぞくしながら読んだ。まるで現実のことのように書かれることで生じるリアリティがたまらない。
     第三章ではいよいよ第一章と第二章の虚構世界が接続され、虚実入り乱れての大洪水が起きる。記述は離散してはまた引き合わされ、空間も時間も主観も解体されやがて大きな渦のようにうねりを見せ始める。そのうねりの中には今これを書いている著者の現実、意識の流れ、あるいは「この小説に対してなされるであろう評論の先取り」までもがぶち込まれ、もはや批評の言葉すら寄せ付けない勢いになってくる。勿論根幹にあるテーマは存在の理由の追求、といったところにあるだろうし最終的にはそこに着地するからそれを元に批評の言葉をつむぐことは可能なのだが重層的に意味を見出そうとする作業がかなりの部分で撥ね付けられてしまって表層に漂う直感以外のものを足がかりにできない不安を感じさせる部分があまりに多すぎるのだ。もしこれは批評しようとすれば足場が絶えず取り払われる恐怖の中でなんとか言葉をつむぎだし、そのすべてが一言で全否定される可能性も甘んじて受け入れなければならないだろう。そんな気がする。

     読み終えた時には五度、いや六度、人によっては十度以上の射精感にも似た疲労と快楽に襲われ、それというのもその長い「読みにくさ」と徹底的に対峙してその「読みにくさ」がかき回... 続きを読む

  • まじで名作。5回は読める

  • 「まずはコンパスが登場する。彼は気がくるっていた」

    こんな一文で始まるこの小説は、あらすじにもある通り文房具たちがイタチの星を侵略する三章構成物語です。
    宇宙船の乗員である文具たちがどのように気が狂っているかを描写した第一章「文房具」。とある人物(?)の視点によって描かれた、イタチたちの星クォールの歴史を詳細に綴った第二章「鼬族十種」。そして戦争の様子が様々な視点によって描かれている第三章「神話」。

    内容は圧倒的であり、質量を感じるほどに緻密。読み応えのある大作です。まあ、分かりやすく言えば物凄く濃密に描かれているわけです。文房具たちのキチガイっぷりと鼬たちの歴史、そして両者の歴史が、1ページの大半が文字で埋まるぐらいびっしりと。特に第二章にあたる「鼬族十種」は、実際の地球の歴史をなぞるような流れが延々と書かれているのですが、これがだいたい中世の封建制度の頃から第二次世界大戦ぐらいまで、実際の歴史とは微妙に形を変えて数百ページにわたって続いていきます。

    各章、同じ物語であるというのに、まるで別種の小説を読んでいるような気分になります。それだけのボリュームがある小説でした。その上、色々な意味でやりたい放題な内容でした。たしかに実験小説という表現が一番正しいかもしれません。
    句読点や改行が極端に少なかったり、画像が挿入されてたり、ホチキスが飛ぶシーンを文章のレイアウトで表現したり、改行なしで唐突に場面(視点)が変わったり、挙句の果てには著者自らが登場したり。本当にやりたい放題です。

    それだけに読む人を選ぶ内容だと思います。
    万人には受けいれがたい。
    だがそれがいい。という感じでした。

  •  本書が単行本で出たときに買ったのだが、積ん読になったまま幾星霜。
     宇宙を航行している大船団がある。その一宇宙船に船団司令部より指令が下る。使命は惑星クォール全居住民の殲滅。
     鼬族の人口爆発により彼らによる犯罪が頻発。特に凶悪な鼬族約千名を3度にわたり惑星クォールに流刑にして約千年。鼬族は惑星クォールで文明を再び発展させ、刑紀九九九年に到り、「大空からの殺戮者」が襲来する。
     そういう話なのだが……
     なのだが……

     まずコンパスが登場する。なぜなら、指令が下る船というが文具船だからである。船長は赤鉛筆で、副船長がメモ用紙、繊維じゃなくて船医は紙の楮(こうぞ)先生だったりする。文房具は生きているのか。生きているらしい。コンパスなら例の尖端に針のある両脚があると同時に、人間のような身体器官がある描写が何の説明もなく併存している。量子論で量子が波であると同時に粒子であるかのように、文房具たちは文具としての身体を持つと同時に人間の身体を持っているようなのだ。そしてそのことについては何ら説明がない。
     第1章「文房具」はこの文具船の乗組員たちを次々に紹介していくのだが、みな狂っているか、狂う寸前なのである。一見正常そうな者は、実は妄想を持つがゆえに正常な行動をとっているなどというややこしいことも起こっている。ただし狂っているといってもおおむねそれは性格が極端に偏っているとか著しいこだわりを持っているとかいうだけのことに過ぎず、われわれの周囲にいる人々を少し極端にしただけともいえ、いわば「普通の人々」の戯画なのだ。文房具とは人間が人間自身の機能を拡張するために生み出したものであり、極めて人間的なものともいえる。
     指令はクォールの居住民である鼬族二十四億の殲滅。しかも艦隊への復帰の指令はない。だいたいもう狂っているのだが船員たちは狂ったようになる。戦闘で死ぬかも知れない。二十四億の住民を皆殺しにするなどいつまでかかるかわからない。俺たちは捨て駒だ。

