『萌え絵で読む虚航船団』は2019年頃に知り、数回読んで更新日付に気付き、続編は望み薄であると察した。
筒井康隆は、一冊だけ読んで通るのをやめた道である。やはり2019年頃、その一冊を読み直して評価が真逆に改まったので、なにか読んでもいいかなと思えるようになった。
かような縁で本書に至る。
『萌え絵で読む虚航船団』で見知っているので、登場人物が文房具である第一章に問題はない。また、現実の歴史をパロって架空の歴史の構築を試みている第二章については、哲学の貢献を省いているのだなとは思うものの、特に意見を持たない。ただ『シルマリルの物語』や『ペガーナの神々』が脳裏をよぎったのみ。
問題は第三章である。
この小説が発刊された1984年頃、この頃がどういう時期であったかしかと思い出すことはできないが、大雑把に当時とまとめることにして、漫画にせよ小説にせよ、作家が登場する楽屋オチや、内輪ネタともいえるようなものが散発的にだがわりとある頻度で見受けられたことを記憶している。よほど好きな作品作家でなければ読んで楽しいと思えたことはなく、好きな作家作品であってもときには生暖かい気持ちにさせられたものだ。「第三章 神話」は、そんな作品ではなかったのに、突如としてそんなものが押し寄せてきて台無しになった。そんなカンジ。第二章の半ばからそうではないかと察していたのだが、著者は飽きていたのだろう。
これまで書かれた作品に対して「ヤクでもやってたんじゃないのか」という感想を抱くことはあった。あくまで書かれた作品そのものに対してそう思った。
ところが今回の読書で、発刊されたことに対してそう感じたことが新しかった。関係各位、誰も止めることはできなかったのか。第一章、第二章はよく出来ているので、それを惜しんだのだろう、たぶん。