敵 (新潮文庫)

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著者 : 筒井康隆
  • 新潮社 (2000年11月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101171395

敵 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 読後3日はむなしい気分になる

  • 圧倒的すぎる孤独にただただ読後、放心。
    解説の川本三郎が「老人文学」と評していたがこれはもう他に類はないのではないか。

    儀助の日々日常を淡々と、しかしすさまじく細かに描く冒頭から筒井ワールド。擬音を独自の漢字に当てはめて描くのも筒井ファンにはたまらない、お約束の表現として楽しく読む。しかし、「酒」を辺りにから現実と夢、幻覚の区別が徐々に曖昧になってくる。

    さあこれも筒井御大独特の導入と、読む者は気を引き締める。パソコン通信で「敵」があらわれたときなど、読者は小躍りする。どんな展開が待っているのだろう、ここからドタバタになるのか、儀助の身に何が起こるのか。何ならもうすでに最初からすべて儀助の妄想であって などなど、永年やられつづけてきたファンは各章を読み進める。どれも、筒井読者には通ってきた道であって最後の行で「やられた!!」となるはずだと確信をもってページを繰るのだ。

    そして、やられた。最後の行にあったのは、ただ、ただの老人の孤独だった。独居老人の日常にはなにが起ころうと展開などあるはずもないのだった。「春雨」の章、「彼は首を四十五度にして耳を傾ける」。

    あれだけ夢で死んだ妻に焦がれながら、毎年のように遺言状(ただし効力はない下書きのワープロ)を書き換えながら、毎晩晩酌をし酔生夢死にうっとりしながら、そう、貯金が底をついたら自死をすることだけを日々考えながら、春の前の使途使途死都死都ふる雨を聞きながら、ただ思うのは「春になったら来てくれるだろう」「信じて待つとしよう」と、「生きている知り合い」に逢うことだけ。恐ろしい孤独。生きている人間が最後に感じる、圧倒的な孤独。「老人文学」とは本当によくいったもので、これはこの年まで生きて筆をとりまた全盛期の力と意地を失わない筒井康隆でしかものせなかっただろうと思う。孤独を描き切り読む者に伝えることができた作家の力とは、と想像を絶するしかない。また文庫版の表紙がいいんだ、これが。

  •  単行本買ったまま積ん読にしておいたら、2年後に文庫化されて、しかし、いまやどっちも絶版ではないか。

     主人公というか主たる描写対象は儀助という人物である。まず最初の章は「朝食」である。儀助がどのような朝食をどのように摂るのか微に入り細を穿って描写される。そして次の章ではまた別のテーマが主軸にすえられて儀助の生活が克明に描写されていく。
     渡辺儀助はかつて大学教授で西洋演劇史を専門としていたが、定年を迎えて10年ほどたち妻には既に20年前に先立たれていて子どもがいないために持ち家でひとり暮らしをしている。老人の淡々とした日常である。格別、贅沢をしているわけではないが一定水準の生活は保ち、しかしそれ以上は厳しく自分を律している。すると年間の経費が明らかになり、蓄えがいつなくなるかもみえてくる。そのときが死ぬときだと儀助は考えている。
     「麺類」が好きで、昼は麺類を食するが何をどうやって用意しているのかとか、「郵便物」はどんなものが来るのかとか、「昼寝」のときには物故映画俳優が出てくるが頻度が多いのはこの順だとか、書かれていることは特に事件もない日常の瑣末の連続である。そこで仄かに漂ってくるのは、老いることの侘びしさ、淋しさ、惨めさなどである。それも誇張されたものではなく、当然誰にでも訪れそうな状況であって、余計、薄ら寒くなる。
     そして真ん中を過ぎたあたりで、タイトルと同じ「敵」という章が来る。これは儀助がROMをしているパソコン通信の雑談サロンの「北の方から敵が来る」という内容の奇妙な書き込みである。