     第2章「鼬族十種」はクォール一千年の歴史である。記述法は歴史書か歴史の教科書かといったもので、おおむね淡々と書かれている。歴史の教科書を読まされるのはうんざりだなあと思うが読んでみるとこれが面白い。つまり内容は淡々としてはおらず、さまざまな王朝が起こっては戦争し虐殺しといったもので、人類の歴史の戯画なのである。最後は二大国の対立と核戦争の危機というところにいたる。鼬だけに前王を喰ってしまったり、最後っ屁をかましたりするが、人間だって似たようなものだ。実は第3章でこのクォール史は文具船のある船員によって数十年の調査執筆によってなったものであることが明らかにされるのだが、千年の歴史の重みを描いた上でその歴史を破壊する文具船がやってくることで否が応でも黙示録的な雰囲気が高まるという仕掛けになっている。黙示録とは歴史の終焉だからである。

     顕微鏡的に人間的なものをデフォルメした第1章に、望遠鏡的に俯瞰した人類史のパロディの第2章が激突すると、歴史の終焉のあとにあるのは第3章「神話」である。文具船侵攻直後やらその天空からの殺戮者の存在がもはや事実かどうかもわからなくなった未来までさまざまな時点の記述が文房具側も鼬側も次々に視点を変えて列挙され全貌はその断片から伺い知るしかなくなる。しかも、そこに雑音がはいってくる。作者の実生活の話題や、執筆中に聞こえてきたと思しき選挙カーの絶叫。
     矮小ながら徹底的に細部をえぐっていく人物描写と長大ながらも殺伐とした歴史、いずれも内容は矮小なのにその叙述の形式によって壮大な黙示録的世界を生み出す。つまりカオスとしての神話がここに実現されるのだ、しかも人間的なあまりに人間的な。

  • 正直私にはよく判りませんでしたが、アホな人間に対する批判なんだなとは思いました。

  • 以下引用。

    まずコンパスが登場する。彼は気がくるっていた。(冒頭)

    「ねえ。おまえはいったいこれから何をするつもりなんだい」息子はやっと顔をあげる。母親を見つめるその眼は点いていないランプ玉のようでありまるで何も見ていないかのようだ。「ぼくかい。ぼくなら何もしないお」彼はしばらくしてから鈍重に聞こえる低い声を咽喉の深い底から押し出すようにして答える。「ぼくはこれから夢を見るんだよ」(末尾)

  • 筒井の最高傑作

  • 図書館で借りて読んでみたのですが、読み終わり購入することを決意しました。夢野久作の作品を読んだ時以来の毒と魅力を感じます。

  • 分厚かったなぁ。 読んだのは中学校時代。筒井康隆の本を片っ端から読んでいた時代でしたが、なかなか難易度が高かった。

    3部構成。
    1部、宇宙船内部 登場人物が全員キチガイww
    2部、地球っぽい星の世界史
    3部、一部と二部の融合

    いやー、読み応えが凄い。
    難易度が高いけど世界史が好きならついていける。

  • 文房具軍団が鼬の星を襲うというSFオールタイムベストにも選出される名作だが・・・。登場人物、ではないな登場道具・動物がやたら多く、文章で表現できる虚構の世界を限界まで追及しようとした野心的な作品でなかなかの難物。全3章中では現実の歴史を分かりやすくパロディ化した第2章は(ややくどいながらも)比較的オーソドックスな諷刺小説風で非常に面白かったが、道具が擬人化され行動などについて強い想像力を要する第1章とキャラクターたちのみならず本書の「虚構」全体がディザスターを迎えてしまう第3章は凄いと思いつつもノりきれず、書かれたことの何分の一も把握出来ないまま終了してしまった。自分には何らかの補助線が必要で、それが見つかればもっと楽しめるかもしれない。

  • イタチは不要と思ってはいけない。イタチは現実世界の為に必要。

  • 筒井裏ワールドに翻弄されました。
    評価などつけることができません。
    読了した自分を褒めてあげたい・・

    今さらですが・・今の職場状況に 似ている・・・

  • まずは読みきった自分を褒めたい。

    読書って、読者が本の世界に入り込むのがいわば暗黙のルールなのだが、この本に限っては本の世界が頭の中に押しかけてくる感じ。
    それが新鮮だった。

    二章は見ただけでうんざりしますが、地図を見ながら、鼬の勢力の変遷を想像したら楽しく読めました。

  • なるほど、奇書だわ。

  • 裏表紙の紹介文をまず読んでなんだこの小説は、いったいどんな小説なんだと思わされ手に取り、1行目を読んだときの衝撃が忘れられない。
    しかし第1部はともかく、第2部、第3部とどんどんついていけなくなってゆく……。自分は歴史書を読みたいわけではなかったので第2部は半分ほど飛ばしたが、第3部もカオスとしか言いようがない、でも面白かった。
    文房具はナンバリングが好き。

  • いつか全部読みたいけれど…一旦中断
    面白いんだけど息が詰まる感じ

  • うわー、読んで時間を無駄にした、という小説だった。
    全く面白みが分からない。いまどきこんな小説も珍しい

    何はともあれ書き上げた作者の狂気を感じる

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鼬族の惑星クォールの刑紀999年6月3日、国籍不明の2基の核弾頭ミサイルによって国際都市ククモが攻撃され、翌4日、無数の小型単座戦闘艇に乗ったオオカマキリを従えた文房具の殺戮部隊が天空から飛来した。それはジャコウネコのスリカタ姉妹の大予言どおりの出来事だった-。宇宙と歴史のすべてを呑み込んだ超虚構の黙示録的世界。鬼才が放つ世紀末への戦慄のメッセージ。

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