私の美の世界 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101174044

感想・レビュー・書評

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  • これまで読んできたエッセイもたくさんあったが、何回読んでもうっとりしたり、クスッと笑ってしまったり、森茉莉さんの天衣無縫ぶりに楽しい気分になりました。森茉莉さん、政治的な意見が思っていた以上にしっかりしていて、驚きでした。明治生まれだから?その辺りはやはり、関東大震災に戦前戦後を経験し、民主主義の理解が現代の私とは比べようもないものだからなのだろうか。見る目があるということは、こういうことなのかと思わざるを得ない。

  • 食べ物の話から、巴里の思い出、男性ファッションについて、文学や政治、当時の世相、本物の贅沢の話まで多彩な話題を鋭い眼差しと感性で書き綴ったエッセイ。森茉莉のエッセイは辛辣な語りでも嫌味がなくて面白く読めます。また幼少期の記憶や巴里の思い出は美しい色彩に彩られているようで読んでいてうっとり。父・鷗外への思慕も淡い初恋のよう。どんなに鷗外を愛していたのか、2人の別離を読むと胸が締め付けられます。

  • 美しいものにこだわり、自分の世界に妥協しない、まさに「わたしの美の世界」。世の中のあらゆることにいつも怒っていて、謙遜も追従もしないけれど自惚れもない。そんな茉莉さんが好きです。

  • なんというおばあさん少女…恐ろしいな。

  • エッセイの中で一番すきな作品。
    いつでも読みたいきれいな文章。
    食べ物の描写がいちいちおいしそうなところも素敵。
    些細なこだわりやふとしたつぶやきをこんな風に書けるって、とてもすごい。

  • バイブル。

  • 文庫ではない外箱に入った美しい原本が図書館にあって借りてみました。その装丁の拘りとタイトルに、デザイナーが自分のセンスやら美について語ってるかと思ってました。
    著者を調べると森鴎外の娘で、中身はほんとにふつうの新書みたいな感じのエッセイ。
    期待してたものとは違ってたけど、当時の時代のことが感じられる内容はおもしろかった。世の中の情勢の話でマッカーサーとか歴史上の人物が普通に出てくるし
    あとは人種の考え方もまだ世界中で今とは違っていたときだから、そんなエピソードも面白い。
    全部読んでないけど、この時代を感じたい人にはとっても面白いと思います。

  • もう何回読んだか分からない、森茉莉パイセンのエッセイ。
    三島由紀夫のファッションを似合ってないと貶し、「この世に起きて坐っている位だるくていやなことはない」と断言し、ピーター・オトゥールで妄想し、オムレツの作り方を披露する本です。他にも色々書いてますが、概ねパイセン困った人だなぁ、でも格好良いっすパイセン!
    文章に苦労とか吝嗇くささの嫌なにおいが全く感じられない不思議な人です。

  • "私たちの国は、今、首相や、他の多くの政治家が、各々自分の地位や、それに付随する職権や収入を維持しようという以外はなにもないような、どことなくうわの空な感じで、というような、目下のところ一番困る点をはじめ、他の国に、勝負にならない程劣っていることが、いわゆる枚挙に暇がない、というていたらくである。" 「おかしな国」182ページ

    令和3年のことかと思った。初出が何年なのかわからないが、昭和43年以前。50年前から何も進歩していない。

    このあとに、「森茉莉のエッセイを読む時間は至福の時間」って書くのもなんかなぁ。
    辛辣に批評するところもとても好きだけど、「私の美の世界」を語るところがもっと好き。

  • 著者のエッセイのなかから、「貧乏サヴァラン」「夢を買う話」「あなたのイノサン、あなたの悪魔」「反ヒュウマニズム礼賛」「ほんものの贅沢」の5編を収録しています。

    著者の「反ヒュウマニズム」は、ヒューマニズムに対する思想的挑戦ではなく、その独特の美意識にもとづくものであるように思えます。そのため、著者の議論のほころびをさがし求めてこのエッセイを読んだとしても、掘り下げて検討をおこなうことのできるような奥行きを見いだすことはできないでしょう。著者の日々の生活のなかで一つひとつていねいに手をかけてつくられた著者の趣味から流露したことばであり、読者はその表層をたどっていくことで、その美意識に触れることになります。

    「あなたのイノサン、あなたの悪魔」は、三島由紀夫にあてた書簡形式の文章で、三島のなかの「イノサン」(innocence)について「要するに奇異な服装をするのも、各国の家をお建てになるのも、伊太利の彫刻家に、希臘のアポロンのコピイを拵えて貰って、お金をかけて運んで来るのも、貴方のサド的なイノサンがさせることなのだろうと思われて来ました」と、皮肉の利いた評言をつづっていますが、三島の「文学」を掘り下げるのではなく、こうしたところにまなざしを向けるのが、著者の美意識の働くしかたを示しているように思います。

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著者プロフィール

1903~87年、東京生まれ。森鴎外の長女。1957年、父への憧憬を繊細な文体で描いた『父の帽子』で日本エッセイストクラブ賞受賞。著書に『恋人たちの森』(田村俊子賞)、『甘い蜜の部屋』(泉鏡花賞)等。

「2018年 『ほろ酔い天国 ごきげん文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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