敵 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 450
感想 : 46
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  • Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101171395

感想・レビュー・書評

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  • 老人文学とでもいうべき小説である。老人の一人称で語られる物語は日々でありささやかな拘りでありとバラエティに富んでおり、偏執的な日常描写のディティールはとにかく細かく、そこはかとなく狂気に満ちている。老人側の視点というものは非常に興味深く、ストイックな生き方に喜びを見出したり、その反面、安易に他人の世話にはならないという気位の高さも感じる。その生活は羨ましいようでいて、少しばかり淋しい。途中から出てくる「敵」の正体はついぞ分からないままだが、老いによる耄碌であったり、未来への絶対量の少なさからくる恐怖なのだろう。正体も分からず、敵が現れたその瞬間から規律的な生活は壊れ、妄想がどんどん支配していく。パソコン通信の面々も本当に存在していたのかどうか疑わしく、頑迷な老人のペルソナであるとも言える。ギリギリの所で悲壮感を覚えさせないようなコミカルな筆致や、老人の内面含めた描写の素晴らしさは一級品。句読点が少なく、ページ数以上に詰め込まれており読破するのに骨が折れたが、この詰まった感覚と読後のあっけなさこそが人生なのであろう。好みとはややズレるため星は控えめだが傑作であるとは思う。

  • 前半の何気ない老人の些細な日常のひとつひとつの描写がいちいち面白い。敵が出てきて以降、夢とも現実とも妄想ともだんだん区別のつかない筒井ワールドへ入っていく。穏やかな最後は哀愁漂う情景が浮かんだ。

  • 妻に先立たれた元大学教授75歳

    ひとり暮らしの生活を淡々と綴っていきながら
    だんだんと現実と夢、妄想との境目があやふやになっていく。

    歳をとるということは、そして老耄するということは
    こういうことなのか・・・と
    シンシンと恐ろしくなる1冊です

  • ・1/28 久し振りの筒井康隆だ.いろんな人のを読んでたから、数えてみたら13冊目だ.あっという間に読み終えるかもしれないな.読み始めるとなんだか私小説のような日々の生活やこだわりが延々と続いている.単に主人公の性格や人となりを説明しているだけとは思えない.どこかで急展開があるだろうが、(やっぱり「敵」という章だろうな)ここまでの話はどうつながっていくんだろう.結構楽しみだ.
    ・1/29 それにしても描写があまりに具体的過ぎないか?これ程詳細に描写する必要が果たしてあるのだろうか.「敵が来る!」と出てくる章にしても、何事も無かったかのように終わってしまった.いったいこれからどういう話の展開になっていくのだろう.
    ・2/3 ちょっと下の本に寄り道してたけど、今日から復帰した.やっぱり「敵」に関してはちょっとしか出てこなくて、淡々と日常の描写が続いているだけだ.早く急展開しないかな.
    ・2/4 あれ?なんだ、終わってしまったって感じ.そうか、老人小説か.ヘミングウェイの「老人と海」のようなジャンルだね.でも’敵’ってなんの象徴だったんだろう.なんかさみしい.

    • ahiruさん
      すごく共感できる感想です。。笑
      敵って何だろうって考えさせられるような、答え合わせさせてもらえない寂しさを感じるような…
      すごく共感できる感想です。。笑
      敵って何だろうって考えさせられるような、答え合わせさせてもらえない寂しさを感じるような…
      2019/12/08
  • 読後3日はむなしい気分になる

  • 定年退職した老後の日常を徒然と描写する。とはいえ単なる老人の日記に納まるはずはなく、死別した妻や若い知人女性たちとの妄想、余生を淡々と楽しむ姿が羨ましく映る。筒井康隆作品ならではの魅力は十分。

  • まだ若いと自称していい年齢のおれにとっては死を目前にしたリアリティ溢れるはずの生活描写は下手なsfよりも現実味がなかった。年月の厚みに嘆息させられた。
    老化ゆえ(?)の狂気に陥る描写には喪失感と同時にどこか美しさも感じた。
    裏表紙のあらすじはさすがに内容から乖離してない?

  • 面白かった。読むのに時間がかかったな。老耄を恐れる老人の老いゆく日々が詳らかに書かれている。それだけなのに読んでいて面白い。

  • 久しぶりの筒井節
    ただドタバタ、シュール好きの私としては
    老人文学
    というのが分からなかった

    に期待してはいけないということ

  • 老妄を恐れ、老臭を恐れる主人公に忍び寄る老い。人生の終わりを自分の理想的な形で飾りたいとする計画にどこで狂いが生じたのか、それは避けられたのか、また避けるべきだったのか…

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著者プロフィール

小説家

「2017年 『現代作家アーカイヴ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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