愛のひだりがわ (新潮文庫)

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  • 新潮社
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感想 : 70
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  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101171494

感想・レビュー・書評

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  • ◯児童書としても進められる内容。構成としてはかなり王道のストーリー。
    ◯文章表現は一時代前のように感じるが、情景がスッと頭に描ける平易さや、一人称の語りによる演出とはいえ巧み。
    ◯しかし何故だろう、歳をとったせいか、こういった本で涙腺を刺激されるようになった。

  • 久しぶりの筒井康隆!
    主人公愛ちゃんは父親を探しにひとり旅に出て、息子の嫁に居場所を追われているご老人・詩の才能豊かな主婦・ずっと愛を見守ってくれるサトルや犬のダンとデン・両親を殺した暴走族のリーダーになった歌子・出版社の人々etc.、バラエティ豊かで心根の温かい人々に守られながら影響を受け月日を重ねていく。
    ジュブナイル系と思って侮るなかれ、作者からの説明や心理描写の押し付けが(多分意図的に)少なく、さらさらのスープのごとく進む展開の中で、読み手の想像欲求は否が応にも駆り立てられる。そうしている内にすっかり小説に丸め込まれた様に愛ちゃんやその他愛ちゃんをサポートする登場人物に感情移入していって、自分なりの解釈が楽しくなってくる。
    最後、愛ちゃんのストーリーを通しての成長が喜ばしくもある反面切なくて、胸がつまるのです。

  • 近い未来この小説と同じ社会になるのかなと思い少し怖くなりました。
    環境汚染で汚れた空、警察官の機能が低下し治安が悪くなった町、人殺しや銃の発砲は当たり前。
    そんな無法地帯の中でも父を探し懸命に生きようとする愛。

    「今の私が作ったのが今の社会であるなら、今の私以上の私になって今の社会以上の、もっとよい社会に変えなければ」この愛の気持が印象的でした。

    今の現状に失望せず知識を深めたら自分が成長するだけでなく視野が広がり社会が変わるきっかけを作ることができるかもしれません。
    一番良くないのは今の現状に不平不満言い時代の流れに流されることかもしれませんね。

  • ‪2006年文庫化の長編小説。左腕が不自由な小学6年生の少女が行方不明の父を探す旅に出るジュブナイル小説。細かな描写や状況説明を極力削ぎ落とし、淡々とストーリーは進むが破天荒かつ非常識な要素が散りばめられ、独特な刺激を放っている。‬

  • 内容(「BOOK」データベースより)

    幼いとき犬にかまれ、左腕が不自由な小学六年生の少女・月岡愛。母を亡くして居場所を失った彼女は、仲良しの大型犬デンを連れて行方不明の父を探す旅に出た。暴力が支配する無法の世界で次々と事件に巻き込まれながら、不思議なご隠居さんや出会った仲間に助けられて危機を乗り越えていく愛。近未来の日本を舞台に、勇気と希望を失わずに生きる少女の成長を描く傑作ジュヴナイル。



    最初に読書の楽しみを教えてくれた最大の恩人は筒井康隆氏です。高校の時は手当たり次第に読みました。短編も長編もエッセイもどれもこれも大好きでした。当時の世の中への影響力も物凄いものが有りました。ブラックな攻めた話が多かったのでとっても刺激的でした。
    翻って久々に作品を読みました。文体や単語の選び方に古さを感じるのですが概ね話としては悪くなかったという所でしょうか。ただ昔のギラリっと光る才気が感じられないのはさみしい限りです。これも一時代を築いた人への過大な期待なのかもしれません。

  • まずジュヴナイルってなんぞや、YAみたいなものなのね。それなら許してもいいかしら、ずいぶんと大衆的な読み物だなぁという感じはする、でも筒井康隆の顔、こわいので、このひとすごい経験してきたんだろうな、とは思ったり。
    人がこんなにパタパタとRPGみたいに死んでゆく小説はあまり読まないので新鮮だった。
    父の最後の絶望的な様子ばかり現実的で、そこが好き。

  • 主人公の小学生の少女の一人称で語られるため、難しい漢字を使わず、使ってもルビをふって児童小説のような体裁なのだが、主人公の置かれた世界はハードでバイオレンスな、児童小説にはまったく似つかわしくない世界だ。
    主人公の少女は左手に障害があり、家庭環境に問題を抱えているが健気に生きている。そんな少女が母の死をきっかけに家を出て、いなくなった父を探しに旅をするロードストーリーなのだが、少女の左側には常に誰かが(それはまず犬からだった)寄り添って物語は淡々と進んでいくのである。
    各章のタイトルに登場人物の名前が冠してあり、章毎にその人物が少女の左側を受け持つことになる(一部違うが)。その人物たちの物語の悲惨さはしかし後半で昇華される。暴力や殺人が生々しく続いていき、そうやって物語は児童小説とは似ても似つかない様相となるのだ。
    結論から言うと、想像とはまったく違っていたが楽しめた。大人向けの児童文学という感じで好意的に受け止められた。そこは非常に筒井康隆らしいと思った。

  • 事故により左腕が動かなくなってしまった愛。
    自分を取り囲む環境に嫌気がさし、いなくなった父を探す旅に出る。
    私利私欲が最優先の暴力が蔓延る世界で
    それでもそんな世界でも思いやりの心は絶えることはないと
    動かない愛のひだりがわで見守る人達が教えてくれた。

  • ゆっくりと進む映画を観ているように、おだやかな心で一気に読めた。
    簡単な設定と分かりやすいストーリー、近未来の話ということで、想像に足るぐらいの荒んだ町。銃や殺人といったような話も当たり前にでてくるが、違和感なく話は進み、人の優しさや美しさだけが余韻のように残る。読後感が良い。

  • 物騒になった日本の近未来に生きる小学6年生の月岡愛を巡る出来事とその3年後の話です。

    デンとダン、そしてシュガーたちの野犬が登場し、愛を助けますが、愛の方は・・・
    しかも、愛は犬と会話できたのにラストでは会話できなくなってしまいますし。

  • 旅する少女の話、連れは移ろいながら、時には歩き時には街に留まり、
    子供が大人になる、一歩踏み出す、自立するというようなことがテーマかな

  • じわじわタイトルの意味を理解し始めるときにはもうお話に夢中になっていた
    少しだけ暴力的な表現もあるけど、すごく読みやすくて先が気になって一気読みしてしまって、しかもここでこんなふうに終わるの!って最後の1ページを読んだ瞬間ブワッて全身に鳥肌が立った

  • 『マッドマックス』的な近未来を舞台に、少女の旅が描かれる。

    ジュブナイルということだけど、なかなかにバイオレンスで、欲望が渦巻いてるハードな作品でもある。

    しかし、これは旅立ちの物語。
    少女は大人になり、彼女に関わった人たちも、何かしら新しい世界に踏み出していく。

    さすがに筒井康隆といった感じ。

  • 自分でも意外だったんですけど、初めての筒井作品でした・・・。
    すごく良かった・・・超能力に犬を連れた少女・・・このジュブナイル感。
    ディストピア感あるのに、どこか長閑で泥臭い・・・だけど誰しもが凛と咲く一輪の花のように生きようと戦っている・・・。

  • 筒井さんにしては微妙という感想を多く見ますが、私は好きです。ジュブナイルということでバッドエンドはありえないと思ってましたが、世界観はかなりハードボイルド。暴力が溢れているし、ときには殺人まで起こります。

    ただ、タイトルの示すとおり、ひだりがわに誰かがいつもいて守ってくれる、やさしさが伝わってくるお話です。

    ラストがとっても印象的。筒井さんが淡々と書くので、あっさりしていますが、何度か読み直して目頭が熱くなりました。

  • 筒井康隆先生はグロギャグや不条理だけでなく、ストーリーラインのハッキリした、こんな傑作だって書けるのだ( ´ ▽ ` )ノ。
    それはもう、馬の首風雲録(ジブリアニメ化希望)や我が良き狼(スピルバーグ映画化希望)の頃から、ずっとだ( ´ ▽ ` )ノ。
    健気な少女の成長談ながら、必ずしも純な性格でもなく、スッキリした結末にも至らない( ´ ▽ ` )ノ。ブクログ評を読むと、この結末が不満な人が多くて、あれ?と思ったけど......

  • 筒井康隆さん、二冊目の本。前回とは全く違う世界感でびっくりした。最後の終わり方は不完全燃焼だが、ご隠居さんやサトルなど魅力的な登場人物もいた。旅を進めて行く過程はワクワクしながら読めたし、お金を奪った犯人の会社を乗っ取る所など、かなりスッキリ気持ちよかった。その後の父の再会シーンに少しがっかりした。旅の目的が父を探すことであり、その目的も含めて愛ちゃんのひたむきな姿が好きだったのに、堕落した父に1ページに及ぶ罵声をあびせて父の反応の記載もなく終了、、、必要だっただろうか?サトルの彼女の盲目の設定も不要では、、などつっこみドコロもたくさん。

  • ジュブナイルとされているが、大人が読んでも十分面白い。
    タイトルで勘違いされそうだが、甘酸っぱい恋愛ものではなく、片腕が不自由な少女が父親を探す近未来日本を舞台にした冒険活劇だ。徐々に大人びていく愛の成長には少し寂しさが漂う。