     と、ここで「新潮社新刊案内」が本にはさまっていたのを発見したので、本書の紹介を引用いたします。

    「これ以降は常に、『これが最後の作品』と思いながら書き続けねばならないだろう」(筒井康隆)
    渡辺儀助、75歳を脅かす「敵」とは何なのか? 老醜をさらす前に自裁を決意した元大学教授の〈死を前提とした生〉の光陰を超絶的緻密さで描き、残酷なまでに衰え崩れゆく意識の襞の襞まで見すえた感動と哀切の430枚。『虚構船団』から14年、筒井文学の達成を示す長編作品!

     それだけのことを言っておいて、いまや絶版にしていていいのか、新潮社。

     さて、この異質な一章のあと、話は死んだ妻のことになり、「敵」の侵攻が始まるのだ。敵の正体は大体見当がつくので、あとはそれがどう描写されるかに、著者の手腕が示されるというわけだ。

  • 筒井作品の中で、あらすじに惹かれて購入。
    SF作家の小説のあらすじに
    『「敵」が攻めてきた』
    なんて書いてあったら、どんな敵なんだろう。エイリアンかな?なんて思うのが普通ですよね?笑
    この作品は、よくも悪くもその期待を裏切ってくれます。
    主人公は、妻を亡くした老人なのですが、物語の前半は主人公がどんなところに住んでいて、どういう経歴を持っていて、毎日何を食べていて・・・という話が延々と書かれており、私はここで挫折しそうになりました。
    実際、この小説を読み終わるのには相当な時間を要しました。一時期読書を敬遠していたのはこの本が読みたくなかったからと言っても過言でないかもしれません。
    そんな日常パートが終わるといよいよ「敵」が出てきます。
    ・・・その後は読んだ方ならお分かりの通りのオチです。
    ボケ老人の思考を内側から表現するというのはなんとも突飛で非常に面白いと感じました。
    日常パートも、その事実を知った上でよくよく考えるとおかしなところがあるんですよね。
    ぜひ、もう一度読み返したい・・・とは思うのですが前フリ部分である前半が非常に細かく長いので少し躊躇ってしまいます笑
    しかし、冷静に考えると怖いですよね。
    自分ももしかしたらなんて考えると・・・・。

  •  一人暮らしの老人の日常を細部まで描写することから始まっているのだけど、擬音が当て字表記になっているところが既にこちらを心許ない気持ちにさせてくる。そうしているうちに老人の意識と無意識の境界線が曖昧になっていき、書かれていることは過去に本当にあったのかそれとも彼の夢または幻なのかが少しずつ分からなくなっていく不安感をこちらも感じるけれど、もしかしたらこの感覚が"老い"、"耄碌"なのかもしれないと思った。果たしてこれは老いが人に与える幸せなのか哀しみなのか…ということを考えさせられた良い老人文学。

  • 中盤まで会話という会話がなく,文字がずわーっと並んでるし,擬音が漢字になってるし,これ読み切るの大変かもと思っていたらそこから…。
    読み終えたときは「おおぅ」みたいな変な溜息が出て十秒くらい固まった。そこから一週間くらいふとした瞬間にそのときの感じが再現されて困った。

  • 結局この話は何だったのだ。
    視点が足りなすぎて全然わからなかった。

  • 妻に先立たれた元大学教授75歳

    ひとり暮らしの生活を淡々と綴っていきながら
    だんだんと現実と夢、妄想との境目があやふやになっていく。

    歳をとるということは、そして老耄するということは
    こういうことなのか・・・と
    シンシンと恐ろしくなる1冊です

  • これは怖い。
    自分も目指したくなっちゃうような端正な日常生活の細かな描写からだんだん”敵”が見えてくる辺りが非常に秀逸。

  • とにかく読みにくい序盤を抜けると「敵」の出現からどんどんと現実感が薄れていく。
    この流れるような展開のさせ方は流石に凄い。

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