  • ジュブナイル、なのかなこういうの。
    タイトルに惑わされw
    とても良かった。

  • 父親が蒸発したのち、母まで病死。住み込みで働いていた先の家族にいじめられ、番犬を連れて父親を探す旅に出る愛。
    波乱万丈過ぎる愛の旅。でもいつも左腕が麻痺している愛の「ひだりがわ」には愛を守ってくれる存在が出てくる。
    愛は優しさに甘えるだけの女のコじゃなく、自分で学び成長する。

    理不尽な環境に置かれたとき、それをどう考え、どのように行動すべきか、とても真っ当な理屈が貫かれていてさっぱりした。

    随所で出てくる「わたしはとても幸せだ」という感覚が大事。

  •  左腕の不自由な少女愛の成長の物語。
     愛の左側にはいつも彼女を守るように誰かがいる。
     犬のデン、ダン、ご隠居さん、同級生のサトル、・・・・

     母が死んでしまい、数年前にいなくなった父を探す旅に出た愛は、いろいろな人たちとの出会いを繰り返す中で成長していく。
     最後には父親との再会を果たす。それは、目的ではあったが、しかし、愛の望んだ形ではなかったようだ。
     そして、愛は1つ成長していく。

     終始、主人公の少女愛の視点で描かれている。
     あたかもジュブナイルのように描かれているが、その実態は大人の鑑賞に堪える作品である。
     すべてを書ききらないことによって、読者の想像が膨らむことを計算し尽くした上で、それぞれの出来事が描かれている。
     最後が、中途半端な終わり方に感じられたが、その意味するところがじわじわと理解できるにつれ、全編にちりばめられた伏線が集約されるのを感じられた。

  • 表紙が素敵だったのとタイトルに惹かれて購入しました。
    「愛のひだりがわ」というタイトルから、”愛”という
    概念を主軸にしている内容と想像していたのですが、
    とっても単純な意味でした♪
    (勿論、概念の”愛”も大きなテーマの本です。)
    そして、「愛のひだりがわ」の意味が分かった瞬間、
    新幹線で読んでいたにも関わらず涙が我慢できませんでした。
    タイトル一つでもこんなに意味があって、心を打たれるのは
    さすが筒井先生です。本当に言葉が大好きなんだと思います。
    今のままでは将来の日本は作中で描かれている様な
    日本になるのだと思います。そうならないように…子供が
    こんなに苦労したり悲しんだりする日本にならないように…
    大人がシッカリとしなければならないと痛感させられました。
    また、子供から大人になる残酷さも描かれています。
    大人は沢山のキラキラした素敵な事を踏み台に、犠牲にして、
    それと引き換えに子供を守る強い存在となるのですね。
    元々ジュブナイルですし、難しい内容ではありません。
    子供から大人まで沢山の人に読んでほしい小説です。
    私も誰かの「ひだりがわ」になりたいです。

  • ほのぼの怖い表紙と裏腹に、マッドマックス風近未来における冒険活劇。復活以来、波乱万丈を割と淡々と淡白に表現するようになったなーと。最後の下げは半分読んだ時に皆さん思いつきます。落語的です。

  • 犬と話がしたい

  • 筒井康隆らしからぬ印象を受けた。

  • いい作品だと思います。
    ただ、
    私は好きにはなれませんでした。
    ラストが、どうにもスッキリできませんから。
    ハッピーエンド好きにはオススメできない作品ですね。
    いえ、
    主人公自体に蟠りはないようなので、
    ある意味ハッピーエンドではあるのですが、、
    ネタとしても悪くはないのですが、
    自分としてはイマイチです。
    もしかしたら、
    自分達の生活と遠からず、近からずなので、
    妙な先入観などが生まれてしまうのかもしれません。
    そしてそれは私にとっては悪い方向へと進んだのでしょう。
    ただ、
    文体は読み易くなっていますので、
    難しげなテーマに簡単に関わりたいという方には、
    オススメです。

  • 2011.11.3(木)¥189。
    2011.11.4(金)。

  • 左腕が不自由な主人公・月岡愛は、行方不明の父親を探す旅に出かけ、行く先々でトラブルに巻き込まれてしまいます。しかし、たとえ左腕が不自由でも、その隣には飼い犬や出会った人がいて守ってくれ、襲い掛かる困難を乗り越えていき、そして・・・。
    このことは実は僕たちにも同じで、誰にでも不自由というものは必ずあり、それを助けていくのが人間であれ犬であれ何であれ、本当なんじゃないかと思いました。

  • ときどき思い出したように筒井康隆さんの本をよむのもいいですね。表紙の絵と物語のイメージが少し違っていたのが残念。物語は男の子が喜びそうな内容なんだけど・・・

  • んん、これは物語全体が何かのメタファーか…?

    子どもが大人の保護から脱して、何かを失うおはなし。な気がする。
    失ったものは、ある種の純粋さ、なのか。うーん、どうなんだろう。

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著者プロフィール

小説家

「2017年 『現代作家アーカイヴ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